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ピアノ:アシュケナージ
1980年
(DECCA)
ピアノ:コチシュ
1994年
(PHILIPS)
下記サイトに試聴あり
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1257005
ラフマニノフと言えば私にはこの曲も外せない。「ラフ2」というと普通はコンチェルトの2番なのだが、ラフ2はラフ2でもソナタの2番だ。この曲も余り多くは演奏されないが、それでも最近は多少演奏される機会が増えているかもしれない。
改訂稿(1931年)はかなり大胆に手を加えている。初稿(1913年)と改訂稿を合冊にした楽譜をブージー&ホークスが出版しているらしいのだが残念ながら手元にない。下記の解説(英文)によると、第一楽章Allegro agitatoは初稿が179小節、改訂稿が137小節、第二楽章Non allegro - Lentoは初稿が291小節、改訂稿が266小節、第三楽章Allegro moltoは初稿が344小節、改訂稿が240小節なので第一楽章と第三楽章はおよそ3割ぐらい減っている。
http://etd.lib.fsu.edu/theses/available/etd-08262003-154535/unrestricted/10_sonatas.pdf
演奏時間は初稿のアシュケナージ盤が約26分に対して改訂版のワイセンベルクが約15分とすさまじい違いがある。改訂稿はカットし過ぎという意見は私も賛成だ。
ホロヴィッツ(1968、ホロヴィッツ版)
8:25/6:10/5:30
ホロヴィッツ(1980、ホロヴィッツ版)
9:22/6:31/6:13
アシュケナージ(1980、初稿)
10:25/8:00/7:10
ワイセンベルク(1988、改訂稿)
6:01/4:44/4:32
コチシュ(1994、初稿)
9:15/7:08/6:30
この曲はLP時代はホロヴィッツの演奏ぐらいしかなかったが、ホロヴィッツが弾いていたのは初稿と改訂稿を折衷した独自のホロヴィッツ版だ。大幅に短縮された改訂稿に不満だったホロヴィッツは作曲者に再改訂を申し入れていたが、作曲者がそれを果たさずに亡くなったので自分で手を入れたということだ。1982年のロンドンでのコンサート映像が当時テレビでも放送されていたしLDでも出ていた。
ホロヴィッツの編曲および演奏は非常にヴィルトーゾ風のものだったが、(これは1976年のピアノ協奏曲第三番にも共通するが)、この時期のホロヴィッツの演奏は知情意のバランスがあまり良くなかったように思う。指先だけが猛烈に走り出して、なおかつ時々ついて行っていない箇所もある。ふ〜ん、とは思ったが正直感動はしなかった。ホロヴィッツのラフマニノフはピアノソナタも協奏曲も50年代、60年代の旧録の方が落ち着いて聴けるが、それらを聞いたのはずっと後のことだ。
アシュケナージの演奏は初稿の最初の録音だったと思う。ホロヴィッツとどう違うのかなぐらいの気持ちで聴いたのだが、かなり違う音楽った。ラフマニノフがこの曲を改訂した動機はショパンのソナタの簡潔な音楽をめざしたためだそうだが、私はこのアシュケナージの初稿の演奏の方がショパンに近いと思った。24の前奏曲の余白に収められて85年にCD化されて以来愛聴して来た。(ジャケット写真は94年の再発盤)
その後初稿による演奏が増えてきて、コチシュの演奏も聞いたがこれがまた全然違う演奏だった。速いテンポでグイグイ弾く演奏で、聴いた感じはホロヴィッツの演奏に近い。アシュケナージ盤とは明らかに違う響きのところも多々ある。3分という演奏時間の差以上に大きな違いを感じる。初稿版と言っても本当に同じ楽譜なのだろうか?
コチシュ盤にはブライトコプフ版使用と書いてあるがアシュケナージ盤はどうなのだろうか? あるいはもしかしたらアシュケナージかコチシュのどちらかは独自に編曲しているのかもしれないが、いずれにしても版の問題だけでなくラフマニノフに取り組む姿勢がアシュケナージとコチシュでは全然違うのだ。
版によっても、演奏者によっても異なる表情を見せるこの曲の探求は楽譜を入手してからもう一度行う必要がありそうだ。
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