自由な談話室

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 数に関する認識を心理学的に解明することを試みた意欲作。実験心理学的なところから最新の脳神経データ、哲学的含意まで多岐に渡って解説してくれる。文章自体は退屈であるが、本書の知見は誰しもが知っておくべきことなのではないかと思う。そのうちのいくつかを例示したい。
  まず、人間の脳はそれほど数を認識するのに向いていないという事実だ。人間は3までの数の認識は容易であるが、4以上となると急に難しくなる。たとえば、各国の数字言語を比較してみると、3より上になると記号が急に複雑になる。サイコロの数の並びは、すべて3以内のグループでうまく括れるようになっている。
 次に、天才も凡人も数を処理する方法は同じであり、速いか遅いかの違いしかないということだ。天才も凡人も同じところで間違いやすくなる。たとえば、掛け算でつかわれるかずが3より大きくなると処理速度が劇的に落ちることが実験で明らかになっており、常人と傾向はまったく同じになっていることから脳の処理過程は同じと推測される。このことはMRI映像で血流を図ったときにも明らかとなっている。
 
最後に、数をつかさどる部位と言葉や指をつかさどる部位が密接に結びついているということである。たとえば、数を覚える能力は母国語の音の長さに大きく左右される。日本人は平均9桁を一瞬で覚えられるが、アメリカ人は7桁である。あらゆる実験を行っても、音の長さ以外の要素で説明できない差なのだそうだ。
また、よく幼い子供が指を使って計算している場面をよく見かけるが、これは脳の発達からすると非常に理にかなっているのだという。先生はよく指を使うなと注意するがこれはナンセンスであり、指を使わせたほうが数の認識力が高まるのだという。左脳と右脳の連係プレーも計算には重要だそうだ。概算では右脳が活発に使われており、暗算や正確な計算の場合は左脳がよく使われている。脳に障害のある患者の実験でこのことは明らかになっている。

 特に算数教育にお困りの先生たちにはこれからのバイブルになることは間違いない。計算機を使うのもひとつの方法であることが紹介されており、今まで悪いと信じられてきた方法にも見るべきところが十分あることを教えてくれる。ところで、日本語は数に関する言語が理にかなったものになっているので非常に計算に有利なのだということだ。日本人が割合算数が得意だったのは実は言語のおかげで、教育のおかげではないというのが残念ながら事実のようであり、教師はいままで胡坐をかいていたのではないかということを思い知らされもするだろう。
 哲学的にも興味深い示唆がある。コネクショニズム論者にとっては、脳の連係プレーという事実は朗報であろうが、機能主義的な説明以外に正当性がないという結論は、理解とは何かを説明する際に非常に大きな難問となる。サールの中国語の部屋のように、単なる機械作業だけが存在し、理解も何もないという状態なのか、それとも何か絶対的な要素が残るのかは、今後の神経学の成果を見守る以外にできることはない。ただし、機能主義以上の説明ができない状態なら、ゲシュタルト心理学的な説明は少なくとも有効だろう。

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