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カルショウの回想本「レコードはまっすぐに(学研刊)」でカーゾンに関する面白い記述を見つけた。カルショウにとってカーゾンはデッカに入社する以前から「最愛のピアニストの一人」で、1947年の初仕事以来「生涯の友人」だったという。さらに、カーゾンとの仕事は「大惨事を鞄に入れて持ち歩いているような」もので、どんなに警戒しても他の誰の場合も起きないような不首尾が発生したそうだが、「彼の音楽づくりを手伝う喜びはそれを忘れさせるものだった」という。
カーゾンは1967年にカルショウがデッカを離れて数年後にはデッカへの録音を止めてしまうので、カーゾンにとってもカルショウが信頼できるパートナーだったことは恐らく間違いないだろう。
カルショウはセルとカーゾンのブラームスの録音についても面白いことを述べている。「事情をよく知らない者には、憎しみ合っているとしか見えなくても仕方がないような愛憎の入り交じった関係を続けていた」だというのだ。しかし「結果は壮大なもので、作品15に注がれた音楽的才能と洞察力は、作品そのものと同様に、記念碑的なものだった。無礼な言葉は熱しすぎた蒸気を逃すためであり、それによって音楽自体の気圧は正常に保たれたのだ」そうだ。
歴史的な熱い名盤はこういう演奏者や関係者の相互理解とギリギリの努力によって生まれるのだ。現代ではソリストもオケもレコードメーカーもあまりにも多忙でビジネスライクに仕事をするようになったので、どうしても予定調和的な演奏が多くなっているように思う。
ちなみにHMVのサイトによるとauditeがCD化しているカーゾンがクーベリックの1970年1月の放送用ライブ(?)の24番のフィナーレの短いカデンツァはセルによるものだという。セルはこの年大阪万博に来日し、クリーブランドに帰国直後の9月に急逝してしまった。
少し長いがデッカが出したコンプリートBOXの曲目を最後に紹介しておこう。
CD1
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.73『皇帝』
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ジョージ・セル(指揮)
録音:1949年9月(モノラル)
・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23
ロンドン新交響楽団
ジョージ・セル(指揮)
録音:1950年9月(モノラル)
CD2
・シューベルト:4つの即興曲 D.935, Op.142
録音:1952年12月(モノラル)
・シューベルト:ピアノ・ソナタ第17番ニ長調 D.850, Op.53
録音:1963年6月(ステレオ)
CD3
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ジョージ・セル(指揮)
録音:1964年12月(ステレオ)
CD4
・フランク:交響的変奏曲
・アンリ・リトルフ:交響的協奏曲第4番ニ短調 Op.102
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
エイドリアン・ボールト(指揮)
録音:1955年、1958年(ステレオ)
・ファリャ:スペインの庭の夜
ロンドン新交響楽団
エンリケ・ホルダ(指揮)
録音:1951年7月(モノラル)
・アラン・ロースソーン:ピアノ協奏曲第2番
ロンドン交響楽団
マルコム・サージェント(指揮)
録音:1951年10月(モノラル)
CD5
・シューベルト:幻想曲ハ長調『さすらい人』(リスト編曲版)
クイーンズ・ホール管弦楽団
ヘンリー・ウッド(指揮)
録音:1937年4月(モノラル)
・モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 K.478
・モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調 K.493
アマデウス四重奏団メンバー
録音:1952年9月(モノラル)
CD6
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
ナショナル交響楽団
ボイド・ニール(指揮)
録音:1945年12月(モノラル)
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
ナショナル交響楽団
エンリケ・ホルダ(指揮)
録音:1946年1月
CD7
・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ゲオルク・ショルティ(指揮)
録音:1958年10月(ステレオ)
・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 Op.18
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
エイドリアン・ボールト(指揮)
録音:1955年6月(モノラル)
CD8
・グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 Op.16
ロンドン交響楽団
エイヴィン・フィエルスタート(指揮)
録音:1959年6月(ステレオ)
・ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.83
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
録音:1955年7月(モノラル)
CD9
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
録音:1954年4月(モノラル)
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.73『皇帝』
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
録音:1957年6月(ステレオ)
CD10
・シューベルト:4つの即興曲 D.899, Op.90
録音:1954年6月(モノラル)
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491
ロンドン交響楽団
ヨーゼフ・クリップス(指揮)
録音:1953年10月(モノラル)
CD11
シューマン:
・幻想曲ハ長調 Op.17
・子供の情景 Op.15
録音:1954年3月(モノラル)
・シューベルト:幻想曲ハ長調『さすらい人』 D.760, Op.15
録音:1949年7月(モノラル)
CD12
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム(指揮)
録音:1953年5月(モノラル)
・グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 Op.16
ロンドン交響楽団
アナトール・フィストゥラーリ(指揮)
録音:1951年10月(モノラル)
CD13
リスト:
・ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
・『愛の夢』第3番変イ長調 S.541-3
・忘れられたワルツ第1番嬰ヘ長調 S.215-1
・演奏会用練習曲第2番嬰ヘ短調『小人の踊り』 S.145-2
・子守歌 S.174
録音:1963年9月(ステレオ)
CD14
・ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番イ長調 Op.81
・フランク:ピアノ五重奏曲ヘ短調
ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団
録音:1962年、1960年(ステレオ)
CD15
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
・ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491
ロンドン交響楽団
イシュトヴァン・ケルテス(指揮)
録音:1967年10月(ステレオ)
CD16
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第26番ニ長調 K.537『戴冠式』
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
ロンドン交響楽団
イシュトヴァン・ケルテス(指揮)
録音:1967年12月、10月(ステレオ)
CD17
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
ロンドン交響楽団
ジョージ・セル(指揮)
録音:1962年6月(ステレオ)
・ブラームス:愛の歌(18のワルツ、4声と4手ピアノのための) Op.52
・ブラームス:新しい愛の歌 Op.65〜『さて、ミューズよ』
イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)
キャスリーン・フェリアー(アルト)
ユリウス・パツァーク(テノール)
ホルスト・ギュンター(バリトン)
ハンス・ガルピアーノ(ピアノ)
録音:1952年9月(モノラル)
CD18
・シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調 D.667, Op.114『ます』
ウィーン八重奏団員
録音:1957年10月(ステレオ)
・ブリテン:序奏とブルレスク風ロンド Op.23-1
・ブリテン:マズルカ・エレジアカ Op.23-2
ベンジャミン・ブリテン
録音:1944年1月(モノラル)
・ウィレム・ペイペル:交響曲第3番
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム(指揮)
録音:1953年5月(モノラル)
CD19
・シューベルト:即興曲 D.899, Op.90-3&4
録音:1963年6月(ステレオ)
・シューベルト:即興曲変イ長調 D.935-2
・シューベルト:楽興の時 D.780, Op.94
・ベートーヴェン:『エロイカ』の主題による15の変奏曲とフーガ変ホ長調 Op.35
録音:1971年2月、4月(ステレオ)
CD20
・ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 Op.5
・ブラームス:間奏曲変ホ長調 Op.117-1
・ブラームス:間奏曲ハ長調 Op.119-3
録音:1963年12月(ステレオ)
・シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960
録音:1972年11月(ステレオ)
CD21
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
イギリス室内管弦楽団
ベンジャミン・ブリテン(指揮)
録音:1970年9月(ステレオ)
CD22
・ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ ト長調 Op.129
・メトネル:4つの抒情的断片 Op.23-3
・リスト:ペトラルカのソネット第104番
・ブラームス:カプリッチョ ロ短調 Op.76-2
・ブラームス:間奏曲ハ長調 Op.119-3
・ブラームス:間奏曲変ホ短調 Op.118-6
・ブラームス:ラプソディ第2番ト短調 Op.79-2
・ブラームス:間奏曲変ホ長調 Op.117-1
・リスト:メフィスト・ワルツ第1番 S.514
・リスト:『愛の夢』第3番変イ長調 S.541-3
・ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調
録音:1942〜1949年(モノラル)
・ファリャ:スペインの庭の夜
ロンドン新交響楽団
エンリケ・ホルダ(指揮)
録音:1945年9月(モノラル)
CD23
・『BBCインタビュー』(「師シュナーベル、ランドフスカの思い出」「無人島への一枚」について語る)
録音:1973年、1978年
DVD【BBCリサイタル】
・シューマン:子供の情景 Op.15
・ブラームス:カプリッチョ ニ短調 op.116-1
収録:1959年(モノクロ)
・シューベルト:『楽興の時』第3番 D.780
・シューベルト:即興曲第2番変イ長調
・シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960
収録:1968年(カラー)
画面:4:3
音声:PCM 2.0 Enhanced Mono
NTSC
Region All
クリフォード・カーゾン(ピアノ)
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