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8.イタリア
ヴェニスに失す(2)ないない。切符がない。 今回はちゃんと買ったのに。 コートの反対側のポケットにも、 ズボンのポケットにも、 鞄の中にも、ない! どっかで落としたんだ〜。 今までさんざんタダ乗りしてきたわけですが、 知らないでやるのと、 知っててやるのとでは大違いです。 横目でちらっと様子をうかがうと、 船員さん、何も気付かず、 海を見ながら鼻歌を歌っています。 ヴァポレットの船員さんって、だいたい陽気な感じだけど、 今回の人はまた、輪をかけて明るそう。 なんていうか、頭を振ったら「ちゃら〜ん、ぽら〜ん」って音がしそうな……。 観光客に頼まれて、いっしょに写真に写っている船員さん。 若い女の子の隣でヘンな顔をしながら、なにか叫んで笑わせています。 「この人なら、切符がないことに気付いても許してくれるかなぁ? いやでも、いきなり態度が豹変したりして……」 和やかムードの甲板で、ひとりドキドキしている私。 やがてお客さんはみんな、船室に入って行きました。 私ももう、指先の感覚がなかったのですが、 甲板よりも船室のほうが切符チェックに遭う率が高そうだし、 もし切符がないことがバレた場合、 暖かい船室より吹きさらしの甲板にいたほうが心証がいいような気がして、 そのまま冷たい潮風をあび続けることに。 しかし船員さん、ひとりだけ甲板に残っている私が気になるようです。 船が停まるたびに「シエンテ?(たぶん、『降りますか?』)」と声をかけてくれたり、 そのほかにも何か話しかけようとしたり、 なんとか私と目を合わせようとしてくれたりしたんですが、 その時の私には、楽しくおしゃべりをする余裕なんかなく、 「『じゃ、ついでに切符の確認を』なんて言われたら……」 と思うといてもたってもいられず、 全身から「来ないで!話しかけないで!鼻歌でも歌ってて!」というオーラを出しまくっていました。 今思うと、いかにも何かやましいことがありそうな態度ですね。 結局、切符チェックをされることもなく、無事にホテルに戻れたのですが、
旅先で油断しちゃいけないですねホント…… |




