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・マーラー作曲交響曲第5番
テンシュテット指揮ロンドンフィル
(1988年12月13日ライブ)
http://www.youtube.com/watch?v=woaR8PnytsM
テンシュテット指揮ロイヤルコンセルトヘボウ
(1990年12月9日ライブ)
テンシュテットの2種類の「マラ5」が新たに正規入手可能になった。一つは1988年12月13日のLPOとのライブ映像、もうひとつは1990年12月9日にロイヤルコンセルトヘボウに客演した際のライブ録音だ。前者はEMIが同日の演奏とされるCDを発売していることは先日紹介した。大評判となった来日公演から帰国した直後の演奏で、BBCがテレビ中継したことも当時の東芝EMIのチラシにすでに触れられていた。
私はこれを何とかDVD化してほしいという希望を10年以上いろんなところで書きこんできたのだがようやく夢がかなった。これまでテンシュテットの映像はLD時代から出ていた3点(マーラーの1番と8番、来日公演のワーグナー)しかなかったので大変な朗報だ。
このため大変な期待を持って聞いたのだが、肝心の演奏はまあまあと言ったところだろうか。残念なことに金管の調子が全体的に今一つなのだ。特に第一楽章は冒頭のトランペットにミスがあることもあってテンシュテットの演奏としてはやや散漫に聴こえる。EMIのCDにはこのミスはないのでCDは別テイク、あるいは別編集のようだ。実は先日紹介した3番のライブにも金管のミスはなくはない。オケが指揮者に反応しようとして棒に集中する余りに、楽譜を見る余裕がなくなってミスが出るということはクライバーのライブでも時に見られることだ。
しかし「マラ5」はすでに名演・名盤ぞろいであり、テンシュテット自身も1978年の素晴らしい録音をすでに残しているだけにこの出来では少々点数が辛くなってしまう。この映像の存在は分かっていたのに、なかなか商品化されなかった理由が何となく分かった気もする。それでもテンシュテットの4点目の映像として得意の5番が見られるようになったことを喜びたい。
ロイヤルコンセルトヘボウとの演奏は丁度その2年後のものだ。RCOの1990年代のライブを集めたアンソロジー(14枚組BOX)に収められたものだがCD-Rの海賊盤では以前から有名な演奏だったらしい。LPOよりもウエットで粘着質な体質を持ったオケと、最晩年のテンシュテットの棒の相乗効果で2年前の演奏よりもはるかに濃厚な表現になっている。特に第一楽章のテンポは明らかに遅くなっている。
正直に言うと個人の主観が強すぎるマーラーには私は少し抵抗があるのだが、それでもこの演奏の有名なアダ―ジェットのひっそりとした表情には息を飲むような独特の魅力がある。終楽章は逆にテンポが速くなりすっきりした表情になっているのも特徴的だ。テンシュテットがロイヤルコンセルトヘボウとどの程度共演したことがあるのか私は知らないが、晩年のテンシュテットの棒にこれだけ反応し、かつ技術的に破たんしていないのはさすがに名門オケだ。録音はややオフ気味で非常に鮮明という訳にはいかないが安定はしている。
LPO(1978)13:53/15:18/18:12/11:55/16:19
LPO(1988)13:38/15:25/18:06/11:21/15:52
RCO(1990)14:35/15:53/18:36/12:11/15:09
今回の2枚を聞いてもテンシュテットの最良のマラ5は最初の1978年のスタジオ録音だという思いは変わらなかったが、いずれもテンシュテットの晩年の芸風を伝える貴重な記録だ。特にロイヤルコンセルトヘボウとの演奏は濃い目のマーラーがお好きな向きには歓迎されるのではないだろうか。
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