こだわりクラシック Since 2007

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マタイの後にはやはりヨハネを聴かなくてはならないだろう。

鈴木美登里 (ソプラノ)
ロビン・ブレイズ (カウンターテナー)
ゲルト・テュルク (テナー)
浦野智行 (バス・バリトン)
シュテファン・マクロウド (バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)
鈴木雅明(指揮)
収録:2000年7月28日

この映像はバッハの没後250年の命日に当たる2000年7月28日にサントリーホールで収録されたもの。幸い私は会場で聴くことができたが、テレビでも放送されたのでご覧になられた方も多いだろう。

マタイに劣らず私が好きな曲だが、持っている(持っていた)ディスクは案外少ない。リヒター(通常の出版稿?)、ガーディナー(通常の出版稿)、BCJ(第四稿、1998年盤)、クレオバリー(DVD、第二稿)、それにBCJのこのDVDだ。なぜそれほど多くないかというとこの2枚のDVDとガーディナーのCDで十分満足しているからである。他に聴く必要がもしもあるとすれば今年になって輸入盤で出たアーノンクールのDVD(1985年収録)ぐらいだろう。ヘレヴェッヘの新盤も良さそうだがそれは第二稿を用いている。やはりこの曲はHerr!(主よ!)で始まってほしいので第二稿はクレオバリーのDVD1枚で十分だ。一般的には通常の出版稿か第四稿をお勧めする。

通常の出版稿と第四稿は歌詞やオーケストレーションなど細かい変更は少なくないが、楽譜を見ないでこれらの違いを聞き分けられる人は少ないだろう。だが第四稿による演奏には全曲に渡って決定的な違いがある。それはバッハが通奏低音にチェンバロを用いたことだ。BCJがマタイでは通奏低音にオルガンを用いているのにヨハネの第四稿では鈴木雅明によるチェンバロ弾き振りになっているのにはちゃんと理由があるのだ。

実はリヒターは1960年頃まで通奏低音にオルガンを用いていたがその後考えを変え、1969年の来日公演や1970年〜71年の映像ではマタイもヨハネもチェンバロを用いたようだ。私は1969年以降のディスクは聴いていないが、有名な1958年盤のマタイとはかなり違う音がするはずだ。しかし、記録に残っている範囲ではバッハがマタイにチェンバロを用いたことはなかったらしい。音楽的に見てもヨハネならチェンバロもあり得るが、動きの大きなマタイの音楽にチェンバロをつけると少々うるさくなると私は思う。(磯山先生の本によるとバッハが最後に演奏した1742年頃の演奏会用に第二オケの通奏低音のみチェンバロにしたパート譜が存在するそうなのでこの点は訂正したい)

ヨハネの演奏も史実通りに第四稿はチェンバロで、それ以外はオルガンで弾くべきだろう。ガーディナーのCDとBCJのDVDはまさにその通りになっており、オルガンによる通奏低音が好きならガーディナーを、チェンバロが好きならBCJを選べば良い。これからバッハの受難曲を聴く際はぜひ通奏低音にこだわって聴いてほしい。

BCJは1998年にヨハネの第四稿を録音する前に1995年に第三稿でも録音しており、この映像は通算では3度目の収録になる。世界中に放送され日本の古楽演奏の水準の高さを知らしめたと共に、BCJとしても一つの頂点を築いた演奏だろう。こともあろうに国内盤が廃盤で現時点では輸入盤でしか手に入らないがぜひ聴いてほしい演奏だ。

ユーチューブを見たところこの映像から何曲かアップされているのを見つけることができた。しかしできればDVDで聴いてほしい。輸入盤は1500円程度で手に入るようなのでCDより安い。対訳が必要であれば川端氏のページを参照すれば良い。
http://www.youtube.com/results?search_query=BCJ%E3%80%80bach%E3%80%80Johannes&search=Search

クレオバリーが採用している第二稿は、バッハが最終的にマタイの1部終曲に転用したいわゆる「大コラール」で始まる。知らないで聴き始めると「あれっ?何でマタイが入っているんだ?」とびっくりするのは間違いない。クレオバリーの演奏はソプラノソロ(残念ながらカークビーではない)以外を男声で固めていて、これはマタイのDVDと一緒だが、その地味な響きはマタイよりもヨハネの方が合っていると思う。カウンターテナーはガーディナー盤と同様マイケル・チャンが歌っている。第二稿なので通奏低音は史実通りにオルガンだ。

なおヨハネ受難曲の4つの稿および出版稿の違いは以下の2つのページに詳しい。どちらも力作なのでぜひ読んでみてほしい。

川端純四郎氏による解説と全訳(ヨハネはBWV245)
http://www.jade.dti.ne.jp/~jak2000/page002.html

KEN1氏による解説(ずっと下にスクロールすると「二つの受難曲 -柔のマタイ・剛のヨハネ-」というコラムがある)
http://www.barstates.com/log/ken12.htm

また、リヒターが1969年に来日した際の楽器編成と配置は以下のページに詳しい。1958年の録音とは異なりチェンバロの弾き振りだったようだ。
http://www003.upp.so-net.ne.jp/orch/page220.html

(追記)
大変細かい話になり恐縮だが、通常の出版譜とされているものは1739年に予定されていた(結局中止された)演奏会に向けバッハが作成した10曲目までの自筆譜と、弟子に1746年頃に清書させた11曲目以降の譜面を元に作成されたものだ。しかし1732年頃の演奏会の演奏会では33曲で現在は失われたシンフォニアも演奏され、また40曲目が削除され39曲で終わりになるなど出版譜とは細部で異なる。

このため失われた1732年版を第三稿と呼ぶならば、通常の出版譜は本来は第四稿であり、1749年版は第五稿と呼ぶのが正確だ。しかし1732年版と出版譜との違いは33曲、34曲、40曲が復活した点などわずかな点しかないため、一般的にはこの二つをほぼ同一のものとみなして、1749年版を第四版と数える習慣がすでに定着してしまっている。この記事でもその通例に従った。私一人で「第五版」などと主張しても意味のないことだ。出版譜を「3.5版」と書こうかと思ったが、煩わしいので「第三版」という表記にまとめさせてもらった。ご承知置き頂きたい。


閉じる コメント(11)

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このDVDは最近ケルンのオペラハウスでも売ってますね。同じやつです。ヨハネは第5稿まであるのですか?僕の持っている全集版は第二稿までしか載ってませんが、最終稿の出版社がわかれば良いと思います。

2008/3/5(水) 午前 0:47 [ 菅野茂 ]

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正確に言うと、4回の演奏会(そのうちの1回は結局中止された)向けに用意した版と、途中まで自筆で書き途中からは弟子に作業させた出版用の版の合計5つの版が存在するということだと思います。でもなぜか最後の版を「第四版」と呼ぶのが定着してしまっているので面倒です。この記事も通例に従って最後の版を第四版と書いたのですが、「出版譜は第三版とは違う」という細かい指摘をする人がいたので念のために注意書きを入れておくことにしました....

2008/3/7(金) 午前 1:12 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]

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ということは僕の楽譜もその最終版となのでしょうか。この版の違いもブルックナーのとこに行くと無数に出てきてうんざりしますね。よほど暇なのか更に各音楽学者の校訂が無数にあって、僕も一時対比してきたのですが、バッハにも同じような問題があるようです。

2008/3/8(土) 午前 4:15 [ 菅野茂 ]

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日本では通常の出版譜しか手に入らないのですが、多分そうだと思います。通奏低音にチェンバロが指定してあれば間違いなく最終版です。ちょっとですが歌詞の違いもあるので具体的にどこだったか確認してみます。少々時間を下さい。

校訂の問題はどんどんややこしくなってきているので、著作権の切れた作品の自筆譜は図書館がネットで公開して校訂者はその上に自分の成果を赤字で書き込む(赤字は非表示にもできる)というようなルールというかシステムができればいいのではないかと思っています。

2008/3/8(土) 午後 0:58 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]

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今度の聖金曜日のマタイのFM放送は鈴木指揮のBCJだそうです。来週全曲放送します。彼はこっちでモテまくっていますね。

2008/3/11(火) 午後 10:59 [ 菅野茂 ]

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さきほどのSWRですか? ネットで聞けるかな?

2008/3/11(火) 午後 11:05 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]

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どうもそこまではネットして無いようです。でもだんだんそうなっていくでしょう。

2008/3/11(火) 午後 11:20 [ 菅野 ]

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欧州は復活祭ですが、カトリックとは言っても世俗化が著しい多くのフツーのフランス人には復活祭は「連休」以上のものではないようです(笑)。
土曜日にミンコウスキが「ヨハネ」やってくれましたが、多分通常出版譜を用い、それに何故か第2稿で11番のコラールの後に追加されたバスとソプラノのアリア(Himmmel, reisse,)
を加えてました。プログラムには、1部と2部の間に休憩を挟まないため(これは劇的進行上も効果的だし歓迎)、長大な第2部に対しバランスを取るため」などと訳の分からぬことが書いてあっただけですし、正直なとこ理由は分かりません。単にバスとソプラノが歌いたがっただけかも知れませんが(笑)。
通奏低音は33番まではオルガンに加え、殆どのナンバーにチェンバロを重ね、さらにいくつかのナンバーではリュート(今村氏)を加えてました。

2010/4/4(日) 午前 9:49 [ 助六 ]

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ミンコの指揮は例によって速いテンポ(休憩なし全曲で2時間5分程度)でダイナミックですから、その上チェンバロが踊ると最初は「チャッチャカチャッチャカ」という感じでやや矮小な印象を抱きましたが、後半のイエスの磔刑から死に至る修羅場では、ヨハネ独自の「求心的劇性」とでも言うべき契機を抽出するのにチェンバロ付加は効果的な部分もあるなと感じました。もちろん33番の神殿の幕が裂け地が揺れる場面は大変効果的。34番以降はさすがにオルガンだけにしてましたから、最後は厳かな印象で終わります。ヨハネはマタイに比べて物語的な劇性は少ないにしても、強烈な内面的劇性を備えている事実に改めて思い至った気がしました。
19番のバスのアリオーゾ(Betrachte,)はリュートのみ、20番のテノールのアリア(Erwaege,)はオルガンとリュートの通奏低音でした。
合唱は各パート2人ずつの計8人だけで(アルト・パートは女声+CT)、全員がソリストも兼ね、福音史家がコラールの合唱にも加わっちゃう。

2010/4/4(日) 午前 9:53 [ 助六 ]

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ユングヘーネルとカントゥス・ツェルンが同じ発想で10人の合唱で「ロ短調ミサ」やった時には、合唱メンバーがソリストとしてやや弱く、合唱部分含め音楽的説得力は薄いと感じたのですが、今回は全員がレヴェルの高い「本物の」ソリストで、ソロ・パートはもちろん、コラールも透明な結晶体みたいに響きますし、トゥルバの表現性も強烈に出て、歴史的真正性は別にしても、音楽的説得力は大変高いと感じました。
ttp://www.sallepleyel.fr/francais/evenement.aspx?id=6563

2010/4/4(日) 午前 10:09 [ 助六 ]

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出版譜の通奏低音はオルガンです。第四稿はチェンバロで演奏されたそうなのでそれを使っているのかと思いきや第二稿のアリアを入れたり独自編集のバージョンといえそうですね。

2010/4/6(火) 午後 10:51 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]

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