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チェロ:ジャックリーヌ・デュ・プレ
バレンボイム指揮ニューフィルハーモニア管
(WPLS-4030)
イギリスと言えば、次に私が思い浮かんだのはデュ・プレだった。デュ・プレも悲劇的な亡くなりかたをしたブロンドのイングリッシュ・ビューティーだ。暴露本など尾ひれのついたネタが多いという点でもなぜか共通している。
デュ・プレとバレンボイムが栄光とひきかえにいかに大きな犠牲を払っていたかを知るのは私にはとても辛いことだ。映画「本当のジャクリーヌ・デュ・プレ」も一応録画してあるが3分の1ぐらいをとばし見したぐらいだ。私は音楽家の考え方や価値観には関心があるが、私生活を覗き見しようとは思わない。本当のことは本人達にしか分からないのだ。
ただ一つ言えることは当時バレンボイムはデュ・プレを見捨てたかのような悪者扱いをされていたように思うが、恐らくそれは間違いだったのだろう。彼の側にもとても大きな心の葛藤があっただろうことは想像に難くない。私の知る限りバレンボイムはこの件について多くを語っていないと思うが、弁解したり相手を責めたりしないのは大変立派なことだと思う。
音楽家は音楽でものを語ればいい、といつも思っている。我々は演奏家がその後どうなったか知っているが、その時本人はそんなことを予想もしていないのだ。過度に感傷的な聴き方をするのはリスナーの姿勢として正しくないと思うし、デュ・プレの演奏であれば全て最高というような盲信的な聴き方も私の好むところではない。
そういう私もこのエルガーのコンチェルトについてはデュ・プレの演奏にとても霊感めいたものを感じざるを得ない。デュ・プレにとってこの曲は1962年のオーケストラコンサートへのデビューの際も、1973年の最後の演奏会でも演奏した運命の曲だ。
この演奏はモノクロ・モノラルのライブ録音ながら意外に安定しており鑑賞には問題ない。1981年に制作されたドキュメンタリーと1967年のコンチェルトの全曲映像がセットになっている。
バレンボイムとアイコンタクトを交わしながら演奏する姿からは私生活上の問題などみじんも感じることができない。3楽章では長い髪をまるで歌舞伎の勧進帳か何かのように激しく振るので久しぶりにこの映像を見てちょっとびっくりした。バレンボイムの伴奏はまだ若いが、デュ・プレのこの曲の映像が残っていて大変幸運だったと思う。
この作品の初演は1919年なので先日取り上げたホルストの惑星とほぼ同時期のイギリス音楽ということになるが(エルガーとホルストはともに1934年に亡くなっている)、ホルストの前衛的な作品とは非常に対照的なロマンティックな作品だ。19世紀のドイツ音楽の影響を色濃く残した20世紀作品という点ではシベリウスなどとも共通するものがある。
この映像は輸入盤では現在も手に入るようだが、ドキュメンタリーの日本語字幕は入らない。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1807379
この映像はユーチューブでも見ることができる。バレンボイムが1997年にヨーヨーマと演奏した映像との比較も興味深い。
http://www.youtube.com/results?search_query=du+pre+elgar+Barenboim
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