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・シューマン:ヴァイオリンソナタ第一番、第二番
 ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
 (1985)

 クレーメルのピアノ伴奏者はソヴィエト時代からのオレグ・マイセンベルクがまず挙げられるが、西側に移住してからの最良のパートナーがアルゲリッチであることは間違いないだろう。自伝には主に1980年頃までの半生に触れていてざっと読む限りアルゲリッチのことは書いていない。クールなクレーメルと熱いアルゲリッチの組み合わせは恐らくDGのプロデューサーあたりが考えたのだろう。1984年に録音されたベートーヴェンの1番〜3番が発売された時は少なからず驚いたが、あれがその後20年以上に続く長い共同作業の第一歩だったのだ。

 その後このコンビの録音は1985年のこのシューマン、1987年のベートーヴェンの4、5番と続いた。確か1987年頃日本で演奏したベートーヴェンの5番と9番の演奏がFMで放送された。予想に反して息が合った演奏だったので聞きに行けば良かったと思ったものだ。しかし9番の録音はなかなか出てこなかったし、5番は全集になってから買おうと決めていたので(全集が完結するのが1994年で10年もかかるとは夢にも思わなかった)、代わりに買ったのがこのシューマンだ。

 シューマンの音楽は情熱的だがベートーヴェンのように外側に発散されるのではなく内側にこもっていく点が特徴だ。アルゲリッチにとってシューマンは得意のレパートリーだが、先日紹介したリッチとのフランクほどは熱くなりすぎず、クレーメルといい感じで曲の本質に迫っていると思う。この2人は2番を2006年にライブで再録音している(EMI)ので、2人にとってもお気に入りの作品なのだろう。

 このシューマンのソナタも70年代にはまるで流行らなかった曲で、75年の総目録には1番にブッシュのSP盤と豊田耕児のビクター盤があるだけだ。このクレーメル盤が出た時も他のCDはエラートから出ていたシューマンの室内楽全集(買おうかどうか迷ったが結構高かったので結局買わなかった)があったぐらいだったと記憶している。90年代以降はかなりの数の録音が出るようになったが、この作品の魅力を世の中に知らしめる上でこの演奏が果たした役割は大きかったのではないだろうか。

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