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シベリウス
1. 交響曲第3番 ハ長調 Op.52
2. トゥオネラの白鳥 Op.22-2
3. 「カレリア」組曲 Op.11
4. 悲しきワルツ Op.44-1
5. フィンランディア Op.26
ピッツバーグ交響楽団
ロリン・マゼール(指揮)
録音時期:1990-92年
各種媒体で既報の通りアメリカの名指揮者ロリン・マゼールが7月13日に亡くなった。1930年生まれで享年84歳になる。1月に亡くなったアバドが長く闘病生活をしており活動の場をルツェルン祝祭管などに限定していたのに対して、マゼールは日本を含めて昨年も100回以上の公演をこなしていただけに突然だ。5月のボストン響との来日をキャンセル(代役はデュトワ)していたので体調を崩したのかなとは思っていたのだが。
マゼールとアバドは3歳違いだ。前後の世代の指揮者をざっと調べると以下のようになる。6月11日に亡くなったフリューベック・デ・ブルゴスはアバドと同年齢だ。
1925年
ブーレーズ
1926年
テンシュテット
1927年
ベルティーニ、ブロムシュテット、マズア、ギーレン、デイヴィス
1928
スヴェトラーノフ、プレートル シュタイン
1929
ケルテス ハイティンク ドホナーニ
1930年
マゼール、クライバー、シッパーズ
1931
サンティ
1932
パターネ フェドセーエフ
1933年
アバド、フリューベック・デ・ブルゴス
1935年
小澤征爾
1936年
インバル、メータ、デュトワ
さて、今回取り上げるのはマゼールのシベリウス「トゥオネラの白鳥」だ。マゼールはシベリウスの交響曲全集を2回も録音しているが、これは北欧系や英国系の指揮者以外では大変珍しいことだ。少なくとも私が知る限り他にはいない。アバドやムーティあるいはバレンボイムのように、どういう理由からかシベリウスを振らない指揮者も少なくない中で、マゼールにとってシベリウスが特別な存在であったことは間違いない。その理由がぜひ知りたいところだ。
このトゥオネラの白鳥では特に思い入れたっぷりのマゼール節が聞ける。この曲は通常7分〜8分、遅めでも9分程度で演奏されるが、この演奏は何と12分もかけている。トゥオネラというのは日本で言うところの三途の川を意味しているそうだが、マゼールにとってのトゥオネラは蕩々と淀みなく流れる川ではなく、様々な苦楽を飲み込みながらじわりじわりと流れる川のようだ。
楽譜はメトロノーム指定はないとはいえアンダンテ・モルト・ソステヌートとあるので、ほとんどアダージョに近いマゼールのこのテンポはシベリウスとしてはちょっと想定外かもしれない。だがこの入魂の演奏を敢えてマゼールの名演の1つに数えたい。カップリングのフィンランディアも闘争を経て勝利に沸くというよりは、戦いで得た勝利の苦さを感じさせる独特の表現だ。派手に盛り上がることのない沈み込んだ独特のシベリウスの世界だ。
この演奏はしばらく前からいずれ紹介しようと思っていたもので、まさか追悼記事で書くことになるとは想像しなかった。巨匠のご冥福をお祈りしたい。
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