こだわりクラシック Since 2007

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ヴェルディ:歌劇『椿姫』全曲[1853年初演版]

 ヴィオレッタ:パトリツィア・チオフィ
 アルフレード:ロベルト・サッカ
 ジェルモン:ディミトリー・ホロストフスキー
 フローラ:エウフェミア・トゥファーノ
 アンニーナ:エリザベッタ・マルトラーナ

 フェニーチェ座管弦楽団&合唱団
 ロリン・マゼール(指揮)
 演出:ロバート・カーセン
 2004年11月18日、ヴェネツィア、フェニーチェ座でのライヴ収録
http://www.youtube.com/watch?v=UbtcmXI9Fho
 
 この演奏は椿姫が1953年3月にフェニーチェ座で初演された際のバージョンを復元したものだ。ヴェルディは1年2ヶ月後の再演に際して、改訂した部分の手書きフルスコアを差し替えて破棄したらしい。このため初演版の復元はフェニーチェ座に残されていた写譜から行われた。復元部分はリコルディの新しいクリティカルエディションの楽譜に付録として掲載されているそうだ。ちなみにヴェルディは初演を失敗と捉えていたようだが、実際は9回もの上演が行われ、その後ローマからも上演要請が来ているなどの点から、ヴェルディが満足する内容ではなかったものの大失敗ではなかったと考えられる。

 細かい違いは結構あるようだが、耳に付く主な違いは3点ある。1.2幕1場のジェルモンのアリアの後のカバレッタが現行版と異なる。全体的に現行版より高い旋律になっていて長さも長い。現行版は再演でジェルモンを演じた歌手の声域に合わせて低めに修整されたらしい。2.2幕2場のフィナーレ、アルフレートが札束を投げつけた後でヴィオレッタが現行版と異なる高い旋律を歌う。長さも長い。3.3幕で「パリを離れて」のデュエットの後からジェルモンが登場するまでの間の音楽が歌詞も旋律も現行版と異なり、調性も半音高くなっている。

 正直なところ現行版より特に優れていると思った点はなかった。ヴィオレッタの2つのアリアには特に手は加えられていないと思う。いずれも2番(第二節)まで歌っている。カーセンの極めて現代的な演出は残念ながら私の趣味には全く合わない。歌手も頑張っているとは思うがこの人でなければと思うには至らない。マゼールの個性的な指揮もイタリアオペラっぽくはなく、資料的な価値は大きいが一般にはお勧めしにくい演奏だと思う。

 だが、ヴェルディの改訂癖が中期作品の段階で既に始まっていたという事実は、その後の作品の度重なる改訂を考える上で重要な示唆を与えるものであり、作曲者の原意を知る上で貴重な資料ではある。

(追記)
なお、チョフィには通常版によるオランジュでの2009年の映像もあって、歌はこちらの方が良いように思うが、1幕アリアの2番はカットしている。2004年の演奏はやはり指揮者の指示だった可能性が高い。
Violetta Valery : Patrizia Ciofi

Flora Bervoix : Laura Brioli

Annina :Christine Labadens

Alfredo Germont : Vittorio Grigolo

Giorgio Germont : Marzio Giossi

Orchestre Philharmonique de Radio France

Conductor : Myung-Whun Chung

Producer : Frédéric Bélier-Garcia
11 Jul 2009
http://www.youtube.com/results?search_query=traviata+ciofi+2009+atto&sm=3

「「初稿・異稿」特集、器楽・オペラ」書庫の記事一覧

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この録画はずっと以前に見て以来ご無沙汰ですが、第2幕のシェーナ中 Or imponete. / Non amarlo ditegli. ... の部分が少し違っていたのもわりと記憶に残っています.Ricordiの校訂版楽譜を持っていないのですが、どなたかこのDVDと突き合わせて比較された方はいらっしゃらないでしょうか.全体としては現行版が優れている印象を持ちました.

2013/12/12(木) 午後 5:56 [ M. F. ]

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M. F.さんこんばんは
細かく聞くとかなり色々違っていますよね。私も現行版の方が優れていると思いますが、初演版の楽譜も見てみたいものです。ただ、いかんせんシカゴ大学が編纂しているリコルディのクリティカルエディションの分厚い楽譜は高くて....このDVDと突き合わせている暇も金もないといったところです。ただリゴレットのように旧リコルディ版がすでに手に入らなくなっている曲もあるので、椿姫もゆくゆくは新校訂版の使用が普通になるのでしょうね。それと平行してアリアの2番もカットなしが普通になると予想しています。

2013/12/12(木) 午後 7:15 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]

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そうですね。普通に聞いて耳につく変更箇所はご指摘されてる3点と、M.F.さんが触れられてる2幕のヴィオレッタとジェルモンの二重唱の計4点くらいで、あまり本質的改変ではないにしても、現行版は劇的効果がより直裁になり成功した改訂ということでしょうね。
96年に焼失したフェニーチェは曲折を経て03年12月に漸く再建・再開したものの記念公演はムーティらの指揮による一連のコンサートだけで、このトラヴィアータ上演はその1年近く後に再開後初のオペラ上演となった公演でしたね。プレミエはとんでもないチケット代取ったような。
フェニーチェ再開の04−05年シーズンは誰の采配だったのか知りませんが、「トラヴィアータ」初演版に加え、マスネの「ラオールの王」とかロッシーニの「マホメット2世」とかなかなか意欲的プログラミングでした。
このカーセンのプロダクションは07年4月に通常版に戻して再演され、09年9月にも通常版で再演、その後もしばしば再演されています。

2014/1/3(金) 午前 6:24 [ 助六 ]

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私も09年9月の上演を見たのですが、指揮はチョンでチョーフィ、グリゴーロ、ストヤノフといった面々でした。チョーフィの歌唱はその2ヶ月前ほぼ同じ演奏陣でやった09年7月のオランジュ上演(こちらはヴィデオで見ただけですが)の方が情感の点で優れていた記憶があります。「拝金社会」を強調した演出は失敗ではないにしても、それ以上の発見があるわけでもなく多様で出来不出来の多いカーセンの仕事の中で特に優れたものとは思いませんでした。
マゼールのトラヴィアータと言うと、ベルリン・ドイツ・オペラでローレンガー、アラガル、F−Dを起用した68年のデッカ録音が、指揮はキワモノ爆発、バリトンがユニークな歌唱で擦れた私は大好きな演奏ですが、今はマゼールも幸か不幸か大分落ち着いてきてますよね。

2014/1/3(金) 午前 6:26 [ 助六 ]

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>このカーセンのプロダクションは07年4月に通常版に戻して再演

初稿版のために作った舞台を現行版に戻して上演するというのも珍しい例ですね。私もカーセンの演出は過剰にヒステリックなだけであまり見るところはないと思います。マゼールはベルリンの時よりはおとなし目ですが、それでもところどころ普通のイタリアの演奏では聞かれない節回しがマゼールっぽいですね。

2014/1/9(木) 午後 4:23 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]

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ボローニャの清教徒で、DVDにした現地上演(フローレスにマチャイゼ主演)は新校訂版だったけれど、日本に持ってきたら慣用版だったというのがそういえばあったそうですね.私はどちらも見ていませんが.

2014/1/9(木) 午後 9:43 [ M. F. ]

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そうだったんですか。デッラ=セータ新校訂版の大きな貢献は、1835年のパリ初演時にベッリーニが初日前に時間の関係で不本意にカットした3幕最後のストレッタ「Ah! sento o mio bell'angelo」を二重唱で(ナポリ上演用「マリブラン版」のソプラノ・ソロでなく)復活させたことで、先立つコンチェルタートcredeasi, misera」がテノールとソプラノに率いられている以上、ストレッタもソプラノ・ソロでなくデュエットで歌うのが音楽的ドラマトゥルギー上も論理的かつ効果的でしょう。
指揮のマリオッティはマチャイゼとフローレスを起用した09年のボローニャ上演DVDでは校訂版に従って最後の二重唱を演奏してますが、先日13年11〜12月のパリ・オペラ座上演では通常版に戻してストレッタは演奏せず残念でした。パリでのソロはアグレスタとコルチャーク/バーベラでした。

2014/1/11(土) 午後 0:42 [ 助六 ]

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ボローニャの11年日本公演のキャストも、ランカトーレとキャンセルしたフローレスに替わったアルベロとシラグーザだったそうですから、最後のストレッタをやらなかったのだとしたら歌手の意向もあったのかも知れません。ただアルベロは09年ボローニャ上演でフローレスの裏配役だったし、あのストレッタはとんでもなく負担が大きいものとも思えないのですが。
マリオッッティはこの辺のレパートリーで大変優れた若手指揮者だと思いますが、何故日本客演やパリ上演ではストレッタを止めてしまったのか訊いてみたいところです。
「トラヴィアータ」初演版はまあ知的興味の対象に留まり、通常版の方が成功していると思えるから通常版に戻しても構わないでしょうが、「清教徒」は新校訂版の方が音楽的にも優れてるように思うので。

2014/1/11(土) 午後 1:02 [ 助六 ]

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なるほど。ベルカントオペラはイマイチ苦手で清教徒も詳しくないのですが新校訂版は大きな違いがあるのですね。無限に旋律がつながっていくワーグナーの書式の原点はベッリーニにあるという説もあるそうなので、清教徒も一度真剣に勉強してみようと思います。

2014/1/12(日) 午後 0:50 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]


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