21世紀の現在でもECやオーストラリア,ニュージーランドでは観光客向けの遊覧飛行に使用している.日本では航空関連の博物館には,わざわざ高い費用を掛けて置物のレプリカを展示していることが多い.蒸気機関車や本田のヒストリックF1のように動態展示に出来ないのだろうか.技術革新が起きてしまいクラシック機械となったマシンを美術館にある芸術品の置物と同じように展示するのはただのノスタルジーで,あまり魅力がない.開館時や展示開始時以降は,マシンの珍しさをただ錆びるにまかせるのでは,ミュージアムには再び訪れる価値がない.
日本の複葉機を話題にしていると,モノクロ写真ばかりになってしまうので,ちょっと気分を変えて,現役の複葉機を紹介してみようか.英国のデ・ハビランド社製の練習機「タイガー・モス」である.試作機が飛んでから70年になるのだ.
デ・ハビランド社製DH82タイガー・モス練習機
原型のデ・ハビランドDH60モス練習機が1925年2月22日に初飛行して,民間機市場において評価が確立すると,英国空軍はDH60を軍用練習機として採用することを決めた.軍用型はDH60民間型に比べて構造を強化して,より重い装備重量で運用できるように改造された.これで胴体下に訓練用9kg爆弾4基の搭載が可能となった.しかし緊急時に脱出する際に前部操縦席周辺にある主翼支柱が邪魔なために,1931年に提示された仕様書T15/31にもとづいて設計された新しい練習機は,それらを改修し1931年10月26日に初飛行した.軍用練習機(全幅8.94m×全長7.29m,翼面積22.20m2,最大重量828kg,巡航速度145km/h,航続距離450km:デハビランド社製ジプシー・メジャーI水冷倒立直列6気筒120馬力)の愛称はタイガー・モスとされ,型式番号もDH82に変更した.
英国空軍の拡張計画によって支援されていた初等飛行学校などに多数が導入された.英国のほかに,ノルウェー,スウェーデン,ポルトガルの航空機メーカーと英連邦やカナダのデハビランド・カナダ社でもライセンス生産が行なわれた. 第2次大戦が始まると英国内で使用されていた民間型も英国空軍の通信用や訓練用に徴用された.
生産機数が多いので戦争が終結すると,余剰機としてベルギー,フランス,オランダ軍に譲渡されたが,多数が民間機市場にも流れ,練習機や曲技飛行用機,農業用機などにも使用された.現在でも飛行可能な状態に整備保守されて生産当時のオリジナル状態に近いダイガー・モスが多数各国の航空博物館にある.
生産機数は英国で8101機,カナダとオーストラリア,ニュージーランドで2751機.
日本は1926年に,石川島造船所の飛行機部がDH60モス(シラスI空冷直列4気筒60馬力エンジン)を1機購入し,立川飛行場で陸軍が評価している.
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