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ブルックナー作曲交響曲第七番
チェリビダッケ指揮ミュンヘンフィル
(1990年10月18日)
カラヤンもバーンスタインもサントリーホールの舞台に立ったことはサントリーホールの国際的なプレステージを高める上で大いに意味のあることだった。1990年頃まで現役だった巨匠でサントリーホールの舞台に立たなかったのはクライバー(1992年のVPOのキャンセルが悔やまれる)と1982年を最後に来日しなかったジュリーニぐらいだろう。しかし1988年のカラヤンも1989年のバーンスタインも亡くなる直前の来日であり、その演奏が本当に名演だったのかどうかについては色々な意見があるだろう。
つまり「全盛期にサントリーホールに立って名演を残した巨匠」というと限られてしまうのだ。1988年のテンシュテットや1990年のヴァント、1991年のクーベリックなどはまさにこれに当たるが、彼らは1回しかサントリーホールに立っていない(1992年のテンシュテットはキャンセルだったし、2000年のヴァントの来日はタケミツメモリアルでの演奏だった)ので、これにさらに「全盛期に何度もサントリーホールの指揮台に立った巨匠」という条件を加えると数はもっと限られてしまう。チェリビダッケ、ベルティーニ、スヴェトラーノフ、シノーポリ、シュタイン、ショルティと言ったところだろうか。
この映像は1986年の5番に続いて1990年にチェリビダッケがサントリーホールで演奏した7番をソニーが収録したものだ。この時の来日ではブルックナーが集中的に取り上げられ他に4番と8番も演奏され8番はNHKでも放送された。衛星でアナログのハイビジョン試験放送が1989年に始まったのを受けてNHKと並んでハイビジョン映像の収録に熱心だったのがソニーだった。実はソニーはプロ用の放送機材で高いシェアを持っているのでハイビジョンの優秀さをアピールするソフトを増やすことでハイビジョン放送への関心を高める狙いがあったのだ。
そのためにチェリビダッケやショルティの映像を収録してLDで発売していたが、残念ながらこれらのソフトは廃盤になったままだ。オリジナルマスターからブルーレイにリマスタリングすれば相当な高画質が期待できるはずなので8番と並んでぜひBD化してほしい。
チェリはこの年の来日から座って指揮するようになったが緩んだ感じはしない。全体的には94年のEMI盤とほぼ同傾向の演奏だが4楽章のリズムがより弾んで結果的にわずかに速くなっているのが特徴的だ。何よりチェリの指揮したブルックナーが映像で残っているというのは人類の至宝だと言うべきだろう。ヴァント/NDRや1986年のヨッフム/ACOと並んでベスト3と言っていいのではないだろうか。
なおこの演奏はハース版とされるが第二楽章のシンバルは加えられている。あくまでハース版の通りに演奏したヴァント盤とこの点では大きく異なる。しかしノヴァーク版や改訂版に見られる(私が嫌いな)第一楽章や第四楽章フィナーレの加速はしていない。この曲の場合ハース版とノヴァーク版の違いは他に第二楽章がハース版でアンダンテ、ノヴァーク版でアダージョになっている位でそれほど大きくないのだが、全体としてはハース版の演奏と考えて良いと思う。
2日後の8番も良い演奏だがチェリはなぜかこの曲にはノヴァーク版を使用しているのが残念で、この7番の方がさらに素晴らしいと思う。チェリがこの後に7番を演奏したのはEMIが出している94年の演奏とベルリンフィルに復帰した92年の演奏(衛星で放送された)の2回だけだ。
1990(サントリーホール)24:17/27:28/11:40/13:50
1994(ミュンヘン)24:16/28:46/11:35/14:30
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