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ワーグナー作曲:楽劇「トリスタンとイゾルデ」
Tristan:Jon Fredric West
Isolde:Hildegard Behrens
Marke:Matti Salminen
Brangene:Ann Murray
kurwenal:Alan Titus
ロリン・マゼール指揮バイエルン放送交響楽団
演出:エヴァーディング
美術:シャヴァーノッホ
衣装:毛利臣男
(1996、プリンツレーゲンテン劇場)
http://www.youtube.com/results?search_query=maazel+tristan
これはバイエルン国立歌劇場ではなくプリンツレーゲンテン劇場で行われたバイエルン放送交響楽団の公演だ。以前紹介した1981年のバーンスタインのトリスタンも同オケの演奏だが、バーンスタインの公演が1幕ごと3回に分けた演奏会形式(衣装付きセミステージ)だったのに対して、15年後のこの公演はエヴァーディング(写真)の演出による通常のオペラ上演だ。1993年から2002年まで同オケの音楽監督を務めたマゼールが振っている。
マゼールは2012年からはミュンヘンフィルの音楽監督も務めているのでミュンヘンでの人気は高いのだろう。マゼールは60年代からベルリンでの人気は高かったが、ミュンヘンに本格的に登場したのは1978年8月にバイエルン国立歌劇場のオテロ(エヴァーディング演出)をクライバーがキャンセルした時のようだ。
窮地のエヴァーディングを救うためバイエルン国立歌劇場では一度も指揮したことがなかったマゼールが急遽代役を務めた。その公演は好評であり、またマスコミがクライバーを非難したため以後クライバーはミュンヘンでオテロを振らなかった。それから19年後のこのトリスタンはエヴァーディングとマゼールの友情と、ミュンヘンでのマゼール人気を反映したものなのだろう。
理由は分からないがマゼールは代役を引き受けるのが好きだ。1976年の指輪初演100周年のバイロイトでは、リハーサル中にブーレーズの指揮に抗議した楽団員が集団ボイコットするという事件が発生したが、その際も万が一の場合はマゼールが代役で振る手配がされていたそうだ。キャンセル魔だったクライバーの代役はことのほか好きだったようで、ミュンヘンのオテロ以外にも、「テレーゼ事件」で有名な1982年12月のウィーンフィル定期(ベートーヴェンの4番と6番、テレビ中継とユニテルのビデオ撮りが予定されていた)や、ゼフィレッリ監督の映画「オテロ」のサウンドトラック(1985年、主演はドミンゴとリッチャレルリ)など、クライバーがキャンセルした仕事を次々と引き受けている。
さてこのトリスタンの映像は1981年のバーンスタインの公演と同様にベーレンスがイゾルデを歌っている点でも注目される。1996年はすでにキャリア後期で、私が知る限りベーレンスの最新の舞台映像だ。助六さんがお聞きになったザルツブルグでのマゼールとベーレンスのエレクトラ(浅利慶太演出)も同年8月だ(評論家の吉田秀和氏も聞いてベーレンスを絶賛しているらしい)。実演では結構共演していたのかもしれない。
助六さんによるとベーレンスは1998年頃に急速に衰えたとのことだが、ユーチューブで見る限りここではまだ大きな破綻はしていないようだ。以前紹介した1994年のエレクトラ(METのDVD)と比べると若干声の艶が失われたような気もするがyoutubeの限られた音質では正確には分からない。ベーレンスのワーグナーはブリュンヒルデの映像(ミュンヘンとメットの2種類)が有名だが、イゾルデとゼンタの方が合っているように私は思う。
エヴァーディングの演出も、DVDになっているメットのローエングリン同様に自然で違和感がない。助六さんによるとこの演出は日本で1986年にウイーン国立歌劇場が上演したものとは別の演出とのこと。また、マゼールのトリスタンとイゾルデと言えば1963年のベルリン・ドイツ・オペラの伝説的な来日公演(なんと日本初演!)を思い出すオールドファンもいらっしゃるだろう。マゼールはワーグナーの楽劇を何度も振っている割には正規の全曲録音がないので、ぜひこの映像をDVD化してほしいものだ。
トリスタンとイゾルデの対訳は例によってオペラ対訳プロジェクトを参照。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/44.html
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