|
今回もまずは曲について
初演:
1876年カールスルーエ。
この当時すでにリストやワーグナーといった前衛的な作曲家が交響詩や楽劇といった新しいジャンルを開拓していた。シューマンの交響曲第四番の改訂稿が1853年に初演されてからすでに20年以上経っていた。この時代は交響曲というスタイルが古臭いものと見られていた交響曲の「冬の時代」だったようだ。もちろん交響曲を作曲する作曲家が全くいなかったわけではないが、ドボルザークの初期の交響曲(昔は番号が振られていなかった)や、チャイコフスキーの1番〜3番、あるいはブルックナーの交響曲0番〜4番(初稿)といったところだ。
この曲の着想から完成まで21年もの長い時間がかかったのは、ドイツレクイエムやピアノ協奏曲第一番ですでに大家となったブラームスに正統的な交響曲を期待する世間の強いプレッシャーが原因だと考えられる。しかしブラームスは見事にその期待に応え、同世代の作曲家にも強い影響を与えたことはその後の交響曲の歴史が証明している。交響曲というジャンルを救った1曲と言えるだろう。
編成:
フルート 2
オーボエ 2
クラリネット 2
ファゴット 2、コントラファゴット1
ホルン 4
トランペット 2
トロンボーン 3(第四楽章のみ)
ティンパニ
弦五部 (第二楽章でバイオリンソロあり)
標準的な二管編成。ベートーベンの第九に習ってトロンボーンを終楽章のみで使うという手法は2番以降も踏襲された。コンサートマスターがバイオリンソロを弾くというスタイルはシューマンの第四番を彷彿させる。
http://www.dlib.indiana.edu/variations/scores/bhr2575/large/sco10068.html#70
曲の構成:
第1楽章 Un poco sostenuto(やや音を保って)〜 Allegro
ハ短調、6/8拍子
第2楽章 Andante sostenuto (音を保って)
ホ長調、3/4拍子
第3楽章 Un poco allegretto e grazioso (優美に)
変イ長調、2/4拍子
第4楽章 Adagio 〜 Più andante 〜 Allegro non troppo, ma con brio (急がずにしかし活気をもって)
ハ短調→ハ長調、4/4拍子
メトロノーム指定がないのはブラームスのいつもの通り。第一楽章序奏部のUn poco sostenutoは音楽の表情を示す「発想記号」であり速度記号ではない。このため序奏部をどのようなテンポで演奏するかは指揮者の設計に大きく依存する。
このディスクについて
この曲の名盤にまず挙げられるのはベームがベルリンフィルと1959年に入れたこの演奏だろう。当時ウイーンフィルはデッカとEMIにしか録音できなかったのでベームとカラヤンは同じ時期にベルリンフィルを振って同じ曲をDGに録音している。この曲以外ではシューベルトの8番9番、ベートーベンの3番7番といったところだが、このブラームスについてはベーム盤の方が素晴らしいと私は思う。
序奏からやや速めのテンポ、ストイックで筋肉質に引き締まっているが神経質なところはどこにも感じさせない雄大なブラームスだ。1963年のカラヤンの録音と比較してマイクが近めだが、演奏の性質とマッチしている。両方ともHMVのサイトで試聴できる。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1414782
http://www.hmv.co.jp/product/detail/340477
ゆったり構えたカラヤンの演奏も決して悪くないが、悠然としたテンポでいくならば序奏がまるでお経の木魚のような宗教観すら漂わせるチェリビダッケ/ミュンヘンフィルをとる。私見ではチェリはメトロノーム指定がない音楽にめっぽう強い!
なおこの曲の演奏では第四楽章のコーダ、ドンチャン騒ぎに入る直前の金管のコラールでティンパニのパートを大げさにアレンジしている演奏がしばしばある。(413小節と415小節)このアレンジはトスカニーニが元祖とも言われており、ミュンシュや小澤もそうだ。しかしこの部分はあたかもハイドンの交響曲のように2発でビシッと決めるからこそ正統的なシンフォニー作家の継承者たるブラームスの面目が躍如としているのであって、ここをアレンジするのはブラームスの様式を逸脱していると私は考える。
http://www.dlib.indiana.edu/variations/scores/bhr2575/large/sco10153.html#161
|