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ザラストロ:ジークフリート・フォーゲル
タミーノ:ペーター・シュライアー
パミーナ:マグダレーナ・ファレヴィッチ
パパゲーノ:ユルゲン・フライア
パパゲーナ:レナーテ・ホフ
夜の女王:イザベラ・ナーヴェ、ほか
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ベルリン)
オトマール・スイトナー(指揮)
演出:エアハルト・フィッシャー
収録時期:1980年3月12日
収録場所:東京文化会館(ライヴ)
これはベルリン国立歌劇場の1980年の映像だ。しばらく前に発売が予告されて楽しみにしていたものだが、スイトナーが先日亡くなってしまったため奇しくも追悼盤になってしまった。
ベルリン国立歌劇場は1977年に続く2度目の来日だったが、この魔笛は同じ1980年に初来日したウイーン国立歌劇場の公演に比べれば地味な扱いだったと記憶している。私もウイーンのフィガロの結婚のテレビ放送ほどはっきりした記憶は残っていない。確かFMでも放送されてむしろそちらを聞いた記憶がある。フィガロの結婚もそうだが、生中継はFMだけだったと思う。大変趣味のよい演奏だった。その少し後に80年に録音されたカラヤンの魔笛もFMで聴いたが、腰の重いその演奏に何となくしっくりこなかったのはこのスイトナーの演奏を先に聞いていたからだろう。
今にして思えば国際的に有名な歌手はシュライヤーとフォーゲル、それに60年代のバイロイトでも活躍したブルマイスターが侍女を歌っているのが注目されるぐらいだが(スイトナーはベームとダブルで指輪を振っていたのでブルマイスターをフリッカに起用したのは恐らくスイトナーだろう)、誰が有名かということすら私は当時知らなかったのでそういうことは全く関係なかった。今聞きなおしてもカラヤンの魔笛よりははるかにモーツアルトらしい演奏だと思う。
カラヤンのスタイル(特に極端にレガートな後期のスタイル)はモーツアルトに向かないと思う。カラヤンはどんな曲でも倍管編成(管楽器の本数を2倍に増やすこと)にした上にレガートで演奏する。豪華で壮大な音がするが、音のエッヂが立ちにくいのでどうしてもベトベトした感じの重たい音になりがちだ。
このDVDには残念ながらオケの編成表などはついていないが、スイトナーはブラームスの1番も楽譜通り2管編成で演奏したそうなのでモーツアルトも当然2管編成のままだろう。恐らく旧東ドイツには倍管という習慣はなかったのではないだろうか。
倍管という習慣がいつごろ始まってどのように広まったのか一度詳しく調べてみる必要があるが、NHKホールや普門館のような大きな会場では2管編成では地味に聞こえるので迫力を求めて楽器の編成を増やす必要があったのは事実だろう。海外でもヴェローナの野外オペラなどでは倍管編成が普通だそうだ。
しかしサントリーホールのように千数百席の音の良いホールで音楽を聴くようになった(ある意味で耳が贅沢になった)現在では、むしろ2管編成の曲は2管編成のままでシャープに小気味良く演奏するのが正しいと思う。旧東独のベルリン国立歌劇場やドレスデン国立歌劇場は20世紀当時は地味な演奏と見られることが多かったが、21世紀的な観点から見るといたずらに編成を拡大しないこういうスタイリッシュな演奏こそがカッコイイのではないだろうか。「倍管なんてダサい」と言える時代が早く来ればいいと思う。
ウイーンのフィガロと同様に画質音質は十分良好だ。音声はFM用の収録を用いてステレオ化されている。ぜひ77年の初来日時のドンジョバンニや87年のマイスタージンガーのDVD化も実現してほしい。驚くべきことにスイトナーのDVDは現時点でこれ1点しかないようだが、ベルリン国立歌劇場管弦楽団とのコンサートやN響とのコンサートなど映像はたくさん残っているはずなのでぜひDVD化してほしい。
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