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<ヘルムホルツの分解の実際>
気象庁は、「ヘルムホルツの分解定理」を用いて、特定の気圧面の、いわば平面の風を、「発散成分のみの風」と「回転(渦)成分のみの風」に分解して、それぞれ「速度ポテンシャル」と「流線関数」を求め、発表しています。
私の知る限り、ヘルムホルツの分解を日常的に応用している機関は、気象庁はじめ世界の気象機関だけです。
気象庁の公表している速度ポテンシャルと流線関数の例を見てみましょう
図1は、2016年7月の月平均の速度ポテンシャル(上)と流線関数(中)です。
図1の(下)には、速度ポテンシャル(赤線)と流線関数(青線)の等値線を重ねて書いて居ます。
図1 速度ポテンシャル(上)と流線関数(中);2016年7月の月平均図
流線関数とは、本来ベクトル関数であり、方向と値を持つ関数ですが、方向としては紙面に直角に上向きに決めており、「流線関数」の分布図は、その値のみの分布を示しています。したがって、流線関数も現実的にはスカラー関数として扱うことができます。
二つの月平均図は、同じ期間のスカラーデータの平均値なので、速度ポテンシャルの図から得られる「回転(渦)の無い、発散成分の風」と、流線関数の分布図から得られる「発散の無い、回転(渦)成分の風」は互いに直交する筈です。
速度ポテンシャルから得られる発散成分の風(以後、ここでは発散風と言います)は、等値線間隔に逆比例して、速度ポテンシャルの等値線に直角に値の低い方に(定義により高い方に)吹きます。
流線関数から得られる回転成分の風(以後、ここでは回転風と呼びます)は、流線関数の等値線間隔に逆比例して、流線関数に平行に、値の高い方を右(定義により左)に見て吹きます。
図2 発散成分の風と回転成分の風
したがって、分解された二つの成分風がヘルムホルツの分解定理に従って、互いに直行しているなら、二つの関数の等値線は互いに平行になっているはずです。
ところが、図1を見て分かるように、気象学でヘルムホルツの分解定理を信じて分解している定圧面の風を、発散風と回転風に分解した風は互いに直交はしていません。
これは、ヘルムホルツの分解定理が間違っていることを示している証拠と思います。
横道に逸れてしまいますが、一般に流体力学を学習するテキストでは、その初期に「ポテンシャル流れ」を学びます。つまり「回転(渦)の無い発散だけの流れ」についての2次元流れを示す図をよく見かけます。この場合は、「速度ポテンシャルの等値線と流線関数の等値線が直交して居る図」になっています。
これは、「回転(渦)の無い発散成分だけの流れ」は、当然のことながら「速度ポテンシャル」の分布図で現すことができます。そして、そして“その同じ流れ”を、回転(渦)が0であることを示す「流線関数」の分布図で示すこともできる、と言うことを示しています。その場合、それら「速度ポテンシャル」と「流線関数」は互いに直交していることを示す図になっています。
ヘルムホルツの分解定理では、発散も回転もある流れを、「発散成分だけの流れ」と、「回転成分だけの流れ」に分解して、それぞれを「速度ポテンシャル」と「流線関数」で現すので、初等の流体力学のテキストに多く出てくる馴染みのあるポテンシャル流(回転なし流れ)の図とは全く違ったものになっていますので、注意が必要です。
図1の発散風と回転風が直行していないことについて、気象関係者は、「互いに直行していなくても、発散成分の風と回転成分の風は、互いに他に関係なく吹いている」と言います。
これは、数学のベクトルという基礎概念を無視した大変無茶苦茶な考え方です。信じられないくらい馬鹿げたこの考え方が、これが気象学者の常識になっています。
一方、Wikiなどに「ヘルムホルツの分解定理」の記事を書いている人の大半は、電磁気学(電磁波を取り扱っている)の人たちで、「ヘルムホルツの分解定理で分解された二つの成分は直交している」ことを疑いません。
彼らは学問上、そのようになっていると信じていますが、一度も実際に「発散と回転を含む任意のベクトル」を分解したことはありません。分解されて出来上がっている(と信じている)電界と磁界の組み合わせを、元のベクトルが何かを知ることもしないで、ヘルムホルツの分解でできたベクトルの組み合わせと考えているだけです。このことについては、最後にもう少しコメントいたします。
<発散にも回転(渦)にも寄与する成分の存在について>
何故、気象庁の出している「速度ポテンシャル」から得られる「発散成分」の風と「流線関数」から得られる「回転成分」の風は、直交性を示さないのでしょうか。
前の記事、「通常のベクトルの分解とHelmholtzの分解との違い(2)」において、「発散にも渦にも寄与しない成分」を考えましたが、実は、「発散にも渦にも寄与する成分」もあるからです。
図3 任意のベクトルAが発散と回転(渦)の両方に寄与する成分を持っている場合
元のベクトルAが発散にも回転にも寄与する成分があると、分解されたと考えられるスカラー関数Φにもベクトル関数Xにも、両方に寄与してしまい、「発散にも回転にも寄与しない成分」をどちらにくっつけて処理しても、
A≠∇Φ+∇×A+「発散にも回転にも寄与しない成分」
となります。
私は、実際に「ヘルムホルツの分解作業」をやったことはありませんが、もしも回転成分だけから流線関数を取り出したら、とんでもなく複雑な等値線になることが考えられます。今の気象庁やNOAAが出している流線関数の単純さは、「発散にも回転にも寄与しない成分」の寄与が大きいものと考えられます。実際の風の成分は、この「発散にも回転にも寄与しない成分」の比率が大きいからです。
<発散にも回転にも寄与する成分の存在>
もう一度、発散と回転(渦)を求める図と式を図4に示します。
図4 ベクトルAの発散と回転(渦度)を求める図と式
図4は、ベクトルAの発散と回転を求めるため、ベクトルAをx方向のUとy方向のVに分解し、それら分解された成分をすべて使って、発散か回転かのどちらかにのみ寄与することが示されています。例えばV3はAの発散にしか寄与しないし、V4は回転にしか寄与しないと考えられます。
すなわち、ベクトルAは、U1〜4、とV1〜4に完全に分解され、ぞれらのすべては発散か回転かのどちらかにしか貢献していないことを示しています。
このことからも、「任意のベクトルAは発散のみのベクトルと回転のみのベクトルに分解できる」というヘルムホルツの分解定理が信じられているのだと思います。
しかし、例えばV3とV4は中央の点のごく近い近傍の値で、互いに独立ではありません。
もし、このベクトル関数Aが(即ち、ベクトルAの成分であるUとVが)滑らかに分布していて、全微分が可能であれば図5に示すように、互いに深い関係を持っています。V4はこの位置のベクトルとしてAの回転にのみ寄与しますが、その前にV3として発散に寄与してきています。
図5 ベクトルFが全微分可能であると
同じように、奇数番号点(1,3)のUはその位置のベクトルとしては、回転のみに寄与しますが、発散に寄与する偶数番号点のUと密接な関係を持っているため、回転のみでなく発散にも寄与していると考えられます。
この節の初めに見た気象庁の速度ポテンシャルと流線関数から得られる「発散風」と「回転風」が直行しない理由は、ヘルムホルツの分解定理が間違っているからです。
現代の気象学では、大気の発散収束は速度ポテンシャルだけ見ればわかると、されていますが、実際には、流線関数から得られる回転風が「発散風」と直交していないので、回転風の中に発散風の成分が「数学的にあきらかに」含まれており、大気の循環を発散風だけで議論することはできないと言わざるを得ません。
<追記1>
気象学的に風の分布から「収束・発散分布」は重要な解析資料になります。そのためには、ヘルムホルツの分解定理でなく、地衡風と非地衡風に分解することをお勧めいたします。
発散・収束解析は、解析風から地衡風をベクトル的に引いた非地衡風成分を解析することによって簡単に解析できます。
<追記2>
電磁気学の電磁波を扱う人たちの中にも、このヘルムホルツの分解定理が正しいと信じている人たちがいます。
電磁気学の関係者は、現実には、一度も任意のベクトルを分解したことがなく、「ヘルムホルツの分解定理」に従って、理論的に「分解された」発散成分のベクトル(電界)と回転成分のベクトル(磁界)が直交して居ると信じて疑いません。
Maxwellの電磁方程式の一つは、電界の時間変化が、その電界の面に直交する面内に磁界を生じさせる式になっており、他のもう一つの式は、磁界の時間変化が、磁界の面に直交する(電界の面)に新たに電界を生じさせるという式になっていて、微少時間後に互いに直交する面に「発散だけの電界」と「回転だけの磁界」を作り上げていくという式になっています。
つまり、「渦の無い電界」の時間変化が、その電界面と直交する面に微少時間後に「発散の無い磁界」を作り上げ、「発散の無い磁界」の時間変化が、その磁界面と直交する面に微少時間後に「渦の無い電界」を作り上げることを示しています。
「ヘルムホルツの分解定理」には、時間の項は含まれていませんが、Maxwellの電磁方程式では、時間の変化が重要です。これらは全く違う世界を表しています。
Maxwellは、その矛盾が解決できず、一つのまとまった電磁気学をかけなかったのではないかと思いますが、それを「矛盾」に気が付かないヘビサイドがまとめたのが、今の電磁気学ではないかと思います。今の電磁気学は、まだ見直すべき内容を含んでいますので、これからの若い人にその矛盾を解決してもらいたいと思います。
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