誰かのために時間を割くということ

2006年の病気入院をきっかけに始めたブログです。今日を大切に、ゆっくりしたペースで綴っていきます。

ボランティア活動

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 ちょっとした家事援助のボランティア。
 高齢の方の場合は、介護保険のサービスだけでは到底足りない人は多いし、
 介護保険ではやってもらえない内容の依頼が多い。
 お手伝いを継続して、信頼関係を築けるようなケースが望ましいのだが・・。
 
 最近は単発(1回きり)の依頼も増えてきた。
 ベランダや家の外回りの掃除、庭の草引き、敷物の取り換えなどは介護保険は使えない。
 でもそういう依頼は、できれば他のサービスを利用してもらうように紹介してきた。
 いろんな民間のサービスがあって、有料だがそれほど高くはない。
 
 「年末やけど、どう?」
 窓拭きとサッシの掃除らしいが、正直「うーーーん・・。」
 前回は民間のサービスに頼んだのだが、気に入らなかったとのこと。
 地域包括支援センターに、うちの活動を紹介してもらったとか。
 「そうなんや・・・。」
 
 ちょっと抵抗はあったのだが、まあいいかと引き受けた。
 コーディネーターは、「とにかくよく喋るひとやから・・・よろしく。」
 「???」
 
 マンションの9階。80歳過ぎのその女性は、本当によく喋る人だった。
 掃除に取り掛かるまでの話が長い!以前頼んだときの不満をいろいろ言われるのだが、掃除そのものではなく 態度が気に入らなかったのか・・どうも話がよくわからない。
 
 見晴らしのいい角部屋。エプロンとマスクを付けながら、ベランダの8枚の窓を確認し、
 お風呂場で雑巾やバケツや洗剤などを教えてもらう。
 「網戸は綺麗やと思うんで、よろしいわ・・。」とのこと。
 もしできそうなら、電灯の笠の中も拭いてほしいと、傍に貼りついてお喋りが続く。
 「前に男の人が外さはったら・・取り付けたあとで落ちてきたんでっせ。」
 「はぁ・・・。」
 
 2時間の約束なので、急いで取りかかる。
 濡れた雑巾、乾いた雑巾、そして仕上げに持参したペーパータオルという段取りで、どんどん磨いていった。
 サッシの溝は、使い古しの歯ブラシで丁寧に掻き出してから拭く。
 外側を磨くために植木鉢をかなり動かしたので、戻したあとはベランダの掃き掃除もした。
 
 まだ時間があったので、オマケのように網戸も拭いた。
 見たところは綺麗だったのだが、大通り側の網戸を拭くと、けっこう真っ黒に。
 雑巾を替えてもう一度丁寧に拭いた。
 
 最後は問題の電灯の笠だが、かなり大きなもの。
 「これは、無理やったらよろしいわ。」とのことだったが、まだ時間があった。
 椅子に乗って抱えてみると、意外に軽い。
 側面に貼ってある取り外し、取り付け方を見ると・・・いけそうだ。
 (外したはいいが、付けられなかったら恥ずかしいことになる)
 
 でも・・これは難なく外して、綺麗に掃除できた。
 
 室内で作業ししているときには、ほとんど傍に居て話し続けておられた。
 それもプライベートな話ばかり。
 亡くなられたご主人に、どれだけ苦労させられたか・・。
 亡くなった後財産を処分したが、3人の子どもたちは誰も一緒に住むと言ってくれなかったので、
 そのお金でこのマンションを買ったとか・・。
 
 長男は○○○に勤めているという自慢?(どうやらかなりの一流商社らしい)
 「そらもう贅沢な暮らしをしてるんでっせ。」
 かと思うと、冷たい子どもたちへの不満が続出・・。
 「あんな子やとは思てまへんでした。孫のために思て送ったのに、こんなんは食べさせてへんいうて送り返して くるんどっせ・・。」
 
 丁寧に受け答えしながら、余計なことは喋らないよう、話に対して意見めいたことは一切言わないよう・・、
 でも、気を悪くさせないよう・・、とにかく気は使った。
 足が悪いので、買い物はタクシーで大丸まで行っておられるとか。
 「介護保険を使こたら言わはるけど・・・どうせやってほしいことはしてくれはれへんのでしょ。」
 「そんなことはないですよ・・。買い物もしてもらえますよ〜。」 
 唯一それだけは言ってみたが、それ以上のことは言わなかった。
 
 なんとかつつがなく終わり、とても感謝してもらって終了。
 無事終了したことをコーディネーターにメールして、自分としてはまあまあよく働いた〜と思っていたのだが・・。
 いつもはすぐに返ってくる「お疲れさま〜」の返信がなくて、
 1時間半ほど過ぎてから思いがけない電話がかかってきた。
 
 何と!事務所にクレームの電話が入ったというのだ。
 「窓が汚い!」というお怒りの電話が入り、コーディネーターが出向いてみると、
 8枚の窓のうちの1枚に、白く細かい粉のような汚れが付着していたとか・・。
 彼女が拭き直して、謝って帰ってきたらしい。
 
 そんなバカな!
 「南側の窓やけど・・拭き忘れたん?」  「そんなわけないですよ〜〜!」
 と言ったところで・・・「ああーーー・・・!」
 ・・・・・・。
 「わかりました〜〜!原因がわかりました〜〜。」
 
 そんな失敗をするとは・・・。
 
 普段ならまず先に網戸を拭くのだが、今回は付け足しのように最後に拭いてしまったのだ。
 南側の網戸は大通りに面していて、特に汚れていた。
 そのときの汚れが細かい飛沫になって、窓ガラスに付いてしまった・・・。
 実に初歩的なミス。
 私の失敗だったのだから、相手を怒らせても仕方ないこと。
 なぜ最後にもう一度窓を見なかったのかを悔やみながら、コーディネーターに平謝り。
 
 でも、そのあとの彼女の言葉には驚かされた。
 「これで良かったわ・・。今後頼まれん方がええわ・・。」
 「・・??」
 「どうせずっとそばで喋ってはったんでしょ。それやったらtakaoさんの仕事ぶりも見てるはずやん。
  一部に汚れが残ってたからといって、あんな言い方はないと思うし・・。」
 「??」
 「タダやと思て、おたくらこんな仕事しはるんですか・・、って言われたんよ。それに、渡した洗剤が無くなってる けど、持って帰らはったんと違うかって。」
 「!!」
 「お風呂場のところをよく見たら、あったよ。これと違うんですか?と言うたら、ああ・・・で終わり。」
 「・・・・・。」
 
 自分のミスは何よりもショックだったが、そのあとの話にはダブルショック。
 でも、私がそんなミスをしなかったら、出向くこともなかったわけだが・・・。
 「いやぁ・・・1回で本性が見えて良かったのかもよ。」
 それは私への慰めの言葉だったのかもしれないが。
 
 夕方、今にもチラつきそうな空を見上げながら、気を取り直して買い物に。
 大丸にしようか、高島屋にしようかと思いながらバスに乗った。
 目の前の座席に座っていた女の人の傘がパタンと下に倒れたので、拾い上げると・・・。
 「ありがとう・・。」
 まだ中学生くらいかなという女の子だった。
 彼女は首からぶら下げている定期のようなものを私に見せる。
 「わたし、これで・・高倉で降りるん。」
 
 療育手帳かな?
 「私も大丸へ行こうかなと思ってるんやけど・・。」
 「わたしの家、大丸の近く。」
 「そうなん・・・。」
 彼女はもう一度定期入れを私に見せた。
 今度は裏側だった。
 アイドルグループの写真?
 私は顔を近づけてよく見た。
 「スマップ!」
 「はい、スマップ。」
 「スマップは私も好きよ。」
 
 「また武道館に行くん。」
 「へぇ・・・すごいねぇ〜〜。  誰か特に好きな人はいるん?」
 「ん・・・ん・・決められへんけど、かとりくん。」
 「そうなんや・・・。」
 
 私たちは並んで四条高倉でバスを降りた。
 霙が降り始めていた。
 「わたしはこっち・・・。」
 大丸の前で手を振って別れた。
 
 失敗のショックが尾を引きそうだったのだが・・・
 今年の最後に、ありがとうね・・・。
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

寒くて暖かい一日

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昨夜は、何度か夜空を見上げてはみたが、今にも雨が落ちて来そうな厚い雲に覆われていて・・、
11時頃まではお月さまは見えなかった。
長電話が何件かあり、ハッと気づくともう零時。
慌てて外に出てみると、高い位置に細ーいお月さまが・・。
残念ながら赤いお月さまは見られなかった。
 
今年の作業所まつりでも好評だった、かやくご飯とおにぎりと豚汁を、
急遽開催が決まったイベントでも作ってほしいとの要請があり、バタバタと準備した。
たいへんには違いないが、売り上げをカンパしても、いくらかは活動資金を残せる。
 
5人で早朝からパック詰めをして、何とか出来上がった半分を積んで、会場となるグラウンドに搬入。
運転手はそのまま帰り、設営を始めるのは私ひとり?
直接会場に来てくれる人が2名いるはずなのだが、まだ来てはおられなかった。
 
それにしても寒い!
そして、風の通り道になっているのか、意外に風が強い!
他にもいろんな店の設営が始まる中、とにかく豚汁を温めようとカセットコンロ2つに火を点けたが、
炎が激しく煽られて、点いているのか消えているのかもよくわからない。
ガードするものを持って来てもらおうと、何人かにメールしたが、誰も出ない。
おそらくみんな残りのパック詰めで必死なんだろう・・・。
 
仕方なく他の準備をしていると、スタッフの若い男性が回って来られた。
「ボクはこちらの担当ですので、何でも言いつけて下さい。」
「ああ・・・・。」
 
コンロを覗くと、「ああ、これは効率が悪いですねぇ・・。ちょっと待って下さい、探してきます!」
彼は軽やかな足取りで走り去った。
急いで他の準備を進めていると・・わずか10分くらいでしっかりした三面のアルミのガードを持て来られて、
ガムテープで固定して下さる。
こんなに早く、どこから調達してきてくれたのか・・若い子なのに、何とも頼もしい〜。
 
準備が全て整って、オープニングのコーラスが始まるとともに、意外にもかなりの人たちがどんどん会場に入って来られた。
こんなに寒いのに?
ちょっと信じられない・・・。
ひとりで心もとなかったのだが、そのときに、ようやく販売の二人もやってきてくれた。
 
呼び込みをする必要もなく、寒さのせいか150円の豚汁は飛ぶように売れた。
おにぎりもかやくご飯も順調に出ていく。
 
ひとりでやって来て、小さな財布から時間をかけて小銭を出して買ってくれる子。
何人かでやって来て、誰が何を買うかでずっと揉めているグループ。
次々と大人が買って行ってくれる中、前に立ってずーっと悩んでいる子。
いつの間にかいなくなったと思ったら、またやって来て悩んでいる。
一緒に悩むこと5分?
かやくご飯を手にして去って行ったが、また戻ってきた。
「やっぱしこっち・・。」
 
100円玉を握って、「これで買えますか?」と言う子も。
「豚汁でいいですか?」
「はい。」
こぼさないように、座席が用意されているところまで一緒に持っていく。
100円で売ったら、みんな100円で買いに来るんと違う?と言われてしまったが・・。
「具を少し減らせばいいんちゃうかなぁ」ということで了解してもらった。
 
スタッフに付き添われてやって来た男性には見覚えがあった。
「これがええ、これ買う!」
「今カレーを食べたやん。まだ食べられるん?」
「うん、食べられる〜。」
「ほんとかなぁ・・。」
 
ニコニコ笑っているのは、そうだH君だ。
おにぎりのパックを握って離さない。
彼が出したのは「なんでも買える券」。
 
どうやら彼も私のことを覚えてくれているようで・・じっと私の目を見ている。
「買います!」
私はスタッフの女性の顔を見る。
「ほんじゃ、買い。」
 
満面の笑みのH君は、私に向かってぬーっと顔を近づけてきて、くちびるを突き出した。
私は一瞬戸惑ったが、顔を寄せてくちびるを突き出してしまった。
んんんんん・・。
先っちょがかすかに触れる。
 
H君と呼んでいるけれど、ひょっとしたら私より年上かもしれない。
彼は満足げに振り返りながら、仲間の方に去って行った。
 
12時過ぎには豚汁が完売。
他も残り少なくなっていた。
交代で他の店を回りながら、私たちも腹ごしらえ。
あれもこれも食べたくなる〜〜。
特設の舞台ではパントマイムが始まり、みんながその前に集まっていた。
 
そして・・福島からこちらに母子で避難して来られているお母さんからの文面を、
子どもさんの通う保育所の保母さんが代読して下さることになり・・、
私たちは片付けの手を止めて聞き入る。
 
それはとても長い文章だった。
大震災が起きた「あのとき」からの、信じられないような目まぐるしい日々のこと。
一旦、家族で関東の親戚に身を寄せたが、そこにはそんなに長くは居られず、福島に戻る。
施設で、管理栄養士として調理の仕事をしていた彼女は、子どもたちと彼女だけで避難した方がいいのではという夫の言葉を聞きながらも・・ずっと迷い続けた。
そのあたりの苦悩がひしひしと伝わってくる。
 
家族が離れて暮らす辛さ。
職場を離れる辛さ。
それだけではない、避難を進める人たちと、残る人たちとの確執。
子どもたちのことを第一に考えねばと思いながらも・・・、最後まで足を引っ張ったのは自分だったという悔い。
 
厳しい決断をしたのちは、夫がネットで調べて全ての段取りを進めてくれたとのこと。
そして今は・・幼い子どもたちはびっくりするほど新しい環境に馴染み、
自身も管理栄養士としての職を得ることができ、
これから先の不安は尽きないものの、しばらくはここに居て、ゆっくりと考えたいと・・。
こちらの地域の人たちへの感謝の言葉で、締め括られていた。
 
寒さのせいもあるけれど・・鼻水がぁ〜〜〜。
 
大きな余韻をかみしめながら・・撤収を始める。
 
バンダナを取ると、頭はくちゃくちゃ。
鼻の下は真っ赤?
急いでマスクをして隠した。
 
スタッフの人たちや仲間の子たちに送られての帰り道は、少し暖かかったような・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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 実家での夜のこと。
 深夜、かすかなアラーム音に目が覚めた。
 ん?・・・どこで鳴ってるんだろう・・。
 
 枕元の棚を見るが、それらしきものは無い。
 音の方を探りながら耳を澄ませて集中すると、どこで鳴っているのかわからなくなってくる。
 起き上がって、一通り部屋の中を見て回るが、やはり音は枕元近く?
 
 両親の寝室との境のふすまは開けてある。
 せっかくよく眠っている父が、もそもそ起き出して来ても困る。
 棚の傍に耳を近づけてみると・・・やはりここだ!
 
 奥の方に、何やら黒い円筒形の物体が。
 これか・・・。
 暗がりなのでよくわからない。
 奥の部屋に持って行って電気を点けた。
 
 よく見ると、デジタル時計付きのラジオ??
 時計はもちろん動いていない。
 とりあえず、あちこちひっくり返してアラームのスイッチを切ったのだが・・止まらない。
 底を開けて単3の乾電池を全部取り出したが・・・音は止まらない。
 ・・・・・。
 そんなことってあるんだろうか。
 抜け殻の時計の中で、アラームの部分だけが生きている?
 
 死んだ時計の中で魂だけが残っているような気がした。
 
 仕方なく、鳴り止まぬ時計を部屋の片隅に置いて、座布団を何枚か被せた。
 
 
 実家に帰る日が続いていても、おばあちゃん宅には通っている。
 さすがに今年の夏は、かなり弱られた。
 食卓とベッドの移動も難しくなり、ヘルパーさんによる入浴も危なくなったので、
 別途、入浴サービスに切り替えられた。
 
 そのために玄関から靴箱が消え、いろんなものが取り除かれ、ベッドのレイアウトも変わった。
 そう、浴槽ごと持って来られるわけだ。
 部屋ががらんとして掃除はしやすくなったが、何となく淋しい。
 
 もうベッドから離れることはできないのかな・・。
 
 玄関に入ると靴があった。 息子さんだ・・。
 「先週来ていただいた次の日でしたか・・ちょっと大変だったんです・・。」
 「・・・」
 「物が飲み込めなくなりましてねぇ・・。」
 「はい。」
 「もういよいよかな〜と思ったんですけど・・。
  往診をお願いして二日間点滴をしてもらったら、少し元気になりましてね・・。
  物も少し食べていたんですが・・・。
  今日はまた調子が悪いです。」
 「はい・・。」
 
 喉がゼロゼロ鳴っている。
 目は閉じておられるが、口を少し開けて苦しそうに見える。
 横になるよりも楽なようで、ベッドは少し起こしてあった。
 
 「二時間後には来ますので・・宜しくお願いします。
  口の中が乾くようなので、水を欲しがったら、吸飲みで少しお茶を・・。お茶は飲めますので・・。
  何かありましたら電話を下さい。すぐに来ます。
  それから・・済まれたら帰っていただいていいですので・・お願いします〜。」
 「わかりました・・。」
 
 すぐに掃除を始める気にもなれず、ベッドの脇に坐って手を取る。
 いつもは私の手の方が冷たくて、息を吹きかけて温めてから握るのだが、
 今日は氷のように冷たい。
 しばらくさすっていて、布団の中に入れるのだが、すぐに出してしまわれる。
 
 布団に手を入れて足をさすると、 足も冷たい。
 温まるまで、静かにさすった。
 
 この状態って、病院のベッドで酸素マスクを付けて、
 「そろそろ身内の方を呼んで下さい。」って言うような状況じゃないのかな・・。
 ほんとに大丈夫なのかな・・。
 
 (でもこんな風に家で過ごせるんだ・・)。
 
 気になりながら掃除を始めると、苦しそうな表情はなくなっていた。
 同じ姿勢は辛いかなと思い、時折少し下げたり上げたりして体位を整えた。
 
 掃除を全て終えても、帰る気にならなかった。
 ベッドの脇に坐ってじっと顔を眺める。
 髪の毛をそっと撫でると・・目を開けられた。
 
 「takaoさーん・・。」
 掠れた小さな声。
 こんな状態でも、ちゃんと私のことがわかるんだ。
 
 「今ねぇ、小さい子の泣き声が聞こえてたんやけど・・。」
 (そんなものは何も聞こえない)
 「いえ、大丈夫ですよ〜〜。」
 「うちの子たちは大丈夫?」
 「はい、大丈夫です・・。」
 
 安心したように目を閉じられた。
 
 うちの子たちって?
 夢を見ておられたのだろうか・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 

おばあちゃんの復活

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ぼあぼあのボタン雪が舞った午後、ドアの外で濡れたレインコートを脱いだ。
部屋の中は暖かい冬の匂い。
ん?声が聞こえてる? でも靴はない。
 
おばあちゃんは珍しく食卓の椅子に腰掛けてテレビを点けておられた。
「こんにちは〜〜。」
「ああ・・takaoさん・・・。」
「外は雪ですよ〜〜。」
「???」
 
耳元でもう一度ささやく。 「外は雪ですよ〜〜。」
「えーーっ、ゆきぃ??」
おばあちゃんは思いっきり目を丸めて私の顔を見た。
 
昨年の秋に『要介護3』になられて、
それまでの入浴介助以外に生活支援のサービスも受けられるようになった。
本当なら私のお役目もそこで終わりなのだが、コーディネーターには内緒にしておいた。
 
私が行きたいのだから・・。
私がここに来たいのだから・・わかるまで内緒にしておこう。
 
ところがすぐに、そんなことを案じる必要は無くなってしまった。
ある日伺うと、珍しく息子さんがおられたのだ。
「私が着替えをさせていて、ストンと尻もちをつかせてしまいましてね・・。
 腰が痛いようで動けなくなってしまったんですよ・・。」
「・・・・。」
「何とか毎日ヘルパーさんに入ってもらえるようお願いしたんです。」
 
そんなわけで、生活支援として掃除などをしてもらう余裕はなくなってしまったようだ。
毎日午後1番で、全て身体介護。
おばあちゃんはオムツになり、食卓ではなくベッドを起こして食事をされるようになってしまわれた。
 
それでも、息子さんもおばあちゃんも飄々とされていた。
「寝たきりになってしまいますんかな・・。」
そう言いながらも、えらいことになってしまった!という落胆の様子は見えない。
 
ただ、さすがにおばあちゃんからの食べ物の買い物希望が無くなってしまったのは淋しかったが。
 
「お買い物は何かありますか〜?」と必ず訪ねるのだが、
「うーん、特に思いつきまへんなぁ・・。」
買い物は、息子さんがメモに書かれたものだけ。
 
でも恐るべし!
今年に入って、おばあちゃんはまた伝い歩きができるようになられたのだ。
 
布団を干し、ベッドメイクをするときには食卓の椅子へと移ってもらう。
パジャマの腰の後ろをしっかりと握ってサポートはするが、ほとんど自力で歩かれる。
日に日に足の運びが良くなる。
 
「takaoさーん、あのねぇ、焼き鳥が食べたい・・。」
「や き と りですかぁ?」
唐突に飛び出した言葉に驚きながらも、嬉しくて思わずにやっとしてしまう。
 
でもスーパーで売っている焼き鳥は美味しくないだろうな・・。
どこか美味しいところはなかったかと思案するが、思いつくのは遠くの商店街の鶏肉屋さん。
迷ったのだが、その日は仕方なくスーパーでモモとネギまの串を買ってきた。
 
串は長くて危ないかなと思い、身を外してタッパーに入れた。
「少し食べます?」
「ちょっとだけ食べてみようかな・・。」
「わっかりましたぁ〜。」
 
食べられる分だけ少しレンジで温めた。
ゆっくりと噛みしめて味わいながら・・目を丸めてにっこりされた。
「おいしい・・。」
「そうですか、良かった〜。」
「もう30年くらい食べてまへんかな〜。」
「??!」  ウソっ。
 
食欲というのは、まさに生きる力。
幼い子どもでも、食べることに勢いがある子はエネルギッシュだ。
 
最近のお気に入りは「たこやき」と「今川焼き」(関西では回転焼きとか太鼓焼きとか言う)。
あるとき頼まれてあちこち探したが、結局無くて、やむなく冷凍食品を買ったのだが・・、
これが予想をはるかに越えて美味しかったようだ。
 
「takaoさーん、今日はどっちにしようかな・・。
 甘いもんがよろしいかな、辛いもんがよろしいかな・・。」
 
私はまず「今川焼き」をレンジでチンしてほっかほっかにし、4つに切って出した。
「美味しい〜〜。」
お茶を飲み終えたところで、今度は「たこやき」を2個だけ温めた。
「やっぱり甘いもんのあとの辛いもんは美味しい〜〜。」
 
ベッドに移られる前に手と口元を拭いて、入れ歯を洗ってあげる。
息子さんがヘルパーさんに書かれていたメモを見てから、入れ歯を洗うようにしている。
何でも噛める頼もしい入れ歯。
 
先日無事、満101歳を迎えられた。
「お誕生日おめでとうございます〜〜。今日で101歳ですね・・。」
耳元でささやいたら、大きく目を丸められた。
 
「そうらしいどすな・・。今朝息子に聞きましてんけど、すっかり忘れてしもうて・・。
 なんかこんなに生きてよろしいんかなぁ・・・。」
 
まだまだ私はここに来ますよ・・。
ずっと来ますから・・。
 
 
 
 
 
 
 
 

入院介助

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以前何回か通院介助をしたことのあるTさん。
ご自宅からタクシーでF医大病院まで行き、車椅子を押して2つの科で受診する。
トイレが近いことを除けば特に大変なことも無い。

予約診療とはいえ大病院なのでそこそこ時間はかかるが、
おしゃべりをしていると時間の長さはあまり感じなかった。

男性の活動会員さんが登録されてからは、その方にバトンタッチした。
「僕は家の中の掃除でも、何でもやりますよ〜。」と言って下さったのだが、
依頼者は女性が多いので、さすがに戸惑われる。

それにいくら高齢でも、独居の女性のところに男性が入るというわけにはいかない。
もちろんその逆の場合でも、独居の男性宅には2名で入るようにしている。

というわけで、男性の会員さんには男性の通院介助をお願いしている。
実は通院介助の依頼はけっこう増えているのだ。
病院への送迎は介護保険が適用されるようなのだが、院内での付き添いはダメ。
長時間を実費で頼むと、かなりのお金がかかってしまう。

久しぶりにTさん宅に行ってくれないかという電話がかかった。
「午前中で終わるならいいですけど。」
「それは大丈夫。」
どうやら通院ではなく入院らしい。
急に決まったために、いつもの会員さんは都合がつかなかったようだ。

入院か・・。
どういう段取りになるんだろうと想像する。
Tさんの指示通りに動けばいいんだろうけど、入院ということが気にかかった。

朝の9時、お宅に伺うとTさんは心なしかしょんぼりと伝え歩きで出て来られた。
「ああ takaoさん・・おおきにおおきに・・。」
台所では娘さんがさらにしょんぼりと腰掛けておられた。

Tさんは娘さんと二人暮らし。
そして娘さんは手と足が少々不自由で、言葉の麻痺があった。
もともとは彼女の通院介助から始まった活動らしい。

娘さんは私より少し年上くらいの人。
でも活動に入った人がなかなか続かず、何人も変わっていた。
何が大変だったのか・・。

彼女は車椅子ではなく杖で通院される。
やはりタクシーで往復するのだから、それほど大変だとは思えないのだが・・。

問題はコミュニケーションを取りにくいということだったようだ。
何か話されてもよく聞き取れない。
精神的に調子の悪い日には、全く口を閉じてしまわれ不機嫌になる。
時には軽いパニックを起こされるようなこともあったようだ。

「素人の他人では無理やと思う。」
「二度と行きたくない。」と言った人も。
「この活動は断った方がいいんちゃう?」

コーディネーターは困っていたが、できれば断りたくはないようだった。
ようやく行き続けてくれる人が見つかったが、その会員さんはとても忙しい方だった。
「takaoさん、彼女が行けないときだけ行ってくれる?」
「??」

ある日、すごーく気が重かったが出向いた。
施設で働いている友人の言葉を思い出しながら・・。
「気持ちでシンクロしようとしたらあかんで。」

??意味がわからない。

彼女の荷物を持って、杖でゆっくりと歩かれるのに付いて行く。
何か言われてもほとんどわからないが、仕方ない。
うんうんと頷いてニコッとするしかない。

的外れだったら怒らせることになるのかも・・。
でも黙っておられても機嫌が悪いとは考えないことにした。

何とか手振りでわかることには対応し、ニコニコ頷くだけを通した。
いいのかな・・これで・・。
いいのかな・・これで・・。

実にいいかげんだったが、
それでも何ということもなく帰り着いた。

それで良かったのかどうかはわからないが、反省のしようもなかった。
その後もピンチヒッターとして何回か付き添ったが、今のところは何とかなっている。


「じゃNちゃん、行ってくるわな・・。また電話するしな・・。」
娘さんは何も言わずに頷かれた。
今回は大きな荷物が2つあったので、
タクシーの運転手さんに部屋まで上がってきてもらい、運んでもらった。

F医大病院は改修工事中で実にややこしかったが、何とか入院手続きを済ませて病棟に上がる。
ナースステーションの前で体重を量り、病室へ。
6人部屋の真ん中だがけっこう広い。

荷物を確認しながらロッカーに入れていると、
早速看護師さんが「地下でレントゲンを撮ってきて下さい。」
やはり私のこと娘さんだと思っておられるのかな。

「お願いします。」と大きなファイルを渡される。
あわてて荷物を押し込み、先にレントゲンに。
その帰りに大学生協の大きな売店でいろいろと買い物をした。

部屋に戻ると、今度は血圧を測りに来られる。
それからそのフロアーの説明。
車椅子を押しながら、給湯室や浴室、そのほかの説明を聞いた。

これって、ひょっとして私に説明してるのかな・・。

それに気づいたTさんがちゃんと説明して下さった。
「ああこの人は娘やのうて、今日お手伝いに来てくれた人です。
 うちの娘は体が不自由なんで世話はようしません。」

荷物の整理の続きをしたり、テレビと冷蔵庫共通のカードを買いに行ったり・・
あっという間に時間が過ぎた。

「もう時間ですな〜。おおきにおおきに。助かりました・・。」

何と声をかけたらいいのかな。
「じゃぁ お大事になさって下さいね。
 また何かありましたら・・コーディネーターに連絡して下さい。」

退院される日に元気なお顔が見られることを願いながら病院を後にした。
外は小雨、妙に蒸し暑い。

バス停で勘違いしそうだった。
家に帰るのではなくこれから仕事に行くんだった。





 

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