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これはストコフスキーが1956年〜1960年に、ロスフィルとの惑星を含めた米キャピトルへの録音(CD8枚)と、NBC交響楽団を改名したシンフォニー・オブ・ジ・エアーを指揮してUnited Artistsに録音した演奏(CD2枚)を集大成したものだ(United Artistsへのベートーベンの7番など他にも何点かの録音が残されておりこのBOXが全部を収めている訳ではないが)。すべてステレオ録音だが、音質はなぜか最初の1956年の惑星が最も良い。その後の録音はそれには及ばないのだが、それでも同時期のEMIやDGの録音と比べれば数段優れている。
オケはBPO(このストラヴィンスキーが初のステレオ録音だった)から、録音用の臨時編成オケ「レオポルド・ストコフスキー・シンフォニー・オーケストラ」までまちまちだ。演奏も玉石混合の傾向が無きにしもあらずだが、それにしてもこのレパートリーの広さには恐れ入る。お得意のバッハの編曲ものや、ストラヴィンスキー、バルトーク、シェーンベルク、ショスタコービチぐらいは当然のこととして、ハチャトリアンの交響曲第二番や、グリエールの交響曲第三番などという私も名前しか知らないような作品、さらにはマルタンの小協奏交響曲などという「そんな作品あったかなあ?」という作品まで含まれている。
1958年のカルミナ・ブラーナは惑星同様に恐らくステレオでの世界初録音なのではないだろうか? この演奏は繰り返しをカットするなどの改変が一部あるようだが、ストコフスキーは翌1959年にニューヨークのシティーセンター・オペラでこの曲とストラヴィンスキーの「オイディプス王」をステージ上演しているので、これはステージ上演用の編曲だった可能性もあるだろう。
ストコフスキーは1882年生まれなので録音当時74歳から78歳ということになる。トスカニーニやフルトヴェングラー、あるいはベームやカラヤン、バーンスタインがこの年齢に達した頃には新しい作品を紹介することをとっくに止めてしまっていることを考えると、ストコフスキーがこの年齢にして進取の精神をなくしていなかったことはほとんど奇跡的と言えるのではないだろうか。
ストコフスキーが作品に手を加えることを批判する評論家も多いが、例えばベートーベンの第九のオーケストレーションの改変や、チャイコフスキーの5番のカット、あるいはブルックナー作品の弟子による大幅な改変などはフルトヴェングラーなども含めて1950年頃までかなり広く行われていた。50年代以降もシェルヘンはマーラーの作品を大幅にカットして演奏していたし、シェエラザードや展覧会の絵の改変は実際はオーマンディもかなりやっている。
もちろんそれらが決して良いことだとは思わないが、20世紀前半においてはそういう行為は演奏者としてそれほど珍しくはなかったということを理解して聞く必要があると思う。少なくとも、一方ではフルトヴェングラーの演奏をいまだに神格化し、一方でストコフスキーの演奏をゲテ物扱いするのは著しく不公平だ。
このBOXセットがストコフスキー再評価のきっかけになることを期待したい。
CD1
バッハ/ストコフスキー編:オーケストラ・トランスクリプション
・トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
・パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582
・アリア(G線上のアリア)(管弦楽組曲第3番BWV1068より)
・神はわがやぐら
・羊飼いのうた(クリスマス・オラトリオBWV248より)
・ゲッセマネにおけるわが主イエス
・前奏曲(パルティータ第3番BWV1006より)
・ブーレ(イギリス組曲第2番BWV807より)
・サラバンド(パルティータ第1番BWV1002より)
・甘き死よ来たれ
・小フーガト短調 BWV578
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957-58年
録音方式:ステレオ
CD2
・バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽Sz106 (1936)
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年12月
録音方式:ステレオ
・イベール:寄港地
フランス国立放送管弦楽団
録音時期:1958年5月
録音方式:ステレオ
・マルタン:小協奏交響曲 (1945)
・ファーバーマン:Evolution (part 2)
・パーシケッティ:ディヴェルティメントより『行進曲』
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年
録音方式:ステレオ
CD3
ドビュッシー:
・牧神の午後への前奏曲
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年1月
録音方式:ステレオ
・夜想曲
ロンドン交響楽団
録音時期:1957年5月
録音方式:ステレオ
・ベルガマスク組曲より『月の光』
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年1月
録音方式:ステレオ
・管弦楽のための映像より『イベリア』
フランス国立放送管弦楽団
録音時期:1958年5月
録音方式:ステレオ
CD4
・ショスタコーヴィチ:交響曲第11番ト短調Op.103『1905年』
ヒューストン交響楽団
録音時期:1958年4月
録音方式:ステレオ
・バーバー:弦楽のためのアダージョ
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年1月
録音方式:ステレオ
CD5
・ホルスト:組曲惑星Op.32
ロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団
ロジェ・ワーグナー合唱団
録音時期:1956年9月
録音方式:ステレオ
・シェーンベルク:淨められた夜
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年8月
録音方式:ステレオ
CD6
・グリエール/ストコフスキー編:交響曲第3番ロ短調Op.42『イリヤ・ムーロメッツ』
ヒューストン交響楽団
録音時期:1957年3月
録音方式:ステレオ
・ストラヴィンスキー:『ペトルーシュカ』組曲
・ストラヴィンスキー:『火の鳥』組曲
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1957年5月
録音方式:ステレオ
CD7
・デュカス:ラ・ぺリ〜ファンファーレ
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年
録音方式:ステレオ
・トゥリーナ:闘牛士の祈りOp.34
・レフラー:異教徒の詩Op.14
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1958年1月、2月
録音方式:ステレオ
・ラヴェル:道化師の朝の歌
フランス国立放送管弦楽団
録音時期:1958年5月
録音方式:ステレオ
・ラヴェル:スペイン狂詩曲
ロンドン交響楽団
録音時期:1957年5月
録音方式:ステレオ
・シベリウス:トゥオネラの白鳥Op.22-2
・シベリウス:フィンランディアOp.26
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年5月
録音方式:ステレオ
CD8
・オルフ:カルミナ・ブラーナ
ヴァージニア・ベビキアン(ソプラノ)
クライド・ヘーガー(テノール)
ガイ・ガードナー(バリトン)
ヒューストン合唱団
ヒューストン交響楽団
録音時期:1958年4月
録音方式:ステレオ
・R.シュトラウス:吹奏楽器のための組曲Op.22より『ガヴォット』
・ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第8番ニ短調より『スケルツォ』
・チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op.36より『スケルツォ』
・ムソルグスキー/ラヴェル編:展覧会の絵より『鶏の足の上に建っている小屋』、『キエフの大きな門』
ヒズ・シンフォニー・オーケストラ
録音時期:1957年1月、2月
録音方式:ステレオ
CD9
・レスピーギ:ローマの松
・ハチャトゥリアン:交響曲第2番『鐘』
・フレスコバルディ:ガリアルダ
・パレストリーナ/ストコフスキー編:キリストをたたえよ(4声のためのモテット)
シンフォニー・オブ・ジ・エアー
録音時期:1958年12月
録音方式:ステレオ
原盤:United Artists
CD10
・ショスタコーヴィチ:交響曲第1番Op.10
・ショスタコーヴィチ:前奏曲とフーガ第14番変ホ短調Op.87
・ショスタコーヴィチ:ムツェンスク群のマクベス夫人Op.29より『間奏曲』
・ブロッホ:シェロモ
・チェスティ/ストコフスキー編:おまえは私を苦しめはしなかった(弦楽合奏とハープのための)
・ガブリエリ/ストコフスキー編:サクラ・シンフォニア第6番(8声の弱と強のソナタ)
シンフォニー・オブ・ジ・エアー
録音時期:1958年12月-1959年2月
録音方式:ステレオ
原盤:United Artists
以上、レオポルド・ストコフスキー(指揮)
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