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★航空史の参考書
吉村昭さんの歴史小説「虹の翼」があります.
京都新聞に1978(昭和53)年3月5日〜12月31日まで「茜色の雲」という題名で連載し,1980(昭和55)年
9月20日に文藝春秋社から単行本が刊行されている.文春文庫に「虹の翼」が収録されたのは1983年9月
である.
横浜の日の出町の古本屋で,文春文庫版「虹の翼」を150円で購入した(奥付によると,第二版が1991年
3月発行となっている).
この本は明治の日本で「飛行器」を考えて,模型実験をしていた二宮忠八の生涯を,飛行機ファンの
ひとりとして時代と環境に影響されてしまう人間の能力と運命をたんたんと記述したものです.第二次
大戦前には,大日本帝国の発明家として教科書に載るほど有名だった人物が,戦後の日本国の教科書や
航空史ではあまり重要視されないのは,軍隊内部の不手際を国威発揚に置き換えたことの反省なのだろ
うか?
つまりようやく地元の偉人として見直されて来たものの,客観的に業績から適切な評価をしているの
だとも考えられます.ある意味では,陸軍歩兵大尉として機械技術者だった日野熊蔵も取り上げている
のも,二宮忠八がもう少しあとの時代に生まれていたとしても,日本の軍隊という組織では下士官であ
る限り,才能やアイデアを適切に発展させることが可能なフレキシビリティは存在しなかったというこ
とであろう.
日野大尉の機械技術者としての能力を,官僚化した旧帝国陸軍では新しい技術の導入初期には有効に
利用したが,発展段階になると徳川工兵大尉の予備的な役割に留め,次第に正規の枠外に追いやってし
まうものである.
ようするに,二宮忠八という人は,初期の飛行機事故で亡くなった人を祀る航空神社を京都府綴喜郡八
幡町に建立した,飛行機の好きな薬業関係の経済人だったということになる.
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