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オルフの「カルミナ・ブラーナ」は、バイエルン州ボイレンのベネディクト修道院で、1803年に図書室から見つかった250篇以上の中世(11世紀〜13世紀と推定されている)の世俗的な歌、「カルミナ・ブラーナ(ボイレンの歌、歌といってもほとんどは歌詞のみで楽譜は残っていないらしい)」から24篇を選んでオルフが曲をつけた世俗カンタータだ。「初春に」「酒場で」「愛の誘い」の3部に大きく分かれ、自然と酒と男女の営みを賛美する内容になっている。
オルフがつけた音楽はシンプルな和音と強烈なリズム、それに執拗な反復が特徴で普遍の宇宙を感じさせるものだ。ストラヴィンスキーの「春の祭典」と並んで「原始主義」という言われ方をされることもあるようだ。「春の祭典」のようにバレエ音楽として作曲されたものではないが、舞台形式で上演されることも多い。
ルチア・ポップ(S)
ヨーン・ヴァン・ケステレン(T)
ヘルマン・プライ(Br)
バイエルン放送合唱団
ミュンヘン放送交響楽団
クルト・アイヒホルン指揮
(録音:1973年、映像:1975年)
http://jp.youtube.com/results?search_query=Ponnelle+carmina&search_type=
カルミナ・ブラーナは1936年に作曲されたオルフの代表作で20世紀を代表する作品となった。オルフが1982年に亡くなった際は日本でも一般紙が社会面で大きく報道したのを覚えている。そのオルフが自作の録音にお墨付きを与えていた指揮者の一人がヨッフムであり、もう一人がアイヒホルンだ。二人ともオルフとブルックナーのスペシャリストであるという点でもなぜか共通している。さらにサバリッシュの1956年のカルミナ・ブラーナの録音(ヨッフムの旧盤に続いてこの曲の2番目の録音)と、ライトナーの1974年の録音も作曲者のお墨付きをもらっている。こういうドイツの職人気質の指揮者がオルフの好みだったようだ。
ヨッフムとアイヒホルンとサヴァリッシュの3人(ライトナーは未聴)の「カルミナ・ブラーナ」の中で最も純音楽的なのはこのアイヒホルンの録音だと思う。特にプライとポップの親しみやすくも品格の高いソロは聖俗の両面を表現したこの曲の最高の演奏だと思う。また、この曲の合唱は合唱曲としてはかなり難しい部類に入ると思うがヨッフムの旧盤でも起用されたバイエルン放送合唱団は完全にこの作品を消化しきっていると思う。
この音源をベースに1975年にポネルが演出した映像作品を作成した。聖俗を表現したコンセプチュアルな映像はとても興味深いが、残念ながらPAL方式のDVDなので私の環境では再生できない。ぜひブルーレイでリマスターし直して出して欲しい。youtubeにReinhold Behringerという人が分割で全曲アップしている。
このディスクと比べるとヨッフムが1967年の新盤で起用したベルリンドイツオペラのオケと合唱はやや荒っぽい迫力を持った演奏だと言えるし、ヤノヴィッツとフィッシャー=ディースカウのソロは逆に世俗カンタータとしてはあまりにも精妙だが、やや荒い合唱と精妙なソロという組み合わせが妙にマッチしていて、なるほど、さすが作曲者お墨つきだけのことはあると納得させられてしまう。アイヒホルンの演奏とは明らかに違った方向性だ。サヴァリッシュ盤は56年録音なのにモノラルなのが残念だが、速めのテンポで熱っぽい表現が特徴だ。
(追記)
プライとポップは1984年に日本でもサヴァリッシュ指揮N響でこの曲を演奏しており(演奏会形式)、その時の映像をユーチューブで少し見つけた。プライは気合いの入った名唱だしポップももちろんいい。サヴァリッシュはこの曲をステレオで再録音しなかったのでその意味でも貴重な演奏だ。これは日独友好記念の演奏会だったようでNHKとZDFによる収録だ。この映像はヨーロッパでも中継されたようでスペイン語かイタリア語の字幕が入っている。サヴァリッシュとポップとN響にはメンデルスゾーンの「エリア」の名演もあり、どちらもNHKにはぜひDVD化してほしい映像だ。
http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200998405050130090/
http://www.youtube.com/results?search_query=carmina+1984&aq=f
カルミナブラーナに関連するHPも挙げておこう。
(カルミナブラーナのひみつ)
http://nekozen.blog.eonet.jp/default/2008/08/post-ad52.html
(名古屋市民コーラスのHP)
http://nagoyashimin.sakura.ne.jp/data/carmina/frame/carmina_frame.html
(カルミナブラーナ逐語訳)
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/memb/hayashi/cb2.html
(カルミナブラーナファンサイト)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~seatimes/carmina.html
序
第1曲:おお、運命の女神よ
第2曲:運命の女神の痛手を
第1部
初春に
第3曲:春の愉しい面ざしが
第4曲:万物を太陽は整えおさめる
第5曲:見よ、今や楽しい
芝生の上で
第6曲:踊り
第7曲:森は花咲き繁る
第8曲:小間物屋さん、色紅を下さい
第9曲:円舞曲
第10曲:たとえこの世界がみな
第2部
酒場で
第11曲:胸のうちは抑えようもない
第12曲:昔は湖に住まっていた
第13曲:わしは僧院長様だぞ
第14曲:酒場に私がいる時にゃ
第3部
愛の誘い
第15曲:愛神はどこもかしこも飛び回る
第16曲:昼間も夜も、何もかもが
第17曲:少女が立っていた
第18曲:私の胸をめぐっては
第19曲:もし若者が乙女と一緒に
第20曲:おいで、おいで、さあ来ておくれ
第21曲:天秤棒に心をかけて
第22曲:今こそ愉悦の季節
第23曲:とても、いとしいお方
白い花とヘレナ
第24曲:アヴェ、この上なく姿美しい女
全世界の支配者なる運命の女神
第25曲:おお、運命の女神よ
O Fortuna,
velut Luna statu variabilis,
おお運命の女神よ
移ろう月の如く
semper crescis aut decrescis;
vita detestabilis
nunc obdurat et tunc curat
ludo mentis aciem;
egestatem, potestatem,
dissolvit ut glaciem.
汝は常に満ち欠けを繰り返す
情け容赦無い忌むべき世界
感情のおもむくがままに
競争 貧困 権力
氷の如く溶けていく
Sors immanis et inanis,
rota tu volubilis,
status malus, vana salus
semper dissolubilis;
obumbrata et velata
mihi quoque niteris;
nunc per ludum dorsum nudum
fero tui sceleris.
破滅 粗暴 虚無
揺れ動き 定まることなし
恩恵なきままに消え行くのみ
影に潜みベールに覆われ
重く圧し掛かり来る
汝の邪(よこしま)なる戯れに
今や顕わなる背後を晒すのみ
Sors salutis et virtutis
mihi nunc contraria;
est affectus et defectus
semper in angaria.
hac in hora sine mora
cordae pulsum tangite!
quod per sortem
sternit fortem,
mecum omnes plangite!
繁栄と美徳は我が身には遠く
運命の為せる業にただ従うのみ
今こそ弦を鳴らせ!
幸運により刺客は滅ぼされん
皆で哀歌を歌い上げるのだ!
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