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ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」

アルマヴィーヴァ伯爵 / ルイジ・アルヴァ(テノール)
バルトロ / エンツォ・ダーラ(バス)
ロジーナ / テレサ・ベルガンサ(メッゾ・ソプラノ)
フィガロ / ヘルマン・プライ(バリトン)
バジリオ / パオロ・モンタルソロ(バス)
フィオレルロ / レナート・チェザーリ(ソプラノ)
ベルタ / ステファニア・マラグー(ソプラノ)
士官 / ルイジ・ローニ(バス)
アンブロージョ / ハンス・クレイマー(バス)
公証人 / カール・シャドラー
ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団、
指揮:クラウディオ・アバド、
演出:ジャン=ピエール・ポネル
制作:[映像]1972年8月 ザルツブルク、ミュンヘン[音声]1971年9月 ミラノ
http://www.youtube.com/results?search_query=abbado+Siviglia&sm=3

 アバドが1981年のスカラ座来日公演でも振った十八番の作品だ。この映像と同一のキャストによるロンドンでのレコード録音は当時から評判が高かった。続くチェレネントラや2つの序曲集も含めて70年代は「ロッシーニと言えばアバド」と言われていたといって過言ではないだろう。アバドは1965年にマーラーの復活でザルツブルグ音楽祭にデビューしたのに続いて1968年と1969年にはセヴィリアの理髪師を振っており、アバドのロッシーニ好きはデビュー当初からだったようだ。

 そのザルツブルグでの舞台を演出したのがポネルだった。このプロダクションはザルツブルグでの成功を受けて翌1969年12月9日にはアバドによりスカラ座の演目にも加えられた。両者はほぼ同一のものだと推測されるので、1981年のスカラ座の来日公演でも披露された回り舞台は恐らくザルツブルグの舞台でも見られたのだろう。キャストはフィガロとアルマヴィーヴァ伯爵とバジリオの主役3人がこの映画と1968年の舞台で共通しており、ポネルにとって不動のキャスティングだったことが伺える。
http://www.salzburgerfestspiele.at/archive_detail/programid/271/id/267/j/1968

 映画版はセヴィリアの街がよりリアルに描写されているが、舞台では回り舞台が小気味良くて楽しかったので来日公演の映像もぜひDVD化してほしいものだ。だがいずれにしてもこの映画の成功が4年後に同じくプライの主役、ポネルの演出で制作されたフィガロの結婚の映画(指揮はベーム)につながったことは間違いない。この2つの映画はセットの雰囲気やフィガロの衣装も似ている。

 だが私はこの映画よりもヌッチが主役を歌った来日公演のテレビ放送を先に見ていたので、正直なところプライの歌う「セヴィリア」のちょっとおっとりしてベルカントっぽくはないフィガロには初めは多少の違和感を感じた。少なくとも映画や来日公演で既におなじみだった「フィガロの結婚」のフィガロほどはまり役だとは思わなかった。しかしポネル演出のセヴィリアとしてはプライがオリジナルキャストなのだ。

 しかも助六さんによればプライは「セヴィリア」のフィガロは「タンホイザー」のヴォルフラム、「魔笛」のパパゲーノ、「コジ・ファン・トゥッテ」のグリエルモと並んで最も好きな役だと回想録で述べているそうだ。プライは「フィガロの結婚」のフィガロよりも先に「セヴィリア」のフィガロを持ち役にしたのだ。ピリオド(時代考証)スタイル全盛の今となってはこのようなロッシーニは異色と言わざるを得ないかもしれないが、ここでは一世を風靡したプライのフィガロを楽しむべきだろう。

 なおアバドは80年代後半以降、アバドが蘇演した「ランスへの旅」を除けばロッシーニを振る機会はめっきり少なくなった。しかしウィーン時代の1987年に2回だけ「セヴィリアの理髪師」を指揮している。演出はレンネルトの古いものだが、ヌッチのフィガロ、シュターデのロジーナ、ダーラのバルトロ、フルラネットのバジリオという超豪華キャスティングがすごい。もしも録音が残っていたらぜひ聞いてみたいものだ。

Claudio Abbado | Dirigent
Günther Rennert | Inszenierung
William Matteuzzi | Graf Almaviva
Enzo Dara | Bartolo
Frederica von Stade | Rosina
Leo Nucci | Figaro
Ferruccio Furlanetto | Basilio
http://db-staatsoper.die-antwort.eu/search/person/108/work/18

 アバドのザルツブルグでの1969年の演奏はユーチューブで音だけ聞くことができる。1968年とされる海賊盤CDが以前出ていたのでひょっとしたらそれと同じ演奏かもしれない。
Claudio Abbado, Conductor
Jean-Pierre Ponnelle, Director
Luigi Alva, Il Conte di Almaviva
Fernando Corena, Bartolo
Malvina Major, Rosina
Robert Kerns, Figaro
Paolo Montarsolo, Basilio
http://www.youtube.com/results?search_query=abbado+Siviglia%E3%80%801969&sm=3

(追記)
2014年4月にクラシカジャパンがアバド追悼番組としてブラームスのピアノ協奏曲第二番、ペルゴレージのスターバト・マーテル、ロッシーニのチェレネントラと共にこのセヴィリアの理髪師を放送した。セヴィリア以外の3曲はデジタルリマスターによりハイビジョン化され画質・音質ともに大幅に改善されていたの。これに対して、セヴィリアの理髪師だけは横長ワイドスクリーンにはなっていたもののデジタルリマスター化はされていなかったようでフィルムの経年劣化による画面上のノイズなどはそのまま、画質・音質ともDVDとの差は大きくなかったのは残念だ。

なおこの映画「セヴィリアの理髪師」と同一の演出と映像監督による姉妹作の映画「フィガロの結婚」(ベーム指揮)も2014年9月にクラシカジャパンでニューバージョンが放送された。こちらは映像・音声ともにデジタルリマスターされて従来のDVDよりも改善しているが、画面サイズは4対3のままで「セヴィリアの理髪師」のように横長ワイドスクリーンにはならなかった。同一のスタッフによる作品でも違うフィルムサイズで収録したのだろうか? ちょっと不思議だ。

ちなみにカラヤンが60年代から70年代にかけて大量に制作した演奏会フィルムもリマスターされる際にオリジナル映像が横長ワイドスクリーンのものと4対3のままのものがある。当時の35ミリフィルムの規格に2通りあったということだろうか?

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