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4.速度ポテンシャルと流線関数はどうして世間に存在するか

 私はヘルムホルツの分解定理は間違っていると思うし、渦と発散が両方とも存在する流れには、速度ポテンシャルも流線関数も存在しないと考えています。

 しかし、現実に気象庁などでは、毎日の天気図資料として発表している資料の中にこれら二つの資料が含まれています。無い筈の関数が何故発表されているのでしょうか。

 流れ(風)の場があれば、∇・で発散分布は求められるし、∇×で回転、すなわち渦度分布が求められます。発散分布も流線関数も速度ポテンシャルや流線関数が無くても求められます。
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             図4.1 ヘルムホルツの分解定理の概念図
 そして一旦、発散分布と渦分布が求められれば、それらが線形関係(足し合わせで合成が可能)に有ろうと無かろうと、渦無し流れ(風)と、発散無し流れ(風)に分解できたものと決めてしまうのが、ヘルムホルツの分解定理です。

 渦無し流れ(風)があると決めてしまえば∇・の分布から速度ポテンシャルを求めることが出来ます。発散無し流れが有ると決めてしまえば∇×の分布から流線関数を求めてしまう事が出来ます。
 
 私は、一般には図4.1に示すように、渦と発散が共存する場合は、流れのベクトルの中にどちらの成分にも寄与する流れの成分があるため、分解は出来ないことを(その1)で述べています。しかし、一旦分かれてしまえば、流体力学の基礎定理に抵触することが無いことも先に述べているとおりです。

 本当は分解できない流れを分解して足しあわせていますので、合成した風と元の風は等しくなっていないことを以下に示していますが、発散成分は非常に小さく、その誤差が明瞭ではありません。誤差の検証に余り興味が無い方は、その3にお進み下さい。

以下に気象庁の公開している速度ポテンシャルと流線関数の実態について検証いたしましょう。

 はじめに、図4.2は2011年6月20日00Zの水蒸気画像に200hPaの高度、風を示し、その風から求めた発散分布を示したものです。格子点に与えられる生の風を、以後は解析風と呼ぶことにします。この解析風が図4.1で示したFに当たります。∇・が同図の発散・収束分布に相当します。
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              図4.2 2011年6月20日00Zの水蒸気画像と上層天気図

 水蒸気画像と上層天気図について解析しましょう。

 黄海に暗域(C1)が見られ下降気流域であることが分かります。その下降気流域に対応して対流圏上層である200hPa天気図では、収束域(青い等値線で示されている)が見られます。この収束を起こす風がどこから来たものかを知るために、この風を遡ると河北(D1)やあるいはそのもっと奥地(D2)に見られる白っぽい対流活発域から発散していることが分かります。

 西日本は水蒸気画像で白っぽくなっており、対流活動が活発であることを示しています。ここ(D3)で上昇した風は上層を北東にながれて、東北やその東方海上(c2)で収束域を作って居ます。

 この時の気象庁が発表している速度ポテンシャル分布及びその速度ポテンシャルから得られる風(以後速度ポテンシャルから求められる風を発散風と呼ぶことにします。)を図4.3に示します。
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           図4.3 2011年6月20日の速度ポテンシャル分布と発散風成分
 発散風は値が小さいため、図4.2の解析風の表示に比べて倍の長さに表現していますので気をつけてください。

 図4.3を見ると、黄海の暗域へ収束する風は主に西日本の発散域からの発散風(渦無し風)と考えられます。

 ヘルムホルツの分解定理によると、元の風から渦無し風を取り出すと、この中に発散や収束を起こす風が全て含まれているはずですから、発散・収束を考察するのはこの速度ポテンシャルから求められる風だけを見れば良いと考えられます。すなわち黄海の収束域で収束している原因となっている風は西日本の発散域からの風と考えられます。

 一方、流線関数とそれから得られる発散無し風の分布は図4.4の通りです。

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             図4.4 流線関数と発散の無い風成分

 図4.4の風のスケール表示は図4.2の解析風と同じです。黒い実線は流線関数の等値線で、青い矢印は流線関数から求めた風です。この風を流線関数風とここでは呼ぶことにします。

 図4.5は、発散風と流線関数風の二つの風を一つの図に描き出したものです。
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         図4.5 発散風(赤い矢印)と流線関数風(青い矢印)

 ヘルムホルツの分解定理によるとこの二つの風の合成(ヘルムホルツ風と呼ぶことにします)が解析風に等しい筈です。図4.6に解析風とヘルムホルツ風の比較図を示します。

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         図4.6 解析風(黒矢印)とヘルムホルツ風(発散風+流線関数風)(紫矢印)

 図4.6は初めに解析風の黒い矢印を描き、後からヘルムホルツ風を描きましたので、全く同じであれば、紫の矢印だけが残るはずです。少し黒い矢印が見える場所では、両者に多少の誤差が有ったことが分かります。ただし、この図では誤差が分かりにくいので、更にこの誤差を取り出して図4.7に示します。
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          図4.7 解析風とヘルムホルツ風とのベクトル差の分布

 図4.7では参考のために速度ポテンシャルと流線関数の等値線も入れました。図4.7の分布を見ると、誤差の大きさは大きいところで5m/s弱です。粗い格子点データでの差分計算による誤差と考えることも出来ますので、これはヘルムホルツの分解定理が間違っている完全な証拠とは言えないかもしれません。

 しかし、あなたが流体力学で学んだ速度ポテンシャルと流線関数の等値線は直交(互いに直角に交わる)していませんか。ここで示す現実のこれら二つの等値線は直交していません。

 直交していると、例えば発散風は流線関数の等値線に沿って吹くので発散風が流線関数を変えることはありません。したがって発散風は流線関数に影響を与えず、「線形関係にある」と言えるかも知れませんが、現実の分布は直交しておらず、線形関係に有るとは言えず「足し算で合成」は出来ないことを、この図は示しています。

 誤差が小さいのは発散風そのものが小さいからです。図4.5をご覧下さい。元の風を分解しても大半は流線関数風が占めていますので、誤差は数m/s程度にしか出てきません。
発散風と誤差のオーダーを比較するため図4.8に誤差(解析風−ヘルムホルツ風)と発散風を示しました。
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          図4.8 分解定理による誤差と発散風のオーダーの比較

 風の発散量は大気大循環に与える影響が大きいのですが、生の風の内、発散に寄与する風の成分は小さいため、間違って計算してもその間違いに気が付きにくいのです。

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