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本書はロシアや労働運動の記事をたくさん掲載しているTokcaさんのページで紹介されて
おりましたので、手にしてみることにしました。
まず、予備知識を少々。ワーキングプアとは、年収200万円未満の低賃金労働者のことで、
家族3人暮しだと、東京都で生活保護が受けられる限度額なのだそうです。現在日本には、約
550万人のワーキングプアがいるとされ、労働人口の4人に一人がこのような状態になって
いるそうです。漠然と格差社会といっていますが、もうこんなところまできているわけです。
でも、私たちはそういう現状はきちんと認識し切れていないのではないでしょうか。そういう
人々のための羅針盤とでも言うべき役割を果たすのが本書です。
手法としては公表されている各種資料(厚生労働省の白書など)を用いて、人口に占める比率
や年齢別の構成を纏め上げ、実感の部分はインタビューでカバーするというものでして、
フリーコノミクスの手法に近いといえるでしょう。文章は読みやすく、週刊誌の記事のような感じ
ですが、言っている内容はとても含蓄のあるものです。
私は統計資料にはある程度通じているので、資料についてはそれほど新しい発見はありませんが、
インタビューのほうは興味深く読みました。10人程度のかたがたが紹介されていますが、その多
くが文系の人だったことに驚きました。話しぶりなどを見ている限りは、決して悪い大学の出身者
ではなさそうなのですが、どこか生きる力というのでしょうか、そういったものが伝わってこない
気がしました。文系の学問をやることによってそうなったというわけではないのでしょうが、就職
の機会には恵まれていない印象があります。
世渡りに失敗したという挫折のために、どこか諦観といいますか、やる気を失ってしまって就職
にも悪影響が出ているというところなのだと思います。私は子供たちには理系のほうを薦める様に
しております。文系の学問は生活で用いる言語をベースにしている部分があって習得は割合楽です
が、理系は生活で用いることがあまりない概念を学ばなくてはならないわけでして、習得が非常に
難しいのです。年を取ってからは絶対にできないものです。教育心理学で有名なピアジェや経済学
のアーヴィング・フィッシャーなんかは、もともと物理学を学んでいた人々です。物理で挫折しても
文系の方で大きな成功を収められるという実例です。でも、文系から理系へ転向した人の話は寡聞
にして聞いたことがありません。
その点理系の人は就職の機会に恵まれていると思います。たとえば、紹介されている人の中には
システムエンジニアの人も含まれていましたが、高齢でなければそれなりに就職ができている人で
ありました。文系の人は就職の機会すらほとんどなく単純労働に従事せざるを得ないわけですが、
手に職を持っている理系はその点再起を図れる可能性が残されているようでした。
少しばかり筋道がそれました。もっとも大切な部分は統計が語る真実とうそないし乖離、実際に
苦しんでいる人々の現状について述べられているところです。ジニ係数がなぜ現実の感覚とずれる
のか、政府の格差がないという言葉がいかに欺瞞に満ちているか、経済学で用いられる難解な言葉
が現実の問題に対して用いられるとどのような姿になって現れるのか(摩擦的失業、効率性と公平性
のトレードオフの関係など)、ワーキングプアにいつでも陥る可能性など、皆さんが知りたいこと
が満載されていると思います。年末年始の一冊にどうでしょうか?
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書評ありがとうございます。この本のインタビュー部分は、あまりに身近な人が書いているので、私には出来ませんでした(^^;。TBします。
2006/12/17(日) 午後 11:05
はじめまして。TOCKAさんのお友達です。検索から来ました。ご紹介の本は小難しそうなので、ちょっと手に取るのに敬遠してしまいますが、TOCKAさんあたりがやさしく解説して記事にしてくれるといいなあ。ワーキングプアの原因について私の貧困な頭で考えた記事をTBさせていただきます。
2006/12/19(火) 午後 7:15
読んで見たくなりましたが統計資料が多いのですか。言われて見れば理系→文系で名を成した著名人は多いけど、逆コースはあまり聞きませんね。あの、一つ気になったのは「悪い」大学っていう表現、少し露骨すぎません? 何が「悪い」のか?
2006/12/20(水) 午前 0:21
Grumpyさん、こんばんは。統計資料は、著者が集めたものや独自に作成したものがところどころにちりばめられていますが、決して多いとは感じないと思います。また、悪い大学と表現しましたが、他意はないのですよ。就職率がよくないとか、学力が低いとか、その程度の意味にとっていただければと思います。ちょっと表現がよろしくなかったですね。(汗)
2006/12/20(水) 午前 0:36