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浅い眠りから起こされたのは、蝉の鳴き声。
まだ6時前か・・・。
眠いし、暑い!!
それにしてもやかまし過ぎる〜〜。
初めて降りる駅だが、パンフレットには駅から徒歩14分と書いてあった。
微妙な距離だが、この炎天下でうろうろと迷いたくない。
地図を確認しながら歩き始めるが、間もなく開けた淋しい場所になる。
うーーーん・・・。
この道で間違いないと思うのだが、最初のところで間違うと、とんでもないところに行ってしまったりする。
地図を睨みながらゆっくり歩いていると・・、
!!一瞬激しい衝撃が!?
サンバイザーが後ろに吹っ飛び、左ひざを激しく打ち付けていた。
信じられないことだが、立ち木にぶつかってしまったのだ。
何で〜〜?
サンバイザーのおかげでか額や顔は打たなかったが、慌てて周りを見回して拾いに走った。
左膝が痛い!
幸いにも、周りには誰も居なかったが、この道で間違いないのか聞ける人もいない。
左手の親ゆびも擦りむいていた。
何で〜〜??
気を取り直して歩き始める。
約束の時間には余裕を持って出てきたが、とにかく足を引きずりつつ進んだ。
しばらくすると右手に大きな池が見え始めてきた。
良かった〜〜。
この池をぐるっと回り込んだら目的地に着くはず。
池の周りはこんもりとした森になっていて、一斉に蝉の鳴き声が高まった。
容赦なく照りつける日差しに、汗が流れ続けている。
他の音が何も聞こえなくなるような・・蝉時雨・・・。
ようやく目指す建物が見えてきた。
入り口前の日陰に入って、息を整えて汗を拭く。
約束の時間の10分前。自動ドアが開くと、広いエントランスには涼しい空気が漂っていた。
主治医の勧めで、ケアマネを通して、この施設に父のデイケアの申し込みに来たのだ。
相談員さんとの面談は実に丁寧で、父の過去の話から今の状態までを細々と聞かれた。
余計なことを喋りすぎて時間を取っては悪いかなと思っていたのだが、
そんな心配は全く無く、たっぷりと時間をかけて話を聞き、メモをされていた。
介護認定の調査員の人とは大違いだな・・。
申込書を書き、主治医の診断書の用紙をもらい、施設内を案内して下さった。
大きな窓は池と森に面していて、葉っぱを通した光が一杯に降り注いでいる。
女性は入浴中とのことで、何人かの男性が思い思いのことをされていた。
「お父さんが、うまく馴染んで下さるといいですね・・。」
相談員さんに見送られて施設を後にする。
出るときには、背伸びをして押さないと、ドアは開かなかったが・・。
なるほど〜〜。
陽射しはさらに強まっているように思えたし、左膝は痛かったが・・戻る足取りは軽かった。
またたっぷりと汗をかいて駅に戻り、一番端の券売機の前に立ったとき、
その前に無造作に回数カードが置かれているのに気付いた。
どうせ、使い切ったカードが捨ててあるんだろうと思ったのだが、なぜかピンクの「付箋」がはりつけられていて・・。
ん??
後ろには誰も並んでいないので、じっくり見ると・・・。
「今日で期限切れです。どなたか、どうぞ使って下さい」
たしかに後1回残っていた。
こんなことは初めてだけれど、嬉しい〜〜!
付箋を財布に仕舞って、カードを使わせてもらった。
木にぶつかったなんて、忌々しい?恥ずかしい?出来事も帳消しになるような気がした。
冷房のよく効いた○○高速から地下鉄に乗り換えると、今年の地下鉄はやたら暑い!
いつもなら気持ちよく居眠るのだが、扇子を手放せなくなる。
地下鉄からまた地上へ。
膝の曲げ伸ばしが辛いので、エレベーターを使った。
外はまるでサウナ状態だった。
ひしめき合う人たちは、みんなお風呂上りのように顔を上気させて、ぐったりと疲れを滲ませている。
その中をすり抜けるようにして、私鉄の乗り場へと急ぐ。
本屋に立ち寄る気にもなれず、とにかく早く帰りたかった。
ホームで電車が到着するのを待っていると、私のすぐ後ろに少女が立った。
生成りの柔らかい色合いのワンピースにサンダル。
お化粧っ気は全く無く、とても可愛い子で、10代後半くらいに見えた。
なにやらぶつぶつと声が聞こえる。か細く高い声。
彼女の口はずっと動いているが、何を話しているのかはわからない。
前に立っている男性が振り返る。
横に居る女の人もチラチラ見ている。
でも、彼女は一点を見つめたまま、何かをつぶやき続けていた。
電車が到着して車内は一旦空になり、再びドアが開く。
私は一番隅っこの、横向きシートの2人席に腰掛けた。
すると、彼女がすっと近づいてきて、私の隣に座った!
彼女は、途切れることなく意味不明な言葉をつぶやき続けている。
腕が触れ合うような隣に座っているのに、何も聞き取れない。
本を出して開いたものの何も集中できず、私は彼女のつぶやきだけに集中してしまっていた。
電車内の機械音って、こんなにずーっと喧しかったっけ?
彼女は、携帯を開いたり閉めたりを繰り返していた。
時々窓の方に顔を上げるが、つぶやきは止まらない。
日本語じゃないのかな・・。
でも・・韓国語じゃないし・・・。
中国語?
あの独特な発音とは違うな〜〜。
わすかに1度だけ、「違うのよ」と言ったような気がしたが、あとは何も聞き取れなかった。
しばらく時間が流れ、ある駅に着いたときに蝉が一匹転がり込んできた。
ドアのそばに仰向けに転がったまま、ときどきジーーと小さな音を出す。
こんなところに転がり込んできて、こんなところで最期を迎えるの?
私の意識は横の少女から蝉に移っていた。
次の駅に着いたときに外に出してやったとしても、もう元気にはならないだろうが・・・・。
ふと気付くと、少女のつぶやきが止まっていた。
彼女もじーっと蝉を見ている。
・・・・・・・・。
次の駅に着いたとき、少女はすっと立ってドアに近づき、
蝉を静かにサンダルでホームに出して、そのまま降りて行ってしまった。
ホームを歩く彼女の顔は明るかったが、やはり何かをつぶやき続けているように見えた。
猛暑の一日。
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まあ、やはり 小説のように、スラスラと読ませて頂きました。素晴らしい筆力。
幾つもの出来事がスラスラと映画でも見るように、、。
そういえば、☆も勤務でチャリで走っていたり、電車に乗っていたりしたとき、たま〜に、そういう人がいて、ビックリしたことがあります。で、あ、ここにも変な人が!と思っていたら、その人は携帯電話を持って大声で話していました。出始めの頃の話、、、今は、携帯さえ持っていれば、ある意味、独り言?を言っても 変な人、と思われない時代かもしれないですね。意志を通い合わせることが苦手になっている時代なんでしょうか。しょうもないテレビの意味不明のしゃべくり番組だとて、大してコミュニケーションになってないかもしれないですけれど。 ☆
2011/8/26(金) 午後 4:31
☆子さん、コメントありがとうございます・・。
お盆に入った、暑い暑い一日の出来事でした。
平凡な一日でも、いろんなことが起きるものです。
たしかに携帯が出始めの頃は、みんな無駄に大きな声で喋られてましたし?変な人かと思ってギョッとしたり、自分が呼ばれたかと思って振り返ったりすることも多かったですね。
最近はそういうことも無くなりましたが・・。
慣れって恐ろしい・・。
携帯メールのやり取りなどはとても饒舌なようで・・意志を通い合わせるのは苦手というのは、わかります。
会話でちゃんとコミュニケーションができないというのも・・。
なかなか難しいものですね・・。
2011/8/26(金) 午後 11:12
****さん、本当にお久しぶりです〜〜!
昨夜はちょうど入れ違いになったようですね・・。
寝る前にふとのぞいて見て、私が驚いてコメントさせていただいていた頃に、こちらに来て下さっていたんですね。
こちらこそ、よろしくお願いします〜〜。
2011/9/7(水) 午後 11:12
先週電車の中で不思議な光景を目にしました。
少し遠い位置だったのですが。。。
多分男性だと思いますが、服装は薄い紫色のズボンで、上着をきていました。髪はストレートで背中まで伸ばしていて、顔は大きなメガネをしていました。膝の上に大き目のバックを乗せていて、時々見ていたのですが、ふと気が付くともう降りたようでした。いったいあの人は。。。と言った感じでした。
2011/9/10(土) 午前 3:53
ビーナスさん、コメントありがとうございます〜。
車での移動が多くて、電車に乗られることは少ないかもしれませんが、びっくりされたんですね・・・。
ん・・・、全然セーフな人だと思います。
紫のズボンで、長髪で、きっと変な上着で、大きなメガネで〜。
全然普通です。
大阪では、もっともっと「えーーーーっ!!」という人に遭遇しますから。
2011/9/11(日) 午前 1:19
きれいな夕陽ですね〜。
一日が終わるって感じです。今年の夏は暑かったですね。
まだ残暑が残っているようですけど、穏やかに秋を迎えたいものです。
お父様、デイケアは慣れたでしょうか?
母は結構楽しみにしています。気分転換にも良いようですよ。
2011/9/11(日) 午後 3:49
あららセーフですか?
確かに都内だともっと過激な感じの服装を見たりしますが、
それでも声を出して唖然とするような服装は見たことがありません。
これって幸運なことなのかな?
2011/9/13(火) 午前 7:02
loveさん、コメントありがとうございます〜〜。
これは実家の駅で写した夕陽ですが、いつも夕焼けが綺麗なんです。
(実家は大阪の南の端の高台にあります)
「暑かった」と過去形にはできないくらい、連日の残暑が厳しいです。きっと穏やかにではなく、いきなり気温が下がって慌てることになりそうです。
父は、初回は入浴も断り、早く帰りたいと言ったようですが・・二度目で入浴もリハビリも受けて「とても良いところだった」と言ってくれました。
花マルを付けてあげたいです。
2011/9/14(水) 午前 0:01
ビーナスさん、コメントありがとうございます。
そうですね・・。
実際にこの目で見ていませんからはっきりとは言えないんですが・・。
2タイプありますよね。
ものすごく派手で、ドヒャーっと目を奪われてしまう。
すっごいな〜〜と見とれてしまう。
そういう人は楽しませて下さるからいいんですけど。
地味に怪しい人もおられます。
首から上は完全に男性。
髪も短く、男っぽいイケメン。髭は綺麗に剃ってありますが・・。
でも服装は、ライトグレーのタイトスカートのスーツをきりっと着こなして、ハイヒールなんです。
オネエ系の方を見かけることがありますが、それとも全く違う。
今までで一番驚いた「人」でした。
でももう一度会ってみたいひとでもあります。
2011/9/14(水) 午前 0:15
あら凄い人をご存知(お会いしている)なのですね。
服装の派手(自己主張)なのはどこにでもいる可能性がありますが
首から上は、男性で服装は女性とは、失礼かもしれませんが、見ているだけでも、楽しいかもね。
大阪に行けば会えるかな?でも周りがそんな人がたくさんいたら、逆に怖くなるかもね。
2011/9/14(水) 午前 1:51
8月13日に書かれていたのですね。
ちょうど信州に連泊してころだと思います。
見落としていました。ごめんなさい。
今頃になって痛みはどうですかも変ですけど、
もう大丈夫でしょうか。
お父さまのことが気がかりです。
高齢の母がいますので、わがことのように思います。
takaoさんから声かけが大事なのかな。
不思議な女性との出会いの場面は、映画「阪急電車」と、なぜか被りました。
2011/9/22(木) 午後 11:20
アニーさん、コメントありがとうございます〜〜。
こんなに前の記事に気付いて、コメントを下さるなんて・・。
月に一つしか記事を書かないという、何とも怠慢な状況になっていますが、当分はこれでいいかな〜と。(妥協が早過ぎ!)
膝は全然問題なく、木にぶち当たったという精神的なショックの方が尾を引いたくらいです。
父は、何とか明日でデイケア4回目です。
明日は夜の8時までには実家に帰って、デイの話を聞こうと思うのですが・・。思い出してくれるのはポツポツです。
「何をしてたかなぁ〜〜。わしは何をしてたかなぁ〜〜。」
そう言いながら、至福の居眠りをするでしょう。
不思議な少女。
そうですね・・。阪急電車ではいろんな人に出会いますよ〜。
どの電車通勤でも同じかと思いますが。
1年前からは大阪の地下鉄や南海電車、南海泉北高速電車にも日常的に乗っています。
それぞれに違いますね・・・。
2011/9/23(金) 午前 0:22
私は歳のせいで膝が痛いです。
情けないです。
takaoさんは、大丈夫と聞いて安心しました。
お父さまのデイケアが、いい方向に向かって欲しいです。
少しでも思い出してくれればいいのでは?
日常的に自動車通勤が多いので、電車通勤は混雑もあって大変でしょうけど、不思議な出会いや、心温まる出会いもありそうですね。
まずは、阪急電車に乗ってみたいです。
2011/9/25(日) 午後 9:17
アニーさん、コメントありがとうございます。
膝が痛いというのは気になります。
関節や軟骨を保護する筋肉に負担がかかっているのかと・・。
急に山道を歩いたりすると、負担がかかりますよね。
階段を下りるときなどにずっと痛みが残るようでしたら、放っておかないで下さいね。
父にとって、デイケアでの刺激は期待していた以上のものかもしれません。びっくりするくらい『覚醒』してくれることがありますから。
電車の中って、本当に面白いです。
本当は、それだけをテーマにしてもブログが書けるくらいに・・。
たくさんメモってはいるのですが、ブログの方はサボっています。
2011/9/25(日) 午後 10:44
こんにちわ。お久しぶりでした。私も父親のことでこの一年位、介護認定とかデイサービス利用のための施設訪問など経験してきました。
さらに、今度はさらに一歩進んで、特養とか老介施設入所についてだとか、ケアマネとの話し合いだとか、色々あります。さすがに、ここまで来ると、これでいいのかと言う言葉が頭の中を巡ります。
息子としてこんな扱いしかできないことが申し訳なく思います。
でも、自宅で自分でみてやることが困難だということも、すでに、
自分の中ではわかっています。父親の人生と自分の人生を重ね合わせて、どう過ごしていくべきか、重たい命題です。
takaoさんも無理されないように。
夏の疲れが出て自分の体調崩されませんように。
2011/9/26(月) 午後 10:32 [ hokutosei_N43 ]
hokutoseiさん、コメントありがとうございます・・・。
こちらも台風15号が去ったあとに、ようやく秋になりました・・。
お父さまのことで、いろいろと奔走なさったのですね。
こちらも同じです。
高齢になると、どうしてこんなにいろんな難しい書類が届くんだろう・・というほど、来ますよね。老人だけではとても処理できないような・・。そして、自分で動かねばサービスは受けられない。
介護保険は、自宅で看ろ!という制度ですから。
自宅で看るのがどうしても厳しい場合には、また奔走しないといけません。
重い命題ではありますが、本当は、安心してお任せできる費用のかからない施設が増えることが望ましいはずなんです。
申し訳なく思う必要などないんです。
そう思ってしまうということが問題なんです・・。
夏バテはこれから出てくるのかもしれません。
hokutoseiさんも無理をなさいませんように・・。
2011/9/27(火) 午前 0:33
takaoさん
ほんとうにめんどうな書類が多いですね。
「安心してお任せできる費用のかからない施設」それの増設が急務ですね。先日、老健施設の見学をしてきましたが、自分もいつかはそこに行くのかと思うと、考えさせられました。入れるだけでも幸せだとも聞きました。そうなんですが…
色々考えさせられましたが、ふと気が付くと、
今の一日一日が大切なんだ、自分の可能性をもっと追い求めていくべきだと思いました。って、当たり前すぎる話なんですが。
これから紅葉の季節、それを思いっきり堪能することが大切ですね。
2011/10/2(日) 午後 10:31 [ hokutosei_N43 ]
hokutoseiさん、コメントありがとうございます〜〜。
老健施設は、費用の面でもケアーの面でもかなりいい方だと思いますが、待機人数は100人を越えているところが多いです。
特養はもっと入所できません。
(義母は壬生の特養で大事にされているようですが・・入所できたのは本当にラッキーでした)
大金を積めば入れる施設はいくらでもあるようですが・・庶民には手が届きませんし、経営難で倒産して入居時のお金も返してもらえないというトラブルも聞きます。
本当に厳しいですね〜〜。
将来自分がどうなるのかはわかりませんが、自分の今日一日を大事に過ごしていきたいです。
2011/10/2(日) 午後 11:02
季節も変わりましたね
ご無沙汰しています
先日お父様のお話がありましたが
お父様もディケアにいかれるようになったのですね
もうすぐ2年になる夫は
デイではおとなしくてなんの問題もない人なのですが
あのとおり家では相変わらず大声で怒鳴る事が・・
そんなときでも気にしないようにと家族みんなに声をかけて
ひたすら・・・・我慢我慢〜です
ただ家に入ってくれた娘たちには申し訳なくて・・・
でもやっぱりみんながいてくれるからいろんなことに乗り越えられているのだと思います。
takaさんもいろいろと大変かと思いますが頑張ってくださいね
また伺いま〜す
takaさんもネ♪〜
よろしくおねがいしま〜す
2011/10/5(水) 午後 11:27
G・Lさん、コメントありがとうございます〜〜。
こちらこそ、記事も全然更新していませんし、ご無沙汰ばかりしています。
父は心臓が悪いということもあって、かかりつけ医からデイに行くOKが出なかったんですけど、認知症が進んできたので行かせた方がいと・・。(それならもう少し早く行かせれば良かったのに・・)
ご主人は、外では何の問題も無いんですか・・。
そして、デイに行かれるのもお嫌じゃない。
ひたすら「我慢我慢」というのも大変だと思いますが、お嬢さんたちはちゃんとわかっておられると思いますので・・・大丈夫だと思います。夫婦が二人きりで向き合っていると、逃げ道がないでしょうが・・。
病気と理解して受け止めるのは、なかなか難しいことですね。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします・・。
2011/10/7(金) 午前 1:16