こだわりクラシック Since 2007

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Disc1
・プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調 Op.26
 ユジャ・ワン(ピアノ)
・マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』
 収録時期:2009年8月12日

・マーラー:交響曲第2番ハ短調『復活』
 エテーリ・グヴァザーヴァ(ソプラノ)
 アンナ・ラーション(メゾ・ソプラノ)
 オルフェオン・ドノスティアラ(合唱団)
 収録時期:2003年8月21日

Disc2
・マーラー:交響曲第3番ニ短調
 アンナ・ラーション(メゾ・ソプラノ)
 アルノルト・シェーンベルク合唱団
 テルツ少年合唱団
 収録時期:2007年8月19日(ライヴ)

・マーラー:交響曲第4番ト長調
・リュッケルトの詩による5つの歌曲
 マグダレーナ・コジェナー(Ms)
 収録時期:2009年8月21、22日

Disc3
・マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調
 収録時期:2004年8月18日、19日

・マーラー:交響曲第6番イ短調『悲劇的』
 収録時期:2006年8月10日

Disc4
・マーラー:交響曲第7番ホ短調『夜の歌』
 収録時期:2005年8月17-18日

 ルツェルン祝祭管弦楽団
 クラウディオ・アバド(指揮)
 収録場所:ルツェルン、カルチャー&コンヴェンション・センター内コンサート・ホール(ライヴ)
http://www.youtube.com/results?search_query=abbado%20lucerne%20mahler&sm=3

 アバドはバーンスタイン、ハイティンクに続いてマーラーの録音が多い指揮者だと思うが、その取り組みはやや統一感に欠けた不思議なものだった。3つの全集を完成させられる可能性があったと思うが、結果的には全集としてまとまったのは1つだけだ。

 1度目の取り組みはもともとはシカゴ響とウィーンフィルの2つのオーケストラで進められたものだ。以前紹介した76年の2番から始まって、77年の4番、79年の6番、80年の5番と3番、81年の1番、83年の7番と続いたが、その後はブレーキがかかりウィーンフィルとの9番は87年、最後の8番は94年になってオケをベルリンフィルに替えてようやく収録された。8番の収録が遅くなったため全集のCDがまとめられた際はベルリンフィルとの1番(89年)と5番(93年)、ウィーンフィルとの2番(91年)に差し替えられ、シカゴ響との録音は6番と7番だけになってしまった。私は1番、2番、5番もシカゴ響の旧録を収録した方が全集としてのまとまりは良かったと思う。

 2つ目の取り組みは1番、5番、8番以外のベルリンフィルと録音していなかった6曲を再録音してベルリンフィル単独での全集を目指していた(?)シリーズだ。1999年に3番と9番、2001年に7番をライブで再録音し、ベルリンフィルを退任した後も2004年の6番、2005年の4番と続いた。残すは2番のみになっていたが、2番は2003年にアバドが改組・再編したルツェルン祝祭管との録音を先にCD化してしまったためか、あるいはラトルが2010年にベルリンフィルと録音してしまったためか、アバドとベルリンフィルの再録音は実現しなかった。

 3つ目の取り組みがその2番で2003年に始まったルツェルン祝祭管との映像によるチクルスで、2004年の第5番、2005年の第7番、2006年の第6番、2007年の第3番、2009年の第1番と第4番、2010年の第9番と続いた。残るは8番だけだったが、これもまた実現しなかった。完成すればバーンスタイン以来2つ目の(同一指揮者による)映像のマーラー全集になるはずだったのに残念だ。この輸入盤(日本語字幕はついていない)のブルーレイ4枚組BOXには1番〜7番がまとめられていて9番が入っていない(別にブルーレイで出ている)のが残念だが、ブルーレイの大容量を生かして1枚に2曲ずつの計4枚に収めた点は評価できる(トップメニューに戻る都度にクレジットが再生されるメニューの仕様は煩わしい)。

 アバドの棒は彼の後期スタイルである「全員がソリスト」的な間合いの取り方をした振り方だ。個人的にはアバドが若かった頃のように眉間にしわを寄せてもっとどっしり構えた方が好きだし、全パートの奏者が体を揺らして間合いを取っているのはアップの映像で見ると少々煩わしいが、特にルツェルン祝祭管のように自発的に集まった臨時オーケストラの場合は、このように奏者の自主性を尊重した振り方の方が合っているのかもしれない。

 全体としてバーンスタインやテンシュテットのマーラーのような強烈な個性を放つ演奏ではないが、現代オーケストラ美学によるスマートで模範的な演奏と言えるだろう。アバドの90年代の演奏は時に表面的に感じられたが、闘病から復活したアバドはだいぶ痩せたものの90年代よりむしろ意欲的で生気に溢れている。これでさらにあと一歩、ロンドン響との来日公演の時のような腹にズドンと来るような手応えがあれば文句ないのだが、完成された調和と引き替えにスリルは少々控えめだ。

 特徴的な点をいくつか挙げると、まず5番のアダージェットは速めのテンポで8分半ほどで終わる。アバドのシカゴ響との旧録音を含め80年代以前はここを11分程度かける演奏が多かったが、90年頃に「アダージェットは本来もっと速いはず」という論争があり、アバドは1993年のベルリンフィルとの再録音では9分に高速化していた。メンゲルベルクやワルターの時代とはホールの大きさや響きが違うし「極めて遅く」という指定も書いてあるので、私は「アダージェット」は速度指定というよりは「小さなアダージョ楽章」ぐらいの意味しかないのではないかと思っているが、即座に解釈を変更してしまったアバドは臨機応変と言うか何と言うべきか。

 ちなみにアバドは3番のアダージョ終楽章でも80年のウィーンフィルとの録音では26分半もかけた遅いテンポを採用していたが(これはこれで面白かった)、2007年のこの映像では23分半の概ね標準的な速さで振っている。またこの楽章ではトランペットとトロンボーンをミュートさせるのに黒い布をラッパにかぶせるという手法を使っているのが画面で確認できて面白い。

 他に注記すべき点としては、1番の第三楽章のコントラバスは従来通りのソロで、第五楽章フィナーレのホルンは起立する(ベルリンフィルの映像とこの点は異なる)。アバドはいずれの曲も暗譜で振っているが2009年の1番と4番では珍しく指揮棒を持たないで振っている点も注目だ(2010年の9番では再び指揮棒を持っているので晩年のアバドが指揮棒なしに転向したという訳ではないようだ)。5番の第三楽章のホルンのオブリガートソロはその場で起立して演奏している。6番の第二楽章と第三楽章はベルリンフィルとの再録音同様にアンダンテ→スケルツォの順で演奏している。

 2番と3番のアルトソロはアバドのお気に入りだったアンナ・ラーションが歌っている。4番のソロはコジェナーだ。往年のルートヴィヒやマティス、あるいはポップの名唱とは比べられないが一定の水準は保たれている。声楽付きの2番〜4番で合唱も含めて全員暗譜で歌っている。これは映像で見た場合音楽に集中できて大変好ましいことだ。3番と4番のソロは指揮者脇で歌っているが、2番のソロは舞台左手のオケの奥で歌っている。3番でラーションは曲の冒頭から着席している。4番のコジェナーは第三楽章までは舞台にいないのに間をおかず続けて演奏された第4楽章では既に指揮台脇に登場している。映像を編集した訳ではなさそうなので、第4楽章が始まってから静かに登場したのか? 2番もソリストが最初から着席しているのか途中で登場したのか映像からは分からない。

 オケの配置はいずれもビオラが右手前のベルリンフィル型(フルトヴェングラー型)だ。スカラ座のオケはピット内では両翼(対向)配置だったし、アバドはコンサートでもマーラーの9番のウィーンフィルとの旧録では両翼配置を採用していたが、ベルリンフィルの音楽監督になって以降はフルトヴェングラー型に固執した点が興味深い。クライバーが88年以降は必ず両翼配置を採用していたのとは対照的だ。

 最後に画像が鮮明でカメラワークが概ね適切である点は高く評価できると思う。それだけに全集が完成しなかったことが大変悔やまれる。アバド晩年の円熟した棒を余すことなく堪能できるが、6番に使われている最近よくあるような指揮者を真正面から捉えた映像は音声と左右が逆になるので私は好まない。左側に振った方が良いと思う。

(追記)
下記サイトにアバドとポリーニのインタビュー記事が掲載されていて、「マーラーは、第8番を除いて(ベルリンで)全部やったと思いますが……」というアバドに対してポリーニが「いや、第8番は録音したでしょう。」と応えている。一瞬の勘違いにせよ録音したことすら忘れてしまうほど8番はアバドと相容れないらしい。ひょっとすると1つ目の全集すら本人は全集にするつもりで録音していたのではなかったのかも。上記の通りベルリンで録音し残したのは8番ではなくて2番だ。2番は確か日本公演があったはずなのでライブで録音してしまえば良かったのだが。
http://www.hmv.co.jp/news/article/1401220033/

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8番に留保付きの評価をする指揮者は必ずしも珍しくありませんが、アバドの場合どういう理由だったのか(BPh客演時のインタビューでは、録音した事すら覚えていなかった)気になります.ルツェルン祝祭管でも、結局エグモント付随音楽(これはアバドらしい)+モーツァルトレクイエムに振り替えでしたし.

2007年のルツェルン祝祭管北米ツアー直前でアバドが調子が悪くなった時は、アンサンブル・モデルン・オケの欧州ツアーを振り終えたブーレーズが即日NYに飛んでマーラー3番の代役を務めていましたけれど、今や一方は故人で他方も指揮を完全に引退しているのには時の流れを感じます.

2014/2/17(月) 午後 5:57 [ M. F. ]

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M.Fさんこんばんは
モツレクはマラ8の振り替えだったのですか。私はコンヴェンション・センターはマラ8には小さいのかなと思っていたのですが、マラ8を意図的に避けていた節があるのですね。

ブーレーズも引退状態ですか。クラシカジャパンで2010年にクリーブランド管を振ったマラ10のアダージョと歌曲が今月放送予定です。

2014/2/17(月) 午後 7:57 [ たか改め「みんなのまーちゃん」 ]


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