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このアルバムはルートヴィヒがウィーン国立歌劇場のメンバーになった1955年から引退する1994年まで実に39年に渡るウィーンとザルツブルグにおけるライヴ録音をほぼ年代順に3枚のCDにハイライトしたものである。ただし、ベームのフィガロとマクベス、クリップスのコジ、カラヤンのフィデリオ、タンホイザー、影のない女、プレートルのカプリチョ、マゼールのカルメンとファルスタッフはオルフェオやDGから既発売の全曲盤から採られたものだ。しかもステレオ録音は3枚目だけ、おまけに1枚2000円以上するフルプライスのCD(今どき珍しいかも?)なので、買おうかどうか一瞬躊躇した。
しかし、1994年の最後のオペラ出演である「エレクトラ」など貴重な音源も少なくない。ルートヴィヒがフランス物やイタリア物、それにベルクやプフィッツナー、アイネムの初演物(!)といった新しい作品まで幅広いレパートリーを持っていたことを確認できる貴重なアルバムでもあるので聞いてみることにした。
まずDISC1では、恐らく正規盤初出の1955年8月のザルツブルグ音楽祭でナクソス島のアリアドネの作曲家を歌っているのが注目される。ルートヴィヒのザルツデビューは1956年のケルビーノ(フィガロの結婚)かと思っていた。ヨセフ・ギーレン演出のこの舞台はゼーフリートが作曲家を歌った1954年のライブが名演として有名でLP時代から海賊盤で出ていた(DGが正規CD化していた)。ウィーン国立歌劇場が1955年12月に再建される前にザルツブルグの大舞台に抜擢したあたり、ベームがルートヴィヒにいかに目をかけていたか分かる。ルートヴィヒはこの年、ショルティ指揮「魔笛」の第二の侍女のような小さい役も歌っているが、ひょっとしたらアリアドネの作曲家はゼーフリートが何らかの理由で出演できなくなり急きょ代役で抜擢されたのかもしれない。
ケルビーノ(フィガロの結婚)やドラベッラ(コジ・ファン・トゥッテ)といった当たり役が収められているのは当然のこと、ソプラノになりたかったと公言しているルートヴィヒが60年代に積極的に取り上げたレオノーレ(フィデリオ)、ヴェーヌス(タンホイザー)、マリー(ヴォツェック)、染物屋の妻(影のない女)と言った役も収められている。ドイツ語だがルートヴィヒのチェレネントラが聞けるのも珍しい。
DISC2の「ばらの騎士」はソプラノの元帥夫人を歌ったバーンスタインの1968年の1幕と、メゾのオクタヴィアンを歌ったクリップスの1971年のモスクワ公演の2幕から聴くことができる。カルメンやオルトルート(ローエングリン)と言った悪女・魔女系の役も意外と好きだったようだ。R.シュトラウスの「カプリッチョ」やプフィッツナーの「パレストリーナ」といった20世紀作品も積極的に取り上げていたことが分かる。
DISC3にはイタリア物、フランス物、さらにはドイツ語のチャイコフスキーまで収められているが、クイックリー夫人(ファルスタッフ)は当たり役と言ってよいだろうし、マクベス夫人(マクベス)も意外に(←失礼!)良い。「ルイーザ・ミラー」のフェデリーカや「トロイの人々」のディドまで歌っていたとは知らなかった。メータ指揮の「ラインの黄金」は結局「ワルキューレ」までで打ち切られてしまった指輪チクルスでの演奏だが、ルートヴィヒがエルダを歌っていたとは知らなかった。ルートヴィヒはショルティ盤とカラヤン盤の指輪でワルトラウテを、レヴァイン盤の映像ではフリッカとワルトラウテを歌っていた。
ルートヴィヒとル・ルーは「ペレアスとメリザンド」をアバド指揮で1991年にDGに録音しているが、この1988年のライブはギャウロフが参加している上、このCDには出てこないが主役はシュターデだったはずだ(DGの録音はユーイング)。しかもこの録音には映像も残されている。LD時代にパイオニアが発売を予告していたので私は楽しみにしていたのだが、残念ながら結局発売されなかった。ぜひ発売を期待したい。
アルバムの最後を飾るのは、ルートヴィヒのオペラのラストステージとなったクリテムネストラ(エレクトラ)だ。クリテムネストラの登場と共に拍手が沸いている。ここで拍手が沸くのは珍しいと思う(笑)。きっと聴衆もこれが見おさめだと知っていたのだろう。先日ユーチューブから引用したようにこの録音にも映像がある。
http://www.youtube.com/watch?v=Od5wfqxrgQk&feature=relmfu
素晴らしい演奏を断片で聞かされるのは残念でもあるが、しかしルートヴィヒがいかにウィーンから愛されていたかがたった3枚で良くわかる好アルバムだ。
(追記)
ルートヴィヒがミュンヘンで演じたクリテムネストラの映像も見つけた。指揮はヤノフスキだ。
http://www.youtube.com/watch?v=SRqHrOsfGq8
(DISC1)
・モーツァルト:『フィガロの結婚』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms ケルビーノ)
カール・ベーム(指揮)
ウィーン・フィルハーモニ−管弦楽団
録音:1957年7月30日、ザルツブルク音楽祭(モノラル)
・R.シュトラウス:『ナクソス島のアリアドネ』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms 作曲家)
カール・ベーム(指揮)
ウィーン・フィルハーモニ−管弦楽団
録音:1955年8月6日,ザルツブルク音楽祭(モノラル)
・モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』から
ヒルデ・ギューデン(S フィオルディリージ)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms ドラベッラ)
ヴァルデマール・クメント(T フェランド)
ヴァルター・ベリー(Br グリエルモ)
カール・デンヒ(Br ドン・アルフォンソ)
カール・ベーム(指揮)
録音:1966年4月2日(モノラル)
・モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms ドラベッラ)
ヴァルター・ベリー(Br グリエルモ)
ヨゼフ・クリップス(指揮)
録音:1968年9月22日(モノラル)
・ロッシーニ:『チェネレントラ』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms チェネレントラ)
ヴァルデマール・クメント(T ドン・ラミーロ)
ヴァルター・ベリー(Br ダンディーニ)
ルートヴィヒ・ウェルター(Bs アリドーロ)、他
アルベルト・エレーデ(指揮)
録音:1962年9月3日(モノラル)※ドイツ語歌唱
・ベートーヴェン:『フィデリオ』から
クリスタ・ルートヴィヒ(S レオノーレ)
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
録音:1962年5月25日(モノラル)
・ワーグナー:『タンホイザー』
ハンス・バイラー(T タンホイザー)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms ヴェーヌス)
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
録音:1963年1月8日(モノラル)
・ベルク:『ヴォツェック』から
ヴァルター・ベリー(Br ヴォツェック)
クリスタ・ルートヴィヒ(S マリー)
レオポルド・ルートヴィヒ(指揮)
録音:1963年5月19日(モノラル)
・R.シュトラウス:『影のない女』から
ヴァルター・ベリー(Br バラク)
クリスタ・ルートヴィヒ(S 染め物屋の妻)
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
録音:1964年6月11日(モノラル)
(DISC2)
・R.シュトラウス:『カプリッチョ』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms クレロン)
リーザ・デラ・カーザ(S 伯爵夫人)
ヴァルター・ベリー(Br オリヴィエ)
オットー・ヴィーナー(Bs ラ・ロシュ)
ロバート・カーンズ(Br 伯爵)
ジョルジュ・プレートル(指揮)
録音:1964年3月21日(モノラル)
・プフィッツナー:『パレストリーナ』から
セーナ・ユリナッチ(S イギノーノ)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms シッラ)
ロベルト・ヘーガー(指揮)
録音:1964年12月16日(モノラル)
・ワーグナー:『ローエングリン』から
クレア・ワトソン(S エルザ)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms オルトルート)
ヴァルター・ベリー(Br テルラムント)
カール・ベーム(指揮)
録音:1965年5月16日(モノラル)
・ビゼー:『カルメン』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms カルメン)
ロリン・マゼール(指揮)
録音:1966年2月19日(モノラル)
・R.シュトラウス:『ばらの騎士』から
クリスタ・ルートヴィヒ(S 元帥夫人)
ギネス・ジョーンズ(S オクターヴィアン)
レナード・バーンスタイン(指揮)
録音:1968年4月13日(モノラル)
・R.シュトラウス:『ばらの騎士』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms オクタヴィアン)
ヒルダ・デ・グローテ(S ゾフィー)
ヨゼフ・クリップス(指揮)
録音:1971年10月3日、モスクワ(モノラル)
(DISC3)
・ヴェルディ:『マクベス』から
クリスタ・ルートヴィヒ(S マクベス夫人)
シェリル・ミルンズ(Br マクベス)、他
カール・ベーム(指揮)
録音:1970年4月18日(ステレオ)
・アイネム:『老婦人の訪問』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms クレア)
エーベルハルト・ヴェヒター(Br アルフレート・イル)
カール・テルカル(T コビー)
録音:1971年5月23日(ステレオ) ※初演
・ヴェルディ:『ルイーザ・ミラー』より
フランコ・ボニゾッリ(T ロドルフォ)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms フェデリーカ)
アルベルト・エレーデ(指揮)
録音:1974年1月23日(ステレオ)
・ベルリオーズ:『トロイの人々』から
ギィ・ショベ(T エネ)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms ディド)
ニコラ・ギュゼレフ(Bs ナルバル)、他
ゲルト・アルブレヒト(指揮)
録音:1976年10月17日(ステレオ)
・ワーグナー:『ラインの黄金』から
ハンス・ゾーティン(Bs ヴォータン)
ブリギッテ・ファスベンダー(Ms フリッカ)
ヨゼフ・ホプファーヴィーザー(T フロー)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms エルダ)
ズービン・メータ(指揮)
録音:1981年3月22日(ステレオ)
・チャイコフスキー:『スペードの女王』から
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms 伯爵夫人)
ドミトリー・キタエンコ(指揮)
録音:1982年11月22日(ステレオ) ※ドイツ語
・ヴェルディ:『ファルスタッフ』から
ヴァルター・ベリー(Br ファルスタッフ)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms クイックリー夫人)
ロリン・マゼール(指揮)
録音:1983年2月22日(ステレオ)
・ドビュッシー:『ペレアスとメリザンド』から
フランソワ・ル・ルー(Br ペレアス)
ニコライ・ギャウロフ(Bs アルケル)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms ジュヌヴィエーヴ)
クラウディオ・アバド(指揮)
録音:1988年6月11日(ステレオ)
・R.シュトラウス:『エレクトラ』から
ヒルデガルト・ベーレンス(S エレクトラ)
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms クリテムネストラ)、他
ハインリヒ・ホルライザー(指揮)
録音:1994年12月14日(ステレオ) ※ルートヴィヒの最後のオペラの舞台
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