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・ヴェルディ:歌劇『椿姫』全曲
ヴィオレッタ:レナータ・スコット(ソプラノ)
アルフレード:アルフレード・クラウス(テノール)
ジェルモン:レナート・ブルゾン(バリトン)
フローラ:サラ・ウォーカー(メゾ・ソプラノ)
アンニーナ:シンシア・ブシャン(ソプラノ)、他
アンブロジアン・オペラ・コーラス
ロイヤル・マリーンズ・バンド
フィルハーモニア管弦楽団
リッカルド・ムーティ(指揮)
録音:1980年7月
実は私がこの曲を最初に全曲聴いたのはこの演奏だ。60年代はリリックだったスコットがトスカやアドリアナ、あるいはフェドーラを主なレパートリーとするようになった頃の演奏だ。名曲名盤の類ではクライバー盤の評価が圧倒的に高いので76年時点のコトルバスによる相当軽めのヴィオレッタを基準にこの曲を聴いている方も多いと思う。そういう方にとってはここでのスコットの歌唱はかなり重たく感じられるかも知れない。確かにクラウスの渋いアルフレートともども若々しさには少し欠けるかも知れないが、品格のある立派な演奏の一つだと思う。スコットが同時期に録音したトスカと共に印象に残る録音だ。
スコットのヴィオレッタは1973年のNHKイタリアオペラのDVDを以前紹介したが、そこでの歌唱は丁度リリックからスピントへの転換期で、正直なところ特に中音域以下の音が歌いにくそうだった。声を抜いているような感じに聞こえる箇所もあったが、この録音では劇的な表現を身につけた新しいスコットの歌が聞ける。
ムーティによる原典主義の演奏である点もこの盤の特徴だ。1幕で花から花への最後を上に上げない(楽譜通り、下記ボーカルスコアの69ページ参照)のはもちろんのこと、2幕冒頭のアルフレートのアリアの後のカバレッタの最後も楽譜通りだ(80ページ)。ヴィオレッタの1幕アリア「ああ、そはかの人か」の2番(60〜61ページ)と3幕アリア「さようなら過ぎ去った日よ」の2番(200〜201ページ)と、アルフレートの2幕のカバレッタの2回目の繰り返し(77〜79ページ)、それに2幕のジェルモンのアリアの後のカバレッタ(116〜120ページ2段目)の4箇所はライブでも録音でもよくカットされるが、この演奏は完全全曲盤だ。
http://erato.uvt.nl/files/imglnks/usimg/f/f0/IMSLP27484-PMLP16223-Traviata_-_vocal_score.pdf
ヴィオレッタの2つのアリアはライブでは歌手の体力を考慮するのもやむを得ないとしても、少なくとも録音でば2番(第2節とも言う)まで歌うべきだと思う。この2つのアリアだけでもムーティ盤を聞く価値はある。90年代ぐらいまではこの演奏の評価は比較的高く、クライバー盤、セラフィン盤に次いで3位ぐらいの位置を占めていたが最近は忘れられた存在になりつつあるのは残念だ。
ちなみにクライバー盤はよくあるようにヴィオレッタの1幕と3幕のアリアの2番、アルフレートの2幕のカバレッタの同じ内容の繰り返しの3箇所をカットしており、2幕のジェルモンのカバレッタは演奏しているが同じ内容の繰り返し部分(117ページ3段目〜119ページ1段目)はカットしている。
(追記)
対訳はいつものようにオペラ対訳プロジェクト参照。ちなみにヴィオレッタのアリアはカットなしで2番まで訳してある。素晴らしい!
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/105.html
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私が初めて聞いた「トラヴィアータ」の全曲盤は62年録音のヴォット指揮スカラ座スコット主演のDG盤でした。図書館が持ってたからです。バスティアニーニも出てるし高崎さんの評価も「全員イタリア人による唯一のトラヴィアータ録音」とか好意的だったので。確かにスカラのオケの強靭さは魅力でしたが、私は若い頃のスコットは高音が金属的なのが耳に障って親しみを持てませんでした。彼女は実にデビュー直後の53年、20歳前にミラノのテアトロ・ヌオーヴォ(1100席)でヴィオレッタを歌ってるんですが、まだ60年代初めはベルカントも盛んに歌っていた頃だし変ホも軽く出してましたね。
2013/11/30(土) 午後 2:41 [ 助六 ]
一方声が重くなって重い役に進出した70年代半ば以降の録音は「ルクヴルール」「シェニエ」「ナブッコ」「オテロ」「ノルマ」「トラヴィアータ」(すべて図書館にあった)と今度は逆に軒並み声の衰えと力みが耳について、これまた良さが分からず仕舞い、83−90年代初めにはパリで3回リサイタルに触れるチャンスもあったのですが、相変わらず声の衰えばかりに気を取られてしまい、スコットとは彼女が現役の間はすれ違いばかりでした。キャリア後期の彼女のヴェルディ歌唱、このトラヴィアータや特にデズデモーナを本当に素晴らしいと思うようになったのはずっと後のことになります。
最近NHKイタリア・オペラが67年に東京で上演したバルトレッティ指揮「ルチア」に出演している録音を聞きましたが、驚嘆物の素晴らしさ。アジリタの技術は確かでニュアンスも豊かな上ドラマティックな迫力も加わり、カラスを除けばこんな毅然としたルチアはめったにないと思います。共演のベルゴンツィも素晴らしいのに日本では伝説化しなかったようですから、当時の日本はまだデルモナコ・ショックが大きくて、ベルカントにはあまり反応しなかったということでしょう。
2013/11/30(土) 午後 2:42 [ 助六 ]
彼女はこの年67年末にアバドの指揮でスカラ開幕の「ルチア」に出演することになります。
私も最近は60年代のスコットのメタリックな高音も表現性の一部として受け入れることが出来るようになってきました。
「トラヴィアータ」はパヴァロッティと共演したチラーリオ指揮の65年ロンドン・ライヴも残っているけれど、今聞いてみると高音のキンキンは相変わらずだけれど、旋律運びやディクションはすでに後年の成熟を十分予測させる劇性と品を備えてますね。
クライバーは「ばら」なんかにしてもかなり臆面なくカットするタイプですね。覇気溢れテンポが速い壮年期のクライバーの音楽作りを考えれば納得できる気はしますが、原典主義が進む中、今後その辺がどう評価されるかは興味があります。
2013/11/30(土) 午後 2:43 [ 助六 ]
私も、おそらく30年ぐらい前、始めて全曲盤を聞いたのはこれだと思います。ハイライトのクライバー盤を先に聴いていて、あんまりよくないなーと思っていたら、図書館でこのスコットのLPを借りてきて聴いたら目を開かれました。今では、古い62年録音の方をよく聴いています。
2013/11/30(土) 午後 4:58
にけさんお久しぶりです!
私もクライバー盤を最初に聞いたときは勢いのあるオケに驚くと同時に歌には多少の違和感を感じたのを覚えています。コトルバスもドミンゴも軽くて歌自体は81年のメットの方がはるかに良いと思いますが、クライバー盤は若いカップルを表現したかったのでしょう。
スコットの62年盤は聞いたことがないので今度聞いてみます。
2013/12/1(日) 午前 6:47 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]
>助六さん
私はスコットの生歌には触れられなかった世代ですが、この椿姫とレヴァインとのトスカはなぜか当時から好きな演奏の一つでした。でもリリックだったスコットが好きな方は67年頃がピークだったとおっしゃりますね。
クライバー盤に限らずヴィオレッタの1幕と3幕のアリアの2番を省略する習慣が録音でもアリア集でも完全に定着してしまったのはなぞです。特に3幕アリアはトラヴィアータという作品名の由来になった歌詞なのでせめて録音では2番も歌ってほしいところです。
実はクライバーの伝記によると、録音の際にプロデューサーのヒルシュは2番も演奏してほしいと希望したそうですが、「検討に値しない」と却下されてしまったそうです。
ただ、私は中期ヴェルディのブンチャカチャッチャがあまり得意ではないので2幕の2箇所のカバレッタはクライバー盤の通りの処理が良いと実は思っています(笑)
2013/12/1(日) 午前 6:54 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]