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業務上災害と通勤災害で何が違う
通勤災害は労基法19条の解雇制限の対象外
下に示した労基法の解雇制限の規定であるが、解雇が制限される場合について「業務上負傷し、又は疾病にかかり」となっている。従って、通勤災害は対象外である。勿論、各企業には就業規則が有り一定期間の病欠と傷病休職が設けられているので、その間に解雇されることはない。
【労基法19条1項 】
(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
 
業務上災害の場合の給付
  療養補償給付
    労災保険により必要な療養補償給付が行われる。
  休業補償給付
    休業4日目から労災保険により、休業1日につき給付基礎日額の100分の60が給付される。
    同時に特別支給金として100分の20が支給される。合計100分の80となる。
    休業1日目から3日目までは使用者が100分の60について自腹で負担することになる。
    (労基法76条による休業補償)
   
※労基法76条では休業補償について初日から事業主が自腹で100分の60を負担することになっているが、労災保険で補償される場合にはその部分について補償の責を免れることになっている。
 
 通勤災害の場合の給付
   療養給付(通勤災害では療養補償給付とは言わず療養給付という)
    労災保険により必要な療養の給付が行われる。
    労基法には通勤災害の補償の規定はない。
   休業給付(通勤災害では休業補償給付とは言わず休業給付という)
    休業4日目から労災保険により、休業1日につき給付基礎日額の100分の60が給付される。
    同時に特別支給金として100分の20が支給される。合計100分の80となる。
    休業初日から3日目までの使用者による補償は無い。
    (労基法76条の休業補償は業務上災害のみ)
   
  ※車との事故で有れば自賠責による補償は有りうる。(第三者行為災害)   
 
【参考資料】
 
労基法81条 (打ち切り補償)の空文化
「労基法第19条ただし書き」の解雇制限解除との関係
 労基法81条では、労働災害が発生した場合において、事業主による労基法75条の療養補償を受けている労働者が療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合、使用者は平均賃金1200日分の打ち切り補償をすることにより、その後は労基法による補償を行わなくて良いと定めている。そして、労基法19条のただし書きでは81条による打ち切り補償を行った場合には解雇制限が解除され解雇できると規定している。

 しかし、労災保険の強制加入によって労災保険による療養給付が行われるため事業主による労基法75条の療養補償は現実には行われていない。労基法第81条の打ち切り補償は事業主による労基法75条の療養補償が行われている前提の規定であり、労災保険によって事業主による補償が現実には行われることが無いので空文化した規定となる。
 労基法第19条ただし書きでは、第81条による打ち切り補償が行われた場合においては解雇制限が解除され解雇できるしているが、81条による打ち切り補償が空文化するので第19条ただし書きによる解雇制限の解除も無くなることになる。
 では、永久に解雇できなくなるかと言うとそうではない。労働者災害補償保険法第19条による解雇となる。但し、療養開始後3年を経過して障害補償年金を受けている場合に限られる。

 年の為の説明になるが、労基法第84条によって労災保険の方から災害補償給付が行われるべきものである場合には事業主は労基法上の労災補償の責を免れることになる。

 以上のことを箇条書き的にまとめると次のようになる。
全事業主が労災保険に強制加入している。
労基法第84条によって、労災保険の方から災害補償給付が行われるので事業主が労基法による災害補償給付を行うことは無い。
労基法第81条の打ち切り補償は事業主が労基法による療養給付をしている前提の規定である。
第81条の前提条件である事業主による自腹での療養給付が無いので84条による打ち切り補償給付も有り得ない。
第19条ただし書きの労災で休業中の労働者の解雇制限解除は第84条の打ち切り補償の支払いを前提にしているので、この解雇制限解除も有り得ないことになる。
一方、労働者災害補償保険法第19条では療養補償を開始後3年を経過した労働者が災害補償年金を受給している場合には解雇できるとしている。労災で休業している労働者の解雇は第19条ただし書きの解雇制限解除による解雇ではなく労働者災害補償保険法第19条による解雇となる。

以下の枠内の文章は打切補償によって解雇制限が解除される労働者の範囲―専修大学事件の引用である。上の説明と同じ内容を別の言い方で説明している。かなり、ややこしかったと思うので再度説明する意味で引用した。
なお、専修大学事件の説明を読んで頂ければ分るが、この解釈には学説的な異論がある。特に、障害の程度が4級以上の場合には障害補償年金が給付されない。この場合には解雇できないということが問題になっている。企業によっては国の労災給付に上乗せして給付を行っている場合がある。給付を永久に続けなければならないことに異論がでている。

業務上の傷病で休職中の労働者は、休職中及び休職後30日後までは解雇できない(労基法19条本文)。
ただ、労基法上の療養補償を行なっている使用者は、療養開始後3年を経過しても傷病が治らない場合は、平均賃金の1200日分の打切補償を労働者に支払えば、解雇が可能になる(労基法81条、75条1項、19条但書)。
ここで、普通労基法上の療養補償を行なう使用者は皆無である。なぜなら実質強制加入の労災保険から療養補償給付(労災保険法13条2項)がなされるので、わざわざ自腹を切って補償を行う使用者は通常存在しないからである。
なお、業務上傷病した労働者が、療養開始後1年6月を経過しても治らず、かつ傷病等級1ないし3級に該当する場合は傷病補償年金が支給される(労災保険法12条の8第5項)。そして、この場合において、療養開始後3年経過日すると解雇制限が解除される(労災保険法19条、労基法19条1項)。

【参考】

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