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ワーグナー

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・ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』全曲
 ゲルトルーデ・グロープ=プランドル(イゾルデ)
 ルドルフ・ルスティヒ(トリスタン)
 ゲオルギーネ・フォン・ミリンコヴィチ(ブランゲーネ)
 クルト・ベーメ(マルケ王)
 トニ・ブランケインハイム(クルヴェナール)
 ユリウス・パツァーク(牧童)、他
 ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
 アンドレ・クリュイタンス(指揮)
 録音:1956年2月12日、ウィーン国立歌劇場(ライヴ、モノラル)

 久しぶりにオペラを取り上げよう。クリュイタンスは先日紹介した1955年5月のVPOデビューの成功と、7月のバイロイトデビュー(「タンホイザー」、オルフェオがCD化している)の余勢をかって1956年2月には「トリスタンとイゾルデ」でウィーン国立歌劇場にデビューした。ウィーン国立歌劇場は前年末に再建されたばかりで、クリュイタンスは当時の総監督だったベームよりも、翌年総監督になるカラヤンよりも先に戦後のトリスタンを指揮したのだ。助六さんの情報によるとこの公演のイゾルデはエルザマリア・マティスとのダブルキャスト、トリスタンはK.リーベとのダブル、ブランゲーネはルートヴィヒとのダブルだったそうだ。

 この音源は近年になって初めてCD化されたものだ。私は不勉強でグロープ=プランドルというソプラノについては全く存じ上げなかったし、ルスティヒも以前紹介した1955年のバイロイトのオランダ人でエリックを歌っているのは知っていたがトリスタンを歌うほどのテノールだったかなあという感じだったが、クリュイタンスとVPOは相性ばっちりだし、2000円と安かったのでこの際聞いてみることにした。

 クリュイタンスの流麗でしなやかな指揮が期待通りなのはもちろんだが、グロープ=プランドルのイゾルデが素晴らしいのには驚いた。50年代にはヴァルナイとメードルとニルソン以外にもこんなに素晴らしいイゾルデがいたのだ。グロープ=プランドルがなぜバイロイトでイゾルデを歌わなかったのか分からないが、ヴァルナイとメードルの評価がそれだけ高かったのだろう。イゾルデ歌いがいなくなってしまった現代からは想像もできないハイレベルな争いだ。これは大変な見つけものをした。

 調べてみたところグロープ=プランドルは1917年生まれのオーストリアの歌手とのことで1918年生まれのヴァルナイと1912年生まれのメードルとはほぼ同世代だ。ただ、ヴァルナイが戦争中アメリカに逃れて1940年代からメットで活躍したのに対して、グロープ=プランドルは1944年からウィーン国立歌劇場に属したものの、戦争の煽りで本格的に活躍できたのは50年代以降になってしまい損をしたと言えそうだ。正規録音は米VOXに1950年に録音したモーツァルトの「イドメネオ」のエレットラがあるぐらいのようだ。ライブ音源では1949年にモラルト指揮ウィーン響の指輪のブリュンヒルデを歌ったものや、1951年にサバタ指揮のスカラ座で歌ったイゾルデ、1953年にカプアーナ指揮のフェニーチェ座で歌ったトゥーランドットまであるようだ。

 それらの音源は聞いていないが、音質も含めてクリュイタンスとのこのトリスタンがグロープ=プランドルの最大の遺産であることは間違いないだろう。音質は十分良好で特に声は聴きとりやすい。ルスティヒのトリスタンも予想以上の健闘を見せている。ややぶっきらぼうな大根テノールっぽい部分もなくはないが声は良く出ており、少なくとも現代の頼りない声のトリスタンよりは数段良い。

 ただマイクが左側に寄っていたようで(あるいは右側に設置したマイクに何かトラブルがあったのかも?)、前奏曲の64小節目からの有名な左右のかけあいでは第二バイオリンの音が遠くなってしまう。二幕のデュエットでもトリスタンの声が遠くなる瞬間があるが、そういう些細なことには目をつぶろう。各幕が1枚、全部で3枚にきれいに収まっているのは良いのだが、二幕は通常よりも多めのカットが加えられており60分ほどで終わってしまう。昔のウィーンには3時間半ルールというのがあったそうで、演奏時間がこれを超えるとオケに追加のギャラを払わなければならなかったそうだ。このカットは恐らくそのためだと思われる。

 なお、助六さんのコメントによるとクリュイタンスはカラヤン時代の1959年〜61年の2シーズンに「さまよえるオランダ人」、「オテロ」(カラヤン演出)、「カルメン」、「ばらの騎士」、「アイーダ」、「トスカ」、「フィデリオ」、「魔笛」、「トリスタンとイゾルデ」と実に多くの作品を指揮している。その後エゴン・ヒルベルトの単独総監督時代になった1965年〜67年の2シーズンにも「ローエングリン」、「トスカ」、「マイスタージンガー」、「サロメ」、「アイーダ」、「トリスタンとイゾルデ」、「パルジファル」、「ばらの騎士」、「ペレアスとメリザンド」、「フィデリオ」、「タンホイザー」を指揮している。

 クリュイタンスがカラヤン時代に振った2回目のトリスタンは1961年6月で、メードル、ヴィンガッセン、レッスル=マイダン、G.フリック、O・ヴィーナーという顔ぶれ、ヒルベルト時代の3回目のトリスタンは1966年10月/12月でヴァルナイ、ヴィントガッセン/H・バイラー、タルヴェラ/ホッターという顔ぶれだったそうだ。いずれも演出はカラヤンの1959年6月のものだと思われる。カラヤン自身は1959年〜1963年の間にウィーンとスカラ座でこの曲を13回振っているが、その際はいずれもイゾルデはニルソンだった。

カラヤンの「トリスタンとイゾルデ」の演奏史については下記アドレスを参照されたい。
http://www.geocities.co.jp/MusicHall-Horn/2889/Tristan.html

 ベームがこの曲を戦後に振った主な公演にはメットでの1959年12月〜1960年1月(9回)、1962年〜1970年のバイロイト音楽祭、1967年9月のヒルベルト時代のウィーンでのエヴァーディングによる新演出、映画になっている1973年のオランジュ音楽祭などがあるが、これもイゾルデは全てニルソンだ。メードルやヴァルナイは60年代末までイゾルデを歌っていたのにも関わらず、ベームやカラヤンは起用しなかったのだ(ベームのトリスタンは1963年に1度だけヴァルナイが歌ったことがあるが)。カラヤンは1951年のバイロイトの指輪でヴァルナイと共演しており、翌年のトリスタンでメードルと共演している。

 逆にクリュイタンスがイゾルデにニルソンを起用していないのは興味深い。クリュイタンスはバイロイトでもヴァルナイやメードルとは共演しているがニルソンとは共演していない。ニルソンが(恐らく)パルジファルのクンドリーをレパートリーにしていなかったというような偶然もあるだろうが、何となくクリュイタンスらしい人選だと私は思う。

クリュイタンスとベームのバイロイトへの出演記録については下記アドレスを参照されたい。
http://www.bayreuther-festspiele.de/fsdb_en/personen/57/index.htm
http://www.bayreuther-festspiele.de/fsdb_en/personen/37/index.htm

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London, George (Bass Baritone),
Greindl, Josef (Bass),
Rysanek, Leonie (Soprano),
Uhl, Fritz (Tenor),
Fischer, Res (Mezzo Soprano),
Paskuda, Georg (Tenor)
Sawallisch, Wolfgang,
Bayreuth Festival Orchestra, Bayreuth Festival Chorus
1959, Bayreuth Festival Hall, Germany [Live]
http://www.youtube.com/watch?v=WKJEECPsDHI
下記サイトに試聴あり
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1614538


 オランダ人:フランツ・クラス
 ゼンタ:アニヤ・シリヤ
 ダーラント:ヨーゼフ・グラインドル
 エリック:フリッツ・ウール
 マリー:レス・フィッシャー
 舵取り:ゲオルク・パスクダ
 バイロイト祝祭合唱団
 合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ
 バイロイト祝祭管弦楽団
 指揮:ヴォルフガング・サヴァリッシュ
 録音:1961年7月、8月(ステレオ)


1955年のウォルフガング・ワーグナー演出のオランダ人の4年後の1959年にはウィーラント・ワーグナーがオランダ人の演出をしている。シリアがゼンタを歌った1961年の演奏は、ゼンタのバラードがイ短調で歌われているなど通常とは変わったバージョンを使用していることは以前も書いたが、シリアがゼンタを歌ったのは1960年からだ。サヴァリッシュがバイロイトにデビューしリザネクがゼンタを歌った1959年の初演時はバラードの調はどうだったのか確認してみることにした。もちろんリザネクのゼンタを聞きたいという気持ちもあるが、それだけであれば1959年のバイロイトと主役4人同じ配役でドラティがデッカに録音した盤もあるのでそちらの方が条件が良いだろう。

結果は......意外なことにト短調だったのだ。バラードを初稿のイ短調に戻すというアイディアをウィーラントは1959年の段階では実行しなかったのだ。救済のモチーフなしで、序奏なしの3幕版という点は1961年の演奏と一緒だ。

未出版のオランダ人の初稿を見ることができた(つまりゼンタのバラードが本当はイ短調で書かれていたことを知っていた)人間はこの時点ではウィーラント&ウォルフガング・ワーグナー兄弟だけだったはずだ。ウィーラントはシリアをゼンタに得て初めてシリアの強靭な声であればこの曲をオリジナルのイ短調で歌えることに気がついたのだ。ワーグナーは1843年の初演でト短調に下げて以降1841年の初稿を引き下げてしまったようなのでイ短調のバラードを作曲から約120年後に世界初演、創唱したのはアニヤ・シリアだと考えて間違いないだろう。すごい! すごすぎる!

指揮者のサヴァリッシュもこの時点で未出版の初稿を確認したはずであり、そのことがサヴァリッシュが1975年のミュンヘンでの映画で救済のモチーフなしでイ短調バラードの版を採用したことにつながっているに違いない。リザネクのゼンタも決して悪くないが、肉太系ならば前任のヴァルナイに分がありそうだ。

私がLP時代に初めて聞いたオランダ人がこのシリアの演奏だという刷り込みもあるのは事実だが、サヴァリッシュ盤のシリアは凄いということを改めて確認できた。シリアにはクレンペラー盤もあって世評は高いが、シリアの勢いのあるゼンタにはサヴァリッシュの指揮とイ短調のバラードが合っていると思う。

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新年らしく祝典的なマイスタージンガーからはじめることにした。

ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』全曲
ハンス・ザックス:ヴォルフガング・ブレンデル
ヴァルター・フォン・シュトルツィング:イェスタ・ヴィンベルイ
ジクストゥス・ベックメッサー:アイケ・ヴィルム・シェルテ
ダヴィッド:ウヴェ・ペパー
エヴァ:エファ・ヨハンソン
マグダレーネ:ウテ・ヴァルター
夜警:ペーター・エーデルマン
ファイト・ポーグナー:ヴィクター・フォン・ハーレム
クンツ・フォーゲルゲザング:デイヴィッド・グリフィス
コンラート・ナハティガル:バリー・マクダニエル
フリッツ・コートナー:リーヌス・カールソン
バルタザール・ツォルン:フォルカー・ホーン
ウルリッヒ・アイスリンガー:ペーター・マウス
アウグスティン・モーザー:オットー・ホイアー
ハンス・シュヴァルツ:イヴァン・サルディ
ハンス・フォルツ:フリードリッヒ・モルスベルガー
合唱:ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
合唱指揮:カール・カンパー
オーケストラ:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
指揮:ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス
演出:ゲッツ・フリードリッヒ
舞台美術:ペーターシーコラ
収録:1995年2月19日、23日、26日、ベルリン・ドイツ・オペラ
ディレクター:ブライアン・ラージ
レコーディング・エンジニア:ギュンター・グリーヴィッシュ
http://www.youtube.com/results?search_query=meistersinger+burgos&search_type=&aq=f

クラシカジャパンでティーレマンがウイーンで演奏したマイスタージンガーがかかっている。現在ではバイロイトとウイーンを活動の拠点とするティーレマンだがオペラを本格的に降り始めたのはベルリン・ドイツ・オペラだ。ティーレマンは今年のインタビューで共感するオペラ演出家としてゲッツ・フリードリヒとジャン・ピエール・ポネルを挙げている。ゲッツ・フリードリヒはベルリン・ドイツ・オペラの監督をしていたので当然だが、ポネルは88年に亡くなっているのでティーレマンと接点があったとは知らなかった。インタビューは下記サイトにある。
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY200908280245.html

ワーグナーの演出で知られたフリードリヒだが、映像で残されたのはバイロイトでのタンホイザー(78年)とローエングリン(82年)、ベルリン・ドイツ・オペラでのトリスタン(93年の来日公演)、それにこのマイスタージンガーの4つだけだ。他の作曲家ではシュトラウスのサロメ(74年)とエレクトラ(81年)、ヴェルディのファルスタッフ(79年)が映画で制作され、プッチーニのマノン・レスコー(83年)がビデオ収録された。

う〜ん、指輪とパルシファルが記録されなかったのは返す返すも残念だ。日本公演もあったリゲンツァのブリュンヒルデ見たかったなあ。バイロイトで82年〜85年に上演され87年、88年に再演されたパルシファルも好評でビデオ撮りの予定があったはずだが、保守的な演出を好むレヴァインと反りが合わず音だけのCDになってしまったのも大変残念だ。ホフマンが出ていたのに。

このマイスタージンガーは93年5月に新制作され日本でも93年9月に上演された舞台だ。私も見に行った。良い演奏だと思ったが何せ私には88年のミュンヘンオペラのマイスタージンガー(サヴァリッシュ指揮エヴァーディング演出)の印象が強烈だったため大変感動するところまでは至らなかった。95年にNHKがベルリンに出張してハイビジョン収録したこのビデオを見返してからなかなか良い上演だったことを再確認できた。

来日公演ではヴァルターがポール・フライで大変聞き劣りがしたがこの公演のヴィンベルイはまずまずの水準はクリアしている。ブレンデルのザックスはアダムやヴァイクルほど評判にならなかったかもしれないが水準は高い。まだ30代後半だったヨハンソンがエヴァを歌っている。ポップのような愛らしさを求めるのは難しいが、しっかりした歌を聞かせている。

フリードリッヒの演出はローエングリン同様に暗い。舞台で見たときはちょっとどうかなと思ったが、映像で見返すとこれもありかなと思えるようになった。幕切れでベックメッサーを追放せずにザックスが手を取って和解するので「和解のマイスタージンガー」と呼ばれた。群集が「ザックス万歳」と合唱すると「俺はそんなじゃない」というような素振りで逃げ帰ってしまうのも特徴だ。「偉大な人間でなく普通の人間としてのザックス」というキャラクター設定にブレンデルの歌は合っていると思う。歌合戦の場面にユダヤ人達も来ていることを示すいわゆる「ダビデの星」の旗が左手に見える。金色のはっきりした旗でフリードリッヒの政治的なメッセージが伺える。

私が持っているのは以前パイオニアが出していた国内盤だが現在は輸入盤でしか手に入らないようだ。日本語字幕は入っているが誤字があるらしい。国内盤DVDはこれ以外にはハンブルクオペラのものがあった。ヴァイクルとプライが出ているバイロイトの映像の国内盤が今年出るようなので楽しみだ。

あらすじは下記サイトを参照されたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%BC

下記サイトの情報も参考になる。このページは展覧会の絵の時も参考にさせて頂いたホルン吹きのTadasさんのHPだ。
http://www.hi-ho.ne.jp/tadasu/meister.htm
http://www.hi-ho.ne.jp/tadasu/index.htm

(追記)
Valenciennesさんが映像リストをまとめているのも見つけた。自分と比較するとValenciennesさんはまず映像から入る見方をされているように思う。私は映像であってもまず音楽から入るので受け取り方の違いが興味深いと思った。女性よりも男性の方が視覚情報に左右されやすいというようなことを以前聞いたことがあるが必ずしもそうとは言えなさそうだ。コロのチューリッヒの映像は見てみたい。ホフマンがバイク事故で怪我をした際にコロが替わったのは70年代のシェローの指輪の時の話だったと記憶している。
http://www.geocities.jp/traeumereienvalencienne/soft-19.htm
http://www.geocities.jp/traeumereienvalencienne/menu.htm

アサヒコムの記事は時間が経つと読めなくなってしまうのでここに引用させてもらおう。

(アサヒコムより)
ティーレマン「指環」で席巻 バイロイトで10年
2009年8月29日
 ドイツの指揮者クリスティアン・ティーレマンが今夏、大曲「ニーベルングの指環」でバイロイト音楽祭を席巻した。ワーグナーの殿堂に立って10年。「気心の知れた仲間と響きを知り尽くした劇場を得て、のびのびと歌う余裕が出てきた」と語る。来年3月、音楽監督を務めるミュンヘン・フィルと来日公演をする。
 ワーグナー自身が設計したオーケストラピットは、客席からは一切見えない深みにもぐっている。「わんわん鳴って風呂場のよう」と語る団員もいるほどだが、ティーレマンは劇場全体をさながらオルガンのように鳴らしてみせた。
 「色々な位置でアシスタントに音を聴いてもらったり、他の指揮者のリハーサルにもぐりこんだりして、試行錯誤を重ねてきた。客席での響きを具体的にイメージし、楽しめるようになれば、ここは最高の劇場だ」
 少し早口で、目を伏せがちにオーケストラの魅力を語り続ける。
 「音色の変化を試すのが楽しくて仕方ない。おもちゃをいじる子供のような気分かも。指揮者の使命は、自分の趣味に責任を持ち、音楽が楽しい魔法なのだと聴衆に伝えること。難しいのは、音楽を仕事だと思うこと」
 練習ピアニストや下振りなどを経てオペラ制作の一切を知る。ドイツの伝統を継承する第一人者としても、期待を背負う。
 ベルリン・フィルをはじめとする多くのオーケストラの響きが均質化する傾向にあるなか、昔ながらの音を武骨に奏で続けるミュンヘン・フィルとのコンビを愛する人は少なくない。
 来日公演では、ベートーベンの「運命」を演奏する。「ダダダダーン」という有名な出だしも、音楽の呼吸に素直に従えば、それほど難しいものではないと言う。
 「考えすぎるから力が入る。新しいことをやらなければ、という呪縛に多くの音楽家がとらわれている。何かを変えてやる、という野心ほど無意味なものはない。真の芸術は、人にショックを与えるためのものではないのだ」
 共感するオペラ演出家はゲッツ・フリードリヒとジャン・ピエール・ポネル。「この2人が私に教えてくれた。伝統への謙虚さこそが、新しい世界へ我々を導いてくれるということを」(吉田純子)

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・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』全曲
 トリスタン:ルネ・コロ(テノール)
 マルケ王:マッティ・サルミネン(バス)
 イゾルデ:ヨハンナ・マイアー(ソプラノ)
 クルヴェナール:ヘルマン・ベヒト(バリトン)
 メロート:ローベルト・シュンク(テノール)
 ブランゲーネ:ハンナ・シュヴァルツ(メゾ・ソプラノ)、他
 バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
 ダニエル・バレンボイム(指揮)
 演出・舞台装置・衣装:ジャン=ピエール・ポネル
 映像監督:ブライアン・ラージ
 収録:1983年、バイロイト祝祭劇場
http://www.youtube.com/results?search_query=tristan+1983+bayreuth&search_type=&aq=f

バレンボイムのスカラ座でのトリスタンがクラシカジャパンで放送されていたが、やはりトリスタンの映像はこれにつきる。1981年にバレンボイムとポネルがバイロイトに初登場した際のプロダクションだ。当初83年までの3年間の予定だったが好評につき86年と87年にも主演をホフマンに変えて再演された。ポネルは88年に亡くなりバイロイトでの演出はこれが最初で最後になった。
http://www.1876.net/wagner/document/bayreuth3.html

ポネルの演出作品については下記サイトが詳しい。
http://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/music/ponnellemozart.htm

81年の頃はちょうど私がオペラを聴き始めて年末のバイロイトのFM放送をエアチェックし始めた時期だ。このような優れた演奏に初めから接することができたのはとても幸運だ。もちろん初めは良く分からなかったが、この映像が86年頃に地上波で放送されたころにはだいぶ理解できるようになっていた。

とにかくコロの輝かしいトリスタンが素晴らしい。コロは80年のチューリヒがトリスタンの初役で、この年にはクライバーのトリスタンの録音にも参加しているが、83年のこの映像ではこの役を完全にものにし切ってさらに力強い。コロが実際にバイロイトでトリスタンを歌ったのは81年〜82年の2年間だけで83年の夏はミュンヘンでリエンツィを歌ったためバイロイトの舞台では歌っていない(舞台ではヴェンコフが歌った)。この映像は上演とは別の機会(下記サイトによれば83年10月)に収録されたものだ。録音の少なかったヨハンナ・マイアーのイゾルデも素晴らしい。86年のウイーン国立歌劇場の来日を聞けなくて残念だ。サルミネンのマルケとシュヴァルツのブランゲーネも適役でベストメンバーの映像が残されて本当に良かった。
http://www.wagneropera.net/RW-Performers/Rene-Kollo.htm

ポネルの演出もロマンティックでありながら奇をてらうことなく爽やかで違和感がない。ポネルは81年の初演時にゲネプロの段階になって3幕でトリスタンがイゾルデと会わない(イゾルデはトリスタンの幻覚だった)という解釈に変更しようと考えたそうだが、舞台ではこのアイディアを十分に実現できなかったそうだ。コロとポネルとバレンボイムがとても良い共同作業をしていたことも含めてこの経緯がエウリディーチェさんのHPに詳しく書いてある。
http://www.geocities.jp/euridiceneedsahero/k169.html

この映像では最後にイゾルデが消えてトリスタンが残され、全てはトリスタンの幻覚だったのだというエンディングになっている。この映像が放送されたときには解釈の変更かと話題になったが、事実は逆でポネルはもともとそういう演出意図を持っていたが舞台でできなかったことを映像版でやっと実現できたのだ。まだこの映像を見ていない方はユーチューブで確認してほしい。
http://www.youtube.com/watch?v=sUVaJrLDF7A

バレンボイムはトリスタンが好きなようで90年代にCDにも録音しておりバイロイトのミュラー演出も最近DVD化されていたので都合4種類の演奏が存在する。バレンボイムの指揮はだんだんあっさりしてきてうねりが感じられなくなってしまったように思う。
(1995年のバイロイトのトリスタン)
http://www.youtube.com/results?search_query=muller+tristan+1995&search_type=&aq=f
(2007年のスカラ座でのトリスタン)
http://www.youtube.com/results?search_query=tristan+scala+2007&search_type=&aq=f

下記サイトでは8人のイゾルデの聞き比べができる。
http://www.wagneropera.net/Themes/Liebestod.htm

(追記)
プレミエは81年だったので修正した。バイロイトは少なくとも3年は同一プロダクションを上演するので83年までの上演が当初から予定されていたことになる。つまり83年のミュンヘンでのリエンツィはかなり早い段階で契約が入っていたことになる。あるいは83年のトリスタンをキャンセルしてミュンヘンのリエンツィを選んだのかも? この後コロは85年のタンホイザーをキャンセルし、その後バイロイトには戻らなかった。この83年10月の映像収録台がバイロイトの舞台に立った最後の機会になってしまった。

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サヴァリッシュ特集が続きます(笑)

・ワーグナー:歌劇『さまよえるオランダ人』全曲
 オランダ人:フランツ・クラス
 ゼンタ:アニヤ・シリヤ
 ダーラント:ヨーゼフ・グラインドル
 エリック:フリッツ・ウール
 マリー:レス・フィッシャー
 舵取り:ゲオルク・パスクダ
 バイロイト祝祭合唱団
 合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ
 バイロイト祝祭管弦楽団
 指揮:ヴォルフガング・サヴァリッシュ
 録音:1961年7月、8月(ステレオ)

演出 ヘニング・フォン・ギールケ
舞台美術 ヘニング・フォン・ギールケ
指揮者 ヴォルフガング・サヴァリッシュ
オーケストラ バイエルン国立歌劇場管弦楽団
合唱 バイエルン国立歌劇場合唱団
合唱指揮 エドゥアルト・アシモント
オランダ人 ロバート・ヘイル
ダーラント ヤッコ・リヘネン
ゼンタ ユリア・ヴァラディ
エリック ペーター・ザイフェルト
マリー アニー・シュレム
舵取り ウルリヒ・レス
録音年月日 1991年3月25日、28日
録音場所 バイエルン国立歌劇場
EMI TOLW3659〜60

 ドナルド・マッキンタイア(オランダ人)
 カタリナ・リゲンツァ(ゼンタ)
 ベングト・ルンドグレン(ダーラント)
 ヘルマン・ヴィンクラー(エリック)
 ルート・ヘッセ(マリー)
 ハラルド・エク(舵手)
 バイエルン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
 ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
 演出・映像監督:ヴァーツラフ・カシュリーク
 装置・衣装:ゲルト・クラウス
 装置:ヘルベルト・シュトラーベル
 衣装:ヘルガ・ピノフ
 収録:1974年、バイエルン・スタジオ、ミュンヘン


オランダ人は1841年の初稿完成後に何度か手が加えられたため違う版の演奏が存在する。舞台がスコットランドからノルウェーに変わったとか、オーケストレーションの変更(「オフィクレイド」と言う金管をチューバに代替)など小さい改訂を含めると違いは何か所もある。そのあたりの話はブルーノ・ワイルの初稿盤の日本語版解説で舟木氏が詳しく書かれているが、はっきり分かる大きな違いは次の3点だ。


ポイント1.序曲の終結部と全曲の幕切れに「救済のモチーフ」があるかないか。
 初稿には救済のモチーフはなく1860年に序曲を改訂した際に初めて入れられた。

ポイント2.ゼンタのバラードがイ短調かト短調か。
 初稿はイ短調だが初演時に歌手が歌えなかったためト短調に下げられた。出版譜もそれを踏襲している(大変残念なことに!)。

ポイント3.全曲をつなげて1幕物として演奏するか、3幕仕立てに切って演奏するか。
 1843年のドレスデンでの初演に際して際に3幕に切って2幕と3幕に序奏をつける改訂版が作成された。しかし現在では初稿通り1幕物として切れ目なく演奏するのが普通。


カラヤン盤など一般的には「救済のモチーフあり」→「バラードはト短調」→「1幕物」で演奏するケースが多いが、このサヴァリッシュのバイロイト盤は「救済のモチーフなし」→「バラードはイ短調」→「3幕仕立て(ただし2幕と3幕の序奏なし)」という通常とはかなり異なるバージョンで演奏している。

ゼンタのバラードは絶対にイ短調で歌うべきだと私は思う。直前の糸紡ぎの歌がイ長調だからだ。イ長調からイ短調に、明から暗へ「スパっ」と切り替わるからドラマティックなのであって、ここがト短調だと非常にぼやけた印象になってしまう。

サヴァリッシュのバイロイト盤は長い間イ短調のゼンタのバラードが聞ける唯一の演奏だった。アニヤ・シリアの鮮烈なバイロイトデビューでもあったこのゼンタが非常にカッコよく聞こえるのは、実はバラードの調性が違うせいでもあったのだ(この事実に私が気がついたのは後年にカラヤン盤や同じシリアのクレンペラー盤と聞き比べてからだが)。

ゼンタという霊感的で少しクレイジーでヒステリックな役にはイ短調というちょっと危うい調性とシリアの強靭な声が実にピッタリくる。バイロイトでは1959年に同じ指揮と演出でリザネックがゼンタを歌っているが、そこではト短調で歌っている。原調のイ短調のバラードはシリアだからこそ実現したのだ。(これについては別記事にしたので参照されたい)。

2番目は、そのサヴァリッシュが91年にギールケの演出で演奏したレーザーディスクの映像だ。これは翌92年にほぼ同じキャストで日本でも上演された。この際は「救済のモチーフあり」→「バラードはト短調」→「1幕物」の一般的な演奏スタイルになってしまった。この年の日本公演の最後を飾ったのがこのオランダ人で、サヴァリッシュがミュンヘンオペラを指揮したのもこれが最後だったようだ。私も東京文化会館に見に行った。(奇しくもクライバーが最後にオペラを指揮したのも東京文化会館でこの翌年1993年のばらの騎士だった)

この92年の来日時の演奏は手堅いいい演奏だとは思ったが、バイロイト盤のようなスリルはなかったように思う。91年の映像は舞台で撮影されたものだが収録は89年の指輪の映像のようなビデオ撮りではなくフィルム撮りだ。ビデオへのコンバートの状態が良くなかったのか画質的には今一つだ。全体としてインパクトが少々弱いのはそのせいかもしれない。この映像は現在のところ幻の映像となってしまっているようだが、質の良いニューマスターでDVD化されれば違う印象を持つかもしれない。

さて3つ目は最近初めてDVD化された74年のユニテルの映像だが、これは舞台の収録ではなくフィルム映画としてスタジオ収録されたものだ。この映画は80年前後に東京・赤坂のドイツ文化会館で上映されていた。どういうバージョンで演奏しているのか興味津々だったがまさに期待に応えてくれた。

結論からいうと「救済のモチーフなし」→「バラードはイ短調」→「1幕物」という構成だ。ワイルの1841年初稿版と同じバージョンかどうかは細かいところを聞き比べてみないと判断できないが、初稿版にかなり近い構成を採用していることは間違いない。ゼンタのバラードをイ短調で歌ったのはワイルの初稿盤を除けばシリアのバイロイト盤以来の快挙だ。この頃のリゲンツァはまだややリリックだったので、後年のブリュンヒルデのような貫禄はないが、私はこの果敢な挑戦をもろ手を上げて絶賛したい。

映像的には画質は十分きれいだが、カラヤンのラインの黄金の同様に映画でリアルに撮ろうとすればするほどリアルでなくなってしまうような気がする。幽霊船の船員はコミカルにすら見えてしまう。ワーグナーを映画化するのは難しい。椿姫やオテロ、ボエーム、トスカなどは映画が何種類も作成されているが状況はかなり異なる。

それでも、この74年の映像はサヴァリッシュのオランダ人の一つの結論として推奨したい。また、なぜ90年代に普通のバージョンに戻してしまったのかもぜひマエストロに聞いてみたいところだ。オランダ人はマッキンタイアが歌っており、この歌手がサヴァリッシュのお気に入りの一人だったことがうかがえる。ちなみに序曲の最中にサヴァリッシュ自身が映像に全く出てこないのは74年の映像も91年の映像も共通している。コンセプトなのだろうが私は残念だ。ユーチューブには74年の映像も91年の映像も見当たらなかった。

(追記)
ボーカルスコアはIMSLPを参照。シャーマー版(シルマー版)がアップされているが序曲も幕切れも救済はない。バラードはト短調で序奏付の3幕版だ。
http://imslp.org/wiki/Category:Wagner,_Richard

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