竹田恒泰日記

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 昨日の「政府の中国副主席会見要請は憲法違反」について、次の通り補足する。


政府の中国副主席会見要請は憲法違反2

〜天皇政治利用の根拠
〜宮内庁長官権限の限界と可能性
〜中国で主席になるには天皇の力が必要

                         慶應義塾大学講師(憲法学) 竹田恒泰

 今回の中国副主席会見要請問題が天皇の政治利用に当たるか議論がある。

 たしかに、今回の一件が一ヶ月より前に御会見の要請があったなら、このような政治利用問題に発展することはなかったろう。胡錦濤国家主席が副主席の時代に天皇陛下の謁を賜った例があり、然るべき手続きを経ていたならば、先例と同様に扱われていたと思われる。

 では、胡錦濤氏の場合は天皇の政治利用ではなく、習近平の場合が天皇の政治利用であるというのはいかなる理屈によるものか。

 それは、内規に違反している点においてである。

 天皇陛下が外交要人を御引見あそばすことが、直ちに天皇の政治利用になるものではない。今回の場合は、表面的には手続きが政府内の規則違反によって行われたことが問題となる。

 重要なのは、皇室がこれまで諸外国を国の大小や、政治的重要性を考慮せずに、全て平等に国際親善を積み上げてきたことである。諸国を平等に扱う上において、皇室の国際親善自体は天皇の政治利用に当たらない。

 だが、もし皇室の国際親善が特定の国を特別扱いしたものであったなら、それは天皇の政治利用に当たると考えなくてはならない。

 「親善」はあくまで文化的交流だが、「外交」は政治的交流であって、特定の国を特別扱いする皇室の国際親善は「親善」を超え「外交」の領域に達することになるからである。

 したがって、今回の問題は、内規に違反してまで御会見を設定した点において、天皇の政治利用というべきだ。そして、天皇の政治利用は憲法違反に当たる。


 次に宮内庁長官の権限について考えたい。
 宮内庁は内閣府に属し、宮内庁長官は省を率いる大臣ではないため、その権限は大臣のそれとは大きく異なる。

 したがって、今回のような皇室の事務に関する事項につき宮内庁長官が断固反対したとしても、長官には総理の決定を覆す権限はない。

 だからといって、宮内庁長官が官邸の言いなりになっていたのでは、宮内庁長官の存在意義は無いといわなくてはならない。

 宮内庁長官が粘り強く総理を諫めるべきであったことは、昨日掲載した「政府の中国副主席会見要請は憲法違反」を参照して欲しい。

 また、総理には宮内庁長官の人事権がなく、罷免することもできない。宮内庁長官の人事は事務方の官房副長官に属し、総じて言えば官僚機構が長官の人事権を掌握している。具体的には内閣法制局が重要な役割を担う。

 今回の件で宮内庁長官が御会見設定に最後まで反対の意見を表明したとしても、総理は長官を更迭することができないのであるから、長官は気おくれせずに断固として反対すべきだった。

 先述の通り、長官には拒否権はないが、総理の要請に対して毅然とした態度をとり続けることで、政府が天皇を政治利用することの問題を、国民に明確に示すことができたはずだ。それによって国民世論を動かすことも可能だった。

 具体的には、長官が最後まで反対した場合、総理が長官を更迭できないのであるから、総理は長官を通り越して直接侍従長に指令を与えなくてはならなかった。このような事態が生じたなら、国民的議論が感化されたはずである。そうなったら羽毛田宮内庁長官は、体を張って天皇をお守りした長官として歴史に名が刻まれていたことだろう。

 羽毛田長官がこの問題を本当に重要と考えていたなら、そのように振る舞ったはずである。表面上は苦渋に満ちた振りをしているが、それは自身の責任逃れのための芝居だったのではないかと言われても仕方あるまい。

 このような形で簡単に天皇が政治利用されるのであれば、宮内庁を省に格上げして宮内大臣に一定の権限を持たせるか、もしくは宮内庁を廃止し、皇室が政府と折衝するための独自の機関を設置するかのどちらかしかないだろう。

 現在のような宮内庁であれば、もはや存在意義は無い。



 今回の一連の騒動で思ったのは、日本人が思っている以上に、中国が天皇の価値を認めていることである。

 副主席は、天皇の謁を賜ることで、中国国内において自らの地位を押し上げることを目論んでいることは明確である。

 古代において、日本は中国に朝貢することで日本国内における王権の正当性を認められた時期があったが、今はその構造が逆転したのかもしれない。日本の天皇と会見を果たすことが、中国の指導者になるために必要な条件となっているようだ。

 であるならば、何も中国の御機嫌を伺いながら、国内の内規に違反する理不尽な御会見を設定する必要はない。

 日本は「陛下の御会見を設定しない」と言っているのではないのだから、副主席来日の日程を一ヶ月延期すればそれで済む話だ。

 中国外交部の高官が十二日、特例による御会見設定について「日本国内の問題だが、日本政府に感謝する」「日本国民の皆さんに理解を求めたい」と述べたという。

 理不尽な要求をしておいて「理解を求めたい」とは一体何事か。日本の外務省こそ、中国人民に対し、日本の象徴天皇に理解を求めるべきではなかったか。

 もし特例の御会見が実行されたなら、それこそ日中友好に水を差すことになるだろう。日本国民はこの屈辱を決して許さない。

 本当の日中友好を考えるなら、日本はむしろ断固として特例の扱いを拒否すべきである。今からでも遅くはない。

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