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1960年にカイルベルトがウィーン交響楽団を指揮したマーラーの8番があって、ヴンダーリヒ、プライ、エーデルマンが出演するという豪華な演奏会だったということを最近知ったのだが、何とその演奏がユーチューブに全曲アップされているのを発見した。
Gustav Mahler: Symphony No.8 in E flat major
Fritz Wunderlich, Doctor Marianus
Melitta Muszely, Magna peccatrix
Gerda Schyrer, Una poeccatrix
Wilma Lipp Mater gloriosa
Hildegard Rössel-Majdan, Mulier Smaritana
Ursula Boese, Maria Aeqyptiaca
Hermann Prey, Pater ecstaticus
Otto Edelmann, Pater profundus
Singverein der Gesellschaft der Musikfreunde Wien
Wiener Symphoniker Joseph Keilberth, conductor
Recorded Live at Musikverein Wien on 19 January 1960
http://www.youtube.com/watch?v=FQFVzjyBHXY&feature=related
私が持っているハントのディスコグラフィーには1960年6月の録音と書いてあるが、この情報では演奏日は1960年1月となっている。音を聞くと放送のエアチェックらしきノイズが時々入る。きっと演奏会は1960年1月で放送日が6月なのだろう。私はパソコンをオーディオにつないでいないので正確な判断はできないが音質は比較的安定している。
プライがマラ8をたびたび演奏していることは何度か書いてきたが、ヴンダーリヒのマラ8は現時点で他では聞けないので大変貴重だ。プライとヴンダーリヒという親友同士の共演は商品化されたものとしてはCDでカラヤンとの天地創造、ミュンヘンでの椿姫(イタリア語)、ケルンでのドン・ジョバンニ(ドイツ語)、それにDVDのセヴィリアの理髪師(これもドイツ語)の4点ぐらいしかない。期待通りヴンダーリヒはマラ8に合っており2部のソロ(50分あたり)などは大変素晴らしい。これはぜひ正規にCD化してほしいものだ。ALTUSさんドリームライフさんテスタメントさんマーラー没後100年記念でぜひぜひよろしくお願いします。
マーラー生誕100年の1960年はマーラーが数多く演奏された。以前書いたようにプライとエーデルマンはこの年の8月のザルツブルグ音楽祭でミトロプーロスとこの曲を演奏している。この年の1月にはカラヤンも初めてのマーラーとなった大地の歌をベルリンで演奏しており、6月にはウィーンでもヴンダーリヒと大地の歌を演奏している。ウィーンフィルにヴンダーリヒの甘い声はぴったりだろう。カラヤンがウィーンフィルとマーラーを演奏したのは後にも先にもこの時だけなので、これももし録音が残っていたら聞いてみたいものだ。バーンスタインが全集(旧全集)の録音を開始したのも1960年であり、マーラーリバイバルはこの年に始まったと言ってよいだろう。
カイルベルトとヴンダーリヒはこのマラ8の後、1964年4月にバンベルクで大地の歌も演奏しており、それもユーチューブで見つけることができた(ただしピッチが相当高く、この音源がmaskballさんがお持ちのCDと同じ演奏かどうかは検証が必要だと思う)。ヴンダーリヒの大地の歌は同年のクレンペラーとのEMIの録音が名盤として有名であり、同年6月のクリップス指揮ウィーン交響楽団とのライブも最近CD化された。ヴンダーリヒは1960年にカラヤン指揮ウィーンフィルでも演奏しており、60年代のヴンダーリヒが大地の歌を十八番にしていたことは間違いないだろう。
Gustav Mahler: Das Lied von der Erde
Dietrich Fischer-Dieskau, baritone
Fritz Wunderlich, tenor
Bamberger Symphoniker Joseph Keilberth, conductor
Recorded Live at Kulturram Bamberg on 2 April 1964
http://www.youtube.com/watch?v=yGvriUY-Q_E
ヴンダーリヒが50年代にマーラーを歌ったことがあるかどうか調べてみる必要があるが、もしなかったとすれば1960年1月のマラ8にヴンダーリヒを誘ったのはプライだったのではないだろうか。ヴンダーリヒのマーラー好きはプライから伝染したのではないだろうか。願わくばこの2人で大地の歌を聞いてみたかったが、バリトン版の大地の歌はこの当時フィッシャー=ディースカウの専売特許のようになっていた。ヴンダーリヒとカイルベルトの演奏もクリップスの演奏も相手はF=Dだ。きっとプライは比較されるのを嫌がったのではないだろうか。
カイルベルトはマーラーを演奏していないのではないかと思っていたが、他にドレスデンで演奏した1950年の1番も比較的最近CD化され、このマラ8と大地の歌と合わせて結構振っていたことが分かったのも発見だ。ウィーン交響楽団は1960年までカラヤンが音楽監督だったが、このような大作を自分で振らないでカイルベルトに任せていることからカイルベルトとカラヤンは結構仲が良かったのではないかということも推測される。カイルベルトはカラヤン時代のウィーン国立歌劇場にもたびたび招かれている。
また、助六さんの情報によると、ウィーン交響楽団はCD化された1964年6月の大地の歌の直前の1964年5月にもクリップス指揮で8番を演奏しており、例によって(笑)プライも出演しているそうだ。共演はドナルド・グローブ(T)、ゲルダ・シャイラー、マーガレット・タインズ、モーリーン・フォレスター(A)、ルイーズ・パーカー、フランツ・クラス(B)、合唱は楽友協会で、これも録音が残っているなら聞いてみたいものだ。ウィーン交響楽団は音楽監督のカラヤンや後任の首席指揮者のサヴァリッシュがマーラーをほとんど振らなかったにも関わらず、50年代はクレンペラー、ホーレンシュタイン、シェルヘンなどの指揮で、60年代はカイルベルトやクリップスの指揮でマーラーを積極的に取り上げていたことは特筆される。
バーンスタインのある伝記には「1960年夏にミトロプーロスがザルツブルグで演奏して以降、バーンスタインが1975年に演奏するまでオーストリアでこの曲が演奏されたことはなかった」と書いてあるそうだが、少なくとも1964年にクリップスとウィーン交響楽団が演奏しているのでこの記述は誤りだ。確かにこの曲の演奏は大変だが、いくらなんでも戦後のオーストリアで15年間演奏されないということはないだろう。
(追記)
ユーチューブでは同じ人が1972年のジュリーニ指揮フィラデルフィア管(!)の9番をアップロードしている。これも興味深い演奏なので引用しておこう。
Gustav Mahler: Symphony No.9 in D major
The Philadelphia Orchestra, Carlo Maria Giulini, conductor
Recorded Live at Carnegie Hall New York on 17 March 1972
http://www.youtube.com/watch?v=dQfd0gPOXvc&feature=related
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