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7月16日(土)18:00開演 サントリーホール
第642回サントリー定期演奏会
ブルックナー/交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版第2稿)
指揮:ジョナサン・ノット
演奏:東京交響楽団

この日、昼に新日本フィルに行き、浅草周辺をぶらついていました。
久しぶりに米久の牛鍋が食べたくなり、JRA浅草でちょっと馬券を購入してから立ち寄りました。
今も店に入ると「ドン・ドン」と威勢の良い太鼓を鳴らしてくれます。
最近、和牛肉は食肉市場でめっきり高く取引をされており、有史以来最高価格で推移しています。
別に多くの人たちが和牛肉を食べているような感じではないのですが、この和牛肉をさらに輸出していこうという動きがあり、実際、安定した輸出ができるのだろうかと思います。

浅草寺にも自撮棒をたずさえた中国人の山がいましたが、ここでも中国語聞かれるようになりました。
春に京都に遊びに行ったのですが、着物を着て大喜びしているのを見ると複雑な気持ちです。

かつては刺身も牛肉も食べなかった中国人が、日本人が文化として築き上げたものをどうしていくのだろうと考えてしまいます。
80年代には新幹線の影すらなかった中国が川崎重工というよりバカ経営者である大橋忠晴と長谷川聡のせいで特許技術まで奪われ、我が物顔で高速鉄道を販売する側になっています。

10年前まで、中華料理こそ、世界最大の美食と言い切っていた中国人たちが、現在は多くの日本食に舌鼓を打っています。
生魚や生卵を絶対口にしなかった人間が、今はトロを喜び、すき焼きを生卵にからめて食べる時代になりました。それらを眺め、これらを自分たちが生産するのか、あるいは日本人がこのパイを彼らに奪われるのだろうかと考えていました。

ふと見回すと、食べ方がわからない集団が、僕の食べ方をじっと見てまねているのに気づきました。
片手で卵を割るのを見て人懐っこく、やんや、やんやと拍手喝采されるのにはまいりました。
ここでは成功していませんが、中国に帰って練習するかもしれませんね。

さて、夕方にサントリーホールに向かいました。2月にバレンボイムとベルリン国立歌劇場管弦楽団で聴いたブルックナーの交響曲第8番がまた聞けます。
ブルックナーが頻繁に聞けるだけでなく、以前は偏屈なじじい(僕も含まれてしまうのですが)しか聴きに来ていませんでしたが、最近は女性客の比率もめっきり高くなりました。
さらに今回のコンサートの参集率は高く、8割以上がうまっていました。
マーラーに続きブルックナーもいよいよ市民権を得るところですね。

18時になるとすぐにオーケストラの登場となりました。相変わらずの対抗配置での演奏です。
ハース版とノヴァーク版第2稿はここで上手に説明しています。
http://classic.music.coocan.jp/sym/bruckner/bruckner8-ed.htm

ブルックナーはこの版の問題がいつもながらめんどくさい。
楽譜より「you tube」で誰か音符を流しながら比較してもらえた方が体系的に理解できるんですけどね。
オーケストラのHPで演奏会前にお勉強させてくれると尚いいですけど。
ちなみに僕の愛聴盤はショルティのウィーンフィル盤(シカゴでなくノヴァーク版)とセルのクリーヴランド(ノヴァーク版第2稿)とやったものです。

ノットによる演奏は音の流れ、あるいは音楽構築にぶれがなく淀みのないものでした。
オーケストラは安定していてテンションも最後まで維持されていました。
1楽章のおどろおどろした感じなどは除かれ、「中庸の美」を奏でていました。

なお、1楽章の15分というのは時間的にややゆったりめのテンポです。同じ版のセルの演奏が14分33秒ですから30秒ぐらい遅いものでした。
第2楽章は粗雑なブルックナー旋律で、これを否定的に感じる聴衆はいるんでしょうね。やたらしつこいんですよね。小舅のようにうるさい旋律ですね。
コンサートでは結構勢いに任せて演奏されることもあり、観客が舟を漕ぐこともあります。
音楽の他に近隣客の寝息を僕は何度も聞かされることがあります。
タカ・タンタン、タカ・タンタンといリズムは人を落ち着かせすぎるんでしょうか・・・

第3楽章ですが、ブルックナーの交響曲のアダージョの中でも屈指の美しさを持っています。第7番の第2楽章を推す人もいるのですが、僕は断然この第8番のアダージョが好きです。
このアダージョは第9番のアダージョにつながりますし、それはすなわちマーラーの第9番の第4楽章のアダージョにつながっているということです。
弦楽器の束がホール中を包み込みます。
2月のバレンボイムの演奏はさらに計算された仕掛けをほどこしていましたが、この演奏は素朴に、純粋な音楽だけを表出し、各楽器がきちんとつながりを持つことが徹底されていました。作為的なことを排除し、音の美しい部分だけを引き出していました。
シンバルの炎の一発のため演奏者も聴衆も緊張感があるんですね。

そして第4楽章。冒頭戦闘態勢に入るような旋律ですが、この時点でどういう終焉につなげてくれるのかという期待をいつも持たせてくれます。ノットは感情に流されず、大きな構築を作ろうとしていました。
ヴァントやヨッフムの低い重心のものというよりも、より精緻にブルックナーの音楽をとらえ、クールな表現を持たせました。

東京交響楽団の金管はいつもどおり安定したものでした。
全楽章ともこらえぬいていました。近年、演奏機会が増えていることもあり、オーケストラとしてのならしも良くなっているような気がします。反面、やはり大きな音響ということで外来の一流オーケストラと今も一定の差があることは確かです。さらに低音部の音に渋味がないということでしょうか。
ドイツのオーケストラには独特の味がやはりあります。
米国のオーケストラは来日公演にはブルックナーを持ってこないので、どのような演奏になっているかはわかりませんが。

今回の演奏会はマイクがきちんと垂れ下がっていたため、放送あるいは録音用のものです。いずれ他のメディアで今回の演奏を聴き直すことが可能でしょうね。

残念なのはまたまた起こってしまったフライングブラボー2階P席の最後列の右の端っこあたりの爺が音の沈黙が始まる寸前に「ブラボー」と声を張り上げ、さっさとホールを立ち去っていきました。
こういうお客がいると本当に悲しくなります。
こういう客を作るのは「のだめカンタービレ」も悪い意味で貢献していますよ。あの番組で竹中直人さん演じるシュトレーゼマンの「ブラボー」のは声の張り上げをスタンダードと感じる一般人やにわかクラシックファンに植え付けてしまった感があります。
マンガ側でなくでなくドラマの演出に明らかに問題があったと思います。

ただ、それでもこの夜来られたお客は皆至福の時間を持ったようです。僕ももちろんその仲間だったのですが、ノットが引っこみオーケストラが散会してもお客が席を立ったまま拍手を続けました。
指揮者を再度ステージに立たせようとするという定期公演ではなかなかお目にかかれない光景が起きました。ここで最大のブラボーの嵐がホール中を包み込みました。こういうブラボーはとても良いです。
マエストロ・ノットも最高の笑顔でこたえていました。

【演奏時間】
(1)15'06"(2)18'27"(3)26'42"(4)22'05" 合計79'40"

ノット氏は常任指揮者としてさらに期間延長になりました。今、日本の在京オーケストラにおいてこの東京交響楽団とNHK交響楽団を個人的には追っかけていきます。

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