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・R.シュトラウス:『エレクトラ』より
「何の用ですか、見知らぬ人よ」(エレクトラ) [19:31]
・R.シュトラウス:『ナクソス島のアリアドネ』より
「Ein Schones war」(アリアドネ) [12:33]
・R.シュトラウス:『影のない女』より
「Barak, mein Mann Mir anvertraut, dass ich sie hege」(バラクの妻) [09:47]
・グルック:『アウリスのイフィゲニア』より
「Leb wohl! Las dein Herz treu bewahren」(イフィゲニア) [02:19]
・ロッシーニ:『セヴィリヤの理髪師』より
「今の歌声は心に響く」(ロジーナ) [6:31]
・ワーグナー:『神々の黄昏』より
「ラインの岸にたきぎの山を積みあげよ(ブリュンヒルデの自己犠牲)」(ブリュンヒルデ) [20:29]
クリスタ・ルートヴィヒ、ワルター・ベリー
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
ハインリヒ・ホルライザー(指揮)
録音:1964年 ベルリン・ドイツ・オペラ(ステレオ)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2701358
ルートヴィヒのオペラアリア集というのは珍しく、多分まとまった形のものとしてはこれ1枚しかないだろう。原盤は独オイロディスクで、以前日本コロンビアがオイロディスクの国内版権を持っていた時代にR.シュトラウスとワーグナーがばらばらにCD化されたことがあるが、オイロディスクが米RCAに吸収されて版権が移り、ようやく1枚のオリジナルの形で再発されて全曲聞くことができるようになった。音質は大変良好で、知らなければ80年頃のアナログ最後期の録音と言っても通じるだろう。ただHMVの紹介にはコンサートのライブとあるが、それは多分間違いだと思う。
「セヴィリヤの理髪師」のロジーナを除けば全てソプラノの役だ。ロジーナはソプラノが歌うことも多いことを考えれば、全てソプラノのレパートリーと考えてよい。これはメゾ・ソプラノのオペラアリアは少ないのでまとまったアルバムにならないということもあるだろうが、60年代のルートヴィヒがソプラノ指向だったことを考えれば、ルートヴィヒが本当は好きなのだが舞台ではなかなか歌えなかった歌を選曲したのではないだろうか。
6曲中実際に舞台で歌ったことがあるのは、恐らく「影のない女」のバラクの妻と「セヴィリヤの理髪師」のロジーナの2曲だけだろう(と思ったらイフィゲニアとアリアドネは一応歌ったことはあるらしい)。ブリュンヒルデやエレクトラまで非常に多様な選曲を、いずれも堂々とした立派な歌で歌っており、もしこのアルバムでしかルートヴィヒを聴いたことがない人がいれば、ルートヴィヒはソプラノだと思うに違いない。
ただし、ルートヴィヒの声はあまり鋭くないので、エレクトラなどはちょっと人が良さそうに聞こえてしまう感も全くなくはない。これはフィッシャー=ディースカウがオペラでどんな役を歌っても偉そうに聞こえる、(良くも悪くも)何を歌ってもF=DはF=Dというのと少し似ている。自己の音楽が確立していると、役に当てはめるのはその分だけ難しくなってくる訳だが、しかし音楽的には極めて立派な歌だと思う。「エレクトラ」のオレストと「影のない女」のバラクは当時夫婦だったベリーが参加している。
指揮のホルライザーにも注目したい。ホルライザーはウィーンやベルリン・ドイツ・オペラで活躍した大変な実力者だが、カラヤンとベームという2大巨人の影にかくれてレコード業界からはほとんど注目されなかった。シュタインも似たようなところがあるが、それでもシュタインにはバイロイトでの「パルジファル」と「マイスタージンガー」、ハンブルクでの「魔笛」という大作が映像で残され、RCAにはバンベルク響と得意のレパートリーの録音も残している。しかしホルライザーの場合はオペラの正規作品としてはEMIが録音したワーグナーの「リエンツィ」と、コルンゴルトの「死の都」の映像ぐらいしか残っていないと思う。
ホルライザーの初来日は1959年の「ウィーン国立歌劇場のメンバー」による来日公演で、その後ベルリン・ドイツ・オペラの「ヴォツェック」(1963)、「ルル」と「コジ・ファン・トゥッテ」(1970)、ウィーン国立歌劇場の「サロメ」(1980)、「トリスタンとイゾルデ」(1986)、「パルジファル」(1989)を振り数多くの名演を聞かせた。それにも関わらず、あれほど得意としたワーグナーやR.シュトラウスの主要な作品の録音がないのだ(1963年の「ヴォツェック」はポニーキャニオンがCD化したことがあるがこれも現在は入手困難だ)。つまり、ルートヴィヒとのこのアルバムは断片ではあるがホルライザーのR.シュトラウスとワーグナーが聞ける点で大変貴重な録音でもあるのだ。
ルートヴィヒとホルライザーは1963年のベルリン・ドイツ・オペラの来日公演の際、特別演奏会「生誕150周年ワーグナーの夕べ」でもブリュンヒルデの自己犠牲を演奏している。ルートヴィヒはこの時の来日でフィデリオのレオノーレも歌っており、この時期のルートヴィヒがソプラノの役に熱心だったことが分かる。
ベルリン・ドイツ・オペラの来日記録
http://users.catv-mic.ne.jp/~pika/berlin.htm
また、ベーレンスの記事で書いたとおり、ルートヴィヒとホルライザーはこのアルバムの30年後(!)にウィーンの舞台でエレクトラを演奏している。ルートヴィヒが歌ったのはエレクトラではなくクリテムネストラだが、2人とも息の長い活躍をして素晴らしい。ルートヴィヒがオペラの舞台に立ったのはこれが最後になったそうだ。この映像もぜひDVD化を期待したい。
R.シュトラウス「エレクトラ」
1994年12月14日 ウィーン国立歌劇場 ホルライザー指揮 クプファー演出
Electra Behrens
Klytamnestra Christa Ludwig
http://www.youtube.com/watch?v=Od5wfqxrgQk&feature=relmfu
ホルライザーの演奏では以前記事にした通り、ホルライザー指揮でリザネク主演、バルロク演出の1980年の「サロメ」はNHKの映像が残っているはずなのでぜひDVD化を期待したい。私はてっきり同年の「フィガロの結婚」に続いてDVD化されるものとばかり思っていたのだが、何とかならないものだろうか。
R.シュトラウス「サロメ」
レオニー・リザネク(サロメ)
ハンス・バイラー (ヘロデ)
ゲルトルーデ・ヤーン (ヘロディアス)
ベルント・ヴァイクル(ヨカナーン)
ヨーゼフ・ポップファーヴィーザー(ナラポート)
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ハインリッヒ・ホルライザー指揮
演出:ボレスラフ・バルロク(Boleslaw Barlog)
装置・衣装:ユルゲン・ローゼ
1980年10月23日NHKホール
http://www.youtube.com/results?search_query=salome+rysanek&search_type=&aq=f
なおホルライザーは、バンベルク響を指揮してオーケストラ作品を米VOXに何点か録音している。ナクソス・ミュージックライブラリーに契約すればこの録音をパソコンで聴くことができることを発見した。チャイコフスキーの5番やドヴォルザークの新世界、ブルックナーの4番といった主要作品が含まれているので私も聞いてみようと思う。
http://ml.naxos.jp/artist/47611
下記ページにホルライザーのチャイコフスキーの5番の丁寧な解説があり、「ツボ」をクリックすると譜例が出てくる。
http://www.wakuwakudo.net/review_chai5/holleiser_acd8004.html
(追記)
ルートヴィヒは1964年のウイーンのカラヤン指揮「影のない女」でバラクの妻を初めて歌い、その後ベーム指揮でもこの役を歌っている。助六さんの情報によると、ベームはルートヴィヒのために作曲者公認カット以上のカットを施したそうだ。メットでのこの作品の初演(!)だった1966年の公演はベーム指揮メリル演出、皇后はリザネク、皇帝はキング、バラクの妻がルートヴィヒ、バラクはベリー(これがMETデビュー)という、カラヤンの公演と良く似たキャストだった。その際のoperanewsの記事がアップされていた。
http://archives.metoperafamily.org/Imgs/ONFrau1966.jpg
このプロダクションはほぼ同キャストで1969年と1971年にも再演され、3回ともラジオ放送されたので、いずれネットなどで聞けるようになるかもしれない。カラヤンの「影のない女」はCD化されているがモノラルなので、ベームのMETでの演奏をぜひ聞いてみたいものだ。ルートヴィヒがバラクの妻を歌ったのは10年ほどの期間とのことなので、1971年の演奏は最後の時期にあたるだろう。
なお、ベームは同時期にMETで、ルートヴィヒ、リザネク、ベリーという全く同じキャストを用いてばらの騎士も演奏しているが、ルートヴィヒが歌ったのはオクタヴィアンで元帥夫人ではない。ベームは同時期にザルツブルグ音楽祭でもばらの騎士を演奏しており、ここではルートヴィヒのマルシャリン、オクタヴィアンはトロヤノス、ゾフィーはマティスとなっている。これは以前DGがCD化していた。
(さらに追記)
助六さんがルートヴィヒがクナッパーツブッシュと共演した神々の黄昏のフィナーレを見つけて下さった。相当前に国内盤も出ていた演奏だと思う(音声のみ)。クナの遅いテンポにも関わらず堂々とした歌で見事だ。
http://www.youtube.com/watch?v=4uxXp-A0YD8
(Brünnhilde`s Immolation Scene)
from Götterdämmerung by Richard Wagner (1813-1883)
Sinfonieorchester des Norddeutschen Rundfunks NDR
Hans Knappertsbusch, conductor
Hamburg 24.III.1962(1963?)
恐らく同じコンサートのイゾルデの「愛の死」も見つけた。
http://www.youtube.com/watch?v=9kCPwdQbEXI&feature=related
Wagner, tristan und Isolde, Isolde.
North German Radio (NDR) Orchestra
Hans Knappertsbusch Conductor,
live March 24, 1963.
同一演奏と思われるCDがクナッパーツブッシュ大全集に入っている。
http://www.hmv.co.jp/news/newsdetail.asp?newsnum=509300055
・ワーグナー・コンサート 録音:1963.3.24
ジークフリート牧歌
『トリスタンとイゾルデ』前奏曲と『愛の死』
『マイスタージンガー』前奏曲第1、3幕
『ブリュンヒルデの自己犠牲』
ルートヴィヒ(M)
北ドイツ放送響
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