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パパゲーノ:ヘルマン・プライ
パパゲーナ:レナーテ・ホルム
タミーノ:ステュアート・バロウズ
パミーナ:ピラール・ローレンガー
夜の女王:クリスティナ・ドイテコム
ザラストロ:マルッティ・タルヴェラ
モノスタトス:ゲルハルト・シュトルツエ
弁者:ディートリッヒ・フィッシャーディースカウ
武士(武装した男):ルネ・コロ、ハンス・ゾーティン、
ショルティ指揮 ウイーン・フィル
1969年
プライによる唯一のパパゲーノとして有名なこの録音は、68年にDGが録音したプライのフィガロの結婚の翌69年に録音された。ライバルF=Dとの競演になった点でも同様であり、ある意味デッカがDGに対抗した企画だったのかもしれない。どういう契約の事情からか、日本では相変わらずLONDONレーベルでフルプライスで販売されている。(同様のものにカラヤンのフィガロの結婚や蝶々夫人などがある)
プライの「フィガロの結婚」は76年のポネル演出の映画や80年の日本公演でフィガロを歌っているのでフィガロ役がおなじみだが元々は伯爵が持ち役だ。64年のスイトナー盤(ドイツ語)で伯爵を録音している他、舞台では74年のスカラ座などでも伯爵を歌っている。68年のDG盤や76年の映画ではF=Dが伯爵を歌うのでプライがフィガロに回ったと言われている。
しかし80年の日本公演では伯爵はF=Dではない(ヴァイクル)のでそれは物事の一面を表しているに過ぎないだろう。この時期に同じくポネル演出のロッシーニの「セヴィリヤの理髪師」でもフィガロを歌ったことと合わせて、ポネルとプライの2人で新しいフィガロ像を作り出したと考えるべきだと私は思う。
一方魔笛のパパゲーノはプライのデビュー当時からの当たり役の一つだが録音はこれが唯一だ。70年代にもザルツブルグのカラヤンの公演などでパパゲーノを歌っているのでどこかに映像は残っていないだろうか? タンホイザーのヴォルフラムも当たり役だった割に録音すら残っていない。パパゲーノは録音が残っただけでも良かった。
64年のDGの魔笛ではパパゲーノを歌ったF=Dがここでは弁者に回っており、フィガロの結婚とは逆の現象が見られる。F=Dは71年のハンブルクの映画でも弁者を歌っている。その後パパゲーノを歌ったことがあるかどうか調べる必要があるが、私はF=Dのパパゲーノは異質であり弁者の方がはるかに合っていると思う。つまりF=Dもプライも2人の競演を期に別の役に回ったことで結局はよい結果になったのだ。
さて、この魔笛にはコロとゾーティンも参加している。コロは残念ながらタミーノではなく第一の武士、ゾーティンも当たり役のザラストロではなく第二の武士だ。もしこのCDのタミーノがコロでザラストロがゾーティンだったら男声に関しては完璧なキャストだったろうに!
コロは翌70年にショルティのタンホイザーとカラヤンのマイスタージンガーで主役を歌い一躍有名になるのでこの録音はその伏線になったのかもしれない。コロとショルティはその後千人の交響曲、大地の歌、パルジファル、マイスタージンガーなどでも共演している。コロがタミーノの録音を残さなかったのは残念だ。
ゾーティンは64年からハンブルク州立歌劇場のメンバーになりドイツ国内では活躍を始めていた。68年のフィデリオ(ドンフェルナンド)、68年の魔弾の射手(隠者)、69年のロシア皇帝と船大工(市長)、70年のヴォツェック(医者)、71年の魔笛(ザラストロ)などの映画がDVDで発売されている。まだDVDになっていないがエレクトラ(オレスト)などの映画もあるそうだ。
ゾーティンが国際的な活躍を始めたのはグラインドボーンでの70年の魔笛(ザラストロ)、シカゴでの71年のドンカルロ(大審問官)、バイロイトでの71年のタンホイザー(領主)あたりからだろう。つまりこの録音は国際的に発売されたレコードとしてはゾーティンの恐らく最も初期のものだろう。その後ショルティとは86年の第九でも共演している。またバーンスタインのフィデリオやバイロイトのタンホイザーとパルジファル(それぞれ2種)など比較的多くの映像作品に出演している。
http://www.imdb.com/name/nm0815452/
このように第一の武士と第二の武士は若き日の大物が歌っていることも少なくないので要チェックだ。71年のハンブルクの魔笛のDVDでは第二の武士をクルト・モルが、82年のザルツブルグの魔笛のDVDでは第二の武士をクルト・リドルが歌っている。CDでは63年のDG盤ではジェームズ・キングとマルッティ・タルヴェラが、81年のハイティンク盤ではペーター・ホフマンとオーゲ・ハウグランドが歌っている。
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