金属製の多用途輸送機
外観はクラシックな複葉機(金属製)だが,日本で見かけるヘリコプターと比べる方向性がどうしてこんなに異なっているのか気づかせてくれる現代の輸送機として,東ヨーロッパや中国では現役の実用機である.ソ連時代に農業・森林担当大臣がどこでも使える多用途でかつSTOL(250m足らずの不整地滑走路で離着陸が可能)性能のすぐれた輸送機の開発をアントノフ設計局に発注し,試作機が初飛行したのは1947年8月31日である.
生産はポーランドと中国
すでにロシア本国の開発元アントノフ社キエフ工場では1960年に基本型の製造を5000機で打ち切り,ほそぼそと発展改良型(An-2m)を生産しているだけである.しかし中国では1957年よりAn-2の製造権を得て,1970年までにY-5ハービン輸送機として5000機を生産しており,フォンチュウ2はそれ以上の数量を生産している.ヨーロッパではポーランドのPZLムエルク工場で1960年に製造権を取得し,1961年10月23日より製造を初めており,すでに1万2000機を越えるており,現在も生産は継続されている.
このようにアントノフAn-2は,汎用輸送機のカラシニコフ銃に似た地位を得ている.操縦がやさしく,保守にもたいして手間が掛からないから東ヨーロッパや東アジアの開発途上国にも受け入れやすいものとなっている.日本のお役所が開発するような高価な高揚力装置を装備することなく,翼面積の広い複葉機とすることによってSTOL性能を実現している.
エンジンはもちろん空冷星形9気筒のピストン・エンジンで出力は1000馬力(シュベソフASh-62IR)を装備している.
ポーランドのムエルクにあるPZL工場では輸送機型のAn-2T,農業用のAn-2Rを標準として生産している.PZLムエルク工場ではAn-2Rの機体にも細かな改良を続けており,1961年まではTBOが900時間だったのが,1970年には1500時間に,1973年からは2000時間まで延長している.もちろんサービス寿命も1万5900時間となっている.現在では製造されたAn-2の9割はロシアに輸出されているが,1961年以来生産を続けているAn-2のうち5500機が農業向けとなっている.
○アントノフAn-2の主な仕様
上部翼長:18.18m,下部翼長:14.24m,翼面積:71.6m2
全高:6.1m×全長12.71m(尾輪下げ時12.4m),プロペラ直径:3.6m
貨物室扉サイズ:高さ1.55m×幅1.39m
自重:3450kg,最大離陸重量:5500kg
最高速度:253km/h(高度1500m),経済巡航速度:185km/h
失速速度:90km/h,上昇限度:4400m
○用途に応じて客室の内装は変更可能
An-2 :単発の多用途複葉機(基本形)
An-2P :12人乗りの旅客機形
An-2PK:5人乗りの重役室タイプ, An-2P-Photo:航空写真撮影
An-2R :1300kgの液体や粉末を積載可能な農業形
An-2S :ストレッチャ6基を積載可能な救急医療タイプ
An-2T :輸送機形(1500kgの貨物積載または乗客12人)
An-2TD: スカイダイビングや落下傘降下用, An-2TP:貨客兼用
An-2M :フロート付きの水上機
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