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12月までに移行します。コメントも手作業でコピーする予定です。

テンシュテット

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 年頭まず自ら意気きを新たにすべし
 年頭古き悔恨を棄つべし
 年頭決然滞時(とどこおっていること)を一掃すべし
 年頭新たに一善事を発願すべし
 年頭新たに一佳書(良い書物)を読み始むべし

 安岡正篤という東洋思想家の方の言葉だそうだ。

 近くの神社でお祓いをしてもらってきた。寒い中で長時間並ぶのはつらいので元旦、2日は避けて今朝行ってきた。大みそかの大祓いで去年の嫌なことは洗い流した。今年は心機一転、新鮮な気持ちで臨みたい。


・交響曲第5番ハ短調作品67『運命』

 ロンドン・フィルハーモニック
 クラウス・テンシュテット(指揮)
 1990年8月30日、ロイヤル・アルバート・ホール(ステレオ)

 キール・フィルハーモニー管弦楽団 
 クラウス・テンシュテット(指揮)
 1980年3月20日、ステレオ録音

 キャンセルされてしまった1992年の来日公演で予定されていたテンシュテットの「運命」は、2つの演奏が正規発売されている。1990年のロンドンでのライブと1980年のキールでの放送用録音(?)だ。後者は海賊盤で有名だった演奏で(先日紹介した海賊盤の全集もこの演奏)、数年前になって正規CD化された。どちらもテンシュテットならではの気合いのこもった熱い表現だ。1990年盤で第二楽章のテンポが少し遅くなっているが、基本的な解釈は変わっていない。

 どちらもなかなか良い演奏だと思うのが、ちょっと耳につくのがティンパニの強打だ。つい先日ピリオド・アプローチによるヤルヴィのフレッシュな演奏を聞いたばかりだということもあって、正直なところ少しうるさく聞こえる。特にロンドンでのライブは(BBCのシリーズはいつもそうだが)マイクが遠目で残響が過剰なこともあって、ティンパニがかなり大げさに響いてしまう。会場がかなり大きいホールで聴衆ノイズが目立つこともあって、落ち着いて鑑賞しにくい。テンシュテットの体調は良かったようで、良く聞けば良い演奏だと思うのだが残念だ。

 キールでの演奏はHMVにはライブと書いてあるが、聴衆なしの放送用スタジオ録音のようで拍手などは入っていない。音質はこちらの方が良い。オケの状態は万全ではなく金管に多少のミスがあるのは残念だが、北ドイツのローカルなオケからこれだけの演奏を引き出したテンシュテットの手腕を評価するべきだろう。願わくばティンパニはもう少し固めのバチにして引き締まった響きにほしかったところだが、それでも生で聞けなかったテンシュテットの運命をこの録音から空想できるのはありがたいことだ。恐らく生で聞けば感動できた演奏だと思う。

 下記HPによるとテンシュテットのこの曲の録音は他に1976年と1982年のボストンでのライブ、1992年のロンドンでのライブもあり都合5種類が残されているようだ。録音状態とオケの状態が両方揃っている演奏が残っていればぜひ正規発売してほしいものだ。

九鬼蛍氏のHP
http://kukikei.sakura.ne.jp/tennstedt.html

 ちょうど365本目の記事になった。4年強で365本ということは平均すれば4日に1本ということになる。これからもマイペースで続けていきたいと思う。

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・ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 OP.125『合唱つき』
 マリアンネ・へガンダー(S)
 アルフレーダ・ホジソン(A)
 ロバート・ティアー(T)
 グウィン・ハウエル(Bs)
 クラウス・テンシュテット(指)ロンドン・フィル& 同合唱団
 録音:1985年9月13日、ロイヤル・アルバートホール、ロンドン(ステレオ)
 16:04/10:58/16:51/23:54

 イーグレン(S)
 クイマン(A)
 ロルフ・ジョンソン(T)
 トムリンソン(B)
 クラウス・テンシュテット(指)ロンドン・フィル& 同合唱団(ブライトンフェスティバル合唱団?)
 録音:1991年8月31日、ロイヤル・アルバートホール、ロンドン(ライブ)
 16:35/10:22/16:21/25:29

 ルチア・ポップ(ソプラノ)
 アン・マレイ(メゾ・ソプラノ)
 アントニー・ロルフ・ジョンソン(テノール)
 ルネ・パーペ(バス)
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
 クラウス・テンシュテット(指揮)
 録音:1992年10月8日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(ライヴ)
 16:53/9:23/18:40/26:51

 テンシュテットは第九のスタジオ録音を残さなかったが、第九は得意なレパートリーだったようで、85年、91年、92年のライブが残されている。85年の録音はBBCから、92年の録音はLPOの自主レーベルから正規CD化されているほか、私は海賊盤の全集に収められている91年盤を持っている。一説によるとテンシュテットの第九は海賊盤でもう一種類あり合計4種類が現存するそうだ。

 私は85年盤と91年盤を聞いた。どちらも基本的な解釈は変わらないが、晩年の91年盤の方がはるかに充実した音楽だと思う。これが最後の演奏会かもしれないという晩年のテンシュテットの一期一会の気合がこもった熱っぽい演奏だ。こう書くとフルトヴェングラーや晩年のバーンスタインのような粘っこい演奏を思い浮かべる方もいるかも知れないが、そういう意味ではない。基本的にはインテンポなのだ。爆演を期待する向きには肩すかしだろう。やたらブレーキやアクセルをかけたりせずにインテンポで振っても音にこれだけの魂を込めることは可能なのだ。聴衆がすさまじく熱狂している様子もリアルに伝わってくる。

 テンシュテットはこの第九の翌年、1992年3月に来日してベートーベンの5番と6番を振るはずだった。私は1988年以来のテンシュテットの演奏会をとても楽しみに待っていたが、来日はしたもののドクターストップでメストが代役で振ることを当日知った。88年の英雄が素晴らしかっただけに、最晩年のテンシュテットが5番と6番を演奏したらどんなにすごい演奏になっただろう。チェリビダッケの6番と並んで一生忘れられないベートーベンになったに違いない。NHKはハイビジョンカメラを用意して待ちかまえていたので人類の至高の財産が記録されたはずだ。

 ちなみにだが、代役のメストの演奏は決して悪くなかった。この時の映像を最近NHKが再放送したのでそのことは改めて確認できたが、これが最後の来日になるだろうテンシュテットへの期待があまりにも大きかったので印象が霞んでしまったのだ。

 さて、85年盤の第九は正規版としては最初に出たテンシュテットの第九だった。BBCの録音だがマイクが遠くて音がぼやけていることもあって少し集中力散漫、淡々とした淡泊な演奏に聴こえる(後半に向けて盛り上がってきて第四楽章はかなり良いと思うが)。91年盤同じロイヤルアルバートホールでの演奏だが、85年盤よりは明瞭で鑑賞に支障はない。私が持っているのとは別レーベルの海賊盤(CD-R)を紹介した下記2サイトの情報によると91年盤の方は合唱がブライトンフェスティバル合唱団となっている。そのせいかどうか分からないが合唱のできは85年盤より良いように思う。
http://kna-club.com/archives/tennstedt/tennstedt032.html
http://fefefe.cocolog-nifty.com/fefefes_bar/2009/12/-91-5c65.html

 85年盤と91年盤には他にも興味深い違いがあって、使っている楽譜が違うようなのだ。85年盤では第一楽章の416小節で戦前良くあったような第一バイオリンのオクターブ上げをやっているのだ。しかし91年盤ではこのアレンジを採用していない。ところが逆に91年盤では85年盤では採用しなかった第四楽章冒頭のトランペットのにぎやかな(笑)アレンジを実行しているのだ。この手のアレンジを採用する指揮者は今ではかなり珍しくなっているのでいずれもちょっとギョっとする(第一楽章のオクターブ上げは最近も小澤征爾がやっているのでびっくりしたが)。私はこの手のアレンジには否定的だが、それでもこの91年盤は第九の名盤の一つに挙げて良いと思う。ただしこの海賊盤は既に入手困難のようだ。ぜひ正規盤での発売を期待したい。

 楽譜をお持ちでない方はIMSLPのサイトを参照して頂きたい。
http://imslp.org/index.php?title=Category:Beethoven%2C+Ludwig+van&from=S


(92年盤も聞いてみたので追記する)
 数年前になってLPOレーベルで正規発売され、一部では「フルトヴェングラー以来の第九」という評判もある92年盤だが、結論から言うと91年盤の激しい燃焼度には及ばないと思う。日本公演をキャンセルして帰国した半年後の演奏で、先ほどのサイトによると、この第九の後にテンシュテットが指揮台に立ったのはこの年10月のブラームスの1番、翌93年5月のマーラーの7番のみとのことだ。既に相当悪かった体調を押して指揮台に立ったのだろう。

 特に第三楽章で顕著にテンポが遅くなって粘った表現になっている点や(確かにこの点はフルトヴェングラーに近いかも?)、この年の演奏では第二楽章のリピートを実行していない点も特徴だ。テンシュテットを支えた名コンマス、デビット・ノーランは1992年までLPOに在籍していた(この年3月の来日でも確かコンマスはノーランだったと記憶している)。しかし10月の第九の時点では退任していたようで、ジャケットにはジョイアキム・スヴェンヘーデンという人の名前がクレジットされているが、このこともテンシュテットの棒に影響を与えているかもしれない。

 演奏会場がロイヤルフェスティバルホールに代わっているが、合唱が遠目に聴こえる点は85年盤と同様だ。合唱は85年盤同様のロンドンフィル合唱団に戻っているが、録音のせいもあって合唱の出来は91年盤の方が良いと思う。HMVのユーザーレビューではハーペの歌い損じ(?)を気にするコメントも見かける。

 それでも93年に亡くなる前年のポップさんとテンシュテットの最後の共演が聴けて良かった。ポップとテンシュテットはマーラーの4番やシュトラウスの最後の4つの歌などでしばしば共演している。ポップさんはこの第九の後、11月にバイエルン国立歌劇場の公演で来日しフィガロの結婚の伯爵夫人を歌った。素晴らしい歌で、特に体調が悪いようには見えなかったので翌年に急逝してしまい大変驚いた。

 ちなみに92年盤は第一楽章のバイオリンのオクターブ上げも第四楽章のトランペットのアレンジも採用していない。つまり85年盤とも91年盤とも違う処理をしているのが興味深い。

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 早いもので今年もあと2週間と少しになりました。震災以降バタバタ落ち着かないうちに年を越してしまいそうな雰囲気ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

・マーラー作曲 交響曲第一番「巨人」
クラウス・テンシュテット指揮シカゴ響 
(1990ライブ)
http://www.youtube.com/results?search_query=tennstedt+mahler+1+chicago

 今日取り上げるこの映像はLD時代から有名なもので、テンシュテットが晩年にシカゴ響に客演した際のものだ。テンシュテットの西側デビュー盤だったLPOとの77年の録音と比べて表現が濃厚でテンポが遅くなっているのが特徴だ。この演奏を絶賛する声は多いし、私もこれはこれで素晴らしい演奏だと思うが、マーラーの若書きにしては表現が粘りすぎているようにも思う。知情意のバランスが取れているのは77年の録音の方だと私は思う。

LPO(1977) 15:58/7:51/10:47/19:17
CSO(1990L)18:13/8:26/11:34/22:41

 しかしこの映像は2つの点で映像ならではの楽しみを与えてくれるので必見だ。一つは第四楽章フィナーレで楽譜の指定通りにホルンを起立させていることだ。マーラーは第四楽章の練習番号56の1小節前(656小節目)に長い注釈を書き込んでいる。下記の情報から引用させてもらうとその意味はこのようなものだ。

 「ここから(決して4小節前ではなく)終わりまで、すべての音を消してしまうほどの賛美歌風のコラールが充分な音量に達するまで、ホルンは音を強めることが望ましい。ホルン奏者達は、最大の音量が得られるように、残らず立ち上がる。場合によっては、トランペット1本とトロンボーン1本を加えてもよい。」
http://www.asahi-net.or.jp/~wg6m-mykw/Files/Guide_Mahler_Sym1.pdf

フルスコアは例によってIMSLPを参照。上記注釈は162ページにある。
http://petrucci.mus.auth.gr/imglnks/usimg/d/dd/IMSLP17070-Mahler-Symph1fs.pdf

 ここでホルンを起立させる習慣は西側のオケでは80年代頃までに廃れてしまっていたようだ。アバドはBPOの音楽監督に就任した直後のリハーサル(1989)で、ここで起立したホルンを「マーラーの時代ではないのだからそんな大げさなことはしなくて良い」というような主旨のことを言って座らせてしまった。クーベリック(1980)やハイティンク(1994)の映像でもホルンの起立は残念ながらよく確認できなかったので、これは実際に確認できる唯一の映像だったと思う。もしかしたらテンシュテットが育った東独ではこの習慣は廃れずに保存されていたのかもしれない。

アバド/BPOの交響曲第一番(1989)
http://www.youtube.com/watch?v=QX3FjKWZ_yc
http://www.youtube.com/watch?v=hlVDMXySwjM

 それではホルンを起立させれば本当に音量が上がるのかというと、(私はホルンを吹かないので正確には分からないが)多分音響学的にはそれはほとんど期待できないと思う。それにも関わらず私がマーラーのこの指定を重要視するのは、起立することで視覚的な緊張感が高まるからだ。人間の耳はマイクなどよりもはるかに感度が良いので、ホルンに意識を集中すればその音をより聞き分けるようになる。つまり相対的にホルンの音量が上がったように聞こえるのだ。下記ユーチューブの12分9秒でその素晴らしい効果を確認して頂きたい。
http://www.youtube.com/watch?v=74INH0XQ6_k

 指揮者でもあったマーラーはそのことを計算づくでホルンを起立させたのだと私は思う。2000年前後から欧米のオケで楽譜の指定通りにホルンを起立させる習慣が復活し、最近は日本のオケでも見られるようになったのは恐らくこのテンシュテットの映像が有名になったせいだろう。アバドも2009年のルツェルンではホルンを起立させているので少々びっくりした。

アバド/ルツェルンの交響曲第一番(2009)
http://www.youtube.com/watch?v=J35AmzchpGc

 ちなみにアバドはマーラーの9番でも80年代のVPOの時は両翼配置だったのに、90年代のBPOや今年のルツェルンではビオラが右のフルトヴェングラー型に戻してしまった。BPO時代以降のアバドはどうもその場その場の場当たり式のような気がしてならない。9番はマーラーの交響曲の中でも両翼の効果が最も発揮される曲だと思うのだが。

アバド/ルツェルンの交響曲第九番(2011)
http://www.youtube.com/watch?v=tbxpX5aImLw

 エッシェンバッハの最近の演奏でもホルンを起立させているが、4小節前の652小節で立ってしまっている。マーラーは「決して4小節前ではなく」という指定をわざわざ書き込んでいるし、視覚的効果としても656小節目の方が好ましいと私は思う。652小節では予定調和的になってしまって「驚き」が半減してしまうのだ。ぜひ見比べてみて頂きたい。

エッシェンバッハの交響曲第一番
http://www.youtube.com/watch?v=_8dLKR3yOVY&feature=related

 話が逸れたが、このテンシュテットのDVDのもう一つの見どころは、この曲で良くソロを吹く第一トランペットにピストン式ではあるものの古風な旧式の楽器を持たせ、柔らかい音色を出させていることだ。この時代のシカゴ響の金管というと、まるで吹奏楽のような強奏で曲の雰囲気を損なうことも多かった。例えばこの数年後に朝比奈隆が客演したブルックナーの5番や、前に紹介したジュリーニのブルックナーの9番などがそうだ。この時代のシカゴ響がこのような旧式の楽器を使用した例は私が知る限りこの時の演奏しかないので、これは恐らくテンシュテットの指示だったのではないかと推測される。旧式のトランペットは下記ユーチューブの4分34秒などで確認できる。
http://www.youtube.com/watch?v=By25pQ12MCI

 この2つの見どころをはっきりと目撃できるこの映像は、マーラーの作品に対するテンシュテットの深い愛情を確認させてくれる貴重な記録であり、テンシュテットファンのみならずマーラーファン必見だろう。

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・マーラー作曲交響曲第5番
テンシュテット指揮ロンドンフィル
(1988年12月13日ライブ)
http://www.youtube.com/watch?v=woaR8PnytsM

テンシュテット指揮ロイヤルコンセルトヘボウ
(1990年12月9日ライブ)

 テンシュテットの2種類の「マラ5」が新たに正規入手可能になった。一つは1988年12月13日のLPOとのライブ映像、もうひとつは1990年12月9日にロイヤルコンセルトヘボウに客演した際のライブ録音だ。前者はEMIが同日の演奏とされるCDを発売していることは先日紹介した。大評判となった来日公演から帰国した直後の演奏で、BBCがテレビ中継したことも当時の東芝EMIのチラシにすでに触れられていた。

 私はこれを何とかDVD化してほしいという希望を10年以上いろんなところで書きこんできたのだがようやく夢がかなった。これまでテンシュテットの映像はLD時代から出ていた3点(マーラーの1番と8番、来日公演のワーグナー)しかなかったので大変な朗報だ。

 このため大変な期待を持って聞いたのだが、肝心の演奏はまあまあと言ったところだろうか。残念なことに金管の調子が全体的に今一つなのだ。特に第一楽章は冒頭のトランペットにミスがあることもあってテンシュテットの演奏としてはやや散漫に聴こえる。EMIのCDにはこのミスはないのでCDは別テイク、あるいは別編集のようだ。実は先日紹介した3番のライブにも金管のミスはなくはない。オケが指揮者に反応しようとして棒に集中する余りに、楽譜を見る余裕がなくなってミスが出るということはクライバーのライブでも時に見られることだ。

 しかし「マラ5」はすでに名演・名盤ぞろいであり、テンシュテット自身も1978年の素晴らしい録音をすでに残しているだけにこの出来では少々点数が辛くなってしまう。この映像の存在は分かっていたのに、なかなか商品化されなかった理由が何となく分かった気もする。それでもテンシュテットの4点目の映像として得意の5番が見られるようになったことを喜びたい。

 ロイヤルコンセルトヘボウとの演奏は丁度その2年後のものだ。RCOの1990年代のライブを集めたアンソロジー(14枚組BOX)に収められたものだがCD-Rの海賊盤では以前から有名な演奏だったらしい。LPOよりもウエットで粘着質な体質を持ったオケと、最晩年のテンシュテットの棒の相乗効果で2年前の演奏よりもはるかに濃厚な表現になっている。特に第一楽章のテンポは明らかに遅くなっている。

 正直に言うと個人の主観が強すぎるマーラーには私は少し抵抗があるのだが、それでもこの演奏の有名なアダ―ジェットのひっそりとした表情には息を飲むような独特の魅力がある。終楽章は逆にテンポが速くなりすっきりした表情になっているのも特徴的だ。テンシュテットがロイヤルコンセルトヘボウとどの程度共演したことがあるのか私は知らないが、晩年のテンシュテットの棒にこれだけ反応し、かつ技術的に破たんしていないのはさすがに名門オケだ。録音はややオフ気味で非常に鮮明という訳にはいかないが安定はしている。

LPO(1978)13:53/15:18/18:12/11:55/16:19
LPO(1988)13:38/15:25/18:06/11:21/15:52
RCO(1990)14:35/15:53/18:36/12:11/15:09

 今回の2枚を聞いてもテンシュテットの最良のマラ5は最初の1978年のスタジオ録音だという思いは変わらなかったが、いずれもテンシュテットの晩年の芸風を伝える貴重な記録だ。特にロイヤルコンセルトヘボウとの演奏は濃い目のマーラーがお好きな向きには歓迎されるのではないだろうか。

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 大変ご無沙汰しております。毎日数十人もの方にアクセスして頂いているのに全然更新できないで済みません。楽しみに待っていて下さった方々にお詫び申し上げます。新しい活路を見出すのがなかなか難しい世の中ですが、自分自身を見失わないためにもブログは続けていきたいと思っています。

・マーラー:交響曲第3番ニ短調
 ヴァルトラウト・マイアー(メゾ・ソプラノ)
 イートン・カレッジ少年合唱団
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
 クラウス・テンシュテット(指揮)
 録音:1986年10月5日、ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(ライブ)

・インタビュー「テンシュテット、マーラーについて語る」
 収録:1987年BBCスタジオ

 マーラーイヤーも残すところあと少しとなった今になって超大物が登場した。テンシュテットとロンドンフィルのマーラーはEMIのスタジオ全集以外に、3番、4番、9番以外の6曲は晩年のライブ録音がリリースされていると以前書いたが、86年の3番のライブも残っていたのだ。85年の癌による休養から再起した86年の演奏で、HMVのサイトによると同じフェスティヴァル・ホールで、4日前には『英雄の生涯』を、3日後と5日後には『千人の交響曲』を指揮しており、直後には渡米してマーラーやブルックナーをとりあげたそうだ。この時期の体調は比較的良かったようだ。

 私は二長調で書かれたこの曲の終楽章アダージョが大好きだ。強い意志の中に、大地の歌や9番などの後期作品にも共通する人生への悟り、あるいは達観(もしかしたら、あきらめ?)が表現された落ち着きのある音楽だ。1番の若々しさ、2番や5番、6番の激しさ、4番の爽やかさと比較して、マーラーの後年の人生観が表現された最初の作品がこの3番のアダージョなのではないかと思う。バイオリンソロの扱いなどもちょっと9番と似ていないだろうか。

 1895年の作曲当時、マーラーの14歳年下の弟がピストル自殺するという事件があり、マーラーは大きな精神的ショックを受けたそうだ。2番までの自己との葛藤をテーマにした自伝的作風から自然賛美的な作風に変化が見られるのはそのためだという指摘もある。私もこの曲を聞くと「全ては神の思し召し」などと考えてしまう。私はまだ人生を達観するような年齢ではないはずなのだが(笑)。

 東ドイツから亡命し異文化の中で、病に侵されながらも生きることに向かい合ったテンシュテットにこの3番はぴったりの作品だと思う。このライブの7年前、1979年に録音されたEMIのスタジオ録音も決して悪くはない。この演奏も第三楽章が少し速く、終楽章が少し遅くなっているが、基本的な解釈自体は大きくは変わっていない。しかしこの演奏、特に後半3楽章の入魂の表現は空前絶後と言っていいのではないだろうか。音だけ立派で魂の入っていない最近の演奏とは次元が違うのだ。テンシュテットを知らない世代の方にこそぜひ聞いてほしい演奏だ。

(1979)33:16/10:41/18:47/9:54/4:17/20:47
(1986)32:15/10:15/17:07/9:36/4:05/22:40

 マーラーはこのニ長調という少しはにかんだような調性を、その後9番の第一楽章でも使用し、さらに9番の第四楽章では変ニ長調、10番の第一楽章では嬰へ長調とますます微妙な調性を好んで使用するようになる。テンシュテットの晩年の9番の演奏が残っていたらそれもぜひ聞いてみたいものだ。88年にフィラデルフィア管に客演した演奏が以前海賊盤で出ていたことがあるらしい。下記サイトに紹介されているが粗末なエアチェック音源のようで残念ながら音質はかなり悪いようだ。テンポは1979年のスタジオ録音よりも少しだけ速くなっているのが興味深い。
http://www.kna-club.com/archives/tennstedt/tennstedt022.html

 このCDには1987年のテンシュテットへのインタビューも収録されているのでその内容は後日追記しようと思う。

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