|
ジョブスの追悼番組で良く取り上げられていることだが、ジョブスがペプシから引きぬいてきたスカリーがジョブスをマッキントッシュの開発から外してしまったため、ジョブスはアップルを一度退社している。その後NEXTコンピュータという高性能だがかなり高額なマシンの開発や、CG制作のピクサーなどの事業を立ち上げてからアップルに復帰した。
その後iMAC,iBook,iPod,iPhone,iPadと続くジョブスの快進撃は皆さんご存じのとおりだろう。私はその経緯をリアルタイムで知っている世代だが、ジョブスは後年、アップルを追放されたことが「人生で最良の経験だった」と言っていたそうだ。ジョブスという人間の懐の深さには驚かされる。
我々日本人は経済的にも、エネルギー問題や放射能汚染、災害復旧という点でもかつてない難しい問題を抱えている。最良とは言わなくても、これも貴重な経験だったと10年後に言えるようになりたい。
シューマン作曲
交響曲第3番変ホ長調op.97「ライン」
交響曲第4番ニ短調op.120
セルジュ・チェリビダッケ指揮
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 1988/04/21(3番),1986/09/20(4番)
ガスタイク・ザール,ミュンヘン
さて、シューマンの交響曲は現在の大編成オケを想定して書かれていないのでバランスが難しいという話を以前書いた。モダンオケで演奏するには指揮者の耳が良くないといけないのだ。その意味でチェリビダッケにはまさにうってつけの作品だ。80年代の演奏ということもあって遅めのテンポだが、丁寧な感じはしても緩んだ感じは決してない。晩年のチェリビダッケが自分の孫のようなオケを丹念に鍛え上げてきたことが手に取るように伝わってくる。本当に素晴らしい指揮者だったと思う。
全盛期のミュンヘンフィルの音はウィーンフィルに劣らない。このシャリシャリした(伝わるかな?)心地よい耳触りは、ベルリンフィルや北ドイツ放送響などもっと北のオケの重たい音からは得られないものだ。ミュンヘンとウィーンは北緯で見ると比較的近いが、このあたりの気候が恐らくヴァイオリンに生えるある種のカビには丁度良いのだろう。でもウィーンフィルは時に「これがウィーン」と言わんばっかりのナルシスティックな音を出すが、ミュンヘンフィルにはそれはない。いぶし銀の輝きとはまさにこのことだろう。
配置はチェリビダッケのいつものようにストコフスキー型(アメリカ型)なので、クーベリックのように両翼の効果は楽しめないが、クーベリック盤と並んでモダンオケによるこの曲の最も良い演奏だと思う。4番は1999年の名曲名盤で3位に入ったことがあるが、今では評論家にはほとんど無視されているようだ。どうしてなのだろう? チェリビダッケって評論家ウケしにくいのかな? これも輸入盤が激安BOXで手に入るのでぜひ聞いてほしい。4番にはほぼ同時期の日本でのライブもCD化されたが、この曲はこのEMI盤の方が良いと私は思う。
そう言えばチェリビダッケも若い頃ベルリンで絶賛されながら、オケのメンバーと衝突し結局は指揮台を追われた。それを最良の経験と言ったかどうかは知らないが、ピンチをチャンスに変えて素晴らしい成果を達成したという点で偉人は共通するようだ。来年のチェリ生誕100年に向けて再評価が進むことを期待したい。盟友のミケランジェリと共演したコンチェルトも近く発売されるようなので楽しみだ。
(追記)
クラシカジャパンで同じミュンヘンで1993年にムーティがバイエルン放送響を指揮したシューマンの4番が放送されていたので見てみた。ムーティがこのオケを振るのを見るのは初めてだが、70年代からバイエルン国立歌劇場やバイエルン放送響に客演しておりミュンヘンでの人気は高いのだろう。決して悪い演奏ではない。むしろ近年の演奏としては多分良い方だと思う。しかしチェリの演奏を聞いた後ではまだまだ格が違うなという感じだ。
http://www.classica-jp.com/program/detail.php?classica_id=U4326&date=20111225
|