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夜も更けて、チラチラと雪の舞う中、家路を急ぐというよりトボトボと歩いていると・・・、
なぜか浮かんでくる歌。
友人に送ってもらった「60年代、70年代フォーク」のCDの中の一曲。
「今日の仕事はつらかった・・・ あとは焼酎をあおるだけ・・・
どうせ・・どうせ山谷のドヤ住まい・・・ほかにやることありゃしねぇ・・・。」
焼酎もあおらないし、それほど働いてもいないけれど、疲れているとこの単調で切ない歌が浮かんでくる。
昼間に自転車を漕いでいるときに雪がチラついてくると、決まってあの歌。
「絶え間なくふりそそぐ この雪のように 君を愛せばよかった・・・。」
ちょうど私が泊まっていた、1月末の夜のこと。
(あれからもう1か月!?)
両親が一旦眠りについてからも、何度も起きてきたり、隣室でパソコンをいじっている私のところに
話をしにやってくるのは父だ。
1年半ほど前の入院から、昼夜の逆転とともに父の認知症が始まった。
昼間の父は座椅子で居眠っていることが多いが、夜の父は以前とあまり変わらない。
しっかりとした口調で、ぽつりぽつりと私のことを聞いてくる。
そんな父もようやく寝てくれたのは11時半を回っていた。
お風呂にでも入ろうかな〜と思っていたら、母が小さな声で呼んでいる。
そういえば、あの夜は母も何度かトイレに起きていた。
「何?」
「夕方からおしっこが出にくいんやわ、おなかもすごく痛くなってきたし・・。」
「えーっ」。
何でもっと早く言わへんかったん、と思いつつ、母のおなかの痛みはかなり激しい様子。
なんといっても尿が出ないというのが怖い。
うーーん、どうしたもんだろう・・。
母はベッドの上で丸まったまま。
今ならまだ起きているはずだと、姉に電話することに。
「どうやろう、やっぱり救急車を呼んだ方がいいかなぁ・・。」
「お母さんはどう言ってるん?」
「病院に行きたいみたい。」
「この時間では、タクシーを呼んでもどこの病院に行けばいいのかもわかれへんしね。」
「お父さんも連れては行けへんしね。」
救急車を呼ぶことに決め、病院には姉に駆けつけてもらうことにして119を回した。
「救急車を呼んだからね。」
とりあえず保険証、それから・・靴か。 あとは・・上に羽織るもの。
サイレンの音が遠くに聞こえてきたので外に出ようとしたとき、父が起きてきた姿が見えた。
寒さの中震えながら待っていると、グルッと大回りに一度遠ざかり、
えっ?うちじゃないんかなぁ・・と思わせるほど、到着までが長く感じた。
救急隊員の人と一緒に2階に上がってドアノブを回すと・・・、
ん? 締まってる?!
うそっ! んなバカなぁ〜〜!!
外からドンドンとドアを叩きながら、声を殺して呼ぶ。
「お父さーん、開けて〜〜!」
こんな真夜中に大きな声を出すのは憚られるが、そうも言っていられない。
「おとうさーん!! 戸を開けて〜〜!!」
戸惑う救急隊の人たち。
「すみません、父が締めてしまったんだと思います。」
「お父さーーん!!」
ポケットの携帯に気付き、電話しようと取り出したとき、カチャリとドアの鍵が開いた。
はぁ・・・・。
3人の救急隊員が母のベッドに近づき、様子を聞いている。
私も母の訴えを補う。
父は、何が起きたのかという顔をして座椅子に座っていた。
父は認知症気味なので一人にはしておけず、病院が決まれば姉が駆けつけてくれますと、
姉の電話番号を手渡した。
「ちょっと・・今お姉さんに電話してくれますか。」
姉と直接話してもらい、搬送する準備。
「お母さんどうかしたんか?」
「うん、おなかが痛くて我慢できひんようなんで、救急車で運んでもらうし・・。」
「そうか、おなかが痛いんか・・。 保険証は引き出しやで・・。」
「大丈夫、渡してある。」
担架にコートをかけて、母は運ばれていった。
「お母さんはどこの病院に行ったんや?」
「それはまだわからへん。決まったら電話くれはるから大丈夫。」
「そうか・・。」
「お父さんはもう寝て。 大丈夫やから・・。」
とにかく父には寝てもらおう・・。
数分後、搬送される病院名の電話があり、姉からはタクシーの中から電話があった。
「お父さんは大丈夫?」
「うん、寝てるみたい。」
結局、母は虫垂炎で即手術。
腹腔鏡を入れてみたら一部が破れていたとかで、縦に大き目に切る手術になったようだ。
朝まで待っていたら大へんなことになっていたとのことで、救急車を呼んで良かったんだと・・。
ちょっとホッとした。
手術が無事終わったとのメールが4時に入り、少しだけ横になって眠った。
翌朝は、とにかくメールや電話で予定の変更を。
たまたまこの週は、仕事は休めるというありがたいタイミング!
朝食の用意をしていたら、父が起き出してきて・・・「お母さんは?」
「お母さんは夕べ救急車で○○病院に運んでもらったよ。市立○○病院。」
「ああ・・・そうやったかいな・・。」
「虫垂炎やて。 手術したし大丈夫やから・・。」
「そうか・・。」
朝食を終えてトイレに立った父は、母のベッドを覗き込んで、
「お母さんはどこへ行ったんやて?」
「虫垂炎で○○病院。手術も無事に終わってるよ。」
「そうか・・。」
同じ会話を何度繰り返したことか・・・。
父の記憶は何分もつんだろう。
言ってはいけないと思いつつ、「さっき言ったよねぇ・・。」
父は苦笑しながら「そうやったなぁ・・。聞いたなぁ・・。」
「○○病院で虫垂炎の手術をしたんよ。」
「そうやった。」
父は紙とペンを取り出して書く。
「××子 虫垂炎の手術 ○○病院」
相変わらず、なかなかいい字。
父はその紙を机の上の塩ビ板の下に挟む。
ケアマネに母のことを伝え、父のショートステイをお願いしてみる。
週に1回デイケアに行き始めて半年、ようやく慣れてきたころだが、まだ泊まったことはない。
「事情を話してお願いしてみます。」とのこと。
その後も「お母さんはどこに行ったんやったかいなぁ。」は何度も続いたが、
私が机の端を指さすと、「ああそうやった・・・。」
「病院に行かんでもいいんか?」
「まだいいと思う。もう少ししたら一緒に行こうか・・。」
父と二人きりで過ごした丸2日半。
父の記憶の状況がつかめてきた。
3日目、父の入浴を手伝い、ショートステイの荷物を持って施設に送る。
そのあとやっと母が入院する病院に行くことができた。
久しぶりに自宅に戻る夜はさすがに疲れていた。
駅を出ると・・雪が舞っている。
いつもの歌だけれど、最後の部分が浮かんできた。
「この長い冬が終わるまでに 何かを見つけて生きよう
何かを信じて生きていこう この冬が終わるまで〜・・・」
おなかがグーっと鳴った。
雪を舐め舐め、口ずさみながら歩いた。
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🎎お雛祭りです、
お父様大丈夫
お母様は今病院で一安心
私もお姑さんの徘徊認知症を体験しました、
年取るとは寂しいね、色々と考えます、
またね。
2012/3/3(土) 午前 11:45
今回の記事、何度も読み返しました。情景が目に浮かびます。
背負い込んだ疲労感と冷たい雪の感触がリアルに伝わってきました。
お母上、間に合って本当に良かったですね。症状からなかなか、判断がくだせないご苦労も、よくわかります。お父上の症状も、判ってはいるんですが、どこか一時的なものと思うことありませんか?
私は自分の父にはそう感じてしまいます。でも、話のつじつまが合わなかったり、同じことを何回も言うと現実を認めさせられます。
常時、臨戦態勢では、takaoさんの身がもちません。どうぞ、なるようになれ方式で、お過ごしください。私はそうしようと思っています。
2012/3/4(日) 午前 0:16 [ hokutosei_N43 ]
mappuさん、コメントありがとうございます〜。
お雛祭り、実家で久しぶりにちらし寿司を作りましたよ〜。時間が無くて手抜きちらしでしたが。
母も3週間かかりましたが退院できました。
年を取るということは、たしかにいろんなことが衰えていくわけですから・・寂しいかもしれませんが、それなりに穏やかに暮らしていけたらいいんでしょうね。
少しでもそのサポートが出来たらと思います。
2012/3/4(日) 午前 9:24
hokutoseiさん、コメントありがとうございます・・。
私と同様、母も体調不良に関しては鈍いようです。
危なかったなぁ〜とあらためて思いました。
父は一時的なものではありません。
物静かな人なので、母でさえ気づかなかったのですが、2年以上前から始まっていたようです。
ただ、認知障害より記憶障害の方が強い。
ものがわからなくなってしまうのとは違うようです。
うまく付き合いながら、機嫌良く過ごしてくれたらなと・・。
ご心配下さってありがとうございます。
私の座右の銘は「なんとかなる」ですので・・大丈夫ですよ〜^^。
2012/3/4(日) 午前 10:00
お母様の突然のその時、takaoさんがいらっしゃって本当に良かった・・・。
私がtakaoさんと同じ状況なら右往左往してしまって何も出来ないと思います。
色々考えとかないと、ですね。
やはり親は自分よりも老いていて、人間は必ず老いていくものですもんね。
2012/3/4(日) 午後 9:52
ウロコさん、コメントありがとうございます〜〜。
ウロコさんは、絶対右往左往なんてしないと思います。
「救急車を呼ぶ!」と、即決断されると思います。
もし私か姉が泊まっていなければ、母から体調不良の電話があるでしょう。そうしたら「遠慮せずにすぐ救急車を呼べ!」と言うだけですね・・。遠慮しないで。
あとは「緊急通報装置」というのも付けてもらいました。
ポンと押せば、救急車が到着するというものです。
端末もありますので、枕元に置くこともできます。
大丈夫ですよ〜〜・・。
2012/3/4(日) 午後 11:17
ふと浮かぶ歌や何気に口ずさんでいる歌があったりましすよね。
「山谷ブルース」は知りませんでしたが、「サボテンの花」は私も口ずさむ時あります^^
自分の両親は、まだ元気なんですが、いろいろと考えておかないといけないと思ってはいますが、何も出来ていません。
とは、言いつつも
「なんくるないさ〜〜〜〜」何故か沖縄の方言(^^ゞ
2012/3/5(月) 午前 0:28
らいむさん、コメントありがとうございます〜。
なぜだかわからないのですが、ふと浮かんできたり、口ずさむ歌はありますね・・。
あるとき浮かんできたら、しばらく同じ歌が続きます。
「サボテンの花」は、「ひとつ屋根の下」の頃からずーっとですけど。(元々は、もっと以前に流行った歌だったんですね・・)
「なんくるないさ〜〜」。
そうですね、それですね・・。
心底「なんくるないさ〜〜」。
2012/3/5(月) 午後 11:57
おはようございます。
本屋さんで立ち読みしてください。
買うほどのものではありません。
図書館にもあるかもしれないです。
私の気持ち、わかってくれたら本当に嬉しいです。
少しでも共感してもらえたらとても嬉しいです。
2012/3/8(木) 午前 4:52 [ キアラ ]
虫垂炎の痛みを我慢されていらっしゃったのですか〜。我慢強いですね〜。でも手遅れにならなくて良かったですね!
安心しました。
お父様はtakaoさまと一緒にいるだけでも、落ち着いていらっしゃることができていそうですね。親のお世話というのもいろいろ大変ですけど、社会のシステムをうまくつないで、少しでも親が心地よいようにしてあげたいものです。
私も季節の歌のようなものがあります。
2012/3/8(木) 午後 10:34
キアラさん、コメントありがとうございます〜。
まだ本屋にも図書館にも寄れていないのですが・・。
本屋で立ち読みはちょっと・・。
(立ち読みで、本の上に涙を落としてしまってはマズイでしょう・・)
図書館に行ってみますね。
でも、私はキアラさんのような繊細な感性は持ち合わせていないかと・・。救いの無さを感じると、怒りになってしまうかもしれません。
2012/3/8(木) 午後 10:35
loveさん、コメントありがとうございます〜〜。
どうやら私が痛みに鈍いのは、母ゆずりのようでして・・それほど痛がってはいなかったんですよ。(時々痛みが走るという感じで)
夕方から尿が出ていないということを聞かなかったら、救急車は呼ばなかったと思います。
鈍いというのも危ないもんですね・・。
母は少しずつ体調も戻ってきました。
父は変わらずですが、介護保険も使いながら、機嫌良く過ごしてくれたらと思います。
父と話す時間を大事にしたいですね・・。
2012/3/8(木) 午後 11:13
何時もながら、流れるような筆致、、小説の世界のような一気に読ませる文章、まずそこに感服です。お父様、お母様のご様子、目に浮かぶようでした。お母様、盲腸炎が破れて、、腹膜炎直前だったのですね。お姉さまとの連係プレー、、お父様のお世話、ご姉妹がおられて良かったなあって思いました。無事、ご退院、本当に良かったですね。最後の雪を舐め舐め、、、映像を見るような文章、、素晴らしい文章ですね。☆ お見舞いのポチを。
2012/3/13(火) 午後 10:06
☆子さん、コメントありがとうございます〜〜。
月に1つしか記事を更新しないという情けない状態がずっと続いていましたが、それすら危うくなって一気に書きましたので・・。
こんな風に書いて下さるなんて・・・恥ずかしい限りです。
結構長く管が入っていましたが、おかげさまで3週間で退院できました。
父の認知症が進んでからは、姉と協力してサポートできる心強さを感じています。(弟は遠方に居て役に立ちませんし)娘が一人だったら、負担に感じてしまうというか、厳しいでしょうね。
今、両親が仲良く風邪を引いてしまって、まだ実家に通う日々です。
頼りにされていることに慣れないといけませんね。
2012/3/13(火) 午後 11:31
流石takaoさんだな〜と感心して読みました。
緊急事態にちゃんと対応出来る所は素晴らしいです!
そしてお姉さんとの連携の良さ。
実際に介護をしている人達から見たら、羨ましく見えるでしょうね。
お母さん、快方に向かわれて本当に良かったです。
お疲れさまでした。
「今日の〜、仕事も辛かった〜」って歌いたくなるほど、そうとうお疲れですね。
適当に手を抜いて、やって下さいね。
2012/3/17(土) 午後 9:34 [ tat*ug3 ]
tatsuさん、コメントありがとうございます〜!
適当に手を抜いて。
そうですね、そうしたいところなんですが・・・。
そろそろ続編を書かねばなりません。
相当にお疲れというか、うーーんです。
今年はこういう年になるのかなぁ。
まだ始まって3月半ですけど。
歌う歌は変えないといけませんね。
2012/3/19(月) 午後 1:34
こんばんわ
そちらわ、そろそろ桜の季節でしょうか?
3月はなにかと気ぜわしく、時間をとられます。
半月、あっという間に過ぎてしまいました。
桜が咲いたらゆっくりと観てみたいですね。
2012/3/23(金) 午後 10:28 [ hokutosei_N43 ]
hokutoseiさん、コメントありがとうございます〜〜。
いえいえ、桜はまだですよ・・。
大幅に遅れた梅が見ごろのようです。
そうですね・・年度末はそれでなくても気忙しいのですが、なんだか今年は格別に濃いです。
桜は4月に入ってからになると思いますので、新年度にゆっくりと眺めたいと思います。
そちらは・・・まだ雪の日もあるんでしょうね・・・。
2012/3/23(金) 午後 11:02
こんばんわ。まだ、雪降っていますよ。夕方になるとブラックアイスバーンになって、道が歩けません。アイゼンが必要です。
梅でしたか、暖かそうな感じが伝わってきます。春ですね。
2012/3/26(月) 午前 0:01 [ hokutosei_N43 ]
hokutoseiさん、やっぱりまだアイスバーンに!
そうでしょうね・・。
平地でもアイゼンを履かれますか・・。
こちらでも今夜は寒いです。厚手のコートにマフラー、手袋をして出かけました。
コートが邪魔になる日もあり、気温差が激しいです。
花粉に春を感じている日々です。
桜は・・・入学式の頃でしょうか。
2012/3/26(月) 午前 0:49