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リヒャルト・シュトラウス:
・交響詩『ドン・ファン』 作品20
・交響詩『ドン・キホーテ』 作品35
フランツ・バルトロメイ(チェロ)
ハインリヒ・コル(ヴィオラ)
ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドレ・プレヴィン(指揮)
録音時期:1990年11月
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
R.シュトラウスの交響詩のCDは無数にあるが、カップリングや曲順といったいわゆるプログラミングをきちんと考えているCDは意外に少ない。ドン・ファンやティルオイレンシュピーゲルを余白の穴埋めに使っているとしか思えないCDが多すぎるのだ。英雄の生涯やツァラトゥストラ、あるいはアルプス交響曲を聞いた後に賑やかなドン・ファンを聞きたいと思うリスナーがどれだけいるのだろうか? そういう安易なプログラミングは無神経とすら言えるだろう。サロメの「7枚のヴェール」やばらの騎士のワルツであればアンコール的に最後に置くことも考えられるかもしれないが、ドン・ファンは1曲目に使うべき曲だし、実際のコンサートプログラムでは必ずそうなるだろう。
その点、このプレヴィン盤は1曲目にドン・ファンを持ってきた珍しい例である。カップリングもドン・キホーテで、2人の奇人をテーマにした選曲にも納得性がある。つながりがスムースなのでドン・ファンの最後のピッツィカートが鳴ってからドン・キホーテが始まるまでの数秒に制作者の意図が感じられるのだ。
演奏ももちろん優れている。VPOのR.シュトラウスの録音は多いが、プレヴィンがテラークとDGに録音した一連のシリーズはVPOのまとまった録音としてはモノラルのクラウス盤以来と思われる。名曲名盤の類では常にカラヤン盤とトップを争う名盤だ。カラヤンがBPOで何度も録音したシュトラウスが剛の表現だとすればこちらは柔ということになるだろうか。特にドン・キホーテは当時のVPOの主席奏者による美しいソロともどもしなやかな表現が印象的だ。カラヤン盤がチェロにフルニエやロストロポービッチと言った大ソリストを迎えたのとは自ずから演奏の性質は異なる。
ドン・ファンを1曲目に持ってきたCDは他にシノーポリの英雄の生涯がある(私が知る限りそれぐらいしかない)。音響的にはこれもありえると思うが、この場合、内容的には墜ちていく人間と人生の成功者とを対比したことになり、制作意図としてはちょっと皮相な感じもしなくもない。
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