|
ヴィルマ・リップ(ソプラノ)
ヒルデ・レッセル=マイダン(アルト)
アントン・デルモータ(テノール)
ヴァルター・ベリー(バス)
ウィーン楽友協会合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
録音:1961年10月 ベルリン
さてモダンオケによる「モツ・レク」だが、評価は極めて難しい。モダン楽器とは言ってもほどほどサイズのオケを、もたれすぎないテンポで振り、力みのない合唱とほんのちょっとウイーンの香りが乗ったソリストを4人集められれば私にとって理想の演奏が完成するのだが、現時点ではまだそういう演奏は存在しない。
まずこの曲はやはりジュスマイヤー版を基本とするべきだ。アイブラー版とジュスマイヤー版をベースにしたランドン版はまだともかく、バイヤー版とレヴィン版を(一部ジュスマイヤー版も)切り貼りして構成したアバドの演奏はやはり特異なものと言わざるを得ない。このアバドの変わったモツ・レクについてはjurassic氏の以下のサイトに詳しい。
http://www.ne.jp/asahi/jurassic/page/talk/mozart/abbado.htm
なおこの演奏には映像もありユーチューブでもたくさんアップされていた。合唱とテンポが良く、変わった版を使っていることを除けば決して悪い演奏ではない。ただし教会での録音はかなり残響過多。
http://www.youtube.com/results?search_query=requiem+abbado+mozart
次に合唱だが、ウイーン国立歌劇場合唱団のビブラートの多いオペラティックな発声はこの曲には全く不向きである。9つ手元にある演奏のうち4つの演奏(ヨッフム、ワルター、ベーム、ショルティ)はここでアウトである。
ショルティの映像とベームのVSOとの映像(1971年)はユーチューブで一部を見ることができる。これを見るだけで私が何を言っているかは理解してもらえるのではないだろうか。特にドスの効いたキリエはもう少し何とかならなかったものだろうか? ベームとショルティの音楽性を疑いたくなってくる。ソプラノソロ(オジェーとヤノビッツ)は気の毒なくらい素晴らしい。(^^;
ショルティ/VPO(1991)
http://www.youtube.com/results?search_query=requiem+solti+mozart&search=Search
ベーム/VSO(1971)
http://www.youtube.com/results?search_query=requiem+bohm+mozart
この曲はウイーン楽友協会合唱団の素直な発声こそ相応しい。この合唱団は第九やヴェルディのレクィエムでは時に「迫力が不足する」などと言われ、実際カラヤンもヴェルディのレクィエムの再録音ではウイーン国立歌劇場合唱団の方を起用したが、コンサートホールにおける宗教曲の演奏ではこのような歌唱が必要だと私は思う。終身常任指揮者だったカラヤンがウイーン楽友協会合唱団をベームやバーンスタインに使わせなかったのもうなずける。1979年の来日公演を聴かれた方はうらやましい。
放送局の合唱団も素直な発声をしていることが多く、アバド盤のスウェーデン放送合唱団は健闘だ。デイビス盤のバイエルン放送合唱団にも期待したのだが、このディスクの音声はなぜか音揺れしたようなビブラートがかかってしまっていて合唱が濁って聞こえるのが残念だ。チェリビダッケ盤のミュンヘン・フィルハーモニー合唱団も異常な遅さの中で清純な歌を聴かせて健闘。さすがに耳のいい指揮者だけのことはある。
次にテンポを問題にしたい。例えば1曲目はモダンオケでも5分〜5分半ぐらいでは振ってほしい。ヨッフム(5:18)、ワルター(5:38)、1975年盤のカラヤン(5:38)、デイビス(4:57)、ショルティ(4:48)、アバド(4:29)あたりは合格ラインだが、1961年盤のカラヤン(6:01)、ベーム(6:24)、チェリビダッケ(7:50)は遅すぎるだろう。
世評の高いベーム盤は私は感心しない。力んだ合唱と遅すぎるテンポはこの曲のプロポーションを壊していると私は思う。ソリストは良いのに残念だ。一方チェリビダッケはこの指揮者最晩年の孤高の(ただしかなり特殊に進化した)境地を示した演奏として一聴に値する。本選には残らないが特別賞を差し上げたい。
とするとここまでで残ったのはカラヤンの1975年盤のみになってしまう。それではこれが最高かというと、必ずしもそうとは言い切れない。私が持っているのは新たにSACDにリミックスされたディスクで、きつい音をしたかつての盤と比較して音場やバランスが格段に自然になった。カラヤンが3種類残したこの曲の演奏の中では最もテンポが速く(全曲で53分)、今聴いても不自然な感じはあまりしない。
しかしこの演奏はソリスト(トモワ・シントワ、バルツァ、クレン、ダム)があまり感動しない。何となく無国籍風というか、上手いけど味わいに乏しいというか......
ソリストはウイーンの歌手を集めた旧盤の方が良かったと思うのだ。他にはワルター盤のデラ・カーザやデルモータとシエピ、ベーム盤のマティスとリッダーブッシュ、デイビス盤のシュミットとシュライヤーも悪くない。
完璧な演奏がない以上はどれかを犠牲にしなければならない。合唱がひどい演奏は聴く気がしないし、ソリストに花がないと聴いていてつまらないので、テンポが少し遅いことに我慢しながらこのカラヤンの旧盤を聴くことにしよう。
願わくばクーベリックの1980年頃のミュンヘンでのライブは残っていないものだろうか? ソリストはポップ、ファスベンダー、シュライヤー、プライあたりが揃っていれば文句なくベストになると思うのだが?
|