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10月8日(土)14:00開演 新国立劇場
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」
ジークムント:ステファン・グールド
フンディング:アルベルト・ペーゼンドルファー
ヴォータン:グリア・グリムスレイ
ジークリンデ:ジョゼフィーネ・ウェーバー
ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン
フリッカ:エレナ・ツイトコーワ
ゲルヒルデ:佐藤路子
オルトリンデ:増田のり子
ヴァルトラウデ:増田弥生
シュベルトライテ:小野美咲
ヘルムヴィーゲ:日比野幸
ジークルーネ:松浦麗
グリムゲルデ:金子美香
ロスヴァイセ:田村由貴絵
指揮:飯盛泰次郎
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

いやあ、なんなんでしょう。本当に楽しい舞台でした。この演出は見事です。
序夜「ラインの黄金」の最後に神々が皆で手をつなぎながらステップを踏んで終演したのにはいささか軽さを感じてしまい、しょぼい神々たちだと思ったのですが、この「ワルキューレ」はいいですね。
主要歌手陣がいい。ブリュンヒルデのテオリンを配置できたことは間違いなく成功する要因です。
近年のワーグナー歌手でデボラ・ヴォイトとイレーネ・テオリンは僕にとって大事なアイドル?です。

さらにエレナ・ツィトコーワ。「ばらの騎士」以来新国立劇場には欠かせない人になっています。
とにかく美しい。
ジョゼフィーネ・ウェーバーも歌はいいのですが、外観に問題が・・・
ステファングールドと二人で愛の歌を歌われても呆然として見るしかないのですけど・・・
歌はいいんですけどね。
グリア・グリムスレイのヴォータンはいいですね。歌手もやはり一定の見かけが必要です。体が楽器とはいいますが、太りすぎの歌手はやはり良くないです。
腹出した男女が滾々と愛の歌を語ってもなんの説得力もないです。

14時から19時30分の長丁場でしたが、全く長いと感じませんでした。歌手もオーケストラも大変ですし、主要歌手は出ずっぱりです。

舞台装置も演出も非常にいいです。清潔感のある舞台で趣向もいいです。
第1幕は舞台が斜めの四角にになっています。きっとジークリンデの心情を表しているのでしょうかね。
歌手のみなさんは歩くのにご苦労されるのでしょうけどね。

第2幕はやはり視覚に抵抗感があります。
ドイツ人の恋人たちはあれでいいのかもしれないですがお相撲さん二人で愛を語られてもしっくりきません。
そしてブリュンヒルデの衣装。これだけはいただけない。白い服に防具。テコンドーあるいはかつてのオウム真理教の信者の恰好ですよ。
もう少し優雅な恰好をさせてあげてください。
テオリンも体型が細いわけではないので、あれだけ輪郭を出してしまうとやはり引いてしまいます。

当然次回作品「ジークフリート」の第3幕では登場するのでしょうが、この格好ではやや間が抜けています。他のワルキューレたちも似た格好でしたが多少衣装に柔らかさを付けているのもありましたから、ブリュンヒルデも工夫してほしかったです。

第3幕のワルキューレの騎行はどちらかというと奇行でしたね。裸の(パンツははいていますが)ヒョロヒョロの戦士の上にそれぞれのワルキューレたちがのっかかり、勇ましく歌われると滑稽ですよね。
観方によっては非常に卑猥なのですがワルキューレたちの衣装があまりに不格好なので質の悪い戦士といった感じでした。8人のワルキューレが一列になって腕を振り上げ勇敢に歌ってくれるのが個人的には最も好きでいつも期待しているのですがなかなか出会えません。
いっそのことセクシー衣装で宝塚のラインダンスで歌ってくれると萌えるかもしれません。
この幕は70分のうち50分がヴォータンとブリュンヒルデの濃い親子間のやり取りで占めます。

内容は娘をさらしものにするかしないかの非常に不道徳的中身です。
イタリアの種馬的ヴォータンになんら倫理観を語る資格はないわけですが、冷静に歌詞を読み取ると、神というだけで自分の荒唐無稽な行動をひたすら言い訳するのに対し、ブリュンヒルデが正論でディベートを仕掛ける内容になっています。
かつてのいろんな舞台でもここは見せどころで演出家の真骨頂が示されます。
ニーベルングの指環14時間を通しても最も大事な部分です。

かつて二期会公演では女の子を登場させ、ヴォータンが大好きであった過去のブリュンヒルデを出し続けました。涙をすすするような演出でした。
今回はヴォータンとブリュンヒルデの距離を近づけ、しっかりと親子愛を出しました。
ヴォータンがかっこいいとこの部分は盛り上がります。ヴォータンはジークフリート同様絶対デブに歌わせちゃダメです。
今回は2人の歌も安定していて実に優れた終幕でした。まだ3回の公演が残っていますが、もう一度見たいぐらいです。次の土曜日公演もチケット購入を考えていたのですが、ノットによるショスタコーヴィチの交響曲第10番を聴きたかったので断念しました。
新日本フィルの演奏時間内(14時−16時+α)だけでもこちらがいいのかもしれませんが、最も素晴らしい第3幕が18時頃の開始でサントリー公演とかぶっているので断念しました。

今から聴きに行く方々、ブリュンヒルデが意識を失う場面と火を入れる場面は極めて素晴らしいですので注目して下さい。
例外的に第2幕冒頭は安キャバレーかかつてのパチンコ屋かと思われた舞台装置でしたが、最終幕は暗闇で綺麗に火が付けられブリュンヒルデを中心に囲むシーンは巧みです。ブリュンヒルデに光が当てられ、まるでモスラが守られているような映像感があります。最後まで火の中にヴォータンが残り最後に正面から客席側に出てくるシーンは身震いすら起こりました。

さらに良かったのはお客の質です。音楽が完全に終わるまで拍手をしなかったことです。
第3幕の終わりに音が終わる前に拍手を始めるクズが結構いるのですが、この日はきちっと余韻を残してくれました。
「神々の黄昏」同様、良い公演にするには終焉を最後まできちんと聴くという基本的なことをするお客の協力が絶対条件です。
舞台に集中できたためにお尻が全く痛くなかった(感じる余裕がないぐらい)公演でした。
ワーグナーを好きになりたい方は是非行ってください。

最後に東京フィルの演奏。頑張ったんじゃないですか。もちろん金管については不安めいた部分もありましたが、この大変な曲ですから頑張ったでしょうね。
ワルキューレの皆さん、すみませんが声にばらつきがありました。それぞれの個性ではなく、エントロピーが拡散していました。8人が個別に歌えば成立できるのですが、一斉に歌う場合、声質に統一感がなかったのが致命的です。これは歌手側の問題よりも歌手の選抜の問題でしょうかね。
気になりました。

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