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コラムニストでクラシック音楽にも造けいが深く、だいぶ以前に私もお会いしたことがある天野祐吉さんがお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈り致します。
マーラー:交響曲第5番
チョンミュンフン指揮ロンドン交響楽団
2006年3月7日
ミューザ川崎シンフォニーホール
http://www.youtube.com/watch?v=LdoYX0P_Jmo
またしてもマラ5だ。以前紹介したアバドの巨人からは24年も後のロンドン響の来日公演だが、この映像も面白い。
冒頭の長いトランペットソロを普通の指揮者は1拍目から振る。楽譜がそうなっているのだからバーンスタインもショルティもテンシュテットもアバドもマゼールもゲルギエフも大抵の指揮者はそうするのだが、ここはリハーサルがきちんとできていればわざわざ振る必要のない場所でもある。ソリストだと思ってしまえば良いのだ。たとえばベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番で冒頭のピアノソロから棒をつける必要はないだろう。
チョンミュンフンはここで棒を下ろして目をつむったままトランペットソロをじっと聞き、オケがトゥッティで鳴る直前の13小節目(下記楽譜参照)でおもむろに「ガッ」っと鷲のように両手を広げて振り出す。これがオケを集中させて内側のエネルギーを爆発させるのに実に効果的で、この指揮者らしいと思った。オケが第2バイオリンが右でチェロが左の両翼(対向)配置になっているのも望ましい。両翼配置がブームになる前の2006年の演奏なので進んだ取り組みだったと思う。
http://petrucci.mus.auth.gr/imglnks/usimg/d/d6/IMSLP13080-Mahler-Symphony_No.5_I.pdf
チョンミュンフンは派手さはないが私が好きな現役指揮者の一人である。実は彼が指揮するヴェルディのレクィエムの合唱を歌ったことがあるのだが、普通の指揮者であれば激しく棒を振り回しそうな「怒りの日」でも実にコンパクトで要領を得た、かといって醒めている訳ではなく内面に向かって燃焼していくような素晴らしい指揮だった。外側に向かって激しく煽るバーンスタインとはおよそ正反対の方向性だ。曲の合間などで時折、斜め上方の宙を見つめて集中するような仕草をするのが何かを瞑想しているようにも見えて興味深かった。マラ5は先日N響でも振ったのでご覧になられた方も多いだろう。テレビでも放送されたようだが見逃してしまったので再放送されたら見てみたい。
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