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・シューベルト:歌曲集『冬の旅』 Op.89, D.911

 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
 アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
 収録:1979年1月、自由ベルリン放送局
http://www.youtube.com/results?search_query=fischer-dieskau+schubert+winterreise&sm=3

 プライのシューベルトを聴いたらフィッシャー=ディースカウ(F=D)のシューベルトも聴きたくなった。ソニーがLDで出していた冬の旅の映像をだいぶ以前に紹介した。それはペライアが伴奏した1990年の演奏で(F=Dの最後の冬の旅の録音)、通常のコンサートスタイルの映像だった。今回紹介するDVDは1979年にもともとはテレビ放送用に収録されたもので大変凝った映像になっている。

 照明が落とされた暗い舞台にF=Dとブレンデルの上半身だけがスポットライトで浮かび上がっている。場所はホールのようだが、どの程度の大きさなのかはこの映像からは分からない。特にF=Dは青白いライトで向かって左側から照らされているので、顔の左半分は影になっている。

 F=Dは青白いライトが好きだったようで、1991年頃に収録したエッシェンバッハとの美しき水車小屋の娘やシューマンの映像も同様のライティングだったと記憶している。この照明は冬の旅には特に合っている。見ているだけで大変寒い映像だ。ペライアとの映像がまだDVD化されていないのに(CDは出ている)この映像のDVD化を認めたのはF=Dもこの映像が気に入っていたのではないだろうか。

 歌もF=Dが80年代に一時期調子を落とす直前の収録だけに、長年歌い込んだこの曲の集大成というべき大変に厳しい表現だ。不健康なくらいに鋭利に研ぎ澄まされた歌唱は、この名歌手の数多い名演の中でもひときわ際だった絶唱と言うべきだろう。F=Dの冬の旅は最近出た1978年のポリーニ盤まで無数の録音がある。その全部を聴いている訳ではないが、F=D史上「最も寒い」冬の旅はこの演奏を置いて他にないだろう。吹雪く中をコートの襟を立てて、遠くに見える町の明かりだけを頼りにガチガチ震えながら一人で歩いているような辛い冬の旅だ。山小屋で薪を囲んでわずかな暖を友と分かち合っているようなプライの冬の旅とは風情はかなり異なる。

 そのどちらが素晴らしいのではなく、どちらもが素晴らしいのだ。この2人が曲に対する姿勢も(恐らくは)性格や人生観も大変異なる存在だったことが、映像で聞き比べるとよりはっきりと伝わってくる。ぜひどちらも見て欲しい。F=Dを聴けばプライが聴きたくなり、プライを聴けばF=Dが聴きたくなるだろう。この映像より自然なカメラワークの90年のペライア盤(ハイビジョン収録)も早くDVD化、あるいはブルーレイ化されることを期待したい。

 なおこのディスクには1時間のリハーサル風景(ドイツ語)がおまけで入っているが、英語の字幕すら付いていないので何を話しているのか私には残念ながら分からない。TDKがソフト事業から撤退してしまったので国内盤が出ていないのは残念だ。

冬の旅の対訳は梅丘歌曲会館を参照。
http://homepage2.nifty.com/182494/LiederhausUmegaoka/songs/S/Schubert.htm

「フィッシャー=ディースカウ」書庫の記事一覧

閉じる コメント(6)

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これはベルリン郊外にある1910年代建設の屋敷「ジーメンス・ヴィラ」で収録されたものですね。企業家が建ててしばらくジーメンス家の所有だった由。
コンサートに使われる広間は客席400席程度の由。
https://www.google.fr/search?q=villa+siemens+berlin&hl=ja&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=emy7Us_JJ4XW0QWOooHIDg&ved=0CCkQsAQ&biw=842&bih=591

ブレンデルは歌曲でプライと共演したこともあるそうです。プライによると64年のヴィーン芸術週間でのことで、シューベルトへの情熱は共通だったけれど「最後のリハーサルまで意見が一致することはなく」、それでも「いくつか忘れ難い演奏を達成できた」。さもありなんですね。

2014/1/19(日) 午前 11:38 [ 助六 ]

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ブレンデルは01年出版の談話でプライとF−Dについてこんなことを言ってます。「(ピアニストにとって歌手との共演は)非常に有用だ。ピアノのソロ演奏に歌がもたらしてくれるものについてだけではなく、ピアニストがリートのパートナーにもたらすものについてもだ。F−D以降伴奏者ではなくパートナーを望み必要とする歌手が出現している。私はパートナーとしてのピアニストを希望し、パートナーを忍ぶ歌手としかやらなかった。私が初めてリートで大きな経験をしたのはプライとの共演でだが、今でも思い出すがプライは時々コンサートの最中、曲間で「大きすぎる」と囁いてきた。F−Dは最初の練習で「もっとやっていい」と言ってきた」。

2014/1/19(日) 午前 11:41 [ 助六 ]

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プライのF−D評は、「私は危機を経験した。48年にF−Dを聞いたときのように。私より4歳だけ年上の彼はベルリンのティタニア・パラストでヘルタ・クルストの伴奏で冬の旅を歌い、私は非常に感動した。会場を後にしながら私は他の誰かが私が求めている理想を実現しているのに、自分が続ける余地はあるのかと自問した。今にして私はF−Dは新たなスタンダードを設置していたのだったと分かる。それがなければ私は決して自分をこれ程実現できなかっただろう。後に私はこの偉大な同時代人のやり方から距離を取ったが、それは理解できることだ。私は彼の影響でF−Dのコピーになってしまうことを避けたかったのだ。後になって共通の友人たちは私にF−Dは私が彼に競争意識を持っていることを知っていたからさらに不愉快だっただろうと教えてくれた。時はこの緊張を自然に解決してくれた。我々はその後ザルツやミュンヘンで舞台を共にし、私にはこの大歌手との共演の幸せな思い出がたくさんある」。

2014/1/19(日) 午前 11:44 [ 助六 ]

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逆にF−Dのプライ評は、「プライが私のデビューの約4年後に歌い始めた時、私は我々双方にそれぞれ居場所があることを一時たりとも疑わなかった。彼の声は構造でも音色でもまるで私の声と異なっていたからだ。我々はレンネルトのフィガロで初めて舞台共演したが、それまでにお互いの恨みは募っていたので、最初の接触は控え目で腫れ物に触るように慎重に付き合い始めた。その後状況は変わった。遅くともザルツのレンネルトの有名なコジの際には協調は完璧だった。私が常にあまり面白くなかった唯一のことは、プライがプログラム、伴奏者、リサイタル・ツィクルスの選択でいつも殆ど自動的に私の真似をしたことだ。
私の4年後に生れた彼はシューマンの作品35のケルナー歌曲を私の4年後に取り上げ、最初のリサイタル・ツィクルスを4年後に組み、4年後にカール・エンゲルを伴奏者に迎え、バイエルン芸術アカデミーに4年後に入った。慣れたが、私がプライを真似て軽い音楽をやるように頼まれても私は残念ながら断る。(…)自分がプライほど巧みに客を楽しませられるか確かめたいとは思わないからだ。多分彼は私の4年後に引退するだろう…」。

2014/1/19(日) 午前 11:48 [ 助六 ]

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実際にはプライの早い死によるキャリア終了はF−D引退の6年後でしたね。まあまあ当たったとも言えるかも知れませんが。
それにしてもこのF−Dとブレンデルの真摯一本槍の「冬の旅」はシューベルトの音楽も恐ろしいけれど、演奏も空恐ろしい。救いのない「菩提樹」の凄まじさ!奇跡的演奏の奇跡的映像が残ったのは幸いでした。
私のような単なる聞き手にとってもF−Dの呪縛力は強烈ですから、ましてや同世代の歌手たちには気にせずにはいられない存在だったでしょう。
そんな中でF−Dを強烈に意識しながらも、まるでそれと異なってながらかつ勝るとも劣らず高度で安らぎを与えてくれるリート歌唱の実現に成功したプライにはあらためて敬意と感謝を覚えます。

2014/1/19(日) 午前 11:57 [ 助六 ]

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助六さん詳しい情報ありがとうございます。
プライとブレンデルが64年に共演していたとは意外です。その後は共演していないようですがその理由は推して知るべしなのでしょう。F-Dは歌手引退後も朗読や指揮で音楽活動は続けていたので(1996年に指揮したアルト版の大地の歌がオルフェオからCD化されています)、プライの早すぎる死は悔やまれます。親友ヴンダーリヒと同じくらい突然でした。シューベルト生誕200年にあたる1997年のシューベルティアーデが最後の来日でしょうか(私は聞きに行けずテレビで見ただけですが録画は大事にしています)。
プライがクルスト伴奏でのF-Dの冬の旅を聞いていたというのも運命的ですね。若い頃のF-Dは後年より柔らかい声をしていたのでプライがそこに理想を見いだしたのも分かるような気がします。その後のF-Dはまるで千利休のようにストイックに切り詰めてきましたがその究極がここでのブレンデルとの共演なのではないかと思います。

2014/1/20(月) 午後 5:02 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]


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