|
はじめに ヘルムホルツの分解定理は「任意の流れ」が「渦のない流れ」と「発散(密度変化)の無い流れ」に綺麗に分解できると言う定理です。この定理は気象学会などで信じられていますが、この定理は数学的に間違っていることを証明できます。 私は2001年に気象学会の関西支部年会に置いて「流れの分解について」を発表して以来そのことを言い続けていますが、未だに理解できる人が出てきません。 1.ヘルムホルツの分解定理の証明 ヘルムホルツの分解定理というのは、任意のベクトル関数Vは「渦が無く発散だけがあるベクトル関数A」と、「発散が無く渦(回転)だけがあるベクトル関数B」に綺麗に2つに分解できるという定理です。 私の知る限りでこの定理の証明を最も正しく証明しようとした人は、James R.Holtonです。 Holtonは、その著書「An Introduction to Dynamic Meteorology」のAppendixで次のような証明をしています。 任意のベクトル関数Vに対して(C.1)の形の証明が出きれば確かにヘルムホルツの分解定理は証明できたことになります。 2.流れの分類 以上の証明で何の問題も無いようですが、実は任意の流れVを−▽2Wで与えている(C.2)が問題です。 Holtonは任意の流れと言っていますが、彼の言っている任意の流れは(C.2)と言う条件付の全く特殊な流れです。「2階微分可能な連続関数Wが存在し、その▽2(=ラプラシアンΔ)でVが与えられる流れの場合には」、と言う大きな条件が付いています。 2階微分可能な関数Wが常に存在することが証明できないとこのHoltonの証明は完全とは言えません。 Wの存在に関して、流体力学の二つの基礎的な定理があります。 その1つは、「流れに発散が存在しないことは、その流れの場にその回転が流速を示すベクトル関数が存在するための必要十分条件である。」という定理であり、もう一つは、「流れに渦が存在しないことは、その流れの場にその勾配が流速を示すスカラー関数が存在するための必要十分条件である」というものです。 流れの特性を現す物理量に「渦の分布」と「発散の分布」があり、これらの有無によって、基本的に4つに分類することが出来ます。 <2−1> 渦のない流れ 渦のない流れについて、2次元で考えて見ます。 渦度は∂v/∂x−∂u/∂yで現されますので、渦のない流れは、 ∂v/∂x−∂u/∂y=0 ・・・・・・・・・・・・1) となっています。 この1)式は、ある関数が存在し、その全微分がu・dx+v・dy であるための必要十分条件です。その関数をχとすると、 dχ=u・dx+v・dy ・・・・・・・・・・・・・2) と書くことが出来ます。 一般に全微分とは考えられる方向の全ての方向の偏微分にその方向の微少変化量をかけたモノの総和で表されますから dχ=∂χ/∂x・dx+∂χ/∂y・dy です。 従って、渦のない流れの成分は関数χを用いて u=∂χ/∂x v=∂χ/∂y と表すことが出来ます。 渦のない流れについては、スカラー関数χが存在し、その微分で流れの場を現すことができます。このχは、Holtonの証明では、(C.4)に出てくるχに相当します。 流体の中に渦が無いことは、その流れに速度ポテンシャルが存在するための必要十分条件となっています。従って、流れに渦が有る場合には、その微分が流れの速度を現すような関数は存在しないことになります。 <2−2> 発散が無い流れ 発散のない流れでは、u,vをそれぞれ直交するx軸方向とy軸方向の流れの速度とすると発散量は、∂u/∂x+∂v/∂yで現されますから 発散量=∂u/∂x+∂v/∂y=0 ・・・・・・・・・3) となります。この式は書き直すと、 ∂u/∂x−∂(−v)/∂y=0 と書くことができます。 この式は、ある関数が存在し、その全微分が(−v)・dx+u・dy であるための必要十分条件です。その関数をαとすると、 dα=−v・dx+u・dy ・・・・・・・・・・・・・・・・4) と書くことが出来ます。 一般に全微分とは考えられる方向の全ての方向の偏微分にその方向の微少変化量をかけたモノの総和で表されますから、今の場合、2次元(x、y)で考えますと、 dα=∂α/∂x・dx+∂α/∂y・dy ・・・・・・・・・・5) となります。 4)及び5)より、発散のない流れの各座標成分は関数αを用いて −v=∂α/∂x u=∂α/∂y と表すことが出来ます。 ここで、スカラーα(x、y)の分布そのものはスカラー量ですが、ベクトルA(x、y、z)の各成分が x成分=Ax=C、 y成分=Ay=C、 z成分=Ax=α であるベクトルを考えますと(Cは定数) 流れに発散が無ければ(∂u/∂x+∂v/∂y=0)、その流れの成分が(−v=∂α/∂x、u=∂α/∂y)で与えられるような関数αが存在しますが、流れに発散があればその微分が流れを現すような関数は存在しません。 <2−3> 流れの分類 以上の二つの流れの検討から、流れを次の4つに分類する事ができます。 1つ目は、流れの中に渦も発散も無い流れで、これには速度ポテンシャルと流線関数が共に存在します。2つ目は、渦のみがあって、発散の無い流れの場合で、これには流線関数のみが存在します。3つ目は、発散のみがあって渦の無い流れの場合で、これには速度ポテンシャルのみが存在します。4つ目は渦と発散が共に有る場合で、これには流線関数も速度ポテンシャルも存在しません。この流れが一般的で、ホートンの証明で関数Wが存在しない流れが現実には多く存在していると考えられます。 このことを図に示しますと下図のようになります。 従って、基本的には、流れに渦と発散のある場合は、元の流れを分解することは出来ません。 3.Holtonが証明で用いたベクトル3重積の展開が示している意味 ベクトル3重積の展開で示している数式の意味は、「非常に特殊な流れVは、回転のみの流れと発散のみの流れに分解できる」と言う意味です。 非常に特殊な場合に、渦のない流れと発散の流れに分解でき、渦のないベクトルには速度ポテンシャルというスカラーポテンシャルが存在し、その傾き(gradient)が渦なし流れ(発散ベクトル成分)を表し、もう一方の発散の無いベクトルには流線関数と言うベクトルポテンシャルが存在して、その回転(curl)が発散無し流れ(渦のみのベクトル成分)を表すことができます。 V=−▽2Wが任意の流れだと考えている人にもう少し説明いたしましょう。 ヘルムホルツの分解定理を保証する唯一の式はベクトルの3重積の恒等式(C.3)です。この式を用いて初めて が得られますが、これには と言う条件があります。すなわちχもAもWから派生した関数で、共にW由来の関数です。χとAとは全く無関係ではありません。共にWから生まれたもので、χが決まればAが、Aが決まればχが決まるという関係にあります。 一方、▽×Aで与えられる流れは、ソレノイダルな流れと言い、管の中の流れのように他の流れと一切関わりなく流れると言う性格を持っていることになっています。私はそんな流れが自然界に存在するとは考えませんが、今のヘルムホルツの分解定理を主張する考えでは、一切関わりの無い流れが存在することになっています。 だとすると、▽×Aと合成される▽・χについていくつもの組み合わせが考えられるべきです。しかし、ベクトルの3重積の恒等式(C.3)から導かれた▽・χ以外とでは、(C.5)は成り立ちません。すなわちヘルムホルツの分解定理は成り立たない組み合わせがいくつでも考えられます。 以上でヘルムホルツの分解定理が間違いであることは証明されていますが、まだ疑問に思う人のために、もう少し具体的に例をあげて示しましょう。例えば、二つの任意の流れをV1、V2としましょう。ヘルムホルツの分解定理が正しいとして以下の二つの式が得られます。 ここで、任意の流れ(ベクトル関数)は任意の渦成分流れ(▽×A)と任意の発散成分流れ-(▽・χ)の組み合わせが可能な筈ですので、 渦なし発散流れ成分が-(▽・χ1)で、発散無し渦流れ成分が(▽×A2)である流れを考えます。 ここで χ1=▽・W1 A2=▽×W2 です。 χ1とA2の組み合わせに関しては、 (C.3)は成り立たなくなります。(C.3)の右辺に示されているWは全く同じ物でないと成り立ちません。 すなわち合成された流れV3=−▽2W3を分解できる式は、 従って、 V3は、発散が(▽・χ1)の流れと渦が(▽×A2)で有る流れの合成ですが、その合成された流れの発散は(▽・χ1)と異なり、渦は(▽×A2)と異なっています。 これはヘルムホルツの分解定理が成り立って居ないことを示しています。 この組み合わせは、無限に考えられ、一般にヘルムホルツの分解定理は成り立たないことが分かります。 |
ヘルムホルツ分解定理
[ リスト ]








すごいです.最後は納得.
これは2次元流においてですよね?
2012/7/1(日) 午前 3:34 [ 学生 ]
そうです。2次元においてです。
3次元だと、連続の式が効いて、いわゆるソレノイダルな流れが確保され、流線関数が得られると思います。
初めて、自分の言いたいことを理解して下さる方に会いました。
2012/7/1(日) 午後 8:19 [ tak*1*4406*6 ]
返信ありがとうございます.
気象の場合,平面に対して垂直方向の速度成分はほとんど小さい(発散がほぼ0)であるから今まで,ヘルムホルツの分解定理でといても矛盾がなかったということですよね?だから,光藤さんの意見に見向きもしなかったんだと思います.
今現在,私は修士の学生です.ある3次元流れの平面を切った時,
その平面を2次元の発散(渦度もあり)流として解くことができないか
研究しています.
2012/7/2(月) 午前 2:10 [ 学生 ]
私は、もう思考力も落ちてきました。
今の気象学では、現実の大気大循環の流れを、渦の成分から流線関数と発散成分から速度ポテンシャルに分けてしまい、流線関数による流れは発散に寄与しないと考えられています。
その考えでは、現実の大気大循環の季節変動を上手く説明できないと考えて(学者でなく予報の現場に居たからこそ気づいた)、いろいろ考えているうち、ヘルムホルツの分解定理の間違いに気づきました。
若い人の中で、この考えをしっかり理解出来る人が現れて、安心して気象の世界から去ることが出来ます。
よろしくお願いします。
2012/7/2(月) 午前 9:10 [ tak*1*4406*6 ]
以前に投稿いただいた方がもう一度ご覧下さるとは思いませんが、私のコメントが一部不正確だったので、念のため訂正しておきます。
ヘルムホルツの分解定理が間違っているのは、3次元においてもです。渦と発散が3次元でも、共存する場合は渦だけの流れと発散だけの流れに分解することはできません。
現実の3次元流れでは、発散が殆ど無い場合が多く、問題となりにくいと考えられます。
現実に問題となるのは、3次元の流れを流れに関係なく、一定高度や等圧面で切った様な2次元面では、渦と発散が無視できない位大きくなって、渦と発散が共存し、問題が起きてきていると私は考えています。
2012/7/16(月) 午前 9:48 [ tak*1*4406*6 ]
偶然見つけた記事ですが、タイトルに驚いたため内容を読ませて頂きました.気象学というものについては無知ですが、思ったことをコメントさせて頂きます.気象学的観点から間違いを指定して頂けると幸いです.
ヘルムホルツの分解定理は、ベクトル場に対して成立するものであり、任意の場に対して成立するものではありません.
流れ場は、一般的に非線形方程式で記述されるためベクトル場ではなく、何らかの近似やモデル化によりベクトル場とみなされます.
現実の流れ場がベクトル場を成していないことは明らかです.
記事の内容は、流れ場はベクトル場ではないということを述べているのであって、ヘルムホルツの分解定理そのものの間違いを述べる内容になっていません.
そもそも、物理現象の考察から数学的に確立された定理を否定するのは、物理現象と数学は全くの別物であるため、無意味です.
非常に基礎的な事項ですが、思ったことは以上です.
2013/12/5(木) 午前 11:35 [ mm2*p* ]
追記です.
"任意の流れを渦の無い流れと発散の無い流れに分解することはできない"ということには同意です.この理由は、先にも書きましたが、場を記述する方程式が非線形方程式であり、一般的にベクトル場を成さないためです.電磁場の場合、その振る舞いを表す基礎方程式は線形方程式であるため、ベクトル場を成します.そのため、発散の無い場と回転のない場に分離することが可能です.ただし、場を満たす媒質が線形媒質である必要があり、非線形媒質の場合には電磁場においても一般的に分離は不可能となります.
"ヘルムホルツの分解定理"で検索を行うと、この記事と全く同じ内容の記事が検索結果の上位に複数表示されてしまいます.仰りたい事は理解できますが、気象学以前に本質的に必要な基礎理論が無視された(勝手な解釈による)内容ですので、基礎から見直し改めることをお勧めします.内容に関して議論するつもりは全くありません(議論の余地がありません).
2013/12/8(日) 午後 9:23 [ mm2*p* ]
気象学のことはよく知りませんが、C-infinityなVであればVを与えたときに-△W=Vを満たすWは具体的に構成できると思うんですが。
-△G=δを満たすグリーン関数G(2次元ならハンケル関数になったはず)とVを畳み込んでやればW=integral[V(x')*G(x-x')]dx'でよいでしょう
この定理は数学ではHodge分解に相当するものなので他の証明法もありますよ
多様体論の言葉を使いますが
2013/12/14(土) 午前 5:53 [ 通りすがり ]
> mm2*p*さん
議論の余地が無い人に言ってもショウガありませんが、このコメントをくれた人は、本文の<3.ベクトル3重積の展開が示している意味>を読んでいないか、読んでも意味が分からなかったのだと思います。基礎から勉強してほしいのこちらが言いたい台詞です。
3,で述べていることは、例えば、NHKの電波の電界と磁界の組み合わせだけ考える場合は、一見この定理に抵触していない様に見えますが、この定理が扱う「任意のベクトル」は、任意の組み合わせが考えられ、それが分解できると言っています。例えば朝日放送の電波の電界成分と読売放送の電波の磁界成分の組み合わせも考えられて、それらが分解できると考えることになります。実際の電波の組み合わせは、必ずペアが決まっているというのが3.で述べた内容です。
2015/3/29(日) 午後 3:01 [ tak*1*4406*6 ]
まあそうだよなあ。簡単に分解できたらナビエストークス方程式も簡単に解けそう。
2015/9/12(土) 午後 10:32 [ takahiro4 ]