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http://www.youtube.com/watch?v=8CWindFtFJo
アンドレア・シェニエに続いてドミンゴとカプッチルリの共演。私はカプッチルリのファンである。実は日本にもカプッチルリのファンクラブが存在し、当時学生の分際で混じらせていただいていた私はオペラやリサイタルで来日する度に会っていたのだ。舞台での貫禄と比べて普段はどちらかというと控えめで穏やかなジェントルマンだった印象がある。千葉の村瀬さんという方が会長を務められていた。偉大な歌手と身近に触れ合える機会を与えて頂いたことに大変感謝しております。
さてこのディスクは1975年のコヴェントガーデンの映像だが、LD時代に映像化権を持っていたパイオニアが日米での発売を見送ってしまい2002年に米国でDVD化されて初めて見られるようになった。もう30年も前の映像だが画質・音質は悪くない。キャスティングは以下の通り。
グスタフ3世(リッカルド):プラシド・ドミンゴ
アメーリア:カーティア・リッチャレルリ
アンカーストレーム伯爵(レナート):カプッチルリ
オスカル:レリ・グリスト
女占い師アルヴィドソン(ウルリカ):エリザベス・ベインブリッジ
シルヴァーノ:ウィリアム・エルウィン
サミュエル:グウィン・ハウエル
トム:ポール・ハドソン
裁判官:フランシス・エジャートン
アメーリアの召使:ジョン・カー
指揮:クラウディオ・アバド
装置:ユルゲン・ローゼ
演出:オットー・シェンク
アバド・ドミンゴ・カプッチルリのトリオはスカラ座の舞台で1970年のドン・カルロ、1972年のシモン・ボッカネグラやアイーダなど共演を重ねてきただけに息もピッタリ。ムーティがこの上演の直後にアメリアをアーロヨにウルリカをコソットに入れ替えた以外はほぼ同じキャストでレコードを録音したが、このディスクの方が出来が良いのはそのためだろう。ムーティはこの前年にアイーダも主役をカバリエに替えた以外ほとんどアバドと同じキャスティングで録音しているが人まねは感心しない。キャスティングもプロダクションの一部だ。
おかげでアバドは仮面舞踏会のレコード録音ではドミンゴとリッチャレルリ以外は別のキャストに替えざるを得なかったが、オブラスツオワのウルリカとグルベローバのオスカルはともかく、レナートがブルゾンに替わってしまったのは痛い。アバドは舞台ではこの後1978年にスカラ座で、1986年にウイーンでも仮面舞踏会を取り上げているが、レナートは常にカプッチルリだったからだ。ブルゾンも良い歌い手だが、ヴェルディにはもう少し芯のある声が必要だと思う。
カプッチルリのレナートがすでにこの段階で完成の域に達していることは有名なアリア一つとっても分かる。この役は前回のジェラールや、ロドリーゴ(ドン・カルロ)、ルーナ(トロバトーレ)、シモン・ボッカネグラと並んで絶対にカプッチルリで聞きたい役の一つだ。
ドミンゴのリッカルドも許されない愛に悩む若者と寛大な王の貫禄の両方表現して素晴らしい。ドミンゴ十八番のレパートリーの一つであり、その後1989年にカラヤンとも録音、翌年のショルティとの映像もある。1993年のメットの来日公演では私も生で見ることができた。ところが興味深いことにアバドは1978年のスカラ座と1986年のウイーンではパバロッティを起用している。メットの仮面舞踏会の映像も1980年のものと、来日公演と同じプロダクションの1991年のものの2種類があるがリッカルドはいずれもパバロッティが歌っている。
パバロッティはヴェルディの役の中では比較的早い段階でリッカルドをレパートリーにした。明るい声が楽天的な若い王のキャラクターに合っていることもあって、パバロッティのヴェルディとしてはマントヴァ公爵(リゴレット)やマンリーコ(トロバトーレ)に次いで最も成功した役だろう。ドミンゴはマントヴァやマンリーコはそれほど歌わなかったので、ヴェルディのオペラでドミンゴとパバロッティが最も激しく競合した役はリッカルドだと言えそうだ。
このディスクの映像とスカラ座の映像がユーチューブにたくさんアップされているのでカプッチルリの至芸とドミンゴとパバロッティの聞き比べを味わってみてほしい。ウイーンの映像も見つけたがこの二重唱ではカプッチルリは写っていないのが残念だ。
1975年コヴェントガーデン(このディスクの映像)
http://www.youtube.com/results?search_query=abbado+ballo+1975
1978年スカラ座
リッカルド:パバロッティ
アメーリア:ザンピエリ
レナート:カプッチルリ
ウルリカ:オブラスツオワ
http://www.youtube.com/results?search_query=abbado+ballo+scala
1986年ウイーン
リッカルド:パバロッティ
アメーリア:レヒナー
http://www.youtube.com/watch?v=cC8rM26Dn54
スカラ座での演奏はぜひ正規盤で見てみたい。70年代のスカラ座の映像は正規盤では全く発売されていないが、75年のアバドのマクベス、76年のクライバーのオテロ、77年のアバドのドン・カルロとシモン・ボッカネグラ、78年のアバドの仮面舞踏会とパターネの運命の力、79年のクライバーのボエーム、いずれも映像が残されているはずだ。しかもこのすべての上演にカプッチルリが参加しているというのも驚きだ。(ドン・カルロとボエームはテレビ中継が初日でなかったために残念ながらカプッチルリは写っていない)まさにスカラ座の主役だったと言える。
少なくとも1978年のスカラ座の映像がDVDで出るまでは(あるいは出た後も)このディスクが仮面舞踏会の決定盤だろう。
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