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ベートーヴェン

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 12月17日は楽聖の誕生日だ(16日という説もある)。クラシカジャパンでいくつかの第九が放送されているのでざっと見てみたが、残念ながらいずれも一長一短という感じだ。第九は新しい演奏を待っている状態だと言えそうだ。
http://www.classica-jp.com/rec/201112/index.html

[指揮]レナード・バーンスタイン
[演奏]バイエルン放送交響楽団、ドレスデン国立交響楽団団員、レニングラード・キーロフ劇場管弦楽団団員、ロンドン交響楽団団員、ニューヨーク・フィルハーモニック団員、パリ管弦楽団団員、バイエルン放送合唱団、ベルリン放送合唱団団員、ドレスデン・フィルハーモニック児童合唱団団員、ジューン・アンダーソン(ソプラノ)サラ・ウォーカー(メゾ・ソプラノ)クラウス・ケーニヒ(テノール)ヤン=ヘンドリク・ローテリング(バス)
[収録]1989年12月25日シャウシュピールハウス(旧東ベルリン)[映像監督]ハンフリー・バートン
http://www.youtube.com/results?search_query=beethoven+9+bernstein+1989

[指揮]マリス・ヤンソンス
[演奏]ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、クラッシミラ・ストヤノヴァ(ソプラノ)マリアンネ・コルネッティ(アルト)ロバート・ディーン・スミス(テノール)フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ(バス)オランダ放送合唱団[合唱指揮]マイケル・グレイザー[ナビゲーター]ハンス・ファン・デン・ブーム
[収録]2006年12月25日コンセルトヘボウ(アムステルダム)[映像監督]ハンス・フルシャー
前年の2005年の演奏がユーチューブで聞ける
http://www.youtube.com/watch?v=IFlPmbdcuoo

[指揮]オットー・クレンペラー
[演奏]アグネス・ギーベル(ソプラノ)マルガ・ホフゲン(コントラルト)エルンスト・ヘフリガー(テノール)グスタフ・ナイトリンガー(バス)ニュー・フィルハーモニア管弦楽団及び同合唱団
[収録]1964年ロイヤル・アルバート・ホール[映像監督]ピエール=オリヴィエ・バルデ
http://www.youtube.com/watch?v=jlSSql5BR8g

[指揮]ヘルベルト・フォン・カラヤン
[演奏]ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、アンナ・トモワ=シントウ(ソプラノ)アグネス・バルツァ(アルト)ルネ・コロ(テノール)ホセ・ファン・ダム(バス)ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団[合唱指揮]ヴァルター・ハーゲン=グロル
[収録]1977年12月31日フィルハーモニーザール(ベルリン)[映像監督]ハンフリー・バートン

[指揮]クリストフ・エッシェンバッハ
[演奏]パリ管弦楽団及び同合唱団、エヴァ・メイ(ソプラノ)ノラ・グビッシュ(メゾ・ソプラノ)ロバート・ディーン・スミス(テノ-ル)アンドレアス・シュミット(バス)[合唱指揮]ディディエ・ブテュール
[収録]2004年パリ・モガドール劇場[映像監督]フランソワ・ゲトゲブール


 見た順で言うと、まずパーンスタインの1989年の演奏。これはCDやLDで昔から出ていたもので、東西ドイツ統合を記念して「フロイデ(歓喜)」を「フライハイト(自由)」に読み替えた「替え歌第九」として有名な演奏だ。オケはバイエルン放送響を主体としながらも世界各国のメンバーからなる混成オケで、並びはバーンスタインのいつもの通り、チェロが左のストコフスキー型だ。

 演奏は晩年のバーンスタインらしく粘りに粘った表現だ。主観の強い演奏という意味ではフルトヴェングラー以来だろう。もちろん戦前良くあったようなヴァイオリンのオクターブ上げや、第四楽章冒頭のオーケストレーションの変更といった派手なアレンジはさすがに見られないものの、それでも第二楽章の最後にティンパニの一撃を追加するなどの手は加えられている。この手のアレンジは最近あまり耳にしないので大変耳につく。

 バーンスタインは1979年のVPOとの演奏では第三楽章のファンファーレ(121小節目と131小節目)でスタッカートを楽譜通り短く切るというピリオド・アプローチを採用して世間を驚かせた。しかし、どういう事情からか10年後のこの演奏は普通の演奏に戻っている。今のようにピリオド・アプローチ全盛ではなかったのでこのスタッカートには批判が多かったのかもしれないが、どうせやるなら信念を持ってやってほしかった。

 合唱もオケ同様に各国からの混成であり、楽譜をめくるタイミングが揃っていない感じなので恐らく使用楽譜が統一されていないのではないかと思われる。十分な練習時間が取れなかったのか、譜面を持っているにも関わらず中間部のアンダンテマエストーソではバスがフライングをしている。ソプラノに少年少女合唱団を起用しているのも特徴だ。同時期のマーラーの4番でボーイソプラノを起用したことを思い出させる。少年少女の声量に配慮したのか、少年少女合唱団だけを前方に配置し後方にアルト、テノール、バスを並べるという変わった配置をしている。ちなみに少年少女合唱団だけがなぜか楽譜を持たないで暗譜で歌っている。

 全体として大変イベント性が強い演奏だ。イベント用の演奏なのだから当然のことであり、バーンスタインもそのつもりで演奏しているのだろう。その意味でもフルトヴェングラーのバイロイト盤に通じるものがある。フルトヴェングラー盤が鬱の究極だとすれば、こちらは躁の究極と言うべきか。

 次に見たのはヤンソンスの2006年の第九。日本ではこれが初放送らしい。ロイヤルコンセルトヘボウの第九は全集になっているハイティンクやサヴァリッシュのCDが有名だが、映像はこれまでなかったと思うのでちょっと注目してみた。

 まずオケの並びがアメリカ型(ストコフスキー型)なのには少し驚いた。このオケはアムステルダム・コンセルトヘボウと名乗っていた80年代当時、ハイティンクが振るときはイギリスやフランスのオケ同様にアメリカ型で並んでいたが、ヨッフムやクライバーが振るときはVPOやBPO同様にフルトヴェングラー型で並んでいた。ロイヤルコンセルトヘボウとなった今でもアーノンクールが振る際などは両翼(対向)配置で並んでおり、指揮者によって配置を変えている。
http://www.youtube.com/watch?v=sHsFIv8VA7w

 以前の記事でも指摘したとおり、第九の第二楽章の主題(9小節目〜)の第二バイオリン→ビオラ→チェロ→第一バイオリンの受け渡しが両翼(対向)配置を想定していることは明白だ。ヤンソンスはバイエルン放送響で今年演奏したマーラーの2番ではフルトヴェングラー型で並んでいる。
http://www.youtube.com/watch?v=bC3P_mfXDvE&feature=fvsr

 このためロイヤルコンセルトヘボウでもフルトヴェングラー型かと思いきや何とアメリカ型なのだ。マーラーの2番でもコンセルトヘボウとの演奏ではアメリカ型で並んでおり、オケによって配置を変える理由が知りたいところだ。ヤンソンス指揮のコンセルトヘボウは私もだいぶ前にマーラーの5番を聞いたことがある。その時の配置の記憶が定かでないのが残念だ。
 
 さてヤンソンスの第九の演奏だが、基本的には従来型の解釈に基づいたもので、ピリオド・アプローチなど新しい解釈を採用していると思われる点はない。ただし管楽器の編成はファゴットもトランペットも楽譜の指定通り2本のままで安易に倍管にしていない。この点は好感が持てる。

 新校訂のべーレンライター版を使用していることは合唱団が持っている新しい楽譜からも確認できる。第三楽章のファンファーレはスタッカート気味にやや短めに切られている。第四楽章でチェロの歓喜の主題に被せられるファゴットの対旋律(116小節目〜)がソロではなく、第二ファゴットに別の旋律を吹かせているため従来のように目立って聞こえないのも特徴だ。その他、ホルンのリズムが従来と異なる点などいくつか目立った違いがある。全体として決して悪い演奏ではないが、せっかく新校訂の楽譜を使用するなら演奏にももう少し積極的に新しい基軸を打ち出してほしい気がする。たとえばフィナーレ直前のマエストーソは3つ振りにしてほしかった。

 以前紹介したクレンペラーとカラヤンの第九も放送されている。クレンペラーの1964年の映像は自主運営楽団となったニュー・フィルハーモニア管の創立コンサートとなったものだ。モノクロ・モノラルながら、毅然とした格調高いたたずまいが素晴らしい。両翼配置のオケも確認できる。惜しいのはすでにオケのコントロールが十分ではないことだ。7年前の1957年のライブが映像で残っていれば世紀の記録となったことだろう。それでも戦前派の指揮者による第九の映像はこれ以外にはトスカニーニの映像が残っているだけだと思われるので大変貴重な記録であることは間違いない。

 ユーチューブではクレンペラーの1970年の映像も見ることができる。フィナーレ直前のマエストーソが(棒はカメラに写っていないが)明らかに6つ振り(倍伸ばし)なのでびっくり。1964年の演奏も棒が映っていないが、ここでは3つ振りに聴こえるのだが....
http://www.youtube.com/results?search_query=beethoven+9+klemperer+1970

 カラヤンの1977年の大晦日の映像はVHDやLDで80年代から親しまれてきたものだ。カラヤンにしては珍しく後撮りの別映像の挿入などがなく、汗を拭くカラヤンを含めてリアルな演奏が楽しめる。1967年と1986年の棒を振っているふりをしただけのナルシスティックに気取った映像よりはこの方が数段好ましいと私は思う。

 目を瞑って指揮するのは今となってはどうかと思うが、それでも第四楽章ではきちんと目を空けて合唱とコンタクトしている。従来型スタイルではあるが早めのテンポでキリリと筋肉質に引き締まった演奏は二十世紀における第九の一つの典型だと言えるだろう。ただ、ベルリン・ドイツ・オペラの合唱が荒っぽくてウィーン楽友協会でないのが残念。合唱の出だしの部分でテノールのパートを上に上げているのも気になる。

 エッシェンバッハはバレンボイムやアシュケナージ同様にキャリアをピアニストから始めて指揮者に転向した音楽家だが、90年頃までのめぼしいポストは82年からのチューリヒ・トーンハレと88年からのヒューストン響ぐらいだった。ところが1998年に北ドイツ放送響の指揮者に就いたのを皮切りに、2000年にはパリ管弦楽団、2003年にはフィラデルフィア管弦楽団と、欧米の3つの主要オケを瞬く間に席巻してしまったので大変驚いた。

 しかも北ドイツ放送響とフィラデルフィア管では両翼配置を敢行したというのだからさらにびっくりだ。フィラデルフィア管はストコフスキー型配置の本家本元だけに聴衆の衝撃はさぞや大きかったことだろうこのため2004年のこの演奏でも珍しい両翼配置のパリ管が見られるのかと思ってワクワクしていたが、このオケにとって通常配置であるストコフスキー型だったのでちょっとがっかりした。

 解釈も特に新しい発見は感じられないように思う。エッシェンバッハがなぜ一時期欧米でもてはやされたのか、私にはこの演奏からは良く分からなかった。ヤンソンスの2006年の演奏もそうだが、これも近年の演奏だけに新しい校訂譜を使っているのはもはや当然のことと言えるだろう。第四楽章のホルンのリズムなどは初めて聞くと耳慣れないものだが、ベーレンライター新版もブライトコプフ新版もここを直しているのでこれからはこれが普通になるはずだ。

(追記)
ベーレンラ

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ベートーヴェン: 交響曲 第9番 ニ短調 作品125
ラファエル・クーベリック(指揮)バイエルン放送交響楽団&合唱団
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)
ブリギッテ・ファスベンダー(アルト)
ヴァルデマール・クメント(テノール)
フランツ・クラス(バス)
1970年12月31日 ミュンヘン ヘラクレスザール
モノクロ/リニアPCMモノラル/4:3/片面1層/72分

ベートーヴェン: ミサ・ソレムニス ニ長調 作品123
ラファエル・クーベリック(指揮)バイエルン放送交響楽団、合唱団
ヘレン・ドーナト(ソプラノ)
ブリギッテ・ファスベンダー(アルト)
ペーター・シュライアー(テノール)
ジョン・シャーリー=クァーク(バス)
1977年 ミュンヘン,ヘラクレスザール
カラー/リニアPCMステレオ/片面1層/85分/4:3

http://tower.jp/article/feature_item/71575


 昨日放送されたメータの第九は4月10日に開催されたチャリティコンサートで、私も映像と一緒に黙とうさせて頂いた。終演後にオーボエの茂木先生などN響のメンバーやソリストの歌手がロビーでチャリティを呼び掛けている様子も写っていた。

 放送は第一楽章と第四楽章のみだったので(来週24日にBSで全曲が放送されるそうだ)、第二楽章9小節からの第二バイオリン→ビオラ→チェロ→第一バイオリンの受け渡しは映像で見られなかったが、第一楽章と、前プロに置かれたバッハのアリアだけでもバイオリン両翼配置のメリットは十分聞き取れたと思う。ステレオ感が広がったような、少し大げさに言えばサラウンド感が増したようなみずみずしい響き方がする。皆さんはいかがお聴きになっただろうか。 

 さて、クーベリックの第九と荘厳ミサのDVDがタワーレコードのWebサイトと店頭で990円で特売中だ。第九は1970年の大晦日のライブだ。カラヤンも1967年と1977年の大晦日(と翌日の元旦)に第九の映像を残しており、年末の第九は日本だけでの現象ではないようだ。残念ながらモノクロ・モノラルの収録で、特に音はあまり良いとはいえない(マイクはずいぶんたくさん映像に写っているのだが)。

 このため両翼ヴァイオリン・左チェロの効果を耳で確かめることはできないが、第二楽章の主題の動きを目で追う事はできた。基本的な解釈は以前紹介した1982年の名盤と変わらない。ただし合唱団は後年の録音よりもちょっと粗い。フィナーレ直前のマエストーソ(916小節)が良くあるような倍伸ばしをしない3つ振り(楽譜通り)であることが確認できたのも大きい。クーベリックの第九が映像で残されたことを喜びたい。

 一方、荘厳ミサは1977年のカラー・ステレオ収録で条件はずっと良い。この映像も数年前になって初めて商品化されたものだ。音声はオルフェオがCD化していたものとひょっとしたら同じかもしれないが私は聞いていない。そもそもミサ曲を日本人が理解するというのはなかなか難しいが、それに加えて荘厳ミサというのはちょっと変わった作品でなかなかつかみどころが難しい。マタイ受難曲と同様に一度歌ってみないと分からないという人もいるが、残念ながら私はその機会にまだ恵まれていない。

 なので私がこの作品を十分理解しているとは全然思わないのだが、それでもこの演奏がモダンオケによるこの曲の演奏の一つの模範であることは間違いないだろう。この曲は早いテンポをとらないとCD1枚に収まらないが、DVDでは1枚で収まるのも大きなメリットだ。私は定価で買ったがこの値段なら持っていない方は「即買い」だ。画質・音質ともにまずまずで鑑賞に支障はない。歌手の顔をアップにし過ぎるが、これは現在のような大型のテレビで見ることを想定していなかったためだろう。ステレオで録音されていたことが大変喜ばしい。ドーナトとファスベンダーは以前紹介した1982年の第九のライブにも参加しているクーベリックのお気に入りだ。

(追記)
オペラ対訳プロジェクトがこの作品の対訳を公開している
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/649.html

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ノリントン指揮ロンドンクラシカルプレイヤーズ
 イヴォンヌ・ケニー(S)
 サラ・ウォーカー(M)
 パトリック・パワー(T)
 ペッテリ・サロマー(B)
 ロンドン・シュッツ合唱団
(1986〜1988)

ノリントン指揮シュトゥッツガルト放送響
(2002)

 ピリオド楽器によるベートーベンの演奏は70年代にコレギウムアウレウム合奏団が数曲録音したものがあったが、ノリントンとロンドンクラシカルプレイヤーズ(LCP)によるこの全集は、84年から92年に録音されたブリュッヘンの演奏や91年から94年に録音されたガーディナーの録音よりも一足先に完成されたもので、恐らくピリオド楽器によるベートーベンの全集としては最初のものだろう。
 
 この演奏は恐らく賛否両論に分かれる類の演奏だろうが、このようなありふれた曲で楽譜をゼロベースで見直しもう一度新しいイマジネーションを創造するというアグレッシブな姿勢が素晴らしい。「ピリオド楽器ならこんな表現も可能なのか!」という「想定外」の驚きに満ちている。配置はもちろんヴァイオリン両翼、左チェロの古典的両翼配置だ。

 ガーディナーのベートーベン全集はレコードアカデミー賞を受賞する高い評価を受けたが、ノリントンとLCPの演奏は日本ではブリュッヘンやガーディナーほど高く評価されなかったと思う。しかし私はノリントンの全集に大変満足していたのでガーディナー盤を入手したのは実は廉価盤が出てからだった。

 ガーディナーの演奏は確かに素晴らしい。ピリオド楽器による演奏を聞きなれていない人も感動させるであろう完成されたテンポでありフレージングだ。だが、バッハの演奏でリヒターに代わる新しいスタンダードを確立させたガーディナーであればこのくらいはきっとやってくれるという「想定内」の驚きに収まっていると思う。それとガーディナーはチェロを右に置いているのが少し残念だ。

 LCPは90年代に解散してしまい、ノリントンはシュトゥッツガルトのモダンオケに転出した。ベートーベンの全集を2002年にライブで再録したのでそちらも聞いてみた。ノンビブラート奏法をモダンオケに持ち込んだのは目新しいが、LCPとの前衛的な演奏に比較すれば常識的な演奏で、全体としては「想定内」の驚きに収まっていると思う。LCPでブイブイ言わせていた頃のノリントンが懐かしい。

(追記)
ノリントンの第九に関する演奏ノートが下記HPに掲載されている
http://www.kanzaki.com/norrington/note-sym9.html

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・ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調、作品125『合唱』
CD:
オーセ・ノルドモ=レーヴベリ(ソプラノ)
クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
ヴァルデマール・クメント(テノール)
ハンス・ホッター(バリトン)
フィルハーモニア合唱団、フィルハーモニア管弦楽団
オットー・クレンペラー(指揮)
録音時期:1957年10月30、31日、11月21,23日
録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール

DVD:
アグネス・ギーベル(S)
マルガ・ヘフゲン(Ms)
エルンスト・ヘフリガー(T)
グスタフ・ナイトリンガー(Bs)
ニュー・フィルハーモニア合唱団
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
オットー・クレンペラー(指揮)
1964年11月8日、ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール

 クレンペラーもヴァイオリン両翼配置で左チェロの古典的配置の巨匠だが、1960年以降は録音時に限りチェロとビオラを入れ替えた変則型(ハイブリッド型?)両翼配置(左から第一バイオリン、ビオラ、チェロ、第二バイオリン、コントラバス)になってしまった。先日書いたようにこの変則型両翼配置はエーリッヒ・クライバーも採用していたのでこれが20世紀前半において極めて特殊な配列だったということではなさそうだ。

 だが、ベートーベンが古典的な19世紀型の両翼配置を想定していたことは、第九の第二楽章でティンパニの序奏に続く9小節目からの主題が第二バイオリン→ビオラ→チェロ→第一バイオリンと受け継がれることからも明白だ。右から左に反時計回りに弦が広がっていくのだ。ベートーベンが5番の第一楽章で「タタタター・タタタター・タタタター」を第二バイオリン→ビオラ→第一バイオリンの順で右から左に演奏させているのと同じだ。ベートーベンはこういうオーケストレーションが好きだったのだ。

 このため第九は古典的な19世紀型の両翼配置で演奏されることが望ましい。これは楽譜を見ればすぐに気がつきそうなことで、別に大発見でも何でもないのだが、実際に左にチェロを配置している第九の演奏は珍しく、私が知る限りはクーベリックとクレンペラーとノリントンしかいない。第四楽章の歓喜の主題は本来は左側のチェロから聞こえてくるはずなのだ。最近N響がこの配置を採用していて4月10日のメータ指揮の第九もそうだったようなので24日の放送を注目してみよう。

 さて、EMIの名プロデューサーだったレッグは、このクレンペラーの第九を1957年に録音する時点でカラヤンのVPO盤(1948)に加えて、1954年に急逝したフルトヴェングラーの没後に発売したバイロイト盤(1951)とカラヤンのフィルハーモニア盤(1955)を続けて世に出していた。カラヤンはすでに全集を完成していたし、フルトヴェングラーも2番と8番以外の録音は揃っていた。

 それにもかかわらずレッグがクレンペラーによる第九の録音に取り組んだのは、1955年に録音した3番、5番、7番が好評だったということがもちろんあろうが、クレンペラーの第九がフルトヴェングラーやカラヤンにはない美質を持っていることにレッグが気が付いていたからだろう。レッグはステレオ録音にはまるで関心がなかったが、ステレオ・バージョンが残されたことは大変な幸いだ。同時期に開催された演奏会のライブ録音もテスタメントが商品化していてEMI盤よりさらに音質が良いという評判もあるのでこちらも聞いてみたい。ところで、HMVのサイトに下記のようなことが書いてある。

 「50年代のクレンペラーというと、VOX時代のあまりにも速くドライ過ぎるセッション録音のイメージが強いようです。しかしクレンペラーは、モントリオール空港でタラップから転落して大怪我をしてからは、椅子に座って指揮をするようになり、結果として、1954年以降はかつてのような快速アプローチは影を潜め、その芸風は冷静なコントロールの効いたバランスの良いスタイルに変化しています。そのため、力強さや緊張感のいっそうの向上が認められ、造形的な打ち出しの強さも比類が無いという、まさに精神面・体力面でベストと思われる状態に達するのですが、これも長くは続かず、1958年秋には、例の「寝タバコ全身大やけど重体事件」を起こしてしまい、しばらくは指揮棒も持てなくなるなどという困難な状況に追い込まれてしまいます。つまり、1954年から1958年までの5年間は、クレンペラーにとって、たいへんバランスの取れた演奏をすることが可能だった時期にあたる...」

 タラップでの転落事故や火傷の程度は私にはわからないが、クレンペラーの全盛期がEMIに録音を始めた1954年からステレオ初期の1958年頃までだという点では私の認識と同じだ。この2種の第九も1957年の演奏は1964年の映像より全然優れている。しかしDVDではクレンペラーの古典的両翼配置を実際に目で確かめられる。よくある演奏のようにチェロが奏でる歓喜の主題をベタッとレガートにつなげてしまうのではなく、4小節ごとに弓を一度離すように演奏させているのも分かる。これはピリオド楽器の演奏では当然だが、モダン楽器の第九でこれをきちんとやっているのはクーベリックとクレンペラーぐらいだろう。

 第四楽章330小節の「Gott(神)」のフェルマータをそれほど伸ばさず、休符も入れずにさくっとマーチに入るのも大変古典的で気持ちいい。フルトヴェングラーのように、このフェルマータを目いっぱい伸ばして非常に長い休符を挿入している演奏もある。指揮台にいればきっと自分が神になったかのように酔える瞬間だろうが、クレンペラーはきっとそれを知っていて「そんな休符がどこに書いてあるんだ?」と言いたいかのようだ。

 このDVDのジャケット写真では指揮棒を持っているが、映像では棒を持たないで振っているのも印象的だ。フィナーレ直前のマエストーソ(916小節)は多分3つ振りだと思うが映像に写っていなくて残念だ。またこの映像は、確かレッグのオーケストラではない自主運営楽団「ニューフィルハーモニア管弦楽団」としての初めての演奏会だったと記憶している。

 楽器の配置といい(テンポは遅めだが)サクサクした進行といい、まるで最近のピリオド楽器による演奏を先取りしたかのような斬新な演奏だ。時代遅れと思われていた演奏が50年経って周回遅れで先頭に立ったかのようだ。モダンオケの第九は大げさな演奏が多いが、襟元を正して正座して聴きたくなる厳粛な演奏はクレンペラーの57年盤とクーベリックの82年盤ぐらいだろう。クレンペラーの第九はロンドンでは他に1961年や1970年にも繰り返し演奏された名物の出し物だった。日本の評論家には全く理解されていない点ではクーベリック盤と同様で大変残念だが、もっともっと聴かれるべき演奏だ。

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ピアノ:サー・クリフォード・カーゾン
クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
(1977年)
http://ml.naxos.jp/album/Audite95.459

「はじく」系のピアニストを細かく分けると、音のエッジがピシッと立つようにはじく弾き方と、エッジが立たないようにはじく弾き方にさらに分けられるように思う。アルゲリッチは前者だがグルダやクリーンは後者だ。主にモーツァルトを得意とするようなピアニストが出すコロコロとした感じのまろやかなひびきだ。リパッティも(音が古くて正確には分からないが)多分後者だろう。「転がす」系とでも名付けようか。「転がす」系はベーゼンドルファーやベヒシュタインといったスタンウェイ以外のピアノを好む人が多いのも特徴だ。

「叩く」系も基本的には音のエッジを立てる方向性だが、弾き方が重いので「はじく」系ほどには俊敏にエッジは立たない(コンマ何秒の世界の話だが)。なのでエッジの立ち具合でいくと「はじく」系>「叩く」系>「転がす」系ということになるだろう。「叩く」系でも指が衰えるとエッジが立たなくなるが、それは意図したこととは言えないだろう。

さて、「転がす」系の代表選手として今回はサー・クリフォード・カーゾンを紹介したい。この人は自分の演奏会のポスターを自分で張っていたと伝えられる。きっとそれは事実だったのだろうと思わせるような、謙虚で、それでいて存在感のあるいぶし銀の響きだ。クーベリックやセル、あるいはクナッパーツブッシュといった実直で実務型の共演者を好んだこともうなづける。

録音嫌いだったこともクナッパーツブッシュと共通するが、それでも何点かの録音がデッカに残っている。また近年になって放送用のライブが何点か発売されている。いずれも注目すべき内容だが、ここでは得意としたベートーベンの皇帝と4番をとりあげよう。クナッパーツブッシュと50年代に録音したデッカのCDも悪くないが、この録音はスムーズさとスケール感で一段上を行っている。前回のアラウと並んでこの曲の代表的な名演と言えるだろう。

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