ウイスキーと語る

兼業農家のグラフィックデザイナーです

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働き始めたばかりのずっと若い頃、大きなカメラ屋に一眼レフを買いに行った。数あるカメラを見比べて迷っていると、店員から「何を撮るか?」と、使用目的を聞かれた。
「ぼくはカメラが欲しいのであって、撮るものは買ってから考えます」
と答えた記憶がある。店員は、
「それだとアドバイスできませんね」
みたいなことを言っていた。

最近クルマを買った。そして、なんとなくそんなことを思い出した。中古の軽バンで、後部座席を倒せばフルフラットの広い荷室が確保できる。まだなついていない感じだけど、軽トラと違って雨の日も大きな荷物を運ぶことができる。この荷室以外にメリットはない。自動車税が安いが誤差の範囲である。乗り心地は貨物車で、飾りっ毛はゼロだ。

今ならカメラを買ったときの心理を説明できる。所有しないものには臨場感がない。手に入れて初めて感じるリアリティがある。グラフィックデザイナーが軽貨物を必要とするシーンはない。いちばん大きな荷物はカメラの三脚か、せいぜい乗せていく誰かだ。打合せに行くだけならポルシェやフェラーリでこと足りる。買えないけど、そういうことだ。

過去に「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という経済書がベストセラーになった。ついでに売っているだけだからだ。単体では採算が合わなくても、何と何を抱き合わせるのか、誰と提携するかによってビジネスが成立する。わたしは兼業農家だから、毎週木曜日の午前だけ、契約済みの家庭に中身お任せの農作物を届けている。儲かるものではないが、目的の半分は一週間に一度の巡回ルートを作ることだった。

さてこの荷室を何に使うか。眺めて、撫でまわして、これからゆっくり考える。

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