こだわりクラシック Since 2007

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CD
ベーム指揮ドレスデン国立管弦楽団
1979年
13:57/13:31/11:00/11:35
http://www.youtube.com/watch?v=_Ida6tmo_fU

DVD
ベーム指揮ウィーンフィル
1973年
13:53/14:12/11:24/11:31
http://www.youtube.com/watch?v=VqgylFLLZ18

 カラヤンやバーンスタインとの比較という点で言うと、ベームはシューベルトの交響曲にはるかに適性を持っている。DGがBPOの全集でカラヤンでなくベームを起用したのは当然の成り行きだろうが、私が昔からお気に入りだったのは1979年のドレスデンでのライブ録音だ。これは戦前の1930年代からドレスデン(当時はザクセン)国立管弦楽団と50年近い強い結びつきを持ってきたベームの恐らく最後の共演となった演奏なのではないだろうか。

 全盛期のドレスデンのオケを相手に精神的な強さと同時に優しさにあふれた演奏で、とても84歳の指揮者の演奏とは思えない。こういうシューベルトらしい演奏はなかなか聞くことはできなくなってしまった。このライブ録音がどういう経緯で発売されたのかは分からないが、ひょっとして商品化を希望したのベーム自身だったのではないだろうか。LPはベームの最後の録音となった第九と同時期に追悼盤として発売されたと記憶している。モダンオケによるシューベルトとしてはベストの演奏だろう。

 なお余談になるが、カラヤンがドレスデンで録音したマイスタージンガーは元々バルビローリが指揮するはずだったが、1968年のプラハの春事件に対するクーベリックの抗議に同調してバルビローリが共産圏での指揮をキャンセルしたものだったことが近年になって明らかにされた。この際に代役としてベームの名前も挙がっていたらしい。カラヤンとドレスデンは何のゆかりも無いので本来はベームの方が合っていたはずだが、カラヤンの方がレコードが売れると判断したのか、あるいはベームもクーベリックに同調して断ったのか分からない。

 DVDの方は2006年になって初めて商品化されたもので、80年頃にVHSで出ていたウィーン交響楽団との演奏(この映像も最近になってDVDで復活した)とは別の映像だ。これも期待に違わない名演だ。シューベルトにはBPOの硬質な音よりもVPOやドレスデンのような柔らかい音の方が合っていると思う。この曲はベームとVPOの1975年の来日時の演奏もCD化されていたが、NHKホールの乾いた音のせいもあってこの映像の方が聴きばえがする。こちらもぜひ聞いてほしい演奏だ。

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CD:
・モーツァルト:交響曲第29番イ長調K.201
・R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』Op.20
・ブラームス:交響曲第2番のリハーサル
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 カール・ベーム(指揮)
 1977年3月11日:東京文化会館

DVD:
R.シュトラウス: 交響詩ドン・ファンのリハーサルと本番演奏
カール・ベーム(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1970年 ウィーン,ムジークフェラインザール

 これCDは先日紹介したブラームスの2番の演奏会のリハーサルを収めたものだが、今日は当日のもう一つの演目であるドンファンに注目したい。前プロのモーツァルトの交響曲29番は宇野巧芳氏が「旧スタイルによる最も芸術的なモーツァルトの名演」と絶賛している演奏だが、今日的な感覚からするとちょっと遅いかなあと思わざるを得ない。これに対して、ドンファンはぐっと生気を増した生き生きした音楽になる。この曲はカラヤンも大変得意としたが、VPOの甘美な音色を駆使しながらもカラヤンのように耽美的にはならない点がカラヤンと最も大きう点だと思う。

 ベームのドンファンの録音はDGにドレスデンとのモノラル録音とBPOとのステレオ録音がある。特に後者は同時期のツァラトゥストラと並んで名盤の誉れ高いものだが、VPOとのスタジオ録音はない。BPOとの演奏はもちろん良い演奏だが、VPOの甘美で柔らかい音色はこの曲に合っているだけに、2001年になってCD化されたこの来日公演のライブはディスコグラフィーの穴を埋める貴重な記録だ。1975年のブラームスの1番と並んでベーム/VPOの黄金時代を記念する演奏と言えるのではないだろうか。

 DVDの方はVHSでもLDでも出ていなかった映像で、2009年になって初めて商品化されたものだ。先日紹介したブラームスの2番の映像と同様1970年の制作で、こちらにはドンファンのリハーサル映像が50分近く収められている。字幕はないがyoutubeでこの映像を少し見ることができる。
http://www.youtube.com/watch?v=EHEtzf7JbKM

 BPOもそうだがドイツのオーケストラは棒を振ってからオケの音が出るまでの「ため(時間差)」が長くボテッという感じになりがちだが、このでのベームは「それではアウフタクトだ。1拍目で入って。」とさかんにオケを止めて拍子の出だしの食いつきを鋭くするように指示を出しているのが印象的だ。

 ベームがオケの新人をしごくという話は有名だ。この映像でも第3トランペットがさかんにしごかれているが、ベームの耳の良さには改めて驚く。練習番号Bのところにはシュトラウスが楽譜出版後にモントルーで演奏した際にトランクイッロとアテンポの指定を追加したそうで(ユニバーサル出版は怒ったそうだが)その指定を守るように指示を出している点も注目される。

 練習番号Bと言えば以前の記事でも指摘した46小節目のシンバルを追加するかどうかも注目される。ベームは1957年のドレスデンとの録音でも1963年のBPOとの録音でも、1977年のVPOとの来日公演でもシンバルを入れていないが、この1970年の映像ではここでシンバルが鳴っているので少々びっくりした。

 カラヤンの録音も1953年(PO)はシンバルあり、1957年(BPO来日ライブ)と1960年(VPO)、1973年(BPO)はシンバルなし、1983年(BPO)、1984年(BPO来日ライブ)はシンバルありと変化しているが、これはどういう理由なのだろうか? ベームやカラヤンほどの耳を持つ指揮者がここでシンバルが鳴っているか鳴っていないか気がついていないとは考えにくいので不思議な現象だが、今日の演奏はシンバルありにしようとか、なしにしようとか彼らがいちいじ指示を出すのだろうか? 

 リハーサル後の本番コンサートのライブ映像の方は、同年のブラームスの2番と同様速目のテンポで演奏されているのが特徴で、1977年の来日公演が18分半なのに対して1970年の映像ではわずか16分15秒で終わっている。これは1957年のドレスデン(17分)、1963年のBPO(17分半)と比較しても相当速いテンポだ。1970年のベームのテンポがなぜ速いテンポで振っているのか理由は不明だが大変興味深い現象だ。

 ただし最も遅い1977年の演奏も中間部が少し遅くなっただけで全体として非常に遅いという感じは決してしない。どちらの演奏もR.シュトラウスに対するベームの情熱と適性を示す貴重な記録だろう。

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・交響曲第2番ハ短調『復活』
 イレアナ・コトルバシュ(ソプラノ)
 クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
 ウィーン国立歌劇場合唱団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、
 ズービン・メータ(指揮)
 録音:1975年2月ウィーン、ゾフィエンザール

 キャロル・ネブレット(ソプラノ)
 マリリン・ホーン(メゾ・ソプラノ)
 シカゴ交響楽団&合唱団
 クラウディオ・アバド(指揮)
 録音:1976年2月、メディナ・テンプル、シカゴ

 マーラーのレコードはワルターやクレンペラーの古い録音に始まり、60年代にはバーンスタイン、ショルティ、クーベリック、ハイティンクが全集に取り組むなど種類は増えつつあったが、爆発的に増えてきたのは70年代半ばからだったように思う。

 73年にカラヤンが初めてマーラーを録音したのに続いて、アバドやメータ、レヴァイン、そして西側で活躍するようになったテンシュテットなど新しい世代の指揮者による録音が次々に紹介されるようになった。時代が複雑化してきて聴衆も悩み多きマーラーの音楽を理解するようになり、録音技術やオーディオ装置が良くなってマーラーの音楽が理解しやすくなったなどの条件も重なって日本でもマーラーブームが起こる。

 メータの最初のマーラーは手兵のイスラエルフィルと1974年12月に録音した1番だが、すぐに続けて録音した「復活」ではVPOを起用して世間を驚かせた。しかし1965年に「復活」でVPOを振ってザルツブルグ音楽祭にデビューし大成功を収めたのは実はアバドの方だったのだ。

 1959年のカラヤン、1969年のショルティに続く1973年3月のVPOの来日公演(全国10か所13公演)をアバドが単独で任されていることからも、この時期のアバドとVPOの良好な関係が伺える。余談だが、アバドはこの時の広島公演の際に原爆資料館を訪問したそうで、これは後の「幻想交響曲」の録音で広島の平和の鐘を使うきっかけになったと考えられる。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/3699/vpojapan4.html

 メータが先に「復活」をVPOで録音してしまったため、アバドのマーラー全集の第一段になるはずだった(そしてDGにとってクーベリック盤に続く2つ目の全集になるはずだった)この「復活」はメータ盤のちょうど1年後の1976年にシカゴで録音された。

 この頃までのアバドはレコード録音に関してはあまり良いマネジメントについていなかったようだ。アバドは60年代にはデッカのアーティストだった。デッカ時代のアバドの演奏は決して悪くないと思うが、同じデッカでメータが録音したR.シュトラウスほどの評判は呼んでいなかったようだ。もしかしたらこのこともアバドが70年にDGに移籍する原因になったかもしれない。

 その後も1972年のスカラ座のアイーダや1975年のロンドンの仮面舞踏会は素晴らしい演奏だったにも関わらず、録音ではほとんどそのままのキャストでEMIのムーティに持っていかれてしまった。これに懲りたのかスカラ座の76年のマクベスや77年のシモン・ボッカネグラではDGが最初から出演者と録音の契約を結んだようだが。

 アバドとDGがVPOの代わりに選んだのがシカゴ響だというのも興味深い。この時期デッカはショルティともマーラーを録音していたが、ショルティの1番〜4番はLSOやACOとの60年代の古い録音だったために、デッカは70年代にメータでこれらの曲目を録音した。当時すでに比較的有名だった1番や5番あたりを除けば70年代のマーラーのレコード市場はまだ限られていたため、同一レーベル内で競合するレコードを立て続けに制作するのは難しかったのだ。

 つまり、デッカが75年にメータで「復活」を録音したということは、デッカはシカゴ響によるショルティの再録音をしばらくできないということを意味する(実際ショルティの再録音は80年代に入ってからだった)。アバドとDGがショルティより先にシカゴ響で2番を録音するということは、メータにVPOを取られたことに対するDGからデッカへの意趣返しなのだ。

 それにしてもアバドやメータはこの頃が良かった。テンシュテットのライブを別格にすれば、この2つの演奏はいまだにこの曲の代表的な演奏と言えるだろう。いずれもタップリした響きの中に適度に細部が明瞭なアナログ録音全盛期の良さが出ている。アバド盤のシカゴ響のブラスの咆哮は2番が最も合っている。メータ盤はリマスター時に1枚に収められたのも良く、現在ではSIMCDでも出るほど大事にされている録音だ。ソリスト(コトルバスとルートビッヒ)はアバド盤より上だ。

 81年のスカラ座の初来日で素晴らしいヴェルディのレクイエムとシモン・ボッカネグラを披露したアバドは83年のロンドン響との来日公演でも素晴らしいマーラーの5番を演奏した。しかし80年代後半以降のアバドは、「ウンウン、その調子その調子」という感じのしぐさが多くなり、オケと戦わずに迎合しているような気がしてならない。

 メータもニューヨークに行ってからは大衆に迎合した感じのボテッとした音楽が多くなって、70年代の切れ味が失われていく。この2枚のディスクは新しいマーラーの時代の幕開けとなった記念碑であると同時に、アバドやメータが良かった時期の思い出でもある。

 レコード芸術の83年と87年の「名曲名盤」ではいずれもこのアバド盤が首位、メータ盤が2位になっている。ショルティの票がLSOの旧盤とCSOの新盤に割れたということもあるが、いずれにしても70年代から80年代のこの曲のイメージは(古いワルター盤とクレンペラー盤を別とすれば)アバド盤とメータ盤とショルティ盤の3つで出来あがっていたと言ってよいだろう。

 アバドとメータは共にウィーン音楽院でスワロフスキーに学んだ同門のライバルだ。アバドは復活の録音でメータにVPOをとられたことがよほど悔しかったのか、BPOの音楽監督になった後の1992年になってからわざわざVPOで再録音している。だがシカゴ響との録音の方がストレートな確信に満ち溢れていていると私は思う。ちなみにマーラーは「復活」をBPOで初演している。この曲の第一楽章などはBPOの分厚い低弦を想定していることは明白なので、どうせならBPOで再録音してほしかった。

 私はこの少し後にテンシュテットがLPOと録音を始めたEMI初のマーラー全集と並んで、アバドがVPOとシカゴ響でDGに録音していたマーラーが早く全集になるのを待ちわびていた。しかし1番から6番までは81年までの5年間で順調に録音したものの、あと3曲というところで急にペースダウンし84年のシカゴ響の7番、87年のVPOとの9番と続き、8番は94年になってBPOと録音してようやく全集が完成した。シカゴ響と録音した1番と5番は全集ではBPOとの再録音に、2番はVPOとの再録音に差し替えられた。余りにペースが遅いのでDGは85年からバーンスタインとシノーポリのマーラーの全集にも取り組んで完成させてしまった(未完に終わったバーンスタインの8番は75年の放送用ライブの借り物だが)。

 メータもこの復活の好評を受けて続いて3番〜5番をロスアンジェルスフィルやイスラエルフィルとデッカに録音したが、メータがNYPに転出してソニーに移籍したため、この後は続かなかった。メータは95年になって6番をテルデックに録音しているが7番〜9番の録音は未だにない。

 70年代にマーラーを録音して評判だったレヴァインも結局2番と8番を録音せず、日本におけるブームの先鞭をつけた若手の俊英3人は、80年代から90年代頭にかけて次々と全集を完成させたノイマン、テンシュテット、インバル、マゼール、小沢、ベルティーニに遅れを取ることになる。8番などは演奏する機会を作ること自体が大変なので偶然の要素もあるだろうが、この時期に彼らの演奏が新鮮さを失ってきたような気がしてならない。



最後にwikiからの対訳を引用しておこう。

第4楽章
「子供の不思議な角笛」から

アルトソロ
おお、深紅のかわいらしい薔薇よ!
人間は大きな苦悩に閉ざされている!
人間は大きな苦難に閉ざされている!
それよりも私は天国にいたいと思う!
私は一本の広い道にたどり着いた。
一人の天使がそこに来て、私を先に行かせまいとした。
いいや、私はそうはさせはしなかった!
神から生まれた私はまた神のもとにいくのです。
神はきっと一筋の光を私に授けなさり、
永遠の喜びの生命の中で私を照らしてくださるにちがいない。


第5楽章
クロプシュトックの賛歌『復活』に従いて

合唱とソプラノ
よみがえる、そう、汝はよみがえるのだ。
私の塵は、短い安らぎの後で。
汝を呼んだ永遠の命が
汝に与えられる。

種蒔かれた汝は再び花を咲かせる。
刈り入れの主は歩き、
我ら死者の
束を拾い集める

アルト独唱
おお、信ぜよ。わが心よ! おお信ぜよ。
失うものは何もないのだと!
汝のもの─それは汝が望んだもの
汝のもの─それは汝が愛したもの、戦って来たものなのだ!

ソプラノ独唱
おお、信ぜよ。汝がいたずらに生まれて来たのではないのだと!
いたずらに生を楽しみ、苦しんだのではないのだと!

合唱とアルト
生まれて来たものは、滅びなければならない。
滅び去ったものは、よみがえらねばならない。
震えおののくのをやめよ!
生きるために汝自身を用意せよ!

ソプラノとアルト独唱
おお、苦しみよ! 汝は全てにしみ通る。
おお、死よ! 全ての征服者だった汝から
私は逃れ出る!
今こそ、汝は征服されたのだ!
私は勝ち得た翼をたずさえて、舞い上がろう!
愛の命ずる求心力の中へと
眼にも届かぬ光のもとへ!

合唱
私が勝ち得た翼を広げて、
私は舞い上がろう!
私は再び生きるために死ぬのだ!
よみがえる、そう汝はよみがえるのだ。
私の心よ、今ただちに!
汝の高鳴ったその鼓動が
神のもとへと汝を運んでいくだろう!

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今年はマーラー没後100年であると同時にクーベリック没後15年にもあたる。

マーラー: 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」
ラファエル・クーベリック(指揮)、バイエルン放送交響楽団
1980年 ミュンヘン・ヘルクレスザール

 19世紀までのオーケストラは第1バイオリンを左手前に、第2バイオリンを右手前に置くのが普通であり、この配置は「両翼配置」あるい「対向配置」と呼ばれるが、チェロを左に、コントラバスを中央奥に、ビオラを右に配置する点にも特徴がある。メロディを受け持つ第1バイオリンと、音楽の土台を作るチェロは音域が異なるので同じ左側に置いても人間の耳は十分聞き分けられる。内声に当たる第2バイオリンとビオラは客席に背を向けて右側に置きオケの内部の響きを充実させるという考え方だ。

 現代のオケのほとんどはチェロとコントラバスを右に置いているが、戦前まではこれらのチェロは左にいるのが当然で、クラシック音楽はこの配置で演奏するものだったのだ。トスカニーニ、ワルター、クナッパーツブッシュ、クレンペラー、モントゥーなど、フルトヴェングラーとストコフスキー以外の戦前世代の指揮者はほぼ全てこの配置を採用している。カンテルリは師のトスカニーニ同様にチェロが左の19世紀型配置を採用していたことが映像で確認できた。

 この19世紀型配置はバイオリンが左右に分かれていることに加えて、第1バイオリンとチェロが同じ左側にいるため指揮者には高度な技量が求められる。指揮者の側からすると第1バイオリンのメロディと低弦のリズムが左右に分かれていた方がはるかに振りやすい。DGのマーラー全集でのみ19世紀配置を採用したシノーポリは「この配置は自分には大変難しい」と率直に述べており、実際の演奏会ではフルトヴェングラー型(左から第1バイオリン、第2バイオリン、チェロ、ビオラ、コントラバス)を採用していた。

 セルやミュンシュ、ベーム、ヨッフム、アンチェル、そしてカラヤンといった中間世代の指揮者もどういう訳か揃ってフルトヴェングラー型を支持した(ヴァントとクリュイタンスはストコフスキー型だが)。戦後世代になると、チェリビダッケやショルティ、バーンスタイン、テンシュテット、ベルティーニなどストコフスキー型(左から第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロ、右奥にコントラバス)を採用する指揮者が多くなる。ストコフスキー型はアメリカ、イギリス、フランスで普及したほか、実はドイツでも戦後に設立された放送局のオケの多く(ケルン、シュトゥッツガルト、フランクフルト、北ドイツ(ハンブルク))が採用している。

 ストコフスキー型も大雑把に言って高音を左に、低音を右にして指揮者が振りやすくしたという点ではフルトヴェングラー型と変わらない。違いはビオラが右手前にいるかチェロが右手前にいるかだけだ。やはり低音が右の方が振りやすいのだろうか? 結局、欧米の一流オケは、チェコフィルなど東欧のオケすらも含めてほとんど全てがフルトヴェングラー型かストコフスキー型のいずれかを採用するようになった。チェロを左に、コントラバスを中央奥に置くという戦前までのクラシック音楽の伝統は戦争を境に廃れてしまったのだ。

 右に低弦を置くフルトヴェングラー型やストコフスキー型が戦後圧倒的に普及した理由として1950年代末〜60年年代はじめのステレオ初期のレコード、あるいは60年代半ばに始まった初期のFMステレオ放送は左右の音の分離が悪く、高音と低音を左右に振り分けた方がステレオ効果を出しやすかったという事情があったと考えられる。

 ムラヴィンスキーも有名な1960年のチャイコフスキーの録音ではDGの要請によりチェロを右に変更したそうだ。クレンペラーが1955年〜57年にEMIに録音したブラームスやベートーベン、モーツァルトは間違いなく19世紀型の両翼配置だが(写真にもチェロが左に写っている)、1960年以降は録音の時だけチェロとコントラバスを右に変更してしまったようだ。クナッパーツブッシュがVPOを振ったトリスタンの前奏曲と愛の死(イゾルデはニルソン)も、1959年のデッカの録音ではチェロが右で第2バイオリンが左のフルトヴェングラー型に変更されており前奏曲の有名な掛け合いは左右に分かれないが、1962年の演奏会では19世紀型の両翼配置になっている(映像が残っている)、。

 DGもEMIもデッカも揃って同様の措置をとっているということは、「オケの高音は左、低音は右」というのが当時ステレオレコードの常識と受け止められていたと考えて間違いないだろう。当時のレコードの技術的な制約とはいえ残念だ。

 そんな中で戦前の伝統を20世紀末まで頑なに守り通したのがクーベリック、ムラヴィンスキー、それにイギリスの巨匠ボールトだ。クーベリックの両翼配置については大分前に書いたパルジファルでも紹介した。マーラーにおいても第1番第3楽章のコントラバスのソロが左奥から聞こえるのは、フルトヴェングラー型やストコフスキー型に慣れた耳に大変新鮮に聞こえるだろう。マーラーが求めた響きは本来はこうだったのだ。

 この1番の映像はテレビ放送用の収録のようで観客はいない。クーベリックの音楽同様に小細工のない映像で、本拠地ヘラクレスザールの音響も良く音質もまずまずだ。全盛期のクーベリックの格調高くかつ熱気にあふれた演奏を楽しむことができる。1967年のDG盤と比較すると第一楽章のテンポが速くなってより躍動的になり、逆に第四楽章は遅くなってどっしりした。全体的にDG盤よりも1954年のウィーンフィルとの演奏に近いテンポに戻った感じだ。Auditeから出ている1979年の演奏とは当然ながら演奏時間が近い。

ウィーンフィル(1954) 12:46/7:11/10:39/18:59
バイエルン放送響(1967)14:30/7:04/10:36/17:38
バイエルン放送響(1979)13:12/7:03/11:37/19:18
バイエルン放送響(1980)13:40/7:09/11:21/19:09

 それにしてもドリームライフというレーベルはクーベリックやベームの映像のDVD化に熱心で感心だ。若い人にはカラヤンやバーンスタインのナルシスティックな映像よりもこういう映像をもっと見てほしい。

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エーリッヒ・クライバー指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団(1932年)
http://www.youtube.com/watch?v=PiF5glYvfcw

カルロス・クライバー指揮VPO(1992年)
http://www.youtube.com/watch?v=Ndm0H43J1FU

 カルロス・クライバーは70年代から86年までのVPOやACO、バイエルン国立管との演奏はいわゆるフルトヴェングラー型(左から第一バイオリン、第二バイオリン、チェロ、ビオラ、右奥にコントラバス)を採用していたが、今回クライバーの映像を改めて見直してみて、1989年のニューイヤーコンサート以降の映像では第二バイオリンが右でチェロが左の19世紀型両翼(対向)配置(左から第一バイオリン、チェロ、中央奥にコントラバス、ビオラ、第二バイオリン)を採用していることが確認できた。

 トスカニーニ、ワルター、クナッパーツブッシュ、クレンペラーなど戦前の指揮者の多くは19世紀型両翼配置だったが、カルロスが大きな影響を受けた父エーリッヒはどうだったのだろうか気になって調べてみた。下記のサイトによると6つの映像が残されているようで、青きドナウ以外にもユーチューブで2つ映像を見つけることができた。

http://www.thrsw.com/misc_j/2003/06/post_16.html
ヨハン・シュトラウスII世 : 「芸術家の生涯」(ACO)
http://www.youtube.com/watch?v=SLuhvl_8oVA
ベートーヴェン : 交響曲第9番 第4楽章 (リハーサル)(チェコフィル)
http://www.youtube.com/watch?v=Zt_knlbpxyc

 いずれの映像もチェロが右奥だということは容易に判別できるが、左奥にあるのか第二バイオリンなのかビオラなのかはかなり慎重に見ないと判断できない。左奥が第二バイオリンで右にチェロとビオラがいればフルトヴェングラー型だが、左奥がビオラで右にチェロと第二バイオリンであれば19世紀型の古典的両翼配置をチェロを右にビオラを左に変形した形ということになる。

 幸い1932年の映像には「美しく青きドナウ」の出だしで、ホルンの呼びかけにビオラが応える様子がはっきり写っている。左奥がビオラで右手前が第二バイオリンだ。この箇所は第一・第二バイオリンは音を刻んでいるだけなので見間違えるはずはない。
http://imslp.org/wiki/The_Blue_Danube,_Op.314_(Strauss_Jr.,_Johann)

 ACOとチェコフィルの映像の並びをさらに確認してみる必要はあるが、ベルリン国立歌劇場管の時は左から第一バイオリン、ビオラ、奥にコントラバス、チェロ、第二バイオリンの変則型両翼配置だったことは間違えなさそうだ。この並びはフルトヴェングラー型のビオラと第二バイオリンを入れ替えてバイオリンだけを両翼にした形ということもできる。2チャンネルではこれを「ハイブリッド型(折衷型)」と呼んでいるようだが、恐らく19世紀型の古典的な両翼配置とフルトヴェングラー型の折衷という意味だろう。

 実はカルロスもドレスデンでの有名な82年のトリスタンとイゾルデの録音ではこの変則型(ハイブリッド型)両翼配置を採用しており、バイオリンは両翼だがチェロは右だ。最近ではギーレンなどもこの配置を採用している。

 父親の影響が強かったカルロスだが、オケの配置に関してはフルトヴェングラー型、父親に倣ったハイブリッド型両翼配置、19世紀型の古典的な両翼配置と様々な形を試しているのが興味深い。バイエルン(ミュンヘン)以外のドイツの放送オケはストコフスキー型(左から第一バイオリン、第二バイオリン、ビオラ、チェロ、右奥にコントラバス)を採用していることが多く、カルロスもシュトゥッツガルト放送響との映像ではストコフスキー型になっている。

 さて、肝心の演奏だが、エーリッヒの指揮が基本的に縦の打点を基調としているのに対して、カルロスは横振りが基本で、打点をはっきりさせる時は棒を上下に振るのではなく円を描く。指揮のスタイルとしては全く異なることが確認できた。カルロスが敢えて違う方向を目指したのかどうか? 

 カルロスが尊敬したカラヤンも横振りだが、カルロスの指揮は緩急のリズムのつけかた、特に緩→急のわくわくするようなアッチェランドに大きな違いがある。カラヤンはスマートだけどカッコつけたがりなので瞬発的に叩きつけたり、思い切り良くリズムを変化させるのは苦手なのだ。

 音楽に対して切り込んでいく勇気を持ち続けるのは難しい。カラヤンやバーンスタインにも良い演奏はあるが、彼らのように自己陶酔に浸るのはある意味で音楽と戦わずに自己の表現を正当化させようとする行為なのだ。クライバーのすごい点はこれを逃げないで全身全霊で実行した(少なくとも、実行しようとした)点にある。音楽に対する自己犠牲とでも言うべきだろうか。

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