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チェリビダッケ

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ベートーベン作曲交響曲第6番「田園」
チェリビダッケ指揮ミュンヘンフィル
(1993年)

 私がチェリビダッケを聴いた日は本当はブルックナーの9番が予定されていた。しかしチケットの売れ行きが悪かったか何かの理由で「未完成」と「田園」に差し替えられた。「「田園」がメインプロ?」と私は思った。「田園」は今でも「運命」の前座で置かれることがほとんどなので20年近く前の私がそう思ったのは仕方ないと思うが、でもそれは浅はかだった。全ての時間が止まって音だけがどんどん無限に広がっていくような不思議な感覚を感じさせる素晴らしい演奏だった。音楽というよりは1/fのゆらぎとか宇宙の鼓動とかそういう表現の方がふさわしいと思った。

 私は田園の終楽章で、「このままこの曲が終わらないでくれ。この瞬間が永遠に続けばいいのに。ああもう少しで終わってしまう。」というようなことを考えたことを覚えている。この田園はメインプロでなければならない。現代において田園を演奏することの意味をこれだけの確信を持って示せる指揮者が今他にいるだろうか。

 EMIが発売した同年の演奏は来日3カ月前のものだ。来日公演のための準備として演奏されたものだろう。当然のことながら演奏の傾向はほとんど同じで第一楽章のリピートなしで51分というすさまじいスローテンポだ。しかし遅い感じがするのは実際は最初の一瞬だけですぐにチェリビダッケの世界に引きづり込まれる。解説によるとチェリビダッケはベートーベンの演奏には慎重で、田園はミュンヘンで2回しか演奏しなかったそうだ。

 これだけの素晴らしい来日公演があったにも関わらずこのチェリビダッケの田園のCDが評判になったという話は聴いたことがない。でもこれは田園の演奏史上に残る演奏だと思う。先日紹介したブラームスの2番など90年代のチェリの演奏はチェリ色が強くなりすぎているものもあるが、この演奏はチェリの90年代スタイルが大成功している。チェリの田園はMETEORのMCD-044という海賊盤で出ていたシュトゥッツガルト時代の演奏もあって、もう少し常識的なテンポに近い。こちらも良い演奏だと思うがEMI盤の方がさらに素晴らしい。

シュトゥッツガルト放送響(70年代)9:48/12:43/5:34/3:42/9:01/8:42
ミュンヘンフィル(1993)11:47/16:14/6:31/4:30/12:01


 チェリビダッケは翌1994年も来日が予定されていたが実現しなかったのでこの年が最後の来日になった。私はチェリビダッケの田園を聴けたことを大変幸運に思う。私は実演を聴いているのでこのCDに入りきらない部分は耳が補完して聴いているのだろうが、それでも当日の75%は入っていると思う。ぜひ多くの人に聴いてほしい演奏だ。

チェリビダッケの来日記録
http://www003.upp.so-net.ne.jp/orch/page027.html

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チェリビダッケ指揮ミュンヘンフィル
(1986年?)

 これも私がお気に入りのチェリビダッケのブラームスだが、METEORのMCD-019というこの海賊盤はEMIが発売した1991年の演奏ではなく1986年頃と思われるライブ録音だ。91年の演奏はチェリビダッケの晩年スタイルがやや強く出過ぎていて第二楽章のアダージョなどはちょっとブルックナーのように響いてしまう。チェリ好きにはそれもたまらないが公平な耳で一般的にお勧めするには若干のためらいがある。

 かといってDGが発売した75年のシュトゥッツガルト盤はチェリらしさがまだ十分に発揮されていない。80年代のチェリビダッケは良い演奏が多い。ひっそりとした静けさと透明感の中に長年演奏してきたこの曲への慈しみが感じられる(ジャケット写真はこの演奏の雰囲気を良くあらわしている)。チェリビダッケがいかに素晴らしい指揮者だったか多くの人に知ってもらいたいのだが海賊盤でしか聴けないのは大変残念だ。中古屋で見かけたらぜひ入手してほしい。以前紹介したクライバー/VPOの1988年のブラ2(これも海賊盤だが)がこの曲の「動」の究極だとすれば、この演奏はこの曲の「静」の究極だと思う。

 参考までにチェリの3つの演奏時間をあげておく。1,2,4楽章はほぼ1分ずつ遅くなっている。楽章間や拍手の時間を含んでいるので若干の誤差はあるだろうが、この3つがかなり性格の異なる演奏であることはこれを見ただけでご推測頂けるのではないだろうか。

DG:シュトゥッツガルト放送響(1975)14:45/11:15/5:19/9:54
METEOR:ミュンヘンフィル(1986?)16:09/12:04/5:34/10:59
EMI:ミュンヘンフィル(1991) 17:15/13:04/6:02/11:44

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ブラームス:
・ドイツ・レクイエム op.45
 アーリーン・オジェー(ソプラノ)
 フランツ・ゲリーセン(バリトン)
 ミュンヘン・フィルハーモニー合唱団
 ミュンヘン・バッハ合唱団員
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
 セルジウ・チェリビダッケ(指揮)
 録音:1981年7月(ライヴ)
13:52/15:52/12:17/6:03/9:37/14:18/15:31

・交響曲第1番ハ短調 op.68
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
 セルジウ・チェリビダッケ(指揮)
 録音:1987年1月(ライヴ)
14:56/10:57/5:43/19:47

 古典的な枠組みを壊さなかったブラームスだが、1868年の35歳という比較的若い時期に書かれたこの作品は一般的なラテン語の歌詞によるレクィエムではなく、ドイツ語の聖書から自由に歌詞を採った7楽章のレクィエムという斬新な作品だ。ソリストがソプラノ(1曲)とバリトン(2曲)のみという編成も大変変わっている(これはひょっとしたら後年のフォーレのレクィエムにまで影響を与えているかも?)。1857年の恩師シューマンの死や1865年の母親の死が作曲の動機になっているという。

 また、ブラームスは19世紀の他の多くの作曲家のようなメトロノーム指定を楽譜に残さなかった。自らも指揮をしたブラームスはオケの編成や会場の響き・大きさで最適なテンポは変わってくるということを理解して、演奏者に大きな解釈の余地を与えたのだと考えられる。このためブラームスの作品はある程度の範囲で自由なテンポ設定が許容されるだろうが、88分かけたこのドイツ・レクイエムは私が知る限り最長のスローテンポだ。

 しかし遅いテンポだからと言って大げさで恣意的な感じはない。声楽ソロに敢えて軽めの声を起用しており、オケともどもこの演奏がブラームスの演奏に普通ありがちな重厚感を目指しているわけでないことは明らかだ。かといってチェリビダッケ最晩年の90年代に稀に見られたようなたるんだ演奏でも決してない。

 例えが適当かどうかわからないが、ここにはお経のような静粛な音楽がとうとうと流れている。水墨画を思わせる繊細な透明さと大河のような慈しみを感じさせる空前の演奏だ。タイプは異なるが、時間が止まったような錯覚を感じさせるという点ではクナッパーツブッシュの神がかり的な(そして演奏史上最長の)1951年のパルジファルに近いものがある。思わず正座して聴きたくなるくらい「しびれる」演奏だ。このテンポで最後まで集中力を切らさなかったオケと合唱は称賛されるべきだろう。

 ドイツ・レクイエムはチェリビダッケが50年代から得意にしてきたレパートリーで数種の海賊盤がすでに存在するが、チェリビダッケのこの曲の結論と言える演奏が正規発売されたことを喜びたい。

 交響曲第1番も第一楽章のリピートなしで51分というスローテンポだ。1976年のシュトゥッツガルト放送響によるDG盤(13:20/10:01/5:39/18:32)と比べると1,2,4楽章で顕著に遅くなっているが、これも重厚というよりは透明感が際立っており、冒頭などはまさにお経をイメージさせる。異色かもしれないがモダンオケによるこの曲の極致として演奏史に残る演奏だ。

 チェリビダッケといい先日のクーベリックといいこの時期のミュンヘンの充実ぶりには驚かされる。歌劇場ではサヴァリッシュやクライバーが頻繁に振っていた時期だ。「音楽の都」ウィーンではベームが1981年に亡くなり、カラヤンがウィーンでオペラを振ったのも1980年のドンカルロが最後だ。80年代の「音楽の都」は実はミュンヘンだったのではないだろうか。

 チェリビダッケが亡くなったのは1996年8月14日で、クーベリックが8月11日に亡くなった直後だ。チェリビダッケは一時期ほど話題にならなくなってしまったように思うが、来年の生誕百年に向けてもう一度再評価されることを期待したい。

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