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クライバー/VPO
DVDは1991年10月6〜7日
http://www.youtube.com/watch?v=QfUTaauSPjA
CDは88年3月20日


 倍管の話をもう少し続けよう。Wikiの記述なので正確な情報ではないかもしれないが、「音響学的には全く同じ楽器が同じ音量・音色・奏法・音高などで同時に吹いた場合、音量は約1.5%しか大きくならない」といわれているそうだ。「100デシベルで2人の奏者が全く同時に同じように奏した場合、全体の音量は約101.5デシベルにしかならない」とも書いてある。デシベルの世界では10デシベル上がると音量は3倍になるので+1.5デシベルというのはわずかな増加にすぎない。つまり音量を上げるために倍管にして同じ旋律をダブらせるというのは非常に非効率な方法だということで、むしろ音の濁りが発生する危険性をデメリットとして認識する必要がありそうだ。

 倍管にすることで音量が倍になるわけではないということは恐らく指揮者は現場で経験的に分かっているはずだが、それにも関わらず倍管という行為は本当にそれほど一般的に行われているのか、いくつかの映像をチェックしてみた。なお、これらの演奏は実際は倍管を部分的に採用している(例えば終楽章のみ金管倍管にしている)可能性もあるが、全ての楽章で全ての楽器が映っているとは限らないので、どこかで映っていればそういう編成を採用していると判断した。

 その結果、カラヤン/VPOの1959年のブラームス(交響曲第1番と第4番)は木管・金管倍管、ベーム/ウィーン響の1967年のベートーベン(ピアノ協奏曲第四番)は倍管なしの純粋な2管編成、ベーム/VPOの1970年のブラームス(交響曲第二番)は木管のみ倍管、同じ組み合わせの1973年のシューベルト(交響曲第9番)は木管・金管倍管、カラヤンのBPOとVPOとの70年代〜80年代の映像はいずれも木管・金管倍管、クライバー/VPOの1991年のブラームス(交響曲第2番)は木管のみ倍管、クライバー/バイエルン国立管の1996年のブラームス(交響曲第4番)も木管のみ倍管編成だった。

 現代のオーケストラ演奏において少なくとも木管倍管編成は概ね普通だと言うことができそうだ。カラヤンが金管倍管を採用したのはもっと後の70年代ぐらいからではないかと私は予想していたのだが、ウイーンの総監督を務めていた1950年代当時から木管・金管倍管だったのは少々意外だ。ベームのシューベルトも意外なことに金管倍管だったので、もしかしたらVPOはカラヤンがウィーンの総監督になる以前から金管倍管を採用していた可能性もある。

 カラヤンはビオラの右翼配置などオーケストラ配置については割とフルトヴェングラー式を踏襲しているので(それによって正当な後継者たらんとしたのかも?)、金管倍管という編成は実はフルトヴェングラーが元祖なのではないかと私は疑っている。フルトヴェングラーが1943年にBPOを振ったマイスタージンガーの前奏曲はトランペットが6本?(3管編成の金管倍管?)並んでいるように見えるが画質が悪いのでトロンボーンと見間違えているかもしれない。それにこの映像は特別演奏会だった可能性もあるのでフルトヴェングラーやVPO、BPOが普段から金管倍管編成を採用していたかどうかについては古い映像をもう少し詳しく調べてみる必要があるだろう。

 今回主にブラームスの交響曲の映像を中心に編成をチェックしてみたのは理由がある。ブラームスは交響曲の第一番と第四番でベートーベンの第5交響曲にならって第四楽章でのみトロンボーンを加えるなど金管を控えめにしたオーケストレーションを意識しているからだ。ブラームスをロマン派に位置付けるのは後世の人間の勝手な解釈であり、本人はベートーベンに連なる交響曲を書いているつもりなのだからあまりロマン派的な大編成で演奏するのもどうかと思う。

 例えばブラームスの交響曲第一番の初演時は弦楽が10-8-4-4-4の2管編成という室内オーケストラのような編成だったそうだ。現代のオケとは編成がまるで違うので、管楽器を増やすべきか2管編成のままで演奏するべきか一概にどちらが正しいとは言えないだろうが、木管のみの倍管にするとか、仮に金管倍管を採用するにしても終楽章のみにするなどといった控えめな編成が望ましいと私は思う。

 さて、このDVDはクライバーが91年のVPO特別演奏会を振った際のものだ。映像収録用の特別演奏会だった。CDの方は88年のVPO定期演奏会のものでFMでも放送された。私は直接聞けなかったが、クライバーは86年のバイエルン放送響との来日公演でもこの曲を振っている。聞いた人によるとベートーベンの4番7番は圧倒的に素晴らしかったがブラームスの2番はちょっと粗っぽい演奏だったそうだ。

 88年の定期演奏会でも確かにやや荒削りな部分は残っているがクライバーらしい緩急のついたスリリングな2番で、従来のこの曲の穏やかでのんびりしたイメージとはちょっと違うかもしれないが大変面白い演奏だ。91年の特別演奏会は88年の定期演奏会の好評を受けたものだ。音楽としての完成度は上がったが、テンポはやや遅くなりおとなしくなった気もする。88年の勢いのある演奏も捨てがたい。

(追記)
 クライバーは87年頃から両翼ヴァイオリン、左チェロ、右ビオラの19世紀型両翼配置を採用するようになった。この88年の録音も91年の映像もチェロが左になっている。89年と92年のニューイヤーコンサートの映像も同様だ。管の編成だけでなく弦の配置にも注目してみてほしい。

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